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昼過ぎ、朝からとっつぁんに呼び出され、グダグダと長ったらしい話をされて
漸く帰って来た屯所で、見慣れた・・・しかしこの場所では見慣れない
姿を見掛けた。
「・・・なんでここに居んだぁ?」
「ん?どうしたトシ・・・って、あれ?新八君??」
ポツリと呟けば、一緒に帰って来た近藤さんもソイツに気付き、
驚きの声を上げた。
その声に、それまで廊下でウロウロと所在無げにしていた丸っこい黒頭が、
一瞬身を竦め、こちらを振り返った。
「あ、近藤さん、土方さん。えっと・・・お邪魔してます?」
そう言って軽く頭を下げる新八に、軽く手を上げながら答える。
っていやいや、違うだろう。
礼儀正しい事はいい事だが、何分ここは真選組の屯所内。
しかも隊士の部屋の前の廊下だ。
言葉としては正しいが、一般人がお邪魔して良い場所じゃない。
その事を問い質そうと、タバコを口から離そうとしたが、その前に
近藤さんが声を出した。
「むさ苦しい所で悪いね。でもなんでココに?」
俺が聞きたかった事を数十倍和らげた感じで近藤さんが問い掛けると、
新八は困ったようにチラリと傍の部屋の障子を見やり、
次に俺達の傍へと足早にやって来た。
「実はその・・・」
そう言いかけて、再びチラリと先程の部屋へと視線を飛ばす。
なんだ?あの部屋になんかあんのか?
「総悟の部屋に何か用でもあるのかい?」
新八の様子に、近藤さんも不思議そうに首を傾げ、そこに視線を向けた。
その言葉に漸く俺も、新八の気にしていた部屋が総悟の部屋だと
言う事に気がつく。
同じように視線を飛ばすが、別に変わった様子もなく静まり返っている。
訝しんでいると、新八は ちょっと・・・ と言って俺達の腕を掴み、少し先にある
曲がった所まで引っ張っていった。
そして総悟の部屋が見えない所に体を押し込むと、漸くここに居る
理由を話し出した。
どうやら先日、総悟は休みで暇だと言って新八の元へと行ったらしい。
新八の方も万事屋での家事を終えた所だったので、その暇つぶしに
付き合ったらしいのだが、途中で隊士が迎えに来たらしいのだ。
・・・で・・・
「何やってんですか!!全然暇じゃないでしょ!!!
っつうか休みでもないじゃん!!!」
「休みだっつぅたら休みでィ!ちゃんと出勤日程確認したんだからねィ。
・・・・夢の中で」
「目を覚ませぇぇぇぇえ!!!
もう、さっさと行って仕事してきて下さいよ。
ってか税金分はきっちり働きやがれ」
「あ~もうウルセェなァ。オマエは俺の母ちゃんか。
丁度いいや、母ちゃん、メシ」
「母ちゃんじゃねぇぇぇ!!!
って言うか、働かない人に食べさせるご飯はありません!!」
「んだよぉ、なら旦那はどうなんでィ?」
「・・・ソコは突っ込まないであげて下さいよ。
人間、最低限の優しさは必要ですよ?」
「だねィ。すいやせん、旦那」
「ごめんなさい、銀さん」
「って、ちょっ!アレェェェェ!!!?
なんで?なんで行き成りここで銀さんんんんん!!!?
可笑しいよね?明から可笑しいよね?コレ。
ソコで銀さんに謝る理由が全然判んないんだけどぉぉぉ!!?
って言うかその生暖かい眼差し
やめてくんないぃぃぃ!!!」
「・・・て、居たのか、あの腐れ天パ」
「居ましたよ?仕事もしないで居るから空気みたいな
存在でしたけど」
キョトンとした顔で首を傾げる新八を見て、少しだけ銀髪に同情した。
だってこの顔、めっちゃ当たり前の事言ってるって
顔なんですけどぉぉ!!
