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その日、新八は何時もの様にスーパーへと足を運んでいた。
今日は特売日なので、些かその足取りは力強い。
本当なら、荷物持ちとして銀時を誘いたい所だったのだが、知らない間に
家から姿を消していた。
・・・どうせパチンコにでも行ったのだろう。と、新八は中りをつけ、
益々その足取りを力強いものにしていった。
「あれ?新八くん??」
不意に声を掛けられ、新八は動かしていた足を止めた。
振り返れば其処には、山崎と沖田の姿が。
「そんなに勇んで、どこ行くの?」
ニコニコと笑みを浮かべながら近付いてくる山崎の言葉に、新八は微かに
頬を染めた。
「あ・・・いや、その・・・スーパーに行こうかと・・・」
そんなに勇み足でした?と、恥ずかしそうに行き先を告げると、
クスリと笑われた。
あ~、もう恥ずかしいな~!!そんなに気合・・・と言うか怒りが出てたかな?
と自分の行動を悔やんでいると、山崎が そう言えば・・・と言葉を続けた。
「明日の約束なんだけど、やっぱり家まで迎えに・・・」
と、其処まで告げ、突然目の前の山崎がぶっ倒れた。
「ぇぇえ!!?ちょ、どうしたんですか、山崎さん!!」
「あららぁ~。どうしたんでィ、新八。ザキの締りのねぇツラにムカついて
眼鏡ビームでも炸裂させたんですかィ?」
「出ねぇよ、そんなもん。
ってか、行き成り倒れてきたんですけど・・・」
どうしたんでしょう・・・と、ノラリクラリと近寄ってきた沖田と共に、
倒れている山崎の元へとしゃがみ込んで見れば・・・
「・・・なんか古典的なたんこぶがあるんですけど・・・」
山崎の後頭部に、まるで漫画に出て来るような大きなたんこぶと、
何故か近くに落ちている、不自然極まりないジュースの缶が一つ。
「いやぁ、熱中症ですかねィ」
「っておぉぉぉいっ!僕の指摘、無視ですか!!
ってか突くの止めたげてくださいよ、なんかピクピクしてますから!」
「まぁ最近暑いからねィ」
「僕の声、聞こえてますぅぅぅ!?
それより、どっからこんなのが・・・って、重っ!!!」
未だたんこぶを突いている沖田を横目に、多分山崎の頭に当たったのだろう
缶に手をやれば、それは何故かずっしり重くて・・・
「って、これ、中に砂がぎっしり詰まってるんですけど!!」
「どれどれ・・・って、あぁ」
砂の詰められた缶に思わず声を上げ、沖田へと差し出すと、受け取った
沖田は、そのまま山崎の頭の上に缶を落とした。
「ちょ、何やってんですか!!」
「汗で滑ったんでさァ。あ、ほらまた」
再び手にし、見事にたんこぶのある場所へと落とす沖田に、新八は慌てて
缶を取り戻した。
そこに、聞きなれた声が掛けられる。
「何やってんの、オマエ等」
振り返ればそこにはダルそうに後頭部を掻いている銀時の姿が。
「あ、銀さん!実は今、山崎さんの頭にコレが・・・」
倒れている山崎を上から見下ろしている銀時に、新八が状況を説明
しようと缶を差し出せば・・・
「ん?何コレ・・・・・・って、あ」
これまた見事に同じ場所へと缶を落とした。
しかも今度は落とした本人が立っているだけに、先程よりも威力があったらしい。
それまで微かだがピクピクと動いていた山崎の体が、完全に沈黙してしまった。
「アンタも落とすんかぃ!!!山崎さん!?大丈夫ですか!!?」
「いや~、暑いから汗かいててよぉ。何?どうしたの、彼。
熱中症??」
幾分青褪めながら、動かなくなった山崎を呼び掛けている新八をよそに、
銀時が沖田へと問い掛ける。
「多分そうでさァ。全く、だから日頃から体調管理には気を付けろって
言っておいたんですがねィ」
「まぁ最近暑いからねぇ。あ~、そう思ったら喉渇いてきた。
ちょっとそこのジュース取ってくんない?沖田くん」
「あぁ、これですねィ」
「それじゃねぇぇぇぇぇぇええ!!!」
はい、どーぞ。そう言って沖田が、先程から落としまくっている缶を銀時に
渡そうとし、新八は慌ててそれを奪い取った。
「何回繰り返したら気が済むんですか、アンタ等!!
