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とりあえず、今日は街全体がこんな調子だし、仕事もないだろう・・・
と言う事で、僕は万事屋を休む事にした。
・・・ま、こんな事になってなくても仕事なんかないんだけどね。
家事は山ほどあるんだけど。
ってかちゃんとご飯食べたかな、銀さん達。
そんな心配が生まれてくるが、それと同時にある疑問も浮かんでくる。
・・・果たして、銀さん達も性別が逆転しているのだろうか。
僕は洗濯物を干している手を休め、ちょっとだけ想像してみる。
・・・うん、休んで正解だったかも、僕。
だって絶対逆転してるしね。
それが判ってて自らトラウマ植え付ける趣味、ないから。
そう結論付けると、残っていた洗濯物を干し、空になった籠を
手に座敷へと戻る事にした。
それとほぼ同時に、姉上も中庭から戻ってくるのが見える。
「あら、新ちゃん。洗濯物干してくれたのね?」
有難う。と笑う姉上はとても優しげだが、微かに頬に付いている
赤いモノが全てを台無しにしている気がする。
って言うか・・・
「あの・・・もしかして・・・」
「あぁ、今死装束着たゴリラが徘徊してたのよ。
だからその願いを叶えてあげてきたわ」
この拳で。そう言って掲げた拳には、まだ瑞々しい赤いモノが
付いていたりして・・・
近藤さん、アンタなんでまたこんな時に・・・
状況が状況なんだから、マジで仕事して下さいよっ!
混乱してますよね、普通に皆っ!!
あ・・・でも近藤さんも女の人になってたりするんだよね、今。
・・・そりゃ~いつにも増して力が入るよ、うん。
でも、そうすると・・・
「それ、もしかして白無垢だったんじゃないんですか?花嫁的な」
「単なる視覚的暴力だったわね。
自分でもそう思ったんでしょ?だから態々着てきたのよ、死装束」
その点、新ちゃんは可愛いわよね~。と言って、姉上は
僕の頭に手を乗せてきた。
うぅ、普段なら恥ずかしくて仕方ないんだけど・・・なんでだろ。
今はそんなでもない・・・かな?
僕は赤くなっているだろう顔を俯かせて、ちらりと視線を上げてみた。
ソコには姉上なんだけど、姉上じゃない、優しい笑顔があって。
あぁ、兄が居たらこんな感じなのか・・・とちょっとだけ
頭を撫でてくる何時もより少し大きめな手に、心地よさを感じていた。
すみません、近藤さん。
後で必ず掘り返しますから。
そんな風に、穏やかな時間を過ごしていると、
不意に玄関から大きな物音が聞こえてきて、僕と姉上はキョトンと目を合わせた。
とりあえず普通のお客さんならそんな音は立てないし、
近藤さんが復活するのには早すぎる。
と言うことは・・・
思い当たる人物を思い浮かべながら、座敷からヒョイと顔を覗かせると、
ドタドタと廊下を歩いてくる足音が聞こえ、次に。
「お~、新八。来ないから来たぞ、銀さん」
機嫌良さ気にトラウマがやって来た。
や、行かなくても来るなよ。
「・・・て言うかなんで完璧パー子さんになってんですか、アンタ」
出迎えてもないのに勝手に上がりこんで来た銀さんは、
普段の姿ではなく、パー子の時に着る着物に身を包み、
何故かつけ毛もつけてばっちりメイクをしていた。
なんだろう、この人。
もしかして姉上と同じで楽しむ気満々!?
そんな思いが顔に出てしまったのだろう。
銀さんは僕に近付いてくると、パチンと僕の額にでこピンをお見舞いしてきた。
「ば~か。こんなバインバインな体で何時もの格好なんかしてみろ。
色んな部分がはち切れるからな?