・・・まぁアレだ。色々と言いたい事があるが・・・アレだ。
ザマァミロ。
ヘッと脳裏に浮かび上がった天パを鼻で笑い、話を続ける。
とりあえず、そんな押し問答の末、万事屋から総悟を追い出したらしい。
だが、そこである事柄が頭を過ぎり、俺は頭をガシガシと掻いた。
あ~、なんて言うかよぉ・・・
そんな俺に気付かず、横で近藤さんが不思議そうに首を傾げる。
「いやでも昨日は総悟のヤツ、確か休みだったような・・・」
そうだな、近藤さんの言うとおり休みだったな。
昨日の朝の時点では。
「変更になったんだよ、それ」
深く息を吐きながらそう呟くと、目の前の新八も苦笑して
「みたいですね」
と呟いた。
「今朝山崎さんと会って、それを知りまして。
で、代わりに今日が休みだって聞いたもんですから
昨日言い過ぎちゃったお詫びと、今度こそ暇潰しに付き合おうと
思って」
「んな侘びなんざいらねぇよ。
大体確認もせずにさっさと出て行った総悟が悪ぃんだからよぉ」
ケッと煙を吐き出しながらそう呟くと、近藤さんが困ったように
眉を下げながら、まぁまぁ と肩を軽く叩いてきた。
そして新八に視線を向けると、
「で?アソコでウロウロしてたって事は、総悟は部屋に居ないのかい?」
と、問い掛けた。それに対し、新八は総悟の部屋へと視線を
飛ばして それが・・・ と口篭った。
「・・・居るには居る・・・みたいなんですけど、
出てきてくれなくて・・・」
困ったようにそう告げる新八に、俺も近藤さんも暫し呆然とする。
って事は何か?
もしかしてアレか?
拗ねて出て来ねぇのか?アイツは!!
一体何歳児のつもりだ、あのヤローは!!
打たれ弱いにも程があるだろう!!!
どうしたらいいですかね?と問い掛けてくる新八に、放っとけ と
手を振ろうとしたが、そうする前に妙に笑顔な近藤さんに阻まれた。
そして機嫌良さ気に新八を手招きすると、寄って来た新八の
耳元に口を寄せ、何事かを囁いた。
何を言われたのか知らないが、言われた新八は訝しげにすっと眉を顰める。
だが近藤さんは 大丈夫大丈夫 と、笑いながら
その背を総悟の部屋へと押した。
その勢いに、新八は何度かこちらを振り返りながらも足を進めていく。
一体何を言ったのか聞きたかったが、近藤さんは楽しそうに口元に
人差指を立てるばかり。
まぁ見てれば判るか・・・と、二人でそっと首だけを出して眺めていると、
部屋の前まで来て漸く覚悟を決めたのか、
新八が大きく息を吸ったのが判った。
そして・・・
「そ~ちゃん!!あ~そ~ぼ~!!!!」
・・・・あ?
耳に飛び込んできた言葉に、口にしていたタバコがポロリと落ちそうになる。
隣を見れば、酷く穏やかな眼差しでそれを見詰める近藤さん。
・・・いや、ない。ないだろぉ、アレは。
アンタ一体あいつ等を何歳だと認識してんだ?
てかここがドコだか判ってるのか?
仮にも対テロ組織の真選組屯所なんですけどぉぉぉぉぉ!!!?
だが、頬を赤くし、自棄気味に新八がそう叫んだ瞬間、勢いよく
総悟の部屋の障子が開けられた。
そして出てきたのはこれまた顔を赤くした総悟。
「な、何言ってやがんだこのダメガネ!!!
年を考えろってんでィ!!」
慌ててキョロキョロと辺りを見回す総悟に、俺と近藤さんはさっと身を隠した。
いや、今まで拗ねてたお前が言うな。
身を隠したままそっと聞き耳を立てていると、新八のホッとしたような声が
聞こえてくる。
「あ、本当に出てきた」
「・・・まぁここは俺の部屋ですからねィ。居りゃ出てきもしまさァ」
「今まで出てこなかった癖に・・・まぁいいや。沖田さん、昨日は
追い出しちゃったりしてすみませんでした。」
「俺ァ傷付きましたぜィ。お陰で昨日から何も手に付かず、
絶賛昼寝タイム続行中でさァ」
「日頃と何も変わらねぇよ、ソレ。
って言うか結局昨日も仕事してねぇのかよ!!!」
そこまで言って新八が大きく息を吐く音がした。
あぁ、気持ちはよく判るぜ?