それより早く山崎さんの手当てを・・・」
「大丈夫でさァ。ヤツはこれぐらいでどうにかなる様なタマじゃねェ。
きっとこのまま放置しても、太陽に照らされ続けて脱水症状を起こして
身動きできず、車に轢かれるぐらいでさァ」
「や、それ十分どうにかなってますよね?」
サラリと告げられる沖田の言葉に、新八は頬を引きつかせる。
そんな新八の頭に、ポンと銀時の手が乗せられた。
「ま、いいじゃねぇか。こいつ等がそう言うんだからよ。
熱中症なんて自己責任だしな。ほっとけほっとけ」
それよりオマエ、買い物に行くんじゃなかったのかよ?そう言われ、
新八はハッと自分の目的を思い出した。
確かに自分は買い物の為にスーパーへと向かっていたのだ。
しかも、狙っている商品の中にはタイムサービスの物も含まれていて・・・
けれど、と新八は山崎を見、そして沖田へと視線を移した。
このままこの人に任せたら、きっとさっきの言葉は
確実な未来へと確定する事だろう。
それは・・・後味悪いよね、うん。
あぁ、でもタイムサービスを逃すのも心苦しい・・・てか、
リアルに生活が苦しいし。
そんな思いが視線に現れたのであろう。沖田は一つ息を吐くと、
「安心しなせェ、完全に意識を失くしてるヤツを放置したって
面白かねぇや。きちんと連れてきまさァ」
これで今日の巡察はパーですけどねィ。ヤレヤレと首を振り、
その場から腰を上げた。
その言葉にホッと安心し、絶対ですよ。と約束させると新八も漸く
降ろしていた腰を上げる。
それを見て、銀時が じゃあ行くか。 と新八を促した。
「え、銀さん、買い物に付き合ってくれるんですか?」
てっきり逃げられると思っていた新八が驚いて銀時を見ると、
やる気なさそうに返事を返された。
それに新八の口元が緩く上げられる。
「良かった。今日買いたい物、結構あるんですよ」
「だろうな。洗剤とかシャンプーとか、もう買い溜めしといたの
なかっただろ。ちゃんと買っとかないと、姉ちゃんに怒られっぞ」
銀時の言葉に、新八が数度頷く。
「そうなんですよね~。つい忘れちゃって・・・万事屋のは
毎日使ってるからちゃんとチェックしてんですけど・・・」
と、そこまで言い、新八はアレ?と首を傾げた。
そんな新八に気付く事無く、銀時は言葉を続けた。
「ったく、ジミーの心配する暇あるなら他の事やれっての。
一昨日の朝だって、ゴリラを迎えに来た多串くんと話し込んでただろ。
なんだ、マヨとご飯の黄金比率って。
お陰で銀さん、結野アナ見逃したじゃねーか」
「はぁ・・・」
スーパーへと向かいながら、ブツブツと文句を言う銀時に、
新八の首はどんどん傾げられていく。
・・・て、確かに何時もより少し遅れたけど、そこまで詳しく
話した覚えは、新八にはない。
それ以外にも、ここぞとばかりに色々と告げられ、
新八の足取りは段々と緩くなっていく。。
そこに・・・
「ま、でもあれだな。あの分じゃ~明日の約束もなしだな」
熱中症は後引くから。と、何処か満足げに告げられ、新八の足が
とうとうピタリと止まった。
「・・・僕、明日の事銀さんに言いましたっけ?」
確かその約束した時、傍に銀時は居なかった筈・・・と、胡散臭げに
前方の銀髪を見詰めると、銀時は自分の手首へと視線を落とし、
「・・・あ、新八くん!!もうタイムサービスが始まる時間だよ!!?」
「って、時計してねぇだろうがぁぁぁぁあああ!!!」
怖っ!!!!何か怖っ!!!と、新八は未だ手に持っていた
砂のみっしり詰まった缶を、本能からの命令のまま、
その銀髪目掛けて力いっぱい放り投げたのであった。
その後、山崎同様倒れてしまった銀時を置いて、買い物へと向かった新八
であったが、行った時間が悪かったのか何品か手にする事が
出来なかった。
・・・が、夕方、漸く帰宅してきた銀時に、手に入れられなかった
商品の数々を土産と称して手渡され、本日二度目の恐怖を味わう事となる。
**************************
一万打お礼企画、第一弾。
もんちょ様からのリクエスト、
「ストーカーと化した変態銀さんと、翻弄される純粋新八クン」
と言うものでしたが・・・如何でしょうか?(ドキドキ)
なんかサドプリが出張ってて、変態坂田を書ききれなかったようなι
こんな感じになりましたが、少しでも気に入って頂けたら嬉しいです!
あ、でも返品、再リク何でもありなんで、その時は遠慮なく行って下さいませ。
企画参加、本当に有難うございましたvv
次の日、無事に元に戻った銀時と共に、神楽を迎えに行く為外に出た。
勿論手を繋いでだ。
昨日のような子供の状態ならばまだしも、本当に手を繋いで
行くとは思っていなかった銀時は、嬉しいやら恥ずかしいやらで
些か挙動不審だ。
「アンタ、普段手ぇ繋ごvv・・・なんて言ってくる割に、
実際そうなると・・・」
「バッカ!違うから、銀さんへタレとかじゃ全然ないから!!」
繋いだ手の向こうで視線を泳がせていた銀時を白けた目で
見詰めていると、大きな声でキレられた。
「いや、まだ言ってませんから。って言うか一応自覚は
あるんですね」
しかも薄っすら頬、赤いし。
「・・・ウザ。そしてキモ」
思わずぼやいてしまう新八だが、手は離さない。
銀時も、そのボヤキに文句を言いながらも、繋いだ手を離そうとせず、
歩いていく。
そこに、前から昨日の元凶である沖田が歩いてきた。
一瞬嫌な顔をする銀時だったが、向こうもこちらに気付いてしまった為、
無視する事も出来ず、そのまま向かい合う形になる。
「旦那、良かったですねィ、元に戻れて」
「沖田君、無表情ア~ンド棒読みで言うのやめてくんない?」
「いやですねィ、これでも心配してたんですぜィ?
お陰で夜も爆睡でさァ」
「いや、それ全然心配してないよね?
寧ろ安心してるよね?」
「心外ですぜ、旦那。安心なんてとんでもねェ。
たった今この瞬間まですっかり忘却の彼方でさァ」
「おいぃぃぃぃぃぃ!!
