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「時々可愛く見えちゃうんですよね~」
そう言って新八は遠くに視線をやりながらパクリと溶けかけた
アイスを口にした。
同じように川原へと続く坂へと腰を降ろし、アイスを口にしていた
沖田は、へ~。と適当に相槌を打った。
巡察の途中、新八を見掛けた沖田が、アイスをエサに
暇潰しに誘ったのはい先程の事だ。
その後、キラキラと光る水面を見ながら、どうでもいい様な事を
話していたのだが・・・
「とりあえず俺に向って言ってんなら、お礼代わりに
今すぐそこの川のソコに沈めてやらぁ」
「安心して下さい。時々も何も
全くそう見えた事ないですから」
念の為・・・と沖田が聞いてみると、スパッと断ち切られる。
とりあえず男として可愛いと見られる事は嫌なので、
断ち切ってもらえて良かったのだが、断ち切るにも程があるだろう。
沖田はなんとなく面白くなさそうに あ、そう。と告げると、
残っていたアイスを全て口に入れ、手元に残った棒をフラフラと振る。
「じゃあ誰の事言ってんでィ?
まさかチャイナじゃねぇよなぁ?」
「何言ってんですか、そんな事ある訳ないでしょ?」
またもやスパッと断ち切られ、沖田は少しだけ目を丸める。
あぁ言ったものの、一番確立が高いのは神楽だと思っていたのだ。
性格と行動と頭と・・・まぁ言い出したらキリがないが、
色々と問題があるものの、パッと見は可愛らしいといえるだろう。
あくまでパッと見、
しかも完璧傍観者の立場として・・・だが。
だが、隣でポトリとアイスを落とし後悔している新八は
喧嘩もするしパシリにもされているのに、
神楽の事は大層可愛がっている。
それはもう、妹を通り越して娘の様な感じだ。
その新八が、神楽の事を可愛いと思ってないとは・・・
「神楽ちゃんは何時も可愛いと思ってますもん
時々じゃないです」
意外だ・・・と思ってたら、やっぱりそうではなかった。
と言うか、あの乱暴者と言う言葉は甘すぎるような少女の
身近に居て、どうしてそこまで可愛いと思えるのか・・・
あぁ、そう言えばあの放送禁止用語使いなマニア向けアイドルや
最怖の姐さんも新八にとってみれば敬愛するべき女性だったっけな。
きっと普通の女性と接した事がないからの発言だろう。
そう納得し、沖田は隣で神楽のいい所を語っている新八に
視線を向けた。
へ~、食べ終わった皿を運んでくれたんですかィ。
でもその後割られちゃ意味ねぇんじゃねぇのかィ?
しかも運ばした新八が悪いと逆切れされた・・・と。
「・・・とりあえず新八、眼鏡の度、変えなせぇ
後、頭の中の回路をちゃんと繋ぎ合わせなせェ」
「・・・どう言う意味ですか」
沖田の言葉にじっとりとした視線を向けてくる新八に、
そのままの意味でさァ。と返すと、沖田はその場に寝転んだ。
「・・・で?」
「何がですか?」
新八は沖田からアイスの棒と袋を受け取ると、自分の分も一緒に
持っていたビニール袋へと入れ、問い返した。
「何がじゃねぇよ。さっきの時々可愛く見えるって
やつでさァ」
このままじゃ気になって昼寝も出来やしない・・・と、
一体誰の事でィ。そう問い掛けると、新八はあぁ。と声をあげ、
次に深々と溜息を吐いた。
「それが・・・銀さんなんですよ」
「・・・・へ~」
「や、何ですかその一切の感情が篭ってない声は。
それにその目!ちょ、やめて下さいよ。
泣きますよ、僕」
「泣きたいのはこっちでさァ。
ってか泣いたらそこら辺から旦那が出てきそうだから
止めて下せェ」
「・・・アンタ、銀さんをなんだと思ってんですか。」
「新八マニア」
「・・・本気で泣きたくなる様な事をさらっと言わないで下さい」
でも、そんなのでも見えちゃうんですよ、可愛く・・・
と新八はカクリと肩を落とした。
「銀さんが呑みに行く時って大抵泊まるんですけど、
時々あの人、帰ってこないんですよ。
で、朝帰りしやがってコノヤローとか思って朝玄関開けると、
其処で寝てるんですよ、大の字で。
しかも何処で拾ってきたのか、看板とか抱き締めたまま、
僕の名前とか寝言で言ったりして。
ま、見ない振りして放置してるんですけどね。
え?キュンって来ないのかって?