俺も盛大に吐き出したくて仕方ねぇ。
特に怒りを。
「ま、それなら暇してるって事ですよね?なら今日は僕の暇潰しに
付き合って下さい」
そう言って笑う気配がした。
「なんでィ、今日と言わず大抵暇してんじゃねぇか、新八は。
それに俺は今昼寝で忙しいんだがねィ」
「ならこの間の続きの遊びで良いですよ。沖田さんが寝たきりの植物人間で、
僕がそれを看病する弟ってやつ」
「あぁ、ドキ☆密着病棟24時・麗しき兄弟の絆は
治療費なんぞじゃ千切れない!!ごっこですねィ」
「あ、お菓子あります?付き添いつつ食べるんで」
「ん~、確か山崎からかっぱらったヤツが・・・」
その会話を最後に、パシリと障子が閉められる音がして俺達は漸う
身を潜めていた場所から体を出した。
・・・てかどんな遊びをしてやがるんだ、あいつ等は。
明らかにそれ、遊びじゃねぇだろ。
大きく落とした肩に、ポンと手を乗せられる。
見ればにっこりと笑い顔の近藤さんが。
それを見て再び大きく息を吐く。
「・・・なんかすっげー疲れたぞ、俺は」
「まぁいいじゃないか。平和な証拠だろ?トシ」
「・・・・まぁな」
とりあえず、自分の休みの日はいつだったか・・・と思い浮かべつつ、
微かな笑い声のする部屋の前を通り過ぎた。
***************************
10代組は子供らしく(え?)日々遊んだらいいと思います。
今日、銀さんと買い物に出掛けたら、途中で土方さんと沖田さんに会いました。
・・・さよなら、タイムサービス。
そしてこんにちは、エア白米。
それにしても・・・と、相変わらず会えばいがみ合う二人を新八は見詰める。
・・・そんなに気が合わないなら、お互い無視すればいいのに。
そう思った僕は、以前銀さんにそう告げてみたのだけれど、
銀さん曰く、
「無視するのはいいが、無視されるのは我慢ならねぇ」
・・・との事だった。
ちなみに土方さんにも言ってみたのだけれど、全く同じ言葉が返って来た。
なんか・・・魂の双子??
とりあえず二人とも馬鹿みたいに子供だと言う事だけは
理解できたと思う、うん。
思わず溜息を吐くと、僕の隣で二人を煽ってた・・・
・・・と言うかドサクサに土方さんの悪口を言っていた沖田さんが
こちらを向いた。
「なんでィ、溜息なんか吐いて。そんなん吐いてると幸せが
集団逃走した挙句一念発起して不幸に転身、
おまけに里心がついて帰ってきちまうぜィ?」
「溜息一つでどんな悲劇!!?
ってか、吐きたくもなりますよ。今日のタイムサービス逃したら
シャレにならないですもん」
なのにあの馬鹿天パーときたら!!思わず拳を握り締めてしまうのも
仕方ないと思う。
本当、家帰って冷蔵庫を見て来いや、コラ。
そんな事してる暇ないって心底思うから、マジで。
「じゃあ先に行きゃ~いいじゃねぇか」
別に旦那と一緒じゃなきゃいけないって事ァないだろ。不思議そうに
そう言う沖田さんに、僕は曖昧に返事を返す。
「でも、その後確実にスーパーに来てくれるか判らないでしょ?