本当、反省って言葉、ドコで落としてきたのぉお!」
今すぐ拾って来い!!と怒鳴る銀時を無視し、沖田は視線を
二人の繋いでいる手へと向ける。
「所でお二人さん。昨日だけでは飽き足らず、
未だ子供プレイ続行中ですかィ?」
「沖田さん、僕までそういうカテゴリーに入れるのやめて下さい」
ニヤリと笑う沖田に、新八は心底嫌そうに答えを返す。
「ちょ、新ちゃん?なんかその言い方だと銀さんがそう言う人みたいでしょ!?」
違うからね!そう言って銀時は握っていた手に力を入れて、そのまま
沖田の目の前に掲げ上げた。
「て言うかさ~、沖田君も見て判んない?そう言うプレイも
可能なこのラブ繋ぎに」
「ってやっぱそっちの人かよ、アンタ!!」
「あ~、成る程~」
ニヤける銀時に思わず手を離そうとした新八だったが、銀時がそれを
許さず、小競り合いを始めた二人の前で、何かに納得したように
手を叩く沖田。
「お、判ってくれた?」
「えぇ、あれでしょ?老人介護プレイ。
さしずめ今は徘徊した老人を連れ戻す・・・」
「違うよね!全然判ってないよね、ソレ!
確かに共白髪まで新ちゃんとは一緒に居るけど、
まだまだ現役だから、銀さん!!」
「って確定かよ!!あ~、もう沖田さんもあんま茶化さないで下さいよ。」
面倒臭いから。そう言う新八に、沖田はへーへーと軽い返事を返す。
「・・・なんかアレだよね、昨日の状況から考えると、物凄く
酷いよね、今の状況」
新八の言葉に項垂れつつも、銀時は あっ と顔を上げた。
「そう言えば沖田君よぉ、なんであんなの新八に食わせようと
したんだよ」
昨日も聞いたが、明確な答えは得られなかった。
銀時の問い掛けに、新八もそう言えば・・・と、目の前の沖田を見詰めた。
すると沖田は あぁ と、新八を見、
「ちっさくしたかっただけでさァ」
と簡潔に答えた。
「いや、確かにそうだろうけどさ。俺も見たいけどさ。
寧ろ愛でたいけどさ。そうじゃなくて・・・」
「口を閉ざせやコノヤロー。
じゃなくて沖田さん、そうしたかった理由を・・・」
まさかアンタも見たかっただけなんてフザケタ事抜かしませんよね?
そう聞くと、沖田は心外そうに口を歪めた。
「俺と旦那を一緒にすんのはよしてくだせェ。ちゃんと
した理由がありまさァ」
そう言うと腕を組み、新八から銀時へと視線を移した。
「前にアンタ言ってたでしょ、旦那や土方さんと話していると
見上げる形になって首が疲れるって。」
沖田にそう言われ、そんな事もあったかな?と新八はカクリと首を
傾げた。
しかし、確かに長く話していると疲れる事もあるので、
新八は微かに頷いた。
「で、その時に言ったんでさァ、俺とは身長差もそんなにないから、
楽でいい・・・ってね」
「そう・・・でしたっけ?でもそれが何か・・・」
不思議そうに首を傾げる新八に、沖田はニィッと口元を上げる。
「何かも何も・・・楽だなんて言われちゃぁ、
サドの名が廃るってもんでさァ。だから小さくして
心行くままで見上げて疲労困憊して貰おうと思ったまででィ。」
立派な理由だろィ。と胸を張る沖田に、新八はガクリと肩を落とす。
「安心してください、そんな事しなくても
物凄く疲れますから、しかも
現在進行形鰻上りです」
「そうですかィ?なら良かった」
そう言うと、沖田は機嫌良さ気にその場を後にした。
残されたのは、妙な疲労感に襲われている銀時と新八の二人。
「・・・新八、付き合う人間は選べよ」
「そんな事してたら、今この場にいませんよ」
「え?ソレどういう意味ぃぃぃ!!?」
しみじみと呟くと、慌てたように銀時が顔を向けてくる。
それにクスリと笑みを零すと、
「ウソですよ。僕は自分で選んでこの場所に居るんです」
離れられないし、離しません。
そう言って銀時を見上げ、繋いだ手に力を込めた。
銀時はそれを聞いてチラリと視線を逸らすと、照れ臭そうに空いている
手の指で、熱を持ち出した頬を掻いた。
新八はそんな銀時に益々笑みを深めると、繋いだ手を軽く引っ張った。
「さ、神楽ちゃんが待ってますよ、早く行きましょ」
「お・・あぁ、そうだな」
そして、元に戻った銀時の体に、弾丸の様な娘が飛び込んでくるまで、
あと少し・・・
*********************
5555リクのその後話です。
二人だとヘタレで、第三者が居ると余裕ぶる
お馬鹿な大人が好物です(待てι)
蛇足文ですが、こちらも捧げさせて下さい!
