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「あれ?新八君、どうしたの?」
真選組屯所前、近藤が外から帰ってくると、門の前に立っている
少年の姿が目に入った。
それに声を掛けながら近付いていくと、新八は小さく声を上げ、
軽く頭を下げた。
「こんにちは、近藤さん」
「あぁ、こんにちは。で、どうしたの?誰かに用かな?
あ、もしかしてお妙さんから俺に言伝!!?」
「いえ、全く。
それより沖田さん、居ますか?」
新八の口から出てきた言葉に一瞬肩を落とすが、
次に出てきた名前に、直ぐに頭を切り替える。
そして上の方に視線を飛ばしながら、今日の予定を思い浮かべる。
「総悟は・・・確か今の時間は巡察している予定だから・・・
部屋に居るんじゃないのかな?」
それか公園のベンチ。そう言って笑う近藤に、新八は乾いた笑いを漏らす。
「それ・・・全然予定と合ってませんよね?」
「気にしてたら総悟とは付き合えんよ?」
突っ込んだ筈が、呆気らかんと答えられ、新八はもう何も言えなかった。
・・・ってかこれぐらい大らかな人じゃないと、あの人達を纏めることも、
姉上に付き纏う事も出来ないか・・・
しみじみとそう思っていると、近藤が言葉を続けた。
「で?総悟に何か用なのかな?」
その質問に、新八も自分がここまで来た理由を思い出し、胸元に抱えていた
紙袋に視線を落とした。
「えぇ。あの・・・コレ、昨日沖田さんがウチに持って来たんで、
返そうと思って・・・」
「そうか。なら俺から返しておこうか?」
親切心からそう思い提案してみた近藤だったが、新八は酷く驚いた表情で
少しだけ身を引き、次に勢い良く首を横に振りだした。
「あ・・・あの、新八君?」
「い、いいです!!あ、あの・・近藤さんの手を煩わせる程でも
ありませんし!」
思わず手を差し伸べる近藤に、新八は更に下がると、紙袋をぎゅっと
抱き締め、焦ったようにそう言い放った。
その行動に、近藤は少し首を傾げる。
「いや、返すぐらい何ともないんだけど・・・ってか新八君、
顔、真っ赤なんだけど、大丈夫?」
そう聞くと、今度は凄い勢いで首を縦に振り出した。
なんか見てると首がもげてゴロリといきそうで怖い。
近藤は再度新八の名前を呼ぶと、漸く首の振りを止めてくれた。
「大丈夫です!!全然大丈夫ですから!!
ってか今日は暑いですね~」
「??そうか?今日はそんなでもないような気が・・・」
「暑いです!!!」
「・・そ、そうだ・・・ね?」
必死にそう言い募る新八に、近藤も思わず頷く。
そして二人の間に沈黙が下り、気まずい雰囲気が流れた。
・・・さぁこの後どうしよう。
そんな事を必死に考え始めた二人に、
のんびりとした声が屯所内から掛けられた。
「あれ?何やってんですかィ、二人して」
掛けられた声に振り返れば、ソコには待ち望んだ姿があって。
「あ、総悟、丁度良かった。今新八君が・・・」
「こんなモン置いてくんじゃねぇよ、
この真性サドォォォ!」
ホッとした近藤が言い終わる前に、新八の怒鳴り声が走り、
序に沖田の元へと紙袋が投げつけられた。
それを片手で軽々とキャッチする沖田。
ニヤリと笑みを浮かべると、手にした紙袋を軽く振った。
「なんでィ、もう返しに来たのか?もっとじっくり
使ってくれても良かったんだけどねィ」
「アンタが勝手に置いてったんでしょ!!
何なんですか、姉上に僕の殺人要請でも
出したいんですか、アンタは!!
ってか使うって何に!!?」
「親友からのちょっとした贈り物ですぜィ?
有難く使っときな。
それに殺人要請だなんて酷いでさァ、俺はただ序に
スリル・ショック・ア~ンドサスペンスも贈ろうかと・・・」
「だから何にだよぉぉぉ!!!
ってかそれが既に殺人要請だから!
そんな三段構えが来たら確実に逝っちゃうから、僕!!」
「おいおい、こんなトコでそんな事大声で言うなィ。
意外とオープンな性格だったんだねィ、新八は」
「そんな風に受け止めるなぁぁぁ!!!