今日のはお一人様~ってのが多いんで、愚図るのを宥めすかして
漸くここまで来たんですよ?」
ま、ギリギリまで待ってダメだったら僕だけで行きますけど。
その場合、足りない分は勿論銀さんから引かせてもらう。
僕の答えを聞いて、沖田さんは納得してくれたみたいだ。
ニィッと口元を上げ、 大変だねィ。と笑った。
「本当ですよ。ここ最近仕事なくって、ギリッギリなのに。
それに構わず呑みに行くわパチンコに行くわで・・・」
地上最強のマダオなんだから。
そうぼやくと、沖田さんから いや、そうじゃねぇだろ。と言う言葉が
返って来た。
なんですか?糖尿予備軍、しかも今まさに代打で試合に出そうな勢いなのに
糖分を欲しがって、昼間っからパチンコに行って負けたのを貯金だと言い張り、
強くもないのにお酒を飲みたがるプー寸前の銀さんがマダオじゃないとでも?
・・・ま、確かに時々煌きますけどね。
時々。
そんな僕の気持ちが伝わったのか・・・と言うか多分顔に出てたんだろう。
沖田さんは 違う違う と手を振り、
「地上最強のダメ人間はウチの土方さんでさァ」
そこは譲れやせん。と言った。
「え~?そうは見えませんけど・・・目、死んでませんし」
「でも瞳孔開いてるぜィ?それにマヨ中毒・・・
てかマヨだしな。
それに仕事中毒。ま、あれでさァ。仕事がないと自分が保てねぇって
ヤツだねィ。休みんなると何していいか判らず、とりあえず書類
見る人でさァ」
「・・・それもどうかと思いますけど、
仕事しないよりいいじゃないですか」
「しっぱなしもダメでィ。いつか過労で死ぬんじゃねぇかなァ。
ってか死ぬんですけどねィ」
「って、決定かよ!!でもそれなら銀さんだってそうですよ!
あの人、この間トイレ行くのも面倒だって言って、馬鹿みたいに
行くの我慢してましたもん。仕舞にはプルプルしてましたもん。
イヤですよ、そんな死因。どんだけ怠けるのかって話ですよ!!」
「あ~、土方さんもそれと似たような事やってやしたねィ。
ここの書類が終わるまでは~!!って。見てて馬鹿みたい・・・ってか
馬鹿でさァ。思わず腹ぁ蹴っ飛ばしてやりたくなりやしたぜィ」
近藤さんに泣きつかれたんで止めやしたが。と、残念そうに呟く沖田に
新八もホッと胸を撫で下ろす。
・・・多分それをやられたら最後。侍として・・・と言うか
人として切腹したくなるだろう。
あ、でも今度同じ事してたら、
定春に乗って貰おう。
「・・・それは最終手段に残しときましょうよ。
って、それより銀さんですよ!
なんと言っても糖分!!家のは僕が管理してるんで手が出せないみたいですけど、
この間じ~っと蟻見てたんですよ、蟻!!
知ってます?蟻ってお尻のトコに蜜があるんですって。
そんな無駄知識、真剣に披露されても、真剣であればあるほど
引きますから!!!」
「いやいや、マヨも負けてませんって。一食一本ですからねィ。
しかも食前食後にも一本。
俺はマヨとタバコを買う為に働いてるようなもんだ。ってこの間
言ってやしたから、カッコつけて。馬鹿っぽかったですぜィ?
あ、見るか?ムービー撮ったから、そん時」
ほら、これ。と言って沖田が取り出した携帯を、新八が覗き込む。
「うわ~、本当だ。・・・この場合カッコ良ければカッコいいほど
厳しいものがありますね」
「だろ~?やっぱりダメ人間は土方さんでさァ」
「いやいや、銀さんですって。だって昨日も・・・」
「いやいやいや、土方の馬鹿もこの間・・・」
「「ちょっ!もう勘弁して下さぁぁぁあいぃぃ!!!」」
その後、銀さん達が喧嘩を早めに中断してくれたお陰で
無事タイムサービスに間に合う事が出来ました。
良かった~、これで当分食事の方は安泰だ。
けど、何故か銀さんは落ち込んでしまってて、ちょっとウザかった。
なんだろ、土方さんに言い負かされたのかな?
でも、どうも土方さんも同じような感じらしく、偶然会った山崎さんが
首を捻っていた。
ちなみにその時一緒に居た沖田さんには礼を言われた。
なんでだろ?