「も~、何なんですか、銀さん!」
新八は、掃除していた手を止め、後ろを振り返る。
そこには、袴を掴んでこちらを見上げているちっさい銀時の姿が。
「単なる暇つぶし。ま、気にすんなや」
「いや、気になりますよ。今の見た目年齢に騙されて
可愛い~♪とか思っちゃいそうですけど、見てないと
三十路オーラがバリバリ背中に来てますもん」
「何そのオーラ!違うからね、銀さんまだ
三十路手前だからね!!」
「・・・無駄な足掻きを・・・」
懸命に言い募る銀時を小さく笑い、新八は仕方なしに再び
掃除へと戻る。
その間も銀時の手は外れず、新八の動くほうへと一緒に着いて来る。
「暇ならジャ○プでも読んでたらどうですか~?」
アンタの日課でしょ。と、後ろに居るであろう銀時に問い掛ければ、
首を振る気配がした。
「ダメダメ。あれはやっぱり少年のバイブルだね。
夢と希望が詰まりまくってて、幼児の手には余って読み辛ぇ」
っつうかでけぇ。そうぼやく銀時に、ならばテレビでも・・・と言えば、
今の時間帯に銀時の好みのものはやっていないと言う。
「パチンコも行けねぇし、飲みにも行けねぇ。ガキってのは
不便だねぇ」
「それらはお金のない大人も行けないって知ってました?銀さん」
「いい事があるとすりゃあ、こうして新ちゃんのケツを間近で
拝めるぐらい・・・」
「って、三十路オーラの正体はそれかぁぁぁ!!!」
振り向きざま、銀時の頭をペシリと叩く。
そして袴を掴んでいた手を外させると、両脇に手を入れて銀時を抱き上げると、
拭き終わったソファの上へとその体を落とした。
「そこから下りたら、子供だとて容赦はしませんよ?」
姉譲りのスマイルを浮かべ、そう告げると銀時はコクコクと素直に頷いた。
それを見て新八は、何時もよりかなり触りやすい位置にある頭を数回撫で、
掃除へと戻っていった。
「・・・昼寝でもしますか」
視界から消えた新八の残していった感触に、
銀時は照れ臭そうに触れると、ソファの上にゴロリと横になった。
そこに入ってくるのは、何時もより遠く感じる室内。
感じるのは、何時もより広いソファ。
なんとも居心地の悪い感触に、銀時は小さく舌打ちすると、
急いで目を閉じた。
どれくらい時間が経ったのか、銀時が目を覚ますと、部屋の中が
ほんのりと夕陽の色に染まっていた。
いつの間にか掛けられていたタオルケットを取り、辺りを見回す。
すると、和室の方から微かに聞こえる物音に気付き、銀時は
膝立ちになり、背凭れの上にチョコンと顔を出した。
見れば新八が夕陽の差し込む中、洗濯物を畳んでいる所だった。
それが何時もより遠い場所の光景のようで、銀時は一瞬声が
出なかった。
「あ、起きました?」
銀時が起きたのに気付いた新八が、洗濯物から顔を上げる。
向けられる笑顔にホッと息を吐くと、
「ん~。・・・な、もう下りていい?」
三十路オーラは自粛するんで。そう言う銀時に、新八は小さく噴出すと、
どうぞ。 と告げた。
新八の許可を得た銀時は、ソファから飛び降り、小さい足を懸命に
動かして新八の元へと向かうと、膝に乗せられてた洗濯物をどかし、
新八を跨ぐ感じで前から抱き付き、腰を降ろした。
「・・・アンタ、自粛するって言ってませんでしたか」
「今は子供として甘えてるんです~」
そう言うと、新八の胸元にグリグリと額を押し当てた。
銀時のそのあまりの子供っぷりに、剥がそうとしていた新八の手も止まる。
「大人でも甘えて来るくせに」
「・・・うるせー」
クスクスと笑う新八の声を近くで感じ、銀時は安心していく自分を
感じた。
頬を撫でるその手も、冷たくてとても気持ちがいい・・・
新八の手の感触に、再び目蓋が重くなってきた時に、頭上から
少し慌てたような声が落ちてきた。
「・・あれ?銀さん何か熱くありません?」
「ん~、そっか~?」
「そうですよ!・・・って銀さん!?」
新八が呼びかける中、、銀時の体から力がクタリと抜けた。
次に目を覚ました時、周囲は既に闇の中だった。
「・・・へ?」
突然の時間移動に、銀時は開けた目をパチクリとさせる。
「え、何で夜?」
不思議に思いながらも、とりあえず体を起こそうとするが、
何かが邪魔して動けない。
銀時は仕方ないと首だけを動かしてみる。
すると、直ぐ横に新八の寝顔があり、再び目を瞬かせた。
見れば片手は自分と新八の顔の間で繋がれており、
もう片方の手は銀時の腹辺りにあるようだ。
・・・これじゃあ動けねぇ訳だ。
まるで包み込まれているような状況に、銀時は苦笑を浮かべる。
だが、なんでこんな状態に?
確かあの時、昼寝から起きて・・・
と、自分の行動を思い浮かべようとした時、額から何かが
ずれ落ちてきた。
それは濡れたタオルで、漸く銀時は自分が発熱してしまったのだと
理解した。
多分脱臼のせいだな、こりゃ・・・
銀時は原因に思い当たり、溜息を吐く。
そして隣で眼鏡を掛けたまま目を閉じている新八に目をやる。
相当疲れていたのだろう。
どうやら自分の看病をしながら、眠ってしまったようだ。
「心配、掛けちまったよなぁ。肩外すわ熱出すわちっこくなるわで。」
ま、大半は俺のせいじゃないけどよ。そう言って握られている指を
そっと撫でる。
「普段ならあれぐらい自分でどうにかすんだけどよ。
・・・安心しちまったんだよなぁ、オマエに抱き締められて。
あぁ、もう情けねぇなぁ、おい。」
どうすんのよ、もう離れらんなくね、俺。そう呟いて銀時は
ま、離れねぇけど。と苦笑を零した。
そして視線を天井に戻し、一つ息を吐く。
「けどなぁ、密かに楽しみにしてたんだけどなぁ。
主に風呂とか風呂とか風呂とか?