アンタの思考がオープンすぎるわ!!」
怒鳴る新八と、楽しそうに言葉を返す沖田。
そんな二人を見て、近藤はカクリと首を傾げた。
「えっと・・・総悟?一体新八君に何を貸したんだ?」
そう問い掛けると、凄い勢いで新八が 僕は借りてません!!と
言って来たので、近藤は慌てて訂正した。
「あぁ、そうだったね。で、何を新八君のトコに置いてったんだ?」
近しい人程、沖田の悪戯は凄いものになる。
その上新八の怒り具合も相当なものだ。
近藤は、少しだけイヤな汗をかきながら沖田に問い掛ける。
すると・・・
「大したもんじゃありやせん。単なるエロ本でさァ」
と、呆気らかんとした顔で答えてくれた。
その答えに、ホッと胸を撫で下ろす近藤。
想像していたような殺傷能力やトラウマが残るようなものでなかった事に
安心したのだ。
「なんだ、単なるエロ本かぁ。なら別に大丈夫・・・って
えぇぇえええ!!!?
ちょ、総悟君んん!?何貸してんの・・・ってか
何で持ってんのぉぉ!!!」
そう叫び、勢い良く沖田の持っていた紙袋を取り上げた。
「こう言うのはまだ二人には早いです!
見ても買ってもいけませんんん!!!」
「だから僕は見てませんし買ってもないですって!
そんなの買うぐらいなら、食費に回します!!」
「俺だって別に買ってはねぇでさァ。偶々山崎のトコの
押入れの奥にあったのが目に入っただけでィ」
「それどんな偶々!!?
ってかアレ、山崎さんのなんだ・・・」
へ~。と言いつつ、新八の視線の温度が低くなってるのに気付き、
近藤は心の中でそっと山崎を哀れんだ。
多分、これで暫くの間冷たい視線を送られる事になるだろう。
悪戯したのは総悟だが、持ち主の山崎も新八の中では同罪らしい。
ってかあぁ言ってみたものの、新八君の思考はそれでいいのか?
総悟の扱いも、それで合ってんのか?
年頃の男の子として正しいのか??
そうは思うものの、やはり早いものは早い。
近藤はそう思い、持っていた紙袋で軽く二人の頭を叩いた。
「兎に角!こう言うものはまだ早いの!
お父さんは許しませんからね!!」
鼻息荒くそう言うと、沖田と新八は少しだけ肩を落とし、
しゅんとした雰囲気で謝罪と了解したことを告げてきた。
それを聞き、近藤は よし。と重々しく頷くが、
ちらりと視線を合わせ、照れ臭そうに笑みを交わす二人を見て、
思わずやんわりと口元を上げたのだった。
「ちなみにその中には近藤さんのも入ってるんですけどねィ」
「え!?そうなんですか!!?」
「おぉ、一見清純そうに見えて一番ギリギリなのがそうですぜィ?」
「え!?ちょ、待って総悟・・・ってえぇぇぇ!!?
うっそぉぉぉぉ!!!!何でぇぇぇ!!?」
「いや~、偶々近藤さんの机の引き出しの二重底で
見つけやしてねィ」
「だからそれどんな偶々ぁぁ!!!?」
「・・・近藤さん・・・暫く本気でウチにも姐上にも近付かないで下さい」
「え?あれ?なんでそんな冷めた視線!!?
違うから。そう言う意味で使ってた訳じゃないからぁぁぁ!!!」
「だから何に使うってんだよコノヤロー!!!!」
*******************************
お父さん近藤な話を書こうとしたら、こんなグダグダに(泣)
全ては風邪のせいと言う事にしといて下さいι
・・・咳、辛いっす(涙)
今日も今日とて、飽きると言うか懲りると言う言葉を知らない
近藤が妙にストーカーし、ボコられた。
いや、もうこれはボコられるとか可愛いものじゃないだろう。
新八は妙に倒され、意識を失った近藤を縁側まで引きずり、
横にさせた所で一つ息を吐いた。
既に真選組には連絡してあるし・・・と、新八は前もって用意していた
救急箱を開け、簡単ではあるが近藤の治療を始めた。
そして粗方治療し終えた所で、近藤の隊服の肩口が破れている事に
気付く。
新八は一瞬考えるが、直ぐに救急箱を仕舞うと、今度は裁縫道具を
探しに家の中へと足を向けた。
幸い、妙は近藤を沈めた後、友人と約束があるから・・・と
出掛けてしまった。
最初の内は、意識を失くした近藤を家の中へ入れるのでさえ
妙は拒否したのだ。
しかし、家の前で人が倒れているのも外聞が悪い。
新八がそう言うと、
「なら、今度からはもう少し飛距離を伸ばすことにするわ」
とにっこり微笑まれたのだが、それはそれで困る。
ウチから飛んできた・・・と
丁寧にも届けられたらどうするのだ。
結局、新八の説得により、意識のなくなった近藤は速やかに
家の中へと引きずり込む事となった。
勝手知ったる我が家だ。
何かあっても後処理しやすい。
で、まさかそのまま放置しとく気にもなれず、毎度新八が
こうして手当てをしていたりする。