ま、この人に説明を求めても無駄か。
とりあえず奢ってもらったお茶は美味しかったし、その後銀さんと土方さんは
会っても口喧嘩をしなくなったので、良かったかも。
でも、お互い哀愁を漂わせて視線を交わすのはやめて欲しいと思います。
「ね・・・なんなんですか、あれ。ちょっとキモイんですけど・・・」
「いやいや、あれぐらいでそんな事言ってちゃ駄目ですぜィ。
この間なんて・・・」
「あ、それを言うなら銀さんも・・・」
「「も、本当すんませんでしたぁぁああ!!!」」
********************
子供達の親自慢です(え、ちがっ!!?)
「メ~ガ~ネく~ん、あ~そび~ましょ~」
チュンチュンと小鳥の鳴き声に交じり、黒い隊服に身を包んだ沖田が
既に近藤回収の為、通い慣れた志村家の門前で声を張り上げていた。
が、返答はなく、沖田は口元に手を当て、より大きな声で呼びかけてみる。
「お~い、メ~ガ~ネく~ん。あっそび~ま・・・」
「って、誰がメガネだコラァァァァ!!!」
「なんでぃ、居るなら早く出なせィ。客は待たせるもんじゃねぇよ」
勢い良く玄関に姿を現した新八に文句を言いながら、沖田は門を潜る。
それに新八はカクリと肩を落とすと、同時に落ちた眼鏡を押し上げた。
「客ってアンタ・・・今何時だと思ってんですか」
「七時」
サラリと言ってのける沖田に、新八の肩は益々下がる。
「・・・今日は近藤さん、来てませんよ?」
「知ってますぜ?明け方近くに路上で瀕死な所を回収しやしたから」
「じゃあ何の用なんですか?」
首を傾げる新八に、沖田は大袈裟に息を吐き、肩を竦めて首を振った。
「あれだけ言ったじゃねぇですか、聞いてなかったんですかィ?」
仕方ねぇな~ と沖田は再び口元に手をやり、
「メ~ガ~ネく~ん、あっそび~ま・・・」
「声が大きいっ!ってか名前呼べよ、せめて!!」
新八は慌てて沖田の口に手をやり、声を塞いだ。
「なんでィ、アンタが聞いたから言っただけですぜ?」
「いや、大声で言わなくてもいいですよね?
僕との距離、見えてますよね?」
「ばっちり見えてまさァ。中々心躍る距離でィ」
「踊るのは心だけにしといて下さいね。て言うかまだ姉上寝てるんですから
静かにして下さいよ」
ただでさえ帰ってきた時機嫌悪かったんだから。心なしか顔色を青くし、
そう言う新八に、そりゃ~危ない。と、声を潜めた。
沖田の仕草に新八は苦笑し、再度沖田に用件を聞いた。
すると沖田はキョトンと新八を見返し、
「だから遊びに来やした」
と簡潔に答えたのだった。
「昨日ちょっとしたお遊びを土方の野郎に仕掛けたら、あのヤロー逆ギレ
しやがって、偶には健全な遊びをしやがれっ!なんて言うもんだから
実行しようと思ってよ」
とりあえずあのままでは妙が起きて来てしまう可能性が高いので、
新八は沖田を家の中へと招いた。
そしてお茶を出しながら、遊びに来た理由を聞いた所、そんな答えが帰って
来たのだった。
沖田の言葉に、新八は深く息を吐いた。
この場合、迂闊な事を言った土方を恨めばいいのか、それとも
半ば確信犯的な行動を起こし、自分を巻き込もうとしている沖田か・・・
・・・勿論後者だよね。
と言うか、きっとちょっとしたものでは済まなかったであろう目に合った
土方に同情してしまう。
ただでさえ忙しそうなのに、こうやって沖田さんに絡まれてるんだもんな、