だって銀さん、ちっさいもん、今。一人だと危なくね?
新八、ほっとけなくね?
使わない手はなくね?
だから堂々と新八と入れるな~・・・なんて夢描いてたんですけど?」
なのに行き成り夜って酷くね?そうボヤク銀時の口に、突然新八の
手が勢い良く覆いかぶさってきた。
「って!ちょ、なんか今殺気篭められてた気がすんですけど!!?」
慌てて新八を見るが、起きた様子はなく、目は閉じられたままだ。
・・・ツッコミ、恐るべし!!
思わず身じろいだ銀時だったが、新八の腕がそれを許さず、
寧ろ胸元へと引き寄せられてしまった。
「え、マジでか!?新ちゃんってば以外に大胆・・・」
呟いた瞬間、銀時を抱き締める腕に力が篭められた。
「グェ!!ってオマッ!起きてね??」
「寝てます~」
「起きてんじゃん!!!」
「寝言です」
「いや、完璧起きてるよね?覚醒しまくりだよね?
・・・ってか、何時から起きてたんだよ」
恐る恐る問い掛けてくる銀時の頭を抱き寄せ、新八は ん~ と考えると、
「アンタが犯罪スレスレの妄想を語りだす前?」
「最初っからかよ!!」
ギャーッ!!と叫ぶ銀時の背中をポンポンと叩いてあやした。
「まぁまぁ。とりあえず馬鹿みたいな妄想は鼻で笑い飛ばす
だけで済ませてあげますから」
「てめっ!銀さんをあんま舐めんなよ!甘いから!!」
「糖で出来てんのかよ。いいですよ、舐めないですから。
それよりもう少し寝てて下さい、安心するでしょ?」
こうしてると。そう言って抱き締めてくる新八に、銀時は声も出ない。
「・・・オマエ、笑ってるだろ」
振動で判るんだよ。ブスくれた声で告げる銀時に、一層新八の笑みが
深まる。
「チキショー、明日元に戻ったら絶対甘やかす!
徹底的にウザイぐらい甘やかしまくってやるから覚えとけ
コノヤロー!!」
「はいはい、上等だ、コノヤロー」
「で、一緒に風呂に入るからな!!」
「それは無理です」
でも、偶にはまた甘やかしてあげますよ、
離れられなくなるように。そう言って笑うと、新八は
アワアワと慌てる銀時を無視し、その髪に鼻を埋めると
ゆっくりと目を閉じた。
とりあえず、明日は手を繋いで神楽ちゃんを迎えに行こう。
小さい掌ではなく、あの大きな掌を包み込んで。
*************************
一応これで終わりです。後は後日話が少し?
とりあえず蒼月 銀牙様、こんな感じのものに
なりましたが、如何だったでしょうか??
本当、ダラダラ長くてすんませ~んっ!!!
少しでも気に入って頂けたら嬉しいのですが(滝汗)
リクエスト、本当に有難うございました。
神楽と全ての元凶である沖田が去って行った後、新八からも中々の
パンチを食らい、おまけに朝ご飯もなし。
俺が何したってんだよぉぉぉ!!!
ってつまみ食いさ、コノヤロー!!!!
と、出てきそうになる雄叫びをぐっと飲み込み、ソファへとよじ登って
丸くなる銀時。
こうしていると、少しだけ空腹が紛れる気がしてくる。
だからしているだけで、別に拗ねてたりするんじゃないからね!
言葉に出していたらドン引き間違いなしな事を考えていると、
チョンチョンと肩を突かれた。
それに視線だけをあげて答えると、苦笑した新八が屈み込むようにして
こちらを見ていた。
「朝食抜きは可哀想ですしね」
新八のその言葉に、銀時の目が輝く。
さすが新八!何時如何なる時も銀さんへの愛は変わらねぇんだな!!
さ~、邪魔者もいねぇし、さっきみたいにお膝であ~んを!!