だからと言って着るものだけ変えてもアレだ・・・
色んな意味で泣けてくるから、本当」
そう言って視線を逸らす銀さんに、僕もそっと視線を落とした。
うん、確かにそうですね。
トラウマなんて言ってごめんなさい。
真のトラウマはまだ他にありました。
「凄いネ、新八が女になってて、姉御が兄貴になってるネ」
思わずつけ毛なしのバインバインな銀さんを想像し、付け毛の有り難味に
改めて感謝していると、ヒョコリと見知った顔が銀さんの後ろから出てきた。
あ、でもやっぱりちょっと知らないや。
どうやら天人の神楽ちゃんも例外ではなかったらしく、
何時もより少しだけ鋭さが増した男の子の神楽ちゃんが立っていた。
こちらも色々考慮したらしく、何時ものお団子ではなく、
姉上と同じように後ろで一つに縛っているだけだ。
とりあえず来てしまったものは仕方がない。と、僕は銀さん達を
座敷へと招きいれ、お茶の用意をする事にした。
「しっかし違和感ねぇよな、お前ら」
僕の出したお茶を受け取りながら、銀さんがしみじみとした口調で
そう呟いた。
「って言うかお妙、本当に男になってんの?
何時もと変わんなくね?特に胸とか」
「やだわ~、銀さん。
未成年の前でそんな堂々としたセクハラ発言。」
その瞬間、物凄い速さで姉上の腕が伸びたのが見え、序に
何かが激しく潰れる音が聞こえてきた。
そ~っと視線を向けてみると、テーブルの上に見事に顔を
減り込ませている銀さんの姿が・・・
・・・うん、見えない見えない。
だって有り得ないもの、あんな減り込み方。
だからアレだ。眼鏡の調子が悪いことにしておこう、僕っ!
そう自分に言い聞かせてお茶を啜っていると、不意に目の前に
神楽ちゃんの顔が現れた。
「どうかしたの?」
マジマジと僕を見詰めてくる神楽ちゃんに、そう問い掛けると
新八もあんまり変わってないネ。とボソリと呟かれた。
「格好は女だけど、銀ちゃんみたいにバインバインになってないよ。
本当に生えたカ?」
そう言ってワシッと僕の胸へと手を伸ばしてきた。
「ちょっ!何してんの、神楽ちゃん!!」
慌てて逃げようとするが、何時の間に来たのか、後ろから
姉上に抱き込まれてしまい、身動きが取れなくなってしまった。
「姉上!?」
「うふふ、どう?神楽ちゃん。ちゃんと女の子でしょ?」
「おぉ!なんとなくあるヨ、新八っ!」
「いや、なんとなくって何!?
あっても嬉しくないけど、それもなんか物悲しいんですけどぉぉ!!?」
「あ、マジで?どれどれ、俺も・・・」
「テメーは自分ので
自給自足しとけやコラ」
目を輝かせながら僕の胸を触る神楽ちゃんに便乗しようとした
銀さんだったが、その手よりも早く姉上の拳が銀さんの顔へと
走った。
・・・銀さん、そろそろ学習して下さい。
畳みに倒れこみ、静かになる銀さんを横目に、それまで僕の胸を
触っていた神楽ちゃんが今度はその目を姉上へと向けた。
「姉御も本当になくなったアルカ?」
ちょ、神楽ちゃんそれ禁句っ!!
ってか今までの銀さんので学習はしてなかったのぉぉぉ!!!?
神楽ちゃんの発言に青くなっていると、背後でクスリと笑う
音がした。
あぁ、良かった。
流石の姉上でも、神楽ちゃんには手をあげないよね?
そう思い、安心して振り返ると・・・
「やだわ~神楽ちゃんたら。
・・・見て、判るわよね?」
手は上げてないけど修羅を纏った鬼人がいらっしゃいました。
その瞬間、神楽ちゃんの頭を掴み、土下座して詫びる僕が居た事は
・・・言うまでもないですよね、はい。
**************************
すみません、終わりませんでしたぁぁぁ!!!(土下座)
もう少しだけお付き合い下さいっ!