う~ん・・・どっちかって言うと、ウザッてなりますね。
其れ故の放置ですから。
後、怖いテレビとか見た後、無理矢理泊まらせたかと思うと
夜中ず~っと喋り捲ってたりとか?
あ、別に大変じゃないですよ?
大抵ほっといて僕は速攻寝ちゃうんで。
他にも天パなのに寝癖気にしたりとか、立ち上がる時とか
必死になって『よいしょ』って言うの我慢してたりとか。
それでもやっぱり言っちゃって、ウザイくらいに落ち込むトコとか?
そう言うの見てると、可愛いな~って思っちゃって・・・」
なんでかなぁ?と再び溜息を吐く新八に、沖田は
呆れた顔で見返した。
それは既に可愛い大人ってよりも、
可哀想な大人だ。
とりあえず思った事を告げると、新八は一瞬キョトリと目を丸くし、
次に
「あぁっ!」
とポンと手を打った。
どうやら彼の疑問は無事解消されたようだ。
沖田はしきりに頷いて納得している新八を余所に、
心置きなく昼寝をする為、ゆっくりとその目を閉じたのだった。
*************
暑いので坂田苛め。(え?)
その日、沖田が甘味屋の軒先でボーっと団子を食べていると、
視線の先で見慣れた顔を見つけた。
どうやら買い物帰りらしく、
大きなビニール袋を片手に歩いている。
全く働き者な眼鏡でィ。
自分よりも小さな体で、チョコマカと家事をこなしているだろう
光景を思い、沖田は少しだけ感心する。
その時、こちらに気付いたのか、新八が軽く頭を下げてきた。
「こんにちは、沖田さん。」
それに対し、沖田は置かれた長椅子にダラリと腰を
落としたまま、軽く手を上げて挨拶を返す。
そして序とばかりに、チョイチョイと手招きをしてみた。
「何ですか?」
「暇なんでィ。ちょっと相手していきなせェ」
その堂々とした態度から、隊服であるにも関わらず
もしかして休憩時間なのだろうか・・・などと言う考えが
新八の頭に浮かぶ。・・・が。
「もう暇過ぎて仕事にでも戻らなきゃどうしようもない
感じだったんでィ。新八が来て丁度良かった」
「いや、そこは戻ってくださいよ。
ってか堂々としすぎじゃね!!?」
この人に対して『もしかして』なんてある訳なかったよっ!!
新八は一つ溜息を吐いたものの、言っても仕方ないと
判りきっているので、素直に沖田の隣に腰を降ろした。
「まぁいいじゃねぇですかィ。頑張って働いてるご褒美に
団子でも施してやりやすから」
新八が腰を降ろしたのを確認し、沖田はニヤリと笑うと
奥に居る店員に、団子の追加を頼む。
それを聞き、新八はもう一つ、息を零した。
「施すってアンタ・・・普通に奢るって言ってくださいよ」
「それは禁止用語でィ、サド的に」
「寧ろ禁止用語じゃない方が禁止なんですけどね、
一般的に」
ま、いいか。とりあえず団子は美味しそうだし。
どっちにしろタダだし。
「じゃあ・・・遠慮なく戴きますね?」
「おぅ、ガキが遠慮なんてするもんじゃねぇでさァ。
そんなんするぐらいなら、ひたすら恩を感じ取って
生涯忘れる事がねぇようにしなせェ」
「それは本気で遠慮したいんですけど!!?
ってかそんなに年、変わらないでしょうがっ!」
「いやいや、この年代の年の差は馬鹿にできねぇぜ?