と、体を起こした銀時の目の前に差し出されたのは、イヤに成る程
馴染みになった豆パン。
「これならちっさくても一人で食べれますよね?」
はい、よく噛んで食べてくださいね。そう言って新八は豆パンを
銀時の小さな両手に持たせた。
「じゃ、僕後片付けしてきますから」
言うなり、新八は荒らされた食器を持ち、台所へと姿を消してしまった。
故に、お膝抱っこもなし。
「はは、さすが新八。良く気が回ることで・・・」
気遣いの鬼だね、俺の奥さんは。そう呟いて口にした豆パンは、
何時もより少しショッパイ気がした銀時であった。
「にしても、今日仕事入ってなくて良かったな~」
ま、入ってる方が珍しいんだけど。新八は乾いた笑いを浮かべながら
食器を洗っていた。
その時、不意に袴を引っ張られるのを感じ、
くるりと振り返るが、そこには誰も居なく、カクリと首を傾げる。
すると再度引っ張られ、序に名前も呼ばれた。
「ドコ見てんのよ、オマエ」
「あ、銀さん」
視線を下に向ければ、其処には豆パンを片手に、そしてもう片方の手は
新八の袴を掴んでこちらを見ている銀時が。
「どうしたんですか・・・って食べ歩きしちゃダメでしょ!」
「いや、だって喉乾くんだもん」
オマエ、湯呑みも全部片付けちまうし。と、口をモゴモゴさせながら
言う銀時に、新八は そうだった。 と、急いでコップを持ち、
冷蔵庫へと向かう。
「え、何々?イチゴ牛乳??」
それに袴を掴んだまま着いて行く銀時が嬉しそうな声を出した。
新八は銀時の無意識であろうその仕草に、クスリと笑みを零した。
「今日だけですけどね?」
新八は冷蔵庫から取り出したイチゴ牛乳をコップへと注ぐと、
嬉しそうにこちらを見上げている銀時へと手渡した。
が、片手では持てないらしく、次第に眉間に皺を寄せていく。
「面倒臭ぇなぁ、ちっちぇ~ってのはよ」
「不精しようとするからですよ。はい、パン貸して下さい、持ってますから」
新八はしゃがみ込んで銀時から豆パンを預かると、先程と同じように
銀時の両手にコップを載せてやる。
「おぅ、悪ぃな」
漸く甘味にありつける・・・と、笑顔でそれを受け取ると、
そのままゴクゴクと中身を飲み干してしまう。
そして満足げに もう一杯 と差し出す銀時を、新八は呆れたように
見返し、その頬に手を向けた。
「全く、中身は全然変わらないんですね」
そう言って口元にあったパンのカスとイチゴ牛乳を丁寧に拭っていく。
「・・・なんか新ちゃん、甘くない?」
日頃とは全く違う新八の反応に、照れ臭いやら怖いやらで、銀時が
恐る恐る問い掛ける。
新八はそのまま柔らかいほっぺをムニムニと触り、
「・・・やっぱ見た目って大事ですよね~」
等としみじみ呟き、再び豆パンの塩っ気を増加させたのであった。
その後、本格的に拗ねた銀時がソファの上で丸くなっている間に
昼食となり、飛び出していった神楽も帰って来た。
そんな本日の昼食メニューはお握り。
銀時の小さな手でも食べやすい様に・・・と言う、これまた新八の
心優しい気遣いのもので、銀時は涙ぐみそうになる。
それを食べながら、神楽が銀時に食べ終わったら遊びに行こうと誘った。
「やだよ、なんでそんなのに行かなきゃいけねぇんだよ」
「子供は外で遊ばなきゃダメネ!そうやって大きな子は小さい子を
構ってやってると言う自己満足に溺れ、
小さい子はそれに白けた目を向けつつも
甘い蜜を吸う要領を覚えていくものネ!」
「そんな腹黒いリアル子供社会を見せるんじゃねぇよ!」
子供は黙ってお昼寝タイムだ!!と、お握りを食べ終えた銀時は、
そのままソファへと寝転んだ。
「ちょ、銀さん!直ぐに寝たら牛になりますよ!!」
銀時へと手を伸ばし、その肩を揺らそうとしたその瞬間、同じく
お握りを食べ終えた神楽が、銀時の居るソファへと
テーブルを飛び越えてやってきた。
「いいから工場長の言うとおりにするネ!」
そして銀時の腕を掴み、グイグイと引っ張る。
相当ちっさい銀時で遊び倒したいらしい。
「っぃて!!マジ痛いから!!!」
「は~や~く~行~こ~や~」
「ばっ!オマ本当、もげる、腕がもげるから!!」
「大丈夫ネ、腕がもげてもギューギュー押し込んだら
元に戻ったネ、たかちゃんのお人形!」
「テメ、コノヤロー!大量生産されてる玩具とオンリー・ワンな
銀さんを一緒にすんじゃねーよ!!!」
「ちょっ、二人とも落ち着いて・・・・」
暴れる二人を止め様と、新八が割り込もうとした瞬間、
銀時の肩が大きな音を立て、声にならない悲鳴が万事屋を駆け巡った。
「えっと・・・災難でしたね、銀さん」
「明らかに人災だろ、人災。」
眉間に皺を寄せながら、銀時が呟く。
その肩にシップを貼りながら、ですよね・・・と、新八は小さく溜息を吐いた。
あの後驚き固まってしまった自分達をよそに、
肩の外れた銀時は少しの間をおいて、何でもないように
自分で肩をはめた。
どうもこちらの方が痛いらしく、足をバタつかせてはいたが、
直ぐに茶化すように 馬鹿力。 と神楽を笑った。
その言葉に、呆然と立ち尽くしていた神楽が 弱っちぃよりいいネ。
と文句を言ったが、心なしか顔色が悪かった。
「ま、あれだ。ガキってのは外れやすいもんなんだよ」
銀時はそう言うが、相当ショックだったのだろう。神楽は久しぶりに
姉御の所に泊まりに行くと言って、先程出掛けていった。
大切な酢昆布を一枚、銀時の頭に乗せて。
その酢昆布を食べながら、眉間の皺を深めている銀時を見詰め、
新八はその皺の理由を考える。
痛みのせいか、それとも今頃心を痛めてる少女の為か。
・・・両方って言うか、後者の方が割合高いよね、きっと。
ならばせめて。
大きな割合を占めているだろう事は取り除けられなくても、
痛みぐらいは取り除いてあげたい。
新八は巻き終わった包帯をそっと撫で、
「痛いの痛いの~・・・食べちゃえ!」
パクリと撫でていた手を口元へと当てた。
「・・・・・ヒへ?」
妙な声がして、新八は顔を上げると、そこには頬を染め、目を丸くして
いる銀時が口をパクパクさせていた。
何ですか? と首を傾げると、銀時は尚も顔を赤くし、
「だってオマッ。ガキじゃねぇんだから・・・ってガキか、俺!