遠くで聞こえる小鳥の声に、僕はまだ少し重い目蓋を開いた。
そして何時もの様に、枕元に置いてある目覚まし時計へと手を伸ばす。
見れば目覚まし設定している時間よりも僅かに早い。
ここで再び寝ても、直ぐに起こされる事になるだろう・・・と、
時計を置いて、僕は体を起こした。
途端、押し寄せる冷たい空気にブルリと体を震わせ・・・た所で
一瞬、妙な感触を感じ、ハタリと目を瞬く。
・・・あれ?なんか変な感じが・・・
そのまま素直に視線を落とせば、寝巻きの合わせ目から
僕の生活とは無縁なモノがチラリと見えて・・・
「はぁぁぁぁああ!!!?」
志村新八。お通ちゃん親衛隊隊長として、
今日も抜群の発声量です。
「あら~、ここら辺全体がそうみたいよ?
マユゾンの時といい、何か呪われているのかしらね、この土地」
「姉上・・・そんな呑気な口調でに恐ろしい事を言わないで下さい」
「やだわ、新ちゃん。今は兄上でしょ、兄上」
そうにこやかに返してくる人は、確かに僕の姉上だ。
・・・そう、昨日までは。
だが、今目の前で僕の出したお茶を飲み、テレビを眺めているのは
その言葉通り、男性で。
「姉上・・・順応能力高すぎです」
僕は大きく溜息を吐いた。
そう、目が覚めた時に僕が見てしまったのは、十八歳未満は見ては
いけないものだったのだ。
お陰で大声を上げてしまい、寝入ればなを起こされた姉上に
再び夢の国へと送り込まれてしまった。
や、それでも起きた時に全てが夢だったらな~なんて思ったりも
したのだが、どうにも現実はそんなに甘くないらしい。
なんとか意識を復活させてみれば、目の前には見知っているけど
知らない姉上が居て、テレビでは情報が溢れていた。
どうも天人のせいで、ここら辺一帯のみ、性別が逆転してしまう
と言う現象が起こっているようだ。
・・・便利迷惑だなぁ、天人設定。
「あら、だってこんな事滅多にないのよ?
楽しまなきゃ」
そう言う姉上は、普段の着物とは違い、渋い色目の着流し姿だ。
見た目も少し男らしくなっていて、はっきり言ってカッコいい。
・・・のだが、その話口調のお陰でちょっと微妙になっている。
や、そこまで変えられたらシャレになんないからいいんだけどね。
でも楽しむって・・・まぁそこまでカッコ良ければ
色々楽しいんだろうけどさ!
あぁ・・・なんでこうも違うんだろう。
僕が姉上と同じ年齢になっても、そこに辿り着けるか
自信が全くないんですけどぉぉぉっ!
「だから、新ちゃんもそれに協力してね」
地味に凹んでいると、不意に姉上にそう声を掛けられた。
ハッと我に返ってみれば、そこには大変楽しそうに色取り取りの
女物の着物を抱えている姉上の姿が・・・
「あ、姉上?」
思わず座ったまま後ずさると、その分姉上が僕に近付いてくる。
恐ろしくもにこやかに。
「言ったでしょ?私、可愛い妹も欲しかったのよ?」
それとも強制的に剥かれたい?という姉上の言葉に、
出来れば強制的に眠らせて下さい。と願ったのも無理ない事だと思う。
・・・まぁどっちにしろ行き着く先は
同じなんだろうけどさ、コンチキショー。
「うん、やっぱり可愛いわ、新ちゃん」
「・・・そうですか」
満面の笑みを浮かべてそう言う姉上に、僕は疲れきった声を返した。
かまっ娘倶楽部で着た事があるとは言え、さすがに日常生活で、
しかもこんな昼間っから女装をする羽目になるなんて・・・
あ、違うか。今は体も女なんだから、女装って言わないんだっけ。
あれ?それなら西郷さん達はどうなってるんだろう。
この場合、お店の看板はかまっ娘倶楽部のままでいいのかな?