特に知識の差が半端ねぇや」
「・・・思いっきり偏ってそうですけどね、
その知識」
まぁいいか。と言い合いを諦め、新八は運ばれてきた団子を
パクリと口にいれ、
沖田は満足気に頬を緩ませた。
その後、二人並んでまったりお茶をしていると、
前方から見慣れた黒服が視界へと入ってきた。
「あ、近藤さん」
「ん?あ、本当でィ。何やってんだ、あの人。」
二人して見ていると、大きく手を上げてこちらへと
近付いてくる近藤の姿が見えた。
「おぉ、総悟に新八君。
二人して仲良く何してるんだ?」
「沖田さんに丁度会って、お団子をご馳走になってたんです」
ニコニコと笑う近藤に新八がそう告げると、近藤は一瞬
キョトリと目を丸くし、次にクシャリと顔を綻ばせた。
「なんだ、総悟。誰かに奢るなんて
オマエも大きくなったんだな~」
そう言って大きな手で頭を撫でてくる近藤に、
沖田は身を捩って抵抗をする。
「違いまさァ!俺は施してただけでィ。
近藤さんこそこんなトコで何してんでさァ。
サボってんじゃねぇよ、コノヤロー!!」
「・・・や、それ沖田さんが言う台詞じゃないような・・・」
「うんうん、俺は判ってるぞ、総悟。
でもそっか~、人の財布は俺の財布って思ってた総悟がな~。
いや~、月日が経つのは早いもんだな~、うん」
「今でも当然そう思ってやすから、
安心して下せェ」
沖田にムッとした表情で手を振り払われたものの、
近藤の顔は満足気に微笑まれたままで。
「でも今日は新八君に奢ってあげるんだろう?
お兄ちゃんだもんな、総悟は」
あ、でもお義兄さんは俺だけどな。そう言って豪快に笑う
近藤に、
「なら今日の支払いは近藤さんがしといて下せェ」
とぶっきら棒に告げると、新八の手を取り、その場から
ダッシュで立ち去っていってしまった。
「えぇ!?ちょ、総悟ぉぉ!!!?」
そう呼びかけるものの、二人の姿は既に遠くなってしまって。
「まずった・・・かな?」
近藤は苦笑し、頭を掻いた。
それから数日後。
「おい総悟。オマエ近藤さんとなんかあったのか?」
ここの所何時もと雰囲気が違う二人に、不思議に思った土方が
沖田にそう問い掛ける。
「別に何でもないですぜィ、土方死ねコノヤロー。
アンタの気のせいでしょう、
本気でもう死んで来いコノヤロー」
「おいぃぃぃ!!
何、その不吉な語尾っ!!ちょ、近藤さん。
アンタからも何とか言えって・・・て、
何襖の陰からこっそり覗いてんのぉぉぉぉぉ!!!?」
「あ~もうウゼェ大人共だねぇ。
一回と言わず、二・三回ぐらい
腹ぁ掻っ捌いてくれねぇかなぁ。
特に土方中心に」
「なんで俺中心んん!!!?」
「・・・後、今回は特別に近藤さんも。
ってか腹じゃなくて、寧ろ
口ぃ縫い付けて来いよ、もう」
「ちょ、どんな特別ぅぅ!!?
悪かった、近藤さんが悪かったから。
だからいい加減口をきいてくれ、総悟ぉぉ!!!」
********************
難しいお年頃です。
ゆったりと時間が流れているお昼前。
新八は自宅の縁側に座り、のんびりとお茶を飲んでいた。
「いい天気ですね~」
「全くでさァ。こんな日は土方さんの血の雨を
ザカザカ降らしたくなるってもんでィ」
晴れ渡った青空を見上げ、そう呟けは、何故か隣から
返事が返って来る。
それもものっそい不吉な。
「・・・おまけに暖かいし。今日は洗濯物が
よく乾くだろうな~」
「土方さんも乾かねぇかなぁ。
寧ろカラカラに干乾びねぇかなぁ、暖けぇし」
「や、幾ら暖かくてもそこまではいきませんからね?
ってかさっきから不吉な事ばっか言ってんじゃねぇよっ!」
折角晴れてていい気分なのにっ!新八は隣でゴロリと
片肘付いて横になっている沖田に怒鳴りつけた。
しかし沖田にとっては何処吹く風。
ヒラヒラと手を振ると、そのまま目の前に置かれているお茶へと
手を伸ばし、ずずっとお茶を啜った。
「何言ってんでィ。不吉でもなんでもなくて
確実な素敵未来予想図じゃねぇか」
「土方さんにとっては最悪の未来予想図ですよ。
ってかここでのんびりしてていいんですか?」
近藤さん探しに来たんでしょ?呆れた顔でそう問えば、沖田はあ~。と
ダルそうに声を出し、体を仰向けへと変えた。
「探してますぜィ。あれ?見て判りやせんかィ?
眼鏡かけてるのに?」
「寧ろこの状態でそう見えたら
眼鏡を外しますよ、僕は。」
「なんでィ、そんな簡単に自分を捨てちゃいけやせんぜィ?