いいな!ガキって。
じゃなくて、普通それって飛んでけ~って・・・」
慌てながらも新八に問い掛けた。
銀時のその態度に新八は小さく噴出すと、
「ウチはこれでしたよ。飛んでけ~よりインパクトあるでしょ?」
だから痛くて泣いてても、びっくりして泣き止んじゃうんです。そう言う
新八に、銀時はムッと口を尖らす。
「いや、確かに驚いたけど。今脈拍スゲーけど。
でも銀さん、泣いてねぇし」
「でも、少しはマシになったでしょ」
新八は皺の消えた銀時の眉間を見、ホッと笑みを浮かべた。
「明日戻ったら、一緒に神楽ちゃん迎えに行きましょうね」
「・・・・・・・仕方ねぇなぁ」
そう言いながらも、漸く柔らかくなった表情の銀時に新八は
安心すると、出してあった包帯などを薬箱の中へと片付け始めた。
すると、その袖がツイッと引かれる。
見れば顔を俯かせた銀時が、包帯の巻かれていない手で新八の袖を握っていた。
「どうしました?」
そう問い掛けると、返ってきたのは小さな声とささやかな要望。
そして微かに見える、赤く染まった小さな耳。
新八はクスリと笑うと、その願いを叶える為、再び銀時の
肩へとそっと手を這わせたのであった。
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漸く少しだけ銀新ぽかったらいいな~(待てι)
すみません、次ぐらいで終わらしたいです。
「沖田さん、どうしたんですか、こんな時間から」
突然現れた沖田の姿に、新八がオカズ事箸をテーブルの上に戻す。
あぁ・・・俺のオカズと新ちゃんの愛が・・・
嘆く銀時を余所に、沖田はズカズカと我が物顔で入り込むと、
そのまま銀時達が座っている側のソファへと腰を下ろした。
「いやァ、ちょっと確認しておきたい事がありましてねィ」
朝食も取らずに来た次第でさァ。と言いながら、床に座っている
銀時達の頭を超え、先程新八が小さく切ったオカズを一つ摘んだ。
「お、中々いけるじゃねぇか」
「っておいぃぃ!それ銀さんのだから!
警察が不法侵入の上、物取りですかぁぁ!!?」
慌てて立ち上がり、テーブルの上のオカズを死守せんと体で覆い隠せば、
背後から深い溜息が聞こえてきた。
ちらりと視線をやれば、そこには呆れ顔の新八が。
「・・・いい大人が何やってんすか」
「今は誰よりも子供です~」
そう反論して、プイと横を向く。
何時もならここでもっと冷たい視線が鋭く俺を突き刺してくるのだが、
やって来たのは優しい手の感触。
「はいはい、そうでしたね。沖田さん、そう言う事ですから、
あんまり摘まないで下さいね、お茶ぐらいなら出しますから」
ポンポンと銀時の頭を撫でると、背後の沖田にそう告げ、新八は台所へと
向かった。
何時もと違うその反応に、思わずボケッと新八の去って行った方向を
見ていると、再び腕の中に囲っていた皿へと手が伸びてくる。
「ちょっ、本当オマエいい加減にしてくんない?坂田家の食卓を
これ以上荒らすんじゃねぇよ!!」
な、神楽!!と、応援を求むように向かい側でご飯を食べている神楽を見れば、
「銀ちゃん、食事は戦場ネ。いつまでも他人に頼ってちゃ大きくなれないヨ」
そう言って炊飯ジャーを抱え込み、中のご飯をひたすら食い荒らしていた。
どうやら目の前の宿敵よりも、自分のご飯の方が大事らしい。
って言うか坂田家の食卓を勝手に戦場にすんなよ、コノヤロー。
けれど、納得してしまう部分(主に肉関係がオカズの時)も多々あるので
銀時はカクリと肩を落とした。
その肩をヒョイと掴まれ、クルリと廻されると次に脇に手を入れられ、
そのまま抱え上げられる。
「ちょ、止めてくんない?それ。なんか色々とムカつくし、
服、ずり落ちるから」
とりあえずの応急処置として、破れて修復不可能になった神楽の
Tシャツを被っていただけの銀時は、裾から出ている足をプラプラと
させながら沖田を睨んだ。
「確かに・・・大きくなれてませんねィ。寧ろ小さいでさァ」
「・・・ね、沖田君。気のせいかもしれないけど、視線が
銀さんのアナログスティックに向けられてるような・・・」
「小さいでさァ」
「おいぃぃぃぃ!!!ガン見!?
あえてガン見かコノヤロー!!」
「何やってんですか、沖田さん」
気の毒そうに呟く沖田に足蹴りでも食らわしてやろうと足をバタつかせるが、
どうにも届かない。
そこに、お盆にお茶を載せた新八が慌てたように
近寄ってきた。
沖田は銀時をクルリと回転させて新八と向かい合わせるように
抱えなおすと、
「見て下せぇ、こんなに小さい・・・・」
「うっせーよ!!って言うかクドイよ!何コレ、幼児虐待!!?