味覚も変になるよね。
・・・って言うか・・・
「沖田さん、今日の仕事は・・・」
「子供は遊ぶのが仕事でィ」
・・・やっぱり。
予想していた答えだったが、そんなにあっさりと、しかも見目の良い笑顔で
返されると力も抜けるというもの。
新八は出て行きそうになる溜息を無理に吸い込み、腰を上げた。
「とりあえず僕、洗濯物干してきますんで」
そう言う新八に、沖田はおや?と言う顔をする。
「今日は万事屋に行かないんで?」
「えぇ、仕事もないんでお休み貰ってたんです。と言うか、僕が
仕事だったらどうするつもりだったんですか?」
新八の問い掛けに、沖田はニヤリと笑うと、
「勿論初志貫徹でさァ。言っただろ?子供は遊ぶのが仕事なんでィ」
って事でさっさと用事済ませてきなせェ。そう言い、ゴロリと畳みの上に
寝転んだ。
「僕の意思は無視かよ!」
全くもう!そう文句を言いながらも、ヒラヒラと手を振る沖田に一つ苦笑を
零すと、予定していた家事をこなす為、部屋を後にした。
「お~い、起きてますか~?」
一通り家事を済ませ、帰ってきた部屋で相変わらず寝転んでいる沖田に声を
掛ける。
すると、寝てますぜェ。と、目を瞑ったまま答えが返ってきて、新八は
屈みこんで沖田の目の前で振っていた手をパチンとその額に下ろした。
「ってぇなァ。平和主義の俺に暴力振るうとは、見かけによらず
Sだねェ」
「あんたのその発言の方が暴力的ですよ、主に精神面に。
それより起きて下さい」
遊ぶんでしょ。新八の言葉に沖田は目を開けると、屈みこんでいる新八を
見上げ、ニッと笑う。
「中々積極的だねィ、じゃあ子供らしくお医者さんごっこでも・・・」
「それ、健全でもないし
子供らしくもないですからね」
「何言ってんでぃ。そんな不健全じゃなくて、ただ純粋に人体の不思議を
内臓奥深くまで知りたいと言う、果てしなく健全且つ、
子供の純粋な知的好奇心を擽る遊びでさぁ」
「いや、それ全然健全じゃないですよね!?って言うか明らかに
死亡フラグ出てんじゃねぇかっ!!
不健全通り越して怖いわっ!!」
「なら違うお医者さんごっこ(深夜枠)で」
「おぉぉぉいっ!()の中を取れぇぇぇ!!」
叫び終わり、新八は肩を落とすと沖田の上からどき、そのまま同じように
ゴロリと畳みの上に寝転がる。
・・・朝からなんでこんなに疲れてるんだろう、僕。
「はぁ・・・で、結局どうすんですか」
そんな新八に、今度は上半身だけ起こした沖田がにじり寄り、上から
覗き込む。
「じゃあチャンパラごっこ」
「・・・アンタ、本気だすでしょ?」
出された提案に胡散臭げに見返せば、言い出した本人はニッコリといい笑顔
を浮かべた。
「遊びは本気でやるもんですぜィ?」
「やっぱりかぁぁぁ!
アンタそんなに僕を甚振りたいんですか!!」
「いやいや、そんな事ないですぜィ?怪我した後は勿論
お医者さんごっこに変更・・・」
「そっから離れてぇぇぇ!!!」
「なんでィ、新八は文句ばっか言いやがって」
「いや、当たり前ですからね?文句でもないですからね?」
ムッと口を尖らす沖田に、新八はツッコミを入れながらもなんだか可笑しくて
クスリと笑う。
だって平日なのに、サボリ確定の沖田と二人で部屋でゴロゴロして・・・
おまけに何で遊ぶか言い争って。
周囲に同年代があまり居なかっただけに、この状況は少しばかり
照れ臭い・・・が楽しい。