人間、誰しも間違いはありまさァ」
「間違ってるのは今のこの状態ですよ。
ってか眼鏡は別に僕の主成分じゃないですからね!?」
「あ~もう、うっせぇなぁ。
いいからお茶のお変わり下せェ」
そう言って寝転んだまま湯呑みを差し出す沖田に、新八はあからさまな
溜息を吐くと湯呑みを受け取り、傍においてあったポットから
急須に湯を注いでいく。
「全く、子供じゃないんだからちゃんと仕事して下さいよ。」
「なんでィ、自分は棚上げかィ?」
「僕の場合はしたくてもないんですよ」
酷く冷め切った顔でお茶を注ぐと、新八は湯呑みを沖田の横へと置いた。
それを手に取りながら、沖田はずずっとお茶を啜った。
「・・・ま、アレだねィ。旦那は相変わらずなんだねィ」
「えぇ、お陰様で。昨日も仕事もせずにパチンコに行って
金置いてきたと思ったら、夕飯食べた後
凝りもせず呑みに行きましたよ」
今頃二日酔いで死んでるんじゃないですか?そう言って鼻で
笑い飛ばす新八に、沖田はありゃりゃ・・・と声を零した。
きっとパチンコから帰って来た時点で、目の前のこの少年は
姉直伝の雰囲気を纏って銀時を出迎えたのであろう。
そして、間が持たなくなった銀時は、逃げるように呑みに出掛けた・・・と。
「目に浮かぶようだねィ」
ポツリと呟けば、隣に座っている新八から力ない笑い声が聞こえた。
「で?新八はそんな旦那に呆れて実家に帰って来た・・・と」
「や、なんかその言い方、あってるけど全く違う感じに
とれますからやめてくれません?
ってか確かにここ実家ですけど、自宅ですからね?僕の」
大体今日は前々から休みだったんです。そう言って新八は
沖田の持って来た煎餅を口にした。
それを見て、沖田も同じように煎餅を手にする。
「まぁ偶には旦那にお灸を据えるのもいいんじゃないですかィ?」
「・・・なりますかね~」
新八はそう言うと、晴れ渡った空にぼんやりと目を移した。
その瞬間、遠くの方から聞き慣れた声が聞こえた気がした。
それにピクリと視線を動かす沖田。
「どうやら迎えが来たようですぜィ?」
「そうですか?」
沖田が告げるが、新八は知らぬ顔だ。
視線を空から逸らさず、パリパリと煎餅を食べ続けている。
その間も、聞き慣れた声は新八の名を呼び、近付いてくるようだった。
・・・が、その瞬間、何故か爆発音と、聞き慣れた声が瀕死のキリンの
様な声に変わった。
それに沖田は珍しくもパチクリと瞬きし、空を見続けている新八を
見上げる。
しかし、新八は黙って煎餅を食べ終わり、何事も無かったように
お茶を一口啜った。
そして今気が着いたように小さく声を上げる。
「そう言えばさっき、掃除してる時に要塞モードのスイッチを
触ってオンにしちゃってたっけ・・・
解除するの、すっかり忘れてました。」
あはは、うっかりさんですね~。そう言って笑うが、
明らかに目が笑っていない。
その間にも、爆発音だの、何かが風を切り裂く音だのが
連続して聞こえてきて、瀕死のキリンも大量発生だ。
どうやら新八の怒りは、相当なものだったらしい。
「・・・ま、いいんじゃねぇですかィ?別に誰も来る予定、ねぇんだろ?」
「えぇ、全く塵ほどにもありませんね」
「なら一休みしてから解除すりゃぁいい。
俺もサボる理由が出来まさァ」
「ま、偶にはいいですかね。序にお昼、食べてきます?」
新八の申し出に、沖田は軽く手を上げて了解を告げると、
愛用しているアイマスクを引き上げ、寝る体勢を整える。
「本当、いい天気ですね~」
のんびりとした声で呟く新八の言葉に、
本日何匹かめの瀕死のキリンの声が被った。
***********************************
その後、瀕死のゴリラも発生(笑)
※『色々やらかすのも~』のおまけ的なモノ※
※ほぼ会話分です※
その後、自称リアルケイドロをしていた二人は土方に拳固をくらい、
その場で確保。
ズルズルと引きずられるまま屯所へと連れて来られ、おまけに
新八の保護者として、呼びたくは無かったが仕方なく銀時までもが
呼び出されたのであった。
屯所の一室。そこに沖田と新八は正座をさせられ、その前に大人たちが
立って向かい合っていた。
「オマエラなぁ、本っっっ当!