思わずどうでもいい事に思考を飛ばしていると、最後の仕上げとばかりに
姉上は僕の髪の毛に小さな花が付いている簪を挿した。
「折角なんだから、髪の毛も伸びてれば良かったのに。」
姉上は悔しそうに言い、そのまま僕の短い髪を撫でた。
「や、そこまで変化はしないでしょう」
「だって妙なモノが立派に生えてるのよ?髪ぐらい伸びても・・・」
「ちょ、それはダメェェェ!!!!
女の人がそんな事言っちゃダメですっ!」
慌てて僕がそう言えば、姉上は 今は男よ? とケロリとした表情で
返してきた。
・・・や、男でもダメだから。
ってか立派なのぉぉぉ!!?
ダメだ、僕。色々ダメージくらい過ぎだよ。
「でも・・・本当、可愛いくて良かったわ、新ちゃん」
そう言うと、姉上は髪を撫でていた手をそっと降ろし、そのまま
僕の肩へと落ち・・・
「だって私、まだ新ちゃんとお別れしたくなかったもの」
と、がっしりと僕の胸を鷲掴んだ。
「本当、可愛くて良かった」
「ってソコォォォォ!!!?
何ですか、見た目の事を言ってたんじゃないんですかぁぁ!!!」
慌てて身を引き、胸を隠すように両手で覆う僕に、姉上は
やだわ~。と払われた手を自分の頬に添えた。
「見た目も十分可愛いわよ?安心して、新ちゃん」
私は安心したわ。と言う姉上に、僕は今度こそ致命的とも言える
ダメージを食らう事となった。
や、良かったんだけどね。
お陰で命救われたし。
そんなのあっても困るだけだし。
でも・・・でもぉぉぉ!!!!!
こうしてなんとなく納得がいかないまま、奇妙な一日は始まったのであった。
***********************************
三万打お礼企画・第四段。
もち様からのリクで『男女逆転』と言う事でしたが・・・
すみません、無駄に長くなりそうなんで
一度切らせてもらいます~(滝汗)
―――ここにホレ薬がありますっ!
さぁ、貴方ならどうする!?
「・・・って言われてもなぁ」
夜も大分更けた頃、銀時は酔って帰る道すがら、
ふと露店に置いてある看板に目を止め、序に足も止めた。
「胡散臭いし、値段高ぇし・・・なぁ、これ本物?」
フラフラと揺れる頭で銀時が問い掛けると、露店の主は
ニヤリと口元を上げた。
だが、それ以上は何も言わない主に、銀時は僅かに眉を顰める。
主の態度は胡散臭さに磨きをかける一方だが、
何故だか同じぐらいに信憑性にも磨きをかけている・・・気がする。
・・・って事は本物・・・か?
いや、でもそんなのある訳ねぇよ、うん。
だってホレ薬だよ?夢のお薬だよ?
や、別にそんなのなくても新ちゃんは俺に惚れてるけどね。
こんなのに頼らなくても全然大丈夫だけどね?
でもホラ、万が一っての、あるじゃん?
なんか最近、俺を見る目が冷ややかになってる気もするし・・・
って、いやいや、別に疑ってる訳じゃないけどね?
それにホラ、絶対偽物だって、コレ。
だってすっげぇ高いじゃん?
買ったら最後、財布の仕事を取り上げる感じになっちゃうじゃん?