「まぁ、まだ時間もありますし、ゆっくり考えましょうか」
こうして考えるのも楽しいですし。ニコニコと笑う新八に、
口を尖らしていた沖田も漸く頬を緩め、
「同感でさぁ」
そう言って、年相応の笑みを浮かべた。
*******************
10代トリオが大好きです(今回神楽が居ないけどι)
買い物に来たスーパーで、新八は珍しい人物を見掛けた。
どちらかと言うと彼は駄菓子屋や公園でよく見掛けるのだが・・・
新八は不思議に思いながらも、とりあえず挨拶しようとその見知った
後姿に近付いて行った。
「こんにちは、沖田さん。」
何見てんですか?そう言って商品棚を真剣に見ている沖田に声を掛けると、
お、メガネ君。 と振り返り、新八に向けて軽く片手を上げた。
「アンタ、人の名前覚える気があるんですか」
返ってきた言葉に新八はカクリと頭を垂れるが、何時もの事と諦め、
沖田が手にしていたモノへと目を落とした。
そこには所謂消臭剤。
目の前の人物からは想像も出来なかったモノなだけに、新八は目を丸くし、
沖田とモノとの間に、数回視線を走らせた。
「別に俺が使うんじゃねぇぜェ」
感情が諸に出てしまっている新八の表情に一瞬笑みを零す沖田だったが、
直ぐにその笑みをニヤリとした黒いモノへと変貌させた。
「土方さんに使うんでさァ」
あの人ァタバコばっか吸ってるからねェ。そう言って沖田は
序にもう一本買っとくか・・・と、更にもう一つ手に取った。
「こう見えてもあんなかじゃ一番年若いんでねェ。
気を使うんでさァ」
親切気に言う沖田に、新八の目は胡散臭いものを見るように半目になっていった。
それに気付いた沖田が、 なんでィ、その目は。 と不満を口にしたので、
新八は小さく息を吐き、沖田が手にしたモノとは違うモノを指差す。
「気を使うんだったらこっちだと思うんですけど?」
指されたモノに沖田は目をやるが、緩く首を振る事でそれを否定する。
「判ってねぇなァ、新八は。ソコは黙って理解してやらねェと」
あの年頃は難しいからねィ。そう言って物凄く楽しげに手にしている
モノを見る沖田に、新八は心の中で少しだけ土方にエールを送った。
「あ、序に新八にも買ってあげまさァ」
「え?いいですよ、そんなの」
告げられた言葉に、新八は慌てて両手を振るが、沖田は構わずにもう一本
手に取ると、それらを片手に抱え、空いた手で新八の手を掴んだ。
「そんな遠慮すんねェ」
「いや、本当遠慮とかじゃなくて・・・」
「あんなでっけー犬やら酢昆布妖怪やら甘党やらが居るんでィ、
臭いだって色々混じるだろう?これだって一応消臭剤には変わりねェんだから
いいじゃねぇかィ。」
沖田の言葉に、新八は、それもそうか・・・と少しだけ納得してしまう。
その様子を見て、これ以上新八が拒否らないと踏むと、掴んだ手を
引っ張り、そのままレジへと足を向けた。
「じゃ、そう言う事で。他に買うもんはねぇですかィ?」
「あ、はい。えっと・・・有難うございます?」
とりあえず、買って貰えるとの事なので、律儀に礼を言う新八。
・・・完全に納得していないのか、少しだけ疑問系ではあったが。
沖田はそんな新八にフッと笑みを零すと、
「礼なんて、俺とオマエの仲で言いっこなしですぜィ」
「え、どんな仲!?」
「・・・昼間の時間帯にはちょっと・・・
未成年もいますし」
「おいぃぃぃ!!ホント一体どんな仲ぁぁぁぁ!!?