なんて遊びしてやがんだよ、おいっ!」
「なんて遊びって・・・知らないんですかィ?
あれはケイドロってヤツで・・・」
「ちっげぇよっ!名前を聞いてる訳でもねぇし、
あれをケイドロとは呼ばねぇっ!
ってかそう言う意味で聞いてんじゃねぇよっ!!!」
怒鳴る土方に、沖田が飄々と答える。
それに再び怒鳴る土方。
既に額の血管が切れそうだ。
土方はとりあえず一つ息を吐くと、今度は新八へと視線を向けた。
「って言うかテメーも一緒になってやってんなよ。
普通そこはツッコム所だろ!?
職務放棄しんてじゃねぇ!」
「いや、別にツッコミが職務って訳じゃないですし・・・」
「ちなみに俺はきちんと職務を全うしてやしたぜ」
「そこでツッコミ入れなくてもいいし、テメーに関しちゃ
職務とは言わねぇんだよ!
何一般人巻き込んでくれてんだ、おいぃぃ!!」
「あ、それなんだけどよぉ」
ソコまで叫んだ所で、それまで黙っていた銀時が軽く手を上げた。
「アレかな?ここはやっぱり王道のあの台詞を言っちゃっていい
べきかな、コレ。
あ~・・・とりあえずアレだ。
何ウチの奥さん誑かしてんだ、コノヤロー」
真顔で告げる銀時の頭を、景気よく土方が叩く。
「ってちっげぇよ!!何だそれ、
丸っきり違う王道の台詞に
なってんじゃねぇかぁぁぁ!!!!」
「旦那ぁ、そいつは違いますぜィ?誑かした訳じゃねぇ、
一人にしといた旦那が悪いんでさァ」
「や、ただ単に散歩してただけですけどね、僕」
とりあえず何にでも悪乗りする沖田の頭も叩き、土方は大きく息を吐いた。
「まぁアレだ。とりあえず二人ともあの遊びは今後一切するな、
あれは俺達の仕事だ」
「判りやしたぜ、土方さん。
常にやる気満々でしたが、土方さんがそう言うなら仕方ねぇ。
今後一切、巡察も捕縛もしやせんっ!」
「いや、それはしろよ。
ってか仕事だろうが、それはぁぁぁ!!!!」
えぇ笑顔でそう宣言する沖田に、土方が怒鳴る。
その隣で銀時が面倒臭そうに頭を掻きながら、新八へと近付いた。
「ま、オマエもな、新八。
そんな危険な上に金にならねぇ事してんじゃねぇよ。
ってか誘えよ、散歩。
俺を一人にすんじゃねぇ。」
「ってそこかよっ!
違うだろうが、注意するトコが!!」
「うっせぇなぁ。俺にとっちゃ一番大事なトコなんだよっ!
中々帰って来なくて
泣きそうだったんだよ、実際!!
大体なぁ、今言ったように、そんなのはこいつ等の仕事なの。
それを盗っちゃダメでしょうが。
まんま給料泥棒になっちゃうよ、こいつ等!」
「旦那ぁ、そこは任しといて下せェ。
そん時はリアルケイドロの恐怖、
とくと味合わせてやりますぜィ」
「え?今度は土方さん達が相手なんですか?
うわ~、緊張しますね、それ」
「ちょ、また職務放棄ぃぃぃ!!!??」
「・・・て、今まさに俺らが職務放棄だよね、コレ」
巡察、途中なんだけど・・・
ギャーギャーと騒いでいる面々を眺めながら一人、山崎は持ってきていた
お茶に口をつけ、大きく息を吐いたのであった。
********************************
なんとなく不完全燃焼だったのでおまけ。
真面目な子も偶には羽目を外します(そうか?)
巡察中、ふと見慣れた姿が目に入った。
その姿に、土方はピタリと足を止め、ピクリと眉を上げた。
遠くではあったが、それは確かに沖田で、思わず何時もの癖で
怒鳴りそうになった土方だったが、沖田の格好が隊服ではなく、
私服である事に気付き、そう言えば今日は非番だったか・・・と
これまた何時もの癖で握り締めていた刀から手を離した。
「あのヤロー、サボりまくってる癖に、休みもきちんと取りやがって」
と、怒りも沸いたのだが、態々自分から血圧を上げに行くのも
馬鹿らしい。
土方は新しいタバコに火を着けると、そのまま巡察へと
戻ろうとした。
・・・が、沖田の隣に居る、これまた見慣れた姿に再び足を止めた。
沖田の隣に居る人物、それは何かと縁のある少年、志村新八で。
そう言えば良く一緒に遊んでいるとか言ったっけ・・・と土方は
以前新八から聞いた事を思い出した。
その時は、まさかあの沖田が、しかも属性が全く違うだろう
新八と共に遊ぶサマが想像出来ず、
遊ばれてるの間違いじゃないのか?
