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大分過ごしやすくなった午後、神楽は既に弾丸のように飛び出して行って
ここにはいない。
居るのは俺と新八の二人だ。
おまけに新八は今の時間までにやるべき事はやってしまったらしく、
のんびりとお茶を飲みながらテレビを見ている。
・・・これってチャンスじゃね?
俺は日頃から思っている事を何気なく口に出した。
「・・・・・は?」
「いや、『は?』じゃなくて。そんな白けた目で見るのでもなくて。」
折角ちょっとだけ勇気を出して聞いてみたのに、新八から返って来たのは
間抜けな返事と白けた視線。
俺は軽く息を吐き、寝転がっていたソファから体を起こした。
「銀さんさ、ぶっちゃけお前の事好きじゃん?
言葉にも出してるし、態度にも出しまくりじゃん?」
なのにお前から言って貰った事、ねぇなぁと思って?そう言って新八を
見ると、居心地悪そうに視線を手に持っている湯呑みへと落とした。
そう、俺は新八が好きだ。
それを告げた時、新八も嬉しそうな恥ずかしそうな、そして泣きそうな顔で
同じ気持ちだと答えてくれたのだ。
あれは・・・ヤバかった、本当。
だって嬉しすぎて泣いたからね、俺。
恥ずかしがって顔を上げなかった新八、最高。超空気読んでる。
だってあの顔は流石に見せられない、年上として。
で、それからと言うもの惜しみなく、満遍なく、俺は新八への気持ちを
言葉にし続けてきた。
・・・ま、自然と出ちゃうんだけどな。
止められないんだけどな、自分では。
けれど、新八はと言うと・・・大抵頬を染めて頷くか、嬉しそうに笑うか
だけで、言葉にして返してくれない。
しかもなんか最近では時折怒るようになってきた。
なんでだ??
とりあえずその理由を聞くと、新八はムスッと小さく口を尖らした。
チクショー、そんな口すんな、ちゅうすっぞ。
ぼんやり見詰めていると、言い難そうに新八が口を開いた。
「・・それは・・だって銀さんが、軽く言ってるような気がして・・・」
新八の答えに、俺は あ~・・・と微かに視線を上げた。
確かにそんな感じに聞こえるよう、ワザと言ってる時もある。
だけど・・・
「そりゃあお前・・・アレだ・・・」
俺が気持ち全部乗っけて言うと、怖がるじゃん、お前。
多分本人は無意識なんだろうけどな、ちょっとだけ怯えた感じになるんだよね。
まぁ新八はまだ子供だしな。
俺も自分の本気加減を自覚しているだけに、それも仕方ねぇって
思うしな。
だからもう少し、時間を掛けて少しずつ慣れて貰おうって
思ってたりしたのよ。
でも、それで本気に取られてないってのは、困る。
俺はじっと新八を見詰めて、言葉を続けた。
「それでも、俺の言葉は全部本気だぜ?」
それは判ってくれ。そう言うと新八は俯いたままコクリと頷いた。
あ~・・・ヤバイヤバイ。今気持ち全部乗っかってたっぽくね?
ここで怖がらせてどうすんだよ、俺。
大体なぁ、新八が戸惑うのも判るんだよ。
だって俺だよ?銀さんの本気だよ?
自分でも引くってぇの。
そんな重くて鋭くてドス黒いの。
本当、性質が悪ぃったらねぇだろ、おい。
だからもう少し・・・もう少しだけ様子を見なければ。
俺は軽く息を吸い込むと、パンと膝を叩いた。
その音にびっくりしたように新八が顔を上げる。
俺はそれにニヘラと笑いかけるとソファから立ち上がり、
新八の隣へと移動して腰を降ろした。
「ま、そう言う訳だから。偶には新ちゃんからも言ってくれや」
出来れば今すぐ。と、固くなっている新八の背凭れに腕を回し、
ニヤニヤと笑って告げた。
すると一気に新八の顔が赤く染まる。
「な、何がそう言う訳なんですか!!そう軽々しくいえません!」
「いやいや、軽々しくないよ?大事だよ?銀さんだって
不安になる時もあるんだよ?あんまり言ってくれないと」
そう言うと、新八はうっと言葉に詰まり、僅かに視線を逸らした。
「そう言うのは・・・その・・僕の態度から察して下さいよ」
銀さん、大人なんだし。恥ずかしそうに言う新八。
その態度からばっちり察する事が出来たが、まだダメだ。
これからも頑張らなければいけない俺に、もう少しご褒美をくれ。
「銀さん、心は何時でも少年だから判りません。
ってか言うのがアレなら態度でもいいぞ~。もう少しはっきりとした」
そう言って俺はチョイチョイと自分の頬を指差した。
ここで唇を指差さなかった俺は、えらいと思う。
・・・が、新八は何の事か判らなかったらしく、コトリと不思議そうに
首を傾げた。
いやオマッ、それ・・・・
もう少し自分大事にしろぉぉぉぉぉ!!?
俺の理性を舐めんな!案外ヤワだから!!
って違う違う、我慢しろ~、お前はやれば出来る子だぞぉぉ銀時ぃぃ。
これを乗り切ればご褒美が待ってるぞ~。
心の葛藤をなんとか表に出さず、俺はもう一度頬を指差した。
「ちゅうだよ、ちゅう。言うのが恥ずかしいならちゅうして下さぁい」
そう言うと新八の顔が、火が出るんじゃないかってぐらい赤くなった。
「も、もっと恥ずかしいじゃないですかぁ!!!」
「俺は嬉しいけどな」
さぁ、どうする?そう言って背凭れに回していた手を新八の肩に置き、
ついでに膝の上で握り締めていた手も掴んでしまう。
これで新八には逃げ場は無い。
どっちが来たとしても俺としては嬉しい限りで、思わず頬が緩む。
見れば新八は漸く自分が置かれた立場に気付いたらしく、
悔しそうにこちらを睨んでいた。
・・・てな、お前顔真っ赤にして、涙目でそんな事しても
逆効果だから。
張り切る一方だから、銀さん。
「新八く~ん?」
ニマニマと呼び掛けると、漸く覚悟が決まったのか、新八はグッと唇を噛み締め、
徐々に顔を近付けて来た。
お・・・これはちゅうの方か!?
よし来い!そして頑張れ、俺の理性!!
・・・と、胸をときめかしたその時。
カプリ
「へ?」
予想していた感触とは全く違ったものに、俺は一瞬呆けてしまう。
その瞬間、掴んでいた力が弱まったのだろう、新八は素早く
俺の手を振り払い、ソファから立ち上がると、さっと距離を取った。
そして真っ赤な顔を俺に向けると、
「このセクハラ上司!!」
という言葉と可愛らしい舌を出し、居間から立ち去ってしまった。
それを呆然と見送る俺。
いやだって今・・・えぇ!??
そっと一瞬噛まれた頬に手を当てる。
そしてそのままボスンとソファに倒れ込み、うつ伏せになって丸くなる。
追い掛けようにも、今の俺の顔では無理。行けない。
序に体の方も無理、これ。
「くそ!・・・やられた!!」
言葉でもなく、ちゅうでもなく、噛み付きって・・・
「これって少しは進展してんの?」
それとも後退??そう呟き、俺は大きく息を吐き出した。
何にせよ、子供の行動も結構性質が悪い。
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ヘタレ坂田万歳☆