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「あんた、偶には甘やかしてあげな」
昨日、パチンコからの帰りに下のお登勢に捕まり、軽くボコられた。
んだよ、偶に払ってんだからいいじゃんかよ、家賃ぐらい。
そうボヤいたら、益々ボコられた。
・・・年寄りは大切に・・・なんて言ったヤツ、ちょっとコッチ来い。
で、散々ボコって気が済んだのか、タバコを吹かしながら言ったのが
その台詞だ。
なんだよ、判ってねぇなぁ。俺は何時だって甘やかしてるぜ。
俺自身を。
そう言ったら、拳の代わりにタバコが投げつけられた。
ぅわっ!んだよ、マジ危ねぇよ!!枯れたババァじゃねぇんだから、
そんなん投げられても燃えやしねぇんだよ!!
熱いだけなんだよ、地味にっ!!
喚いたら大きく溜息を吐かれた。
「新八の事だよ、新八!神楽はアレで結構甘え上手だからね、
心配はいらないんだけど、新八はねぇ・・・」
不器用だよねぇ、そう言うとこ。お登勢は仕方ないとばかりに苦笑した。
そう言えば・・・と思い返せば、確かに神楽は甘え上手かもしれない。
よくお妙にも懐いて甘えているし、新八にだって我が侭を言っている。
で、新八が窘めながらもその我が侭を聞いているのをよく見かける。
まぁ神楽はまだ子供だしな。甘えたいさかりだろう。
その対象が俺ではなく、新八と言う辺り、やはり良く判っているのかもしれない。
ボーッと道端に座り込み、考え込んでいたら、お登勢が再び言葉を繋いだ。
「傍から見ても、あの子は頑張ってるよ。アンタ等みたいのの世話を
まぁ・・・感心するね、アタシは」
何度か頷き、新しいタバコに火を着けるお登勢。
とりあえず投げられてもいいように、銀時は腰を上げた。
「どうせ給料だって満足にあげてないんだろう?ならせめて
時々でいいから甘やかしてやんな」
「甘やかす・・・ねぇ。」
そう言うタイプじゃねぇんだけど、俺もアイツも。頭を掻きながら銀時が
反論すると、お登勢は肩を落とした。
「タイプも何もないんだよ。甘やかし過ぎも良くないけどね。
アンタは大人であの子は子供だ。」
何時までも子供に甘やかされてるんじゃないよ。そう言ってお登勢は
店の中へと入っていった。
そして今、銀時はソファに寝転びながら、新八の動きを目で追っていた。
先程から新八の動きは止まることがない。
朝食が終わればその後片付け。そして洗濯機をまわして、その間に
布団を干し、部屋の掃除。
洗濯機が止まればそれを干し、その後はまだ掃除していなかった
部屋へと移動。
で、終わったと思えば次は昼食の準備だ。
その間に俺がやった事と言えば、つけていたテレビを消したぐらい。
午後になったらなったで、また昼食の片付けから始まり、漸く座ったかと
思えば帳簿付けにちらしのチェック。
大きな溜息を何回も零し、立ち上がったと思えば布団を寄せ、
洗濯物を取り込んだ。
そして洗濯物を畳みながら、破れた物を別けていく。
後で繕ってくれるそうだ、有難う。
で、その間の俺のやった事は、新八が持ってきてくれた湯呑みを空に
するぐらい。
・・・やばくね?俺。
とりあえずお登勢の言っていた事を実行してみる事にする。
いや、だってこの働き振りを見ちゃぁねぇ・・・
感謝するしかねぇだろう・・・て言うか本当、有難う。
口下手な俺としちゃあ、甘やかすぐらいでそれが伝わるなら安いものだ。
・・・って、甘やかすってどうすりゃいいんだ?
一瞬首を傾げるが、まぁなんとかなるだろう・・・と体を起こした。
「新八~」
名を呼ぶと、洗濯物を箪笥に仕舞い終えた新八が振り返った。
「なんですか?」
「あのさぁ~偶には銀さんに甘えてみない?」
甘やかし方が判らなかったので、新八に任せてみた。
すると新八はただでさえ大きな目を、更に真ん丸くした。
って言うか落ちんじゃね?ソレ。
あぁ、だから眼鏡してんのか。目ん玉落下予防の為に。
そんな事を考えてたら、真ん丸い目が、次第に半目になっていった。
・・・何、その痛い子を見るような目つきは。
「・・・なんですか、行き成り」
「いや、アレよ。何時も新ちゃんにはお世話になってるからさぁ。
偶には大人な銀さんが甘やかしてあげようと・・・」
「そう思うなら、大人らしい生活をして下さい。
つぅか胡散臭いですよ、なんか」
ちょっと恥ずかしくなって、言い訳がましい事を説明すれば、
スッパリと斬って捨てられた。
「んだよ、俺だってなぁ、キャラじゃないの判ってんだよ!
でもそれを乗り越えて言ってんだから、甘えてこいや、コラァァ!」
半ばキレ気味にそう叫べば、新八は そんなの乗り越えるなよ。 と文句を
言いつつも銀時の元へとやって来た。
そして銀時の前までくると、軽く握りこんだ右手を顎に添え、暫し考え込む。
どうやら、どうすればいいのか判らないようだ。
ま、当たり前だわな、急にそんな事を言われても。
そう思うが、銀時自身もどうすればいいのか判らないので、じっと
新八が動くのを待っていた。
すると、不意に新八の顔が上がり、銀時の顔を見上げた。
そしてちょっと恥ずかしそうに頬を染めると、そのまま銀時へと抱きついてきた。
恥ずかしいのか、先程上げられた顔は銀時の胸元に埋められており、
見えるのは赤くなった耳だけ。
・・・なんだ、この可愛い生き物は!!
新八の行動に固まっていた銀時だったが、自棄になったのか、
ギュウギュウとしがみ付いて来る
感触にゆっくりと手を上げ、その肩を抱き締め返した。
「えっと・・・まだですか?」
「うん、まぁだ」
身じろぐ新八の頭に鼻を埋め、銀時はニマニマと笑って答えた。
なんだ、これ。
なんかすっげー幸せ感じてるんですけど?
って言うか甘やかすのって、こんなにいいもんだったのか!?
うわっ、すっげー損してたよ、銀さん。
とりあえずババァには感謝しておこう。
誰だ、年寄りを馬鹿にしたヤツは。
もう、これからは思う存分甘やかしていこう。
だって俺は大人で、コイツは子供なのだ。
大人は子供を甘やかすもんだ。
誰にも文句は言わせない。
勿論新八にも。
銀時はそう心に誓い、新八のタイムサービスがぁぁぁ!!!
という悲鳴が聞こえるまで、その甘えを堪能したのだった。
ちなみに、そんな銀時に 子供に甘えてんじゃねぇ!!!と、お登勢が雷を
落とすのは、また別のお話・・・
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まだ色々と自覚のない坂田氏。
新ちゃんは大人共に構われまくればいいと思います(馬鹿ι)