ドコまで前科増やす気だ、コラァァ!!!」
沖田の言葉を途中で遮り、そう怒鳴りつける銀時に、新八は訳が判らず
首を傾げると、一先ず持っていたお盆をテーブルの上に置き、
沖田の手から銀時を持ち上げた。
「確かに小さいですけど・・・それより沖田さん、何の用なんですか?」
さらりと言われた『小さい』宣言に、今度こそ本格的に肩を落とす銀時。
新八は訳が判らないなりにも気の毒に感じ、抱えたままポンポンと背中を叩いてあやす。
それがまた銀時の心に傷を残す訳だが。
益々項垂れる銀時を沖田は楽しげに観賞していたが、新八の問いかけに
そうだった。とばかりに軽く手を打ち、
「いや、成果を見に来たんですが・・・この分だと、昨日俺が
やった菓子を食べてやせんね、新八」
やれやれ・・・と肩を竦めた。
「いや、確かに食べてませんけど・・・」
なんで知っているのだと驚く新八の腕の中で、銀時がピクリと反応した。
そして恐る恐る顔を上げ、新八に問い掛ける。
「やったって・・・え?ウソ。昨日新ちゃんが貰ったって言うお菓子は・・・」
「沖田さんから貰ったものですよ」
あっさり答える新八に、銀時の顔から色が抜け落ちた。
「なっ!おまっ、えぇぇぇええ!!!?
オマエそんな事一言も言ってないじゃん!!」
「言う前に無断で食い尽くしたのは誰だ、この天パ」
文句を言う銀時に、冷めた視線を送りつつ冷静に答える新八。
いや、確かにそうだけれども!
無断で食べた銀さんが少しは悪いのかもしれないけれども!!
「真の危険人物から本格的な
危険物貰ってくんじゃねぇよ!」
っつうか何混入しやがった、天下の糖分にぃぃ!!と、鋭い視線を沖田へと
向ける。
沖田はその視線を物ともせず、置かれた湯呑みを取って一口飲んでから
口を開いた。
「ん?別にただのAP○PT○XIN4869を・・・・」
「おいぃぃ!!伏字のようで全然伏せてないからね、それ!!」
「その前に、なんでそんな物を混入させたんですか」
暴れながら叫ぶ銀時に、流石に抱えきれなくなったのか新八が腕の中から
下ろし、呆れ顔で呟いた。
それに沖田も呆れた顔を返す。
「なんでも何も、新八をちっさくする為でさァ」
なのに旦那がガキになってやがるし。そう言って大袈裟に肩を落とした。
「いやだから、なんでそんな事するんですか」
「聞くな、新八。どうせコイツの事だから、聞いた瞬間耳が穢れる様な
事しか言わねぇぞ!!」
「旦那には負けまさァ。あ、そういや新八、さっき旦那がもう少し
年齢が下ならオムツプレイ出来たのにぃぃって悔しがってましたぜィ」
「言ってねぇよ!!何すんなりウソついてんのぉぉ!!」
ウソだからね、銀さん、まだそこまで強要しないからね!!?等と
言いながら新八の足元に縋り付く銀時に、新八は判ってますよ。と
ばかりに優しく微笑む。
それにホッと息を吐く銀時だが、何故だか足が痛い。
「あの・・・新八?足どかしてくれる?銀さんの足踏んでるから・・・」
「で、話は戻りますけど・・・」
「え!?シカトォォォォ!!!」
「とりあえず理由と、戻し方を教えて下さい」
「別に戻らなくても万事屋は私が引き継いでやるネ」
寧ろそのままの方が場所取らなくていいヨ。と、それまで黙々と炊飯ジャーの
中身を食い尽くした神楽が、残っていた銀時のオカズへと手を伸ばし、
動きの取れない銀時を横目に、次々に口へと放り込んでいく。
「俺のオカズ~!!何、この無駄な連携プレー!!」
手を伸ばしてみるが、テーブルには届かず、ただ神楽へと消えていく
ご飯を見詰めるしかない銀時。
その頭上で新八達の話は進んでいく。
「戻し方も何も、明日になりゃ~自然と戻りまさァ」
「・・・本当ですか?」
思わず疑惑の目を向ける新八に、沖田はニヤリと笑みを返す。
「疑うなんて酷いねィ。俺はこう見えても天下の真選組ですぜィ?
一般市民に迷惑掛ける事なんざぁしねぇよ」
それを聞き、ご飯を全て食べ終えた神楽がユラリと立ち上がった。
「どの口がほざいてるカ?とりあえず食後の軽い運動ネ。
外に出ろ、コノヤロー。
銀ちゃん、ご飯の仇は討ってやるから安心するヨロシ!!」
「いや、殆ど食べたのお前だろ!!って言うか、ご飯の前に
こんな姿にした仇を討てェェ!!!」
銀時が叫ぶが、聞こえていないのか、それとも敢えて無視しているのか、
既に小競り合いを始めた二人は、所々破壊音を残しつつ、
万事屋から出て行った。
残ったのはちっさい銀時と新八、そして食い散らかされた朝食の名残。
「・・・まぁ、アレですよ」
新八は踏みつけていた足をどけ、カクリと頭を垂れる銀時に視線を合わす
様にしゃがむと、
「人のモン勝手に食うからだ、コノヤロー。ってヤツですね」
そう言ってニッコリと微笑んだのであった。
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・・・スミマセン、話が全然進んでませんι