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夕ご飯の片づけを終え、居間へと戻ると銀さんがソファにダラリと座り
テレビを見ている所だった。
神楽ちゃんはさっきお風呂に入ったから、今ここに居るのは銀さんと
多分ここからは見えない所で横になっている定春だけ。
銀さんは僕が台所から出てきたのに気付いたのか、視線をテレビから外し、
チラリとこちらを見ると、
「おぅ、お疲れ~」
と言って再び視線を戻してしまった。
その態度は何時もと変わりない。
けど僕は知ってる。
こうしている今も、銀さんに色々と我慢を強いていることを。
色々と、見逃してもらっている事を。
それはこの間、妙に真剣な顔の銀さんから 僕からも言葉が欲しい・・・と言われ、
確信へとなったのだけれど。
銀さんは何時でも言葉をくれる。
そりゃ~もう、こちらが恥ずかしくなるぐらいの言葉を。
けれど、それを聞くと、僕は嬉しいやら恥ずかしいやらで
いっぱいいっぱいになってしまうのだ。
本当は僕だって言いたい。
告げたいのだ。
この溢れんばかりの気持ちを、銀さんに。
けれど、色んな感情がいっぱい溢れ出し過ぎてて、
結局何一つ言葉として出てきた試しはない。
本当子供だ、僕って。
その証拠に、銀さんの本気を送られると、つい体が竦んでしまう。
想いが怖い訳じゃない。
言葉が重い訳でもない。
でも・・・見慣れてないのだ、そんな瞳は。
子供な僕の気持ちを理解しているのか、時折銀さんは
軽い言葉を僕に送ってくる。
頑張って、本気を小出しにしてくれている。
それは銀さんの優しさだ。
ちょっと有難い。
だけど僕はそんな優しさは嫌いだ。
だってムカつく。
矛盾してるけど仕方ない。
だって僕はまだまだその手の事に関してはお子様で、
けれども凄く好きなのだから、銀さんが。
大体普段は子供っぽいくせに、こんな時だけ
大人の余裕ぶりやがって!!
あの時だってそうだ。
結局、僕が頑張って頑張って、勇気を出そうとしている時に、
あっさりと妙な優しさを出してきやがった。
・・・まぁ報復はしたけどね。
けれど次の日にはまた普通に戻ってた。
時折僕が噛み付いた痕に手を添えてニヤけてはいたが。
けれど、以前のように言葉と態度を僕に送り続け、僕には
何も求めようとしなかった。
・・・なんか思い出したらムカムカしてきた。
僕はのんびりとこちらに背を向けている銀さんへと足を踏み出した。
大体ねぇ僕だって銀さんの事、負けないぐらい好きなんですからね!!
やれば出来る子なんですよ、僕!
背後に立った僕を不思議に思ったのか、銀さんが顔だけこちらに向けてきた。
「何?どうかしたのか?」
不思議そうに見返す銀さんに、少しだけ僕のムカつきが収まる。
・・・と、同時に恥ずかしさが顔を出してくる。
が、ここで引いちゃダメだ!頑張れ、僕!
子供なりの覚悟を見せてやれ!!
僕は覚悟を決めると、その頬に向け唇を落とし、小さく言葉を吐き出した。
その瞬間、銀さんの目が面白いように見開かれる。
「し、新八!?今、お前・・・!!」
そして凄い勢いでこちらに体を向けてくるので、僕はさっとその場から
体を離すと、
「今日はもう帰ります!お休みなさ~い!!」
と一方的に告げ、一気に玄関を目指した。
後ろから銀さんの慌てた声と、何かが倒れる音がしたけど、無視する。
だってなんか、今捕まったらまた見慣れない銀さんが居そうなんだもん!!
ごめんなさい、色々偉そうな事思ったけど、やっぱまだ無理。
もう少し待って下さいぃぃぃ!!!
今の僕にはアレが精一杯ですぅぅぅぅ!
玄関を勢い良く閉め、そのまま家に向って走り出した。
恥ずかしかったけど、かなり勇気がいったけど・・・
でも何でだろう、今すっごく幸せだ。
僕は走りながらニンマリと笑みを浮かべると、万事屋に居る銀さんを
思った。
こんな気持ちになれるなら、もう少し頑張れるかもしれない。
少しずつでも、気持ちを出していけるかもしれない。
それは色々と我慢してくれてる銀さんの頑張りとは
比べられないかもしれないけど。
銀さんのくれるモノと比べれば些細なモノかもしれないけれど。
だけど頑張るから、きっと頑張るから。
「今に見てろよ、コノヤロー」
空を見上げて一人、エールを送った。
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密かに頑張ってる新ちゃん。
だからもう少し頑張って我慢しとけ、坂田(笑)