ちなみにすぐに無くなる消毒液や包帯等は、月一で真選組から
届けられているので、妙も文句は言わない。
新八はこれも手当ての序だ・・・と、持って来た裁縫道具を置くと、
近藤の上着を脱がせた。
自分よりも大きい、しかも意識の無い人間の服を脱がすのは
結構重労働だったが、なんとか無事に脱がす事が出来た。
でも、着るのは流石に自分でやって貰おう。
新八はそう決めると、針を手にし、チクチクと慣れた手つきで
破れた部分を縫い始めた。
「よし、出来た!」
縫い終わった隊服を掲げ、新八はざっと確認の目を通した。
そして出来栄えに満足すると、掲げていた服を畳もうとし、
はたとその手を止めた。
基本、新八の着る物は着物だ、あまり洋装には縁がない。
そのせいか、少しだけ目の前のモノに興味が沸いてしまう。
しかも一般の人には縁のない真選組の隊服だ。
チラリと新八は近藤に目をやり、まだ目が覚めていない事を
確認すると、コソコソと手にしていた上着に腕を通した。
「ふ~ん、こんな感じなんだ~」
立ち上がり、羽織った上着にキョロキョロと視線を向ける。
体格のせいか、上着と言うよりちょっとした外套のようだ。
新八はプラプラと手を振ってみる。
袖も長すぎて、指がチョコンと見えるぐらいだ。
「おっきぃな~」
「ですねィ、まるで上着が立ってるみたいだぜィ?」
ポツリと呟いた独り言に、突然横から声が入ってきて、新八は
ビクリと背筋を伸ばした。
「まさか新八が局長の座を狙ってたとは・・・中々の野心家でィ」
「お、沖田さん!!」
振り向けば、ソコには近藤を迎えに来たらしい沖田の姿が。
新八は慌てて上着を脱ぐと、恥ずかしそうに腕に抱え込んだ。
「こ、これはただ洋装ってのに興味があっただけで・・・」
「おいおい、局長の座はそのおまけですかィ。
まぁ最近の菓子もおまけの方が本命とも言えやすし、実際俺としても
副長の座は土方さんの命のおまけみてぇなもんで・・・」
「いや違いますから!
ってかそれで言ったら土方さんの命、
メッチャ軽い扱いなんですけどぉぉ!!」
新八の突っ込みに、そうですかィ?と沖田は飄々と答えると、
近藤が横になっている縁側へと腰を降ろした。
「でも、意外と似合ってましたぜィ、その服。
まぁ埋もれてたみてぇだけどな」
「うっさいですよ。仕方ないじゃないですか、
近藤さん、おっきいんだから!」
新八が口を尖らせて言い返すと、沖田はニヤリと口元を上げ、
「新八が小さいからじゃねぇのかィ?」
と楽しそうに問い掛けてきた。それにムッとする新八。
「なら沖田さんも着てみてくださいよ」
いかにおっきいか判りますから!そう言って新八は抱えていた服を
沖田へと差し出した。
それに一瞬、沖田は身を引いた。新八はそれを見逃さず、
ニンマリと口元を上げる。
「あれ?沖田さんも埋もれちゃいそうでイヤなんですか?」
「っんな訳あるかィ!おら、寄越しやがれ!!」
先程とは違い、楽しげな新八に沖田は口を曲げると縁側へと
上がり、自分の上着を脱ぎ捨てた。
そしてそれを新八に渡すと、代わりに近藤の服を羽織る。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・言っとくが、さっきの新八よりはマシってもんでィ」
ポソリと呟かれた沖田の言葉に、新八も渋々納得する。
納得するが、やはり沖田にも近藤の服は大きすぎて
手の甲が半分ほど隠れている。
「やっぱりおっきいですね~、近藤さん」
思わずと言った感じで出てしまった新八の言葉に、沖田は小さく
鼻を鳴らす。
「俺等は成長期だぜィ?後は縮むしかねぇんだから
今ぐらい夢見させといてやらねぇとねィ」
「それもそうですよね」
「それよか新八、俺の服着てみなせェ。近藤さんのよりは
幾分マシだぜィ?」
「いいんですか?」
新八の問い掛けに、まぁそれでも大きいとは思うがねィ。と笑って
沖田が答えた。
それに少しムッとするが、新八はイソイソと手にしていた沖田の
上着に腕を通した。
「あ、なんか上着って感じです」
先程の近藤の時とは違い、少しはまともに着れていると思う。
新八は、今度は手の甲まで隠している袖をプラプラと振った。
「おぅ、ちょっとはさまになってんじゃねぇかィ。
もう何年かしたら丁度良くなりそうだねィ」
「何年か・・・じゃなくても近いうちに丁度良くなってみせますよ」
沖田の言葉に、新八は反論しながらも照れ臭そうに微笑んだ。
それに沖田は自分の手の甲を隠している袖を上げながら、
ふふんと笑った。
「俺もでさァ。こんなん軽~く着こなしてみせやすぜィ。
なんてったって俺等、発情期真っ最中だからねィ」
「そうそう、発情期舐めんなっ・・
ておぉぉぉぃいいい!!!!
