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日も暮れ始めた時刻、銀時は万事屋の玄関の前で一人、財布の中身を
確認していた。
「・・・大丈夫、今日はそんなに損してない、うん」
そこにある、寂しいお札と記憶にあった枚数を照らし合わせ、そう呟くと
漸く玄関へと手を掛け、中へと足を踏み入れた。
「・・・たで~まぁ」
幾らそんなに損をしていないと言っても、仕事がないのにパチンコに
行ってしまったという負い目があるせいか、出てくる声は小さなもので。
銀時は、やってくるであろう新八の声をビクビクと待ちながら
ブーツを脱いだ。
が、脱ぎ終わっても待っていた声はやって来ず、銀時は少し首を傾げながら
居間へと足を進めた。
「お~い、銀さんのお帰りだよ~」
無視ですか~?そう言って居間の中を見渡せば、そこにはソファに横になって
眠っている新八の姿が。
「・・・なんだよ、眠ってんのか」
ビクビクして損しちまったぜ。銀時はホッと肩を降ろすと、そのまま
新八が眠っているソファへと足を進める。
そしてその寝顔を見下ろし、 よく寝てんなぁ・・・と、サラリとした
前髪に手を伸ばした。
「新八く~ん。銀さん帰って来たんですけどぉ?」
手にした髪を梳きながらそう呟くが、新八は寝息を立てるばかり。
銀時は緩く口元を上げると、 ま、いっか と屈んでいた体を起こした。
そのまま室内を見渡せば、何時ものように掃除されたキレイな状態。
襖の開いてる和室へと視線を飛ばせば、丁寧に畳まれた洗濯物。
この分だと既に夕食の下拵えもすんでいるのだろう、と予想し、
僅かに開いているソファへと腰を下ろした。
そして視線を新八へと下ろし、序に手も新八の頭へと下ろす。
気持ちの良い手触りに、銀時は優しい手つきでその頭を撫でる。
それが気持ち良いのか、新八の口元がやんわりと上がった。
「気持ち良さそうに眠りやがってよぉ」
もう少し警戒心ってのを持った方がいいんじゃね?
そう言いながらも、銀時の手は止まらない。
「鍵も掛けてないし、物騒だよ、オマエ。世の中には悪い大人が
ゴロゴロ居るんだぜ?」
判ってんのか、コラ。
ま、俺もその中の一人だけどよ。
寧ろ俺以外の悪いヤツラが近付いてきたら、全部抹殺するけどよ。
・・・て、アレ?んじゃ悪い大人は俺だけか?
なら意味ねぇじゃん、俺、鍵持ってるし。
「・・・じゃあ余計んな無防備にしてちゃダメだろ」
悪い大人の前ですよ、ばっつぁん。そう言って銀時は撫でていた手を
新八の頬へと移し、軽く突く。
すると、擽ったかったのか、新八が小さく呻きながら、その手を払った。
そしてそのまま寝返りを打ち、背凭れの方へと体を向けた。
銀時から見えるのは、白く細い首筋。
その首筋に、思わず手が伸びそうになり、銀時はギュッと掌に力を入れた。
・・・判ってる。
新八がこんなに無防備なのは寝ているせいで。
寝ているのは、ここが安心出来る場所だからで。
ここが、『家』だからで。
帰って来るのは、銀時達『家族』だからで。
そこまで考え、銀時は小さく息を吐くと無理矢理口元を上げた。
「・・・なら俺は『兄貴』ってとこか?」
父親だったらマジ泣くぞ。軽く笑い、力を込めていた拳を開いて
再び新八の頭へと手を下ろした。
『家族』と思っていいと言われた時、実はかなり嬉しかった。
その言葉通り、何時でも傍に居てくれる事が本当に嬉しかった。
けれど、思ってしまうのだ。
何時まで『家族』で居ればいいのか・・・と。
何時から変わってしまったのか。
それさえも判らないほど、そう思ってしまっていたのだ。
「それ以上のが欲しいんだよ、俺はさ」
それは家族なんて甘いモノじゃなく、醜くてドロドロとした欲望。
呟く言葉は願いではなく、きっと近い未来に起こってしまう現実。
「ま、なんとか頑張って我慢するけどさ」
銀さん、大人だし。ゆっくりと新八の頭を撫で、銀時は苦笑する。
今はまだ、新八のくれたこの暖かい空間を大切にしたい。
甘やかしてくれるオマエを、甘やかしてやりたい。
無防備な姿を見せてくれるお前の気持ちに答えたい。
けれど、心の底では・・・
「・・・でもなぁ、悪い大人でもあんのよ、銀さんは」
衝きつけたい、この醜い衝動を。
そん時はごめんな。夕陽に染まった部屋で、銀時の謝罪がポツリと落ちた。
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銀→新風味で。
続き書きたいけど、ドS坂田になりそう。
需要あんのか、そんなの(笑)