とも心配になったのだが、いざ目の辺りにしてみれば、中々どうして。
「普通の友達に見えるじゃねぇか」
そう呟き、ユルリと口元を上げた。
元々同年代が周囲に居なかった二人だ、例え属性が違っても、
気が合うのだろう。
視線の先で、楽しそうに何かを話している二人が見える。
・・・まぁアレで少しはこちらに向けてくる殺意を
控えてくれるといいのだが・・・無理だろうなぁ。
付き合う人物によって、雰囲気が変わる事もあるだろうが、
多分沖田は何処まで行っても沖田だろう。
せめてその属性が、新八にまで移らなければいいのだが・・・
そう思っていると、少し先で土方を待っていた山崎が足早に
戻ってきた。
「どうかしましたか、副長・・・ってあれ、沖田隊長と新八君じゃないですか」
うわ~、やっぱり一緒に遊んでるんだ~。そう言って心配そうに
眉を下げる山崎に、土方は訝しげな視線を向けた。
どうせコイツも自分と同じような事を考えていたのだろう。
山崎の表情からそんな事を読み取り、土方は吸い込んだ煙を長々と
吐き出した。
「別に一緒に遊ぶぐらいはするだろう。いいんじゃねぇか?
新八も嫌がってなさそうだし」
「まぁ嫌がってはないみたいですけどね。新八君、今まで同年代の子と
遊んだ事がないそうなんで、色々と物珍しいみたいですし」
でも・・・と口篭る山崎に、ついイラッと来る土方。
「なんだよ、言いたい事があんならさっさと言いやがれ。
・・・ってあぁ、アレか?総悟がなんかいらん事教えてるとか
そんなトコか?」
先程自分が考えていた事を口にし、土方は小さく肩を落とした。
やはり、傍からはどう見えようが、
沖田はS星出身の生粋のS王子だ。
色々と教育に悪い面もあるだろう。
だが、子供同士の遊びに大人が態々口を出すのも・・・
いや、そう言うのならば返って出さないといけないものだろうか。
そう考えていると、困ったように笑う山崎が、
「いらん事と言うか・・・まぁ遊びなんですけどね?」
そこまで言うとキョロキョロと周囲を見渡し、土方の耳へと
口を近付かせ、コソリと言葉を吐き出した。
「実は最近、ケイドロにハマってるらしいんです」
その言葉に、土方は一瞬目を見開く。
ケイドロ・・・ケイドロってアレか?
確か警察と泥棒役に別れて、捕まえたり逃がしたりする遊びの事か?
アレ?でもそれってこんなにコソコソと言う遊びだったか?
真面目なツラで報告するような事だったか?
それとも地域によって呼び名が違うように、俺の知ってるのとは
違うのがあるって言うのか?
グルグルと考え出す土方の横で、姿勢を元に戻した山崎が
小さく息を吐いた。
「ま、普通のケイドロだったらいいんですけどね・・・
リアルがつくんですよ、あの二人のケイドロには」
「・・・はぁ?」
思わず見返せば、何故だか山崎は遠くへと視線を飛ばしていた。
「きっとアレですね。今も潜伏中の攘夷浪士かなんか
追ってんでしょうね、あの二人・・・」
ちなみにこの間沖田隊長が捕まえてきた攘夷浪士は、
あの遊びの成果だそうです。
ははは。と乾いた笑いと共に言葉を吐き出す
山崎から目を逸らし、土方は急いで先程の二人へと視線を向けた。
そう言われてみれば、確かに二人は止まったり歩き出したり・・・と
妙な感じで動いている。
しかも、どんなに和やかに話していようとも、視線はチラチラと
ある方向から動いておらず。
自分はと言えば、攘夷浪士が潜伏しているかもしれない・・・と言う
情報の元、ここら辺を巡察していたりする訳で・・・
「リアル過ぎるわその遊びぃぃぃ!!!」
叫び声と共に、土方は視線の先に居る悪ガキ共へと突進して行ったのであった。
*************************
ウチの所ではケイドロと呼んでました。