違いますから!そこ、全然違いますからぁぁぁ!!!!」
「なんでィ、別にソコまで違っちゃいねぇだろうよ。
成長期の年代=発情期真っ最中ですぜィ?」
「その生々しい図式やめて下さい!!
も~、なんでそんな話になるんですか~!!」
「それは俺等が
発情期真っ最中な証拠でィ」
「うっせぇよ!!!!」
真っ赤になって怒鳴る新八に、沖田はしれっとした表情で答える。
会話の内容はアレだが、二人の格好はどちらも大きい服に身を沈めている
状態で・・・
さて、どのタイミングで起きようか。
二人の子供らしい行動を、薄目ながらもどこか穏やかな視線で
覗っていた近藤は、少しだけ苦笑した。
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近藤さんはお父さん(笑)
上のヤツラに呼び出された帰り、偶には歩こう・・・と近藤が言い、共に
歩いていた土方であったが、とある公園の所まで来て、その足が止まった。
「またアイツラ・・・っ!」
「ん?どうした、トシ」
剣呑な表情で公園内を見詰める土方に、隣を歩いていた近藤も止まる。
そして土方の視線を追っていけば・・・
「あぁ、また派手にやってるなぁ」
土方の表情の原因を見つけてしまい、思わず苦笑する。
二人の視線の先、そこには怒鳴り声を撒き散らしながら、大暴れという言葉が
可愛く思えてしまう程の乱闘をしている見慣れた二人、神楽と沖田。
そしてそれを少し離れた所で見守っている新八の姿が。
「ったく、何やってやがんだ、アイツラは!!」
大体総悟は巡察の時間じゃなかったのか!?と息を荒くして公園内へと
入っていく土方に、近藤も続いた。
どうやら公園内にはその三人以外いないようだ。
ざっと見渡し、被害状況を確認する。
すると、人の気配に気付いたのか、それまで見守っていた新八がクルリと
顔を向け、次に慌てたようにこちらへと小走りに寄って来た。
「あ、すみません!今ここに入ってくると危なっ!!」
どうやら新八は、ただ見守っていただけではなく、被害を大きく
しない為に地道に頑張っていたらしい。
・・・が、何かに足を取られたようで、途中で盛大に転んでしまった。
近藤と土方は足を早め、新八の元へと急いだ。
「いてててて・・・あ、危ないですから・・・て、近藤さんと土方さん」
なら大丈夫か~。慌てて顔を上げ、ずり落ちた眼鏡を掛け直しながら
そう注意する新八であったが、入ってきたのが見知った人物だった為、
ほ~っと肩の力を抜いた。
「おい、大丈夫かよ」
そう言って倒れこんでいる新八を見れば、何故かそこには浅いものではあるが穴が
空いていて、一瞬土方の眉が顰められる。
ここの設備はどうなってんだ。と、公園に相応しくないその穴を見詰めるが、
直ぐにその原因に思い当たり、同じように自分の転んだ原因を
見ていた新八と共に、深い息を吐いた。
近藤はそんな二人に苦笑すると、未だ倒れこんでいる新八へと手を伸ばす。
「新八君も大変だな」
近藤の言葉に、乾いた笑いを返しながら手を借りようとした新八だったが、
その手は空振りへと終わってしまう。
新八が不思議に思う暇も無く、近藤は新八の脇へと両手を差し入れると、
そのまま軽々と抱き上げてしまった。
「・・・へ?」
「怪我はないかい?」
まるで子供のように新八を抱き上げたまま問い掛けてくる近藤に、
新八は目を丸くしながらも コクンと頷いた。
そして何時もとは全く違う視界に漸く自分が置かれている状態に
気付き、顔を赤らめながら慌てて手足をバタつかせた。
それを不思議そうに見る近藤に、土方は一つ息を吐くと、軽く近藤の肩を
叩いた。
「近藤さん・・・いいからもう降ろしてやれ」
「ん?あぁ、そうか。」
はい、悪かったね。そう言って笑い、静かに新八をその場に立たせた。
「いえ、そんな・・・えっと、有難うございます」
それに恥ずかしそうにしながらも、きちんと頭を下げる新八。
その後ろで あ~!! と言う神楽のおおきな声が響いた。
何時の間に戦闘が終了したのだろうか、見れば神楽と沖田の二人が
こちらへと走り寄って来ていた。
「ずるいネ、新八!!私も高い高いして欲しいヨ!!」
「俺も土方さんに他界、他界して欲しいでさァ」
「おい、ちょっと待て総悟。
なんか字面に妙な呪いを感じるんだが?」
「はい、土方さん、他界、他界~」
「手を俺の首に
伸ばすんじゃねぇぇぇえ!!!!!