って言うか僕らが未成年だぁぁ!!」
「まさかこんな人の多い所でそんな事言わせようたァ。
とんだ羞恥プレイでィ」
「こっちの台詞だぁぁぁぁ!!!」
少しだけ、挨拶した時の自分を責めたい新八であった。
その日の夕方。
「・・・・・・・・・・・・・・・え、何コレ」
居間に置かれた消臭剤(加齢臭用)を見付けた銀時が、その場で一時間程
固まり、その後泣きながら新八に捨ててくれと訴えかけたという。
「勿体無いなぁ、使えるのに」
シュッ シュッ
「だから使うなって言ってんだろうがぁぁぁぁ!!!」
*******************
某CMを見て。
実際アレ使われたら、悲しいと思う(笑)
気持ちの良い青空の下、新八は公園のベンチに座ってボーッとしていた。
傍らには食材やら日常品やらが詰まったビニール袋が三つ。
今日はチェックしてたの全部買えて良かったな~。
後は帰って洗濯物寄せて、夕飯の準備して・・・
あ、そう言えば魚、大丈夫かな?・・・ま、今日はそんなに
暑くないし平気だよね、うん。
でもいい加減終わってくれないかな~。と、見据える先には、
元気に暴れまわっている二つの獣の姿が。
「その少ない脳みそぶちまけるがヨロシ!」
「テメーこそ、腹ァ掻っ捌いてその異様な食欲減退させてやるぜィ」
相手に暴言を吐きつつ、おまけに手も足も出し続ける二人。
終わりの見えない死闘に、新八は一つ息を吐いた。
「相変わらずだよね、二人とも」
てか、なんで会う度あぁなんだろう。と新八はつい先程の事を思い出す。
神楽と二人で出た買い物。
お目当ての物も買え、今日の天気の様にいい気分で家路に着いた
筈なのに、途中で沖田と出会ってしまった。
その瞬間、スーパーで酢昆布を買ってもらい、ご機嫌だった神楽の目が
据わった。
序に沖田の笑みも黒くなった。
・・・で、この有様だ。
「ま、大きな怪我をしなきゃいいんだけどね」
後、出来れば器物破損も。苦笑して新八は二人のバトルから顔を上げ、空を見た。
「あ~~~っ!!!!」
突然上がった新八の声に、死闘を繰り広げていた神楽達の手が止まる。
「どうしたネ、新八」
「なんかありやしたかィ」
何もないなら邪魔するな。と、変な所で気が合う二人の視線を余所に、
新八は目を丸くして空を見上げていた。
そしてその顔が段々と緩んでいき、
「凄い・・・ね、凄いよ、ほら」
そう言って嬉しそうに笑うと神楽達の元まで行き、見て見て。 と
興奮気味に空を指差した。
神楽達は訳が判らないまま、その指差された方向へと顔を向ける。
次の瞬間、二人とも目を丸く見開いた。
驚いた神楽達の表情に、新八の笑みがますます深まる。
「ね、凄いね~。でもなんか笑っちゃう」
三人の視線の先、そこには青い空と、『!』マークの形をした雲が一つ。
「ぅおぉぉぉぉ!!何アルカ、あれ!凄いネ、そのまんまネ!」
「・・・見事なもんだねィ、こっちがビックリでさァ」
「飛行機雲が崩れたかなんかですかね?」
「何夢のない事言ってるネ!だからオマエは何時まで経ってもダメガネ
なんだよぉ」
「ちょっ!眼鏡馬鹿にすんなコノヤロー」
「いや、馬鹿にしてんのはメガネ本人じゃなく付属の新八ですぜ?」
「付属って何!!つぅかなんでこういう時だけ意気投合してんの!!?」
お互い言葉をポンポンと交わしつつも、やっぱり視線は雲から離れず。
「「「凄いね~・・・」」」
そう呟いてケラケラと笑った。
「・・・ね、多串くん」
「誰の事を言ってやがる、このヤロー」
「オマエだよ、このヤロー。・・・じゃなくてさ、アレ、なに?」
買い物に行ったきり、中々帰ってこない二人を迎えがてら買い食いしていた
銀時と、サボっている沖田を捜索中の土方が途中で会い、
暴言を交わしながらやってきた公園で目的の人物は見つけたものの、
何故か三人で空を見上げ、笑っていたりするものだから。
「・・・なんなんだろうな」
「・・・なぁ?」
「俺に聞くなよ」
「つぅか楽しそうじゃね?」
「・・・だな」
とりあえず仲間に入れてもらおうと、探していた理由は一先ず置いて、
楽しげな子供達の下へと足早に近寄っていったのであった。
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昼間に本当に『!』の形をした雲を見て、興奮して笑いました(笑)
って言うか本当凄かった。立派な『!』だった!
だって雲が何にもないトコで、『!』のが一つだけってvv
以前ハート型のは見た事あったけど、それ以上の衝撃(笑)
でも運転中だったので写メ取れなかった、残念ι