何ソレ、締める気満々じゃねぇかぁぁぁぁ!!!」
両手を伸ばしてくる沖田を振り払い、刀へと手を伸ばす土方。
それを諌めようと近藤が声を掛けようとした時、不意に目の前に
神楽が姿を現した。
そして近藤へと両手を伸ばしてくる。
近藤は困ったようにちらりと土方達へと視線を飛ばすと、
既にそこには新八の姿があり、二人の間に入ってくれているようだった。
安心していると、焦れた様に神楽が手を振りながら近藤の名を呼ぶ。
「早くするネ、ゴリ。女の誘いを断るもんじゃねーヨ」
「ってゴリって名前じゃないからね!?と言うか女の子が
そう言う事言っちゃダメでしょうが!!」
そう言いながらも仕方ない・・・と神楽の両脇に手を入れ、
先程の新八の様に高く抱き上げる。
「お~!!凄いネ、視線が高いヨ!!人がまるでゴミのようネ!!」
「いや、そこまで高くないからね」
神楽の喜びようをやんわりと笑って見詰めていると、喧嘩が終わったのか
憮然とした土方と、飄々とした沖田、それに苦笑を浮かべた新八が
直ぐ傍へと来ていた。
「すみません、近藤さん」
「いやいや、これくらい軽いもんだよ。
なんなら新八クンももう一回するかい?」
そう聞くと新八は頬を微かに染めながら一瞬止まり、慌てて首を横に振った。
だが、少しだけ空いたその間に、近藤はクスリと笑みを深める。
「さすが近藤さん、伊達にゴリラの称号を持ってないでさァ。」
「いや、ゴリラじゃないからね。そんな称号、持ってないから。
ってか貰っても嬉しくないから、そんな称号!!」
「でも本当、力ありますよね。僕だって軽々でしたもん」
未だ降りようとしない神楽を抱き上げたままの近藤を、
新八と沖田は感心した目で見詰め、小さく頷いた。
「全く、土方さんには出来ない芸当でさァ
マヨネーズを最後の最後まで搾り出すぐらいしか力、ねぇからねィ」
「あぁ?んだとコラ、マヨパワー舐めんなよ?」
沖田の言葉に、土方はヒクリと頬を引き攣らせると オラ、こっち来い!! と
神楽へと手を伸ばした。
その手を神楽は一瞬見たものの、直ぐにフイッと顔を逸らす。
「やぁヨ。ゴリの方が背が高いネ。そっちに行ったら低くなるヨ」
「おいおい見たかィ、新八。思いっきり振られてまさァ。
しかも相手はあのチャイナだぜィ。女っ気ないと思ってたら
そう言う趣味だったなんて・・・俺は恥ずかしくって見てらんねぇでさァ
目の前から速やかに消えてくれよ、土方コノヤロー」
「おいぃぃぃ!!!!何いい加減な事言ってやがんだぁぁ!!!!
ってか近藤さんも何気に距離を置くんじゃねぇよ!!!
今までの会話、
聞こえてましたかぁぁぁ!!!?
大体テメーが言い出した事だろうが!総悟!!」
ギロッと新八の肩に凭れ、こちらをニヤニヤと見詰めている沖田に
そう怒鳴るが、言われた方は何処吹く風。
軽く肩を竦めると、
「俺は何にも言ってねぇですぜィ。土方さんが自主的に
チャイナの体に手を伸ばしただけでさァ」
やらしい男でさァ、ねぇ?と、隣の新八へと同意を求めた。
それに新八は乾いた笑いしか返せない。
土方は少しの間怒りに体を震わせていたが、これ以上何を言っても
自分がムカツクだけだ・・・と悟り、大きく息を吸い込んだ。
「ま、でもアレだな。俺は兎も角、お前には無理そうだな」
あれは。そう言ってクイッと顎で未だに神楽を抱き上げている
近藤を示す。
それに沖田は深く息を吐き、頭を緩く振ると、
「当たり前でさァ。俺は抱き上げるより
跪かせる方が得意なんでねィ。」
と告げ、ニヤリと口元を上げた。
「その発言の方がよっぽどやらしいんですけどぉぉぉぉ!!!」
何得意げに言ってんのぉぉ!!?思わず土方がそう怒鳴るが、
「あ、近藤さん、もう一回新八を上げて下せィ」
あっさりと無視され、沖田は新八を連れて近藤の元へと行ってしまった。
それに焦ったのは新八。
捕まれた手を振り払おうと、懸命に振る。
「ちょ!僕はいいですって!!」
なんで僕なんですか!!と、恥ずかしさから頬を赤くして言う新八に、
沖田は再びニヤリと笑いを零す。
「何言ってんでィ。実はちょっとやって貰いたかっただろ?
素直になんなせィ。それで羞恥に悶えまくれィ」
そう言って神楽を降ろした近藤の前へと新八を押し出す。
「何その一方的なプレイ!!!
第一近藤さんも疲れますって!」
「いや、大丈夫だよ?」
はい、おいで~。とにこやかに笑って新八へと手を差し出す近藤。
その姿に、神楽が感嘆の息を零す。
「おぉ~さすがゴリネ。空気読んでるアル」
「いや、読んでねぇよ。
全然読めてねぇよぉぉぉお!!!
ちょ、本当マジでいいですからぁぁぁぁあ!!!!」
逃げようとするが後ろからがっちりと沖田が肩を捕まえており、
身動きできない。
それに近藤が明るい笑い声を上げ、そのまま抱き上げた。
「ぎゃぁぁぁぁあ!!!お、降ろしてくださいぃぃい!!」
「ははは、新八君は遠慮深いなぁ」
「さすが近藤さん、小娘一人上げられなかったどっかのヤローとは
違いまさァ」
「まだ言うか、このクソガキ!!おい、新八!
ちょっとこっち来い!」
「い、いやですぅぅぅぅぅ!!!!」
沖田の言葉に土方が青筋を立て、今度は新八へと手を伸ばすが、
新八は恥ずかしさのあまりそれ所ではない。
涙目になりながら、必死に頭を振った。
それを見、沖田と神楽がコソコソと話し出す。
「おい、見たかィ、チャイナ。あのヤロー、今度は新八狙いでさァ。」
「本当ネ、子供の敵ヨ。暫く私に近付かないで」
「って丸っきり聞こえまくってんですけどぉぉぉお!!!?」
違うって言ってんだろうがぁあ!!と、土方はとうとう刀を抜き、
沖田に向き合うが、それよりも一瞬先に沖田と神楽が走り出す。
「とうとう力に訴えてきやがったぜィ。
タスケテ~、穢サレルゥゥゥウ」
「大人って汚いネ!獣ヨ~!!!」
「ちょ、テメー等ぁぁぁぁ!!!
滅多な事言ってんじゃねよ!!!!!
頼むから口を噤めぇぇぇぇ!!!!!」
始まってしまった壮絶な追いかけっこを、近藤は新八を抱き上げたまま
微笑ましげに見詰めた。
「うんうん、仲が良いってのはいい事だなぁ」
「・・・近藤さんってホント、色々と大らかですよね」
「いや~、そうかなぁ~」
「・・・ってかそろそろ降ろしてください」
「ん?もういいのかい?」
「はい、本当にいいです」
新八の妙に力強い言葉に、近藤は笑って手を降ろすと、そのまま
新八の頭をくしゃりと撫でた。
「こんな事なら何時でも言ってくれ、お安い御用だから」
そう言って柔らかい笑みを浮かべる近藤に、新八は恥ずかしさと
照れ臭さが混じった微妙な顔を浮かべる。
確かに、ちょっと子供の時の事を思い出して嬉しかったりもした。
いい人だな~。とも思う。
けどやっぱり・・・
「なら近藤さん、今度は沖田さんにしてあげて下さいよ。
僕や神楽ちゃんだけだとズルイでしょ?」
恥ずかしかったんだぞ、コノヤロー!!!
と、沖田にも同じ思いをして貰うことにした。
ニッコリと笑ってそう言えば、近藤はポンと手を叩き、
「あぁ、そう言えばそうだな。おーい、総悟~」
と言って、未だ追いかけっこを続けている沖田達へと手招きした。
―――――沖田の珍しい声が園内に響き渡るまで、後少し・・・
********************
近藤さんは子煩悩そうですv
「お、今日はチャイナも居やがるのかィ」
何時ものように花畑へと飛ばされた近藤を迎えに行くと、
新八と共に神楽の姿も見つけ、沖田はケッと鼻を鳴らした。
「おぅ、居てさしあげてるネ。それよりサド、ちょっと来るヨロシ」
何時もならすぐ乱闘へと入る二人であったが、神楽には
それよりも興味があるものがあるらしく、ゆっくり歩いてくる
沖田を手招きした。
沖田は訝しげに眉を顰めるものの、近藤が寝ている場所が神楽達の
傍な為、案外素直に近付いていく。
そして なんでィ。 と縁側に座っている神楽達に問い掛けた。
すると、些か興奮気味な神楽に
「足、見せるヨロシ」
と手を差し出された。
その言葉に沖田は一瞬眉を上げるものの、直ぐに片足を上げ、縁側へと
勢い良く乗せる。
「おらよ、特別に許可してやるから
存分に舐めやがれ」
「いや、違うでしょ。見せてって言っただけだよね!?
なんでソコに直結?」
「そうネ!革靴は非常食ヨ!!
さっき朝ごはん食べたからまだいいネ!!!」
「いやそう言う問題でもないからね!?
ってか神楽ちゃん、何時代の人ぉぉぉ!!!?」
つかアンタも土足で上がらない!!そう新八に言われ、沖田は渋々足を
降ろし、腕を組んだ。
「てかなんなんでィ、一体」
先程自分が着けた足跡を手で払っている新八に問い掛けると、
代わりに神楽が答えを返した。
「足ネ、足!!これ見るヨロシ」
「いでっ!!!!」
そう言い、膝立ちになっている新八の足を掴み、勢い良く上げた。
お陰で新八はバランスを崩し、尻餅を着いたのだがお構いなしだ。
沖田は言われた通り神楽の手に掴み上げられ、袴の裾から出てしまっている
新八の足へと視線を下ろした。
・・・が、別に普通の足だ。
訳が判らず首を傾げると、神楽が苛々した様子で今度は寝ている近藤を
指差した。
「ほら、全然別物ヨ」
お前のもこうか?興味津々に問い掛けられ、漸く沖田は神楽言いたい事を
理解した。
横たわっている近藤は、今日は足にも攻撃を受けたのか膝辺りまで
ズボンの裾をたくし上げられていて、脛が丸見えだ。
そして今足を掴み上げられている新八も、同じように脛が丸見えである。
・・・まぁ決定的な違いはあるのだが。
「ってか本当に薄いねィ、新八は」
「ってそれ以上上げるなぁぁぁぁあ!!!!
何が見たいんですか!?
って言うか何を見たいんですか!?」
神楽ちゃんも離して!!そう言うと、新八は同じように掴み上げようとした
沖田の手を払いのけ、序に神楽の手からも逃げ出す。
そして袴を正すと、確りとその場に正座してしまった。
それに舌打ちする神楽と沖田。
新八は二人をギロリと睨むと、そのままの体勢でズリズリと近藤の横へと
移動した。
「でも本当、凄いんですよね~」
そう言って近藤の脛を珍しげに見詰める。
神楽も うんうん と頷き、新八の隣へと移動する。
「銀ちゃんよりも凄いネ」
「まぁ旦那は銀髪ですしねィ、目立たないってのもあるでしょうが・・・
ってあぁ、そう言えば旦那はあっちの方も・・・」
「それ以上は色々引く人が居るから慎んでください。
ってか本当好きだな、この手の話題」
「全会話伏字な勢いで好きでさァ」
「いや、威張るもんでも断言する事でも
ないですからね、それ」
同じように近寄ってきた沖田に一瞥をくれ、新八は一つ息を吐いた。
「・・・にしても・・・凄いな~」
そう言って新八は徐に近藤の脛に手を当て、クルクルと回しだす。
「あ、蟻んこできた」
パッと手を離し、出来た物体にポツリと呟くと、それを見ていた他の二人も
徐に近藤の脛へと手を伸ばした。
「・・・えらく簡単に出来るもんだねィ」
クルクルクル
「おぉ!本当に蟻みたいネ」
クルクルクル
「どんどん出来るね~」
クルクルクルクル・・・
「ん・・・」
どれくらい気を失っていたのか、漸く近藤が花畑から帰還した。
そしてゆっくりと体を起こす・・・と。
「・・・何やってんの?」
「「「蟻んこ作り」」」
目に入ったのは、自分の足を熱心に摩っている子供三人。
無言でやっているあたり、ちょっと不気味だ。
「えっと・・・面白い・・・のかな?」
返って来た言葉に首を傾げ、訳が判らないままそう問い掛けると
視線も寄越さないままコクリと頷かれた。
クルクルクルクル・・・
「そう・・ですか・・・」
それ以上言葉が続かず、近藤はとりあえず急ぐ仕事は無かった筈・・・と
後ろ手を着き、熱心な子供三人を眺め、困ったように口元を緩めた。
「うわっ!見るネ、これ!!蟻んこ大量発生ヨ!!」
「何言ってんでィ、こちとらきっちり二列縦隊でさァ!!」
「いっぱい出来たね~」
「「「・・・・・・・気持ち悪っ」」」
「え・・・えぇぇぇええええ!!!!!??」
その日、近藤は肉体的痛みとは違う痛みで涙した。
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この後グラとパチは坂田でも試します。
でも色的に楽しくないので、すぐ飽きます。
・・・坂田、ちょっとショック(笑)
「毎度ぉ~、回収に来ましたぜィ」
ある日の早朝、何時ものように志村家から局長回収要請が
入り、沖田は通い慣れてしまった門を潜った。
そしてそのまま、直接近藤が居るであろう庭へとまわると、
何時もとほんの少しだけ違う光景が
沖田の目に入ってきた。
「あ、沖田さん、お早うございます」
沖田に気付いた新八が視線を上げ、挨拶をしてくる。
それに沖田は軽く手を上げて答えると、縁側で横たわっている
近藤と、その横に座り込んでいる新八の元へと足を進めた。
「で、なにやってんでィ」
アンタは。そう言って近藤の頭が置かれている近くへと腰を降ろすと、
先程少しだけ気になった事を新八に問い掛けた。
そう、何時もなら新八は近藤を縁側に寝かせ、ある程度の手当てを
するとそのままにし、家の用事を済ませているのだ。
朝と言うのは色々と忙しいらしい。
なのに今日はそれもせず、どうしてだか近藤の顔をじっと
覗き込んでいたのだ。
もしかしていつもよりこっ酷くヤられたのだろうか。
いやいや、でもそれだと多分回収要請は来ないだろう。
色々と遅すぎるから。
なら、既に家事は終わったのだろうか?
不思議に思っていると、今度は沖田の顔をじっと見詰めてくるではないか。
ますます首を傾げていると、新八が漸くポツリと声を出した。
「沖田さん・・・失礼ですが髭って生えます?」
「・・・・へ?」
突然何を言い出すのだろう・・・と、珍しくも沖田が目を丸くしていると、
再度新八から 髭です、髭。 と問い掛けられた。
沖田は思わず顎に手を当て、視線を上げた。
「・・・まぁボチボチって所でィ」
剃り残しでもありましたかィ。と、
本当はそんなでもないのだが、少しだけ見栄を張ってそう答える。
すると新八は そっか~。 と大きく息を吐いて肩を落とした。
「・・・僕、まだ生えてこないんですよね~」
「まぁそんな感じだねィ」
「沖田さんも同じようなものだと思ってたのに・・・」
「お、失礼な事いいやがるねィ。なんなら見るかィ?」
「いやソコじゃねぇよ。
なんでベルト外そうとしてんだよ」
近藤の手当てに使ったのであろう、少し赤いものが滲んでるタオルを
投げつけられるが、沖田は軽く体を反らしてそれを上手に掴んだ。
それに少しだけ口を尖らしながらも、新八は再び視線を落とす。
視線の先は近藤の顔・・・と言うか髭。
「・・・やっぱり体毛が濃いと髭も生えやすいのかな?」
そう言って近藤の顎鬚を軽く引っ張った。
それにつられ、沖田も近藤の顎鬚へと視線を落とす。
「まぁ確かに近藤さんは濃さを超えた次元ですけどねィ」
そう言い、ツン と同じように顎鬚を引っ張る。
「どんな次元の濃さなんですか、それ」
ツン
「ある意味必見でさァ」
ツン ツン
「いや、見たくないですからね」
ツン ツン ツン
「ちなみに一日でも剃らないとゴリラそのものになりまさァ」
ツン ツン ツ・・ブチッ
「「あ・・・」」
会話しつつ引っ張っていたら、何本か抜けてしまった。
思わず二人で顔を見合わせ、近藤へと視線を向けるが僅かに眉間を
寄せているものの、まだ覚醒には遠いらしい。
「・・・これぐらい屁でもないって感じですね」
「・・・まぁゴリラですからねィ」
二人はもう一度視線を合わせると、再び近藤の髭へと指を伸ばした。
先程よりもほんの少しだけ力を込めて。
「なぁ、総悟。今日は妙に顎が痛い気がするんだが・・・」
その後、目を覚ました近藤は沖田と共に志村家を後にした。
・・・が、何時もと違う痛みを顎に感じ、そっと手を当てながら
隣で運転している沖田な問い掛けた。
「顎にいいのを貰ったんじゃないですかィ?」
それにしらっと答える沖田。近藤は そうだったかな~ と今朝の
事を思い出しながら首を傾げるが、その後も普段よりも髭が薄くなっている事に
気付く事はなかったと言う。
「・・・もう少し引っこ抜いてやりゃ良かったぜィ」
「ん?なんか言ったか?総悟」
「別に?ただの独り言(人間語)でさァ」
「あれ?なんか余分なのついてない??」
「そんな事ないですぜィ(人間語)」
「え?あれ、ちょ・・・あれぇぇぇぇぇぇええ!!?」
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某様の同意も得られたので、10代組の髭話(笑)