・・・でも高いからこそ本物っぽくもあるんだよなぁ。
「あれ?旦那じゃねぇですかィ」
銀時が露店の前で唸っていると、不意に背後から声を掛けられた。
振り返ってみると、ソコには見慣れた黒い二人組みが・・・
「何やってんだよ、呑気にお散歩ですかぁ?」
「こんな危険人物と散歩するぐらいなら
引き篭もりを選ぶわっ!」
仕事だ仕事っ!と叫ぶ土方の横で、沖田がひょいと銀時に近付き、
今まで見ていたものへと視線を向ける。
「お、また怪しいもんを見てますねィ?」
沖田の言葉に、土方も寄って来て僅かに眉を顰めた。
「や、冷やかしてただけだから。
別に財布と真剣に話し合いとかしてないから、うん」
「思いっきり真剣に悩んでんじゃねぇか、ソレ。
なんだぁ?こんなのに頼らなきゃいけねぇぐれぇなのか?
自分に自信のねぇヤツは大変だなぁ、おい」
ハンッと鼻で笑う土方に、銀時はヒクリと頬を引き攣らせると
軽く肩を竦めた。
「やだねぇ、そんな事ある訳ねぇじゃん。
こんなのなくても全然大丈夫だから、俺等。
寧ろ自信ありまくりで何時もべったり引っ付いてるからね?
現に今日も新八の尻に敷かれまくってました。」
「いや、それは堂々と自慢げに言う事じゃねぇだろ」
「いや、これは自慢だろ。
だって新ちゃんの尻だもん。普通に良くね?」
「そういう意味じゃねぇよっ!!!
良いと思うけどなっ!」
「って事は旦那、これは買わないんで?」
言い争う二人を横目に、沖田が置いてある薬へと手を伸ばした。
ユラユラと揺すれば、小瓶の中でこの世とは思えぬ色合いの
液体が揺れる。
それがまた銀時の心を乱すものの、流石にこの二人の前では・・・
と、口を開いた。
「ま、まぁな?どうせ俺には必要ないし?」
そう答えるものの、目が泳いでいる時点であまり説得力がない。
沖田はその言葉にニヤリと口元を上げると、
「なら俺が買いまさァ」
と、小瓶を持ったまま財布を取り出す為、胸元へと手を差し入れた。
その行動に驚いたのは残りの二人だ。
「はぁ!?ちょ、待て、総悟っ!
それ買って一体どうする気だっ!!」
「どうするも何も、使う為に買うんじゃねぇですか。
頭ボケやしたか?ってかボケろよ、もう」
「って使うって誰にぃぃい!!!?
もしかして新ちゃん!?新八に使う気か、コノヤロー!」
「何っ!?そうなのか、総悟っ!!!」
鬼気迫る表情で沖田に迫る銀時達に、沖田は軽く溜息を吐いた。
そしてヤレヤレと言った感じに肩を竦ませ、首を振る。
「全く、なんでそうなるんでィ。
言っときやすが、そんな事して好きになって貰っても
嬉しくも何ともねぇでさァ」
その言葉に、グッと言葉が詰まる土方と銀時。
確かに、こんな薬で好きになって貰っても虚しいだけだろう。
黙り込む二人に、沖田はブラブラと小瓶を振った。
「それにこんなのなくても
調教すりゃぁいいだけの話で」
「おぉぉぉおいっ!!
ちょ、待てコラ。
今良い話的に終わる感じじゃありませんでしたかぁぁ!!
ってコラクソ天パッ!テメーも『その手があったかっ!』みたいな
顔してんじゃねぇよっ!」
叫びつつ、胸倉を掴んでくる土方に、銀時は まぁまぁ。と両手を上げる。
「だってよぉ、ホラ、良く考えてみ?
・・・それだと楽しみ倍増じゃね?」
「無駄に真面目な顔してよく言いやがったな、コノヤロー。
ってかオメーも本当に買おうとしてんじゃねぇぇっ!
一体何に使う気だっ!」
土方の声に銀時も視線を向ければ、ソコには露店の主に
金を渡そうとしている沖田が。
そう、新八に使うのでないとすれば、一体何に使う気なのか。
と言うか、誰に使う気なのか。
訝しげに見詰める銀時達の前で、料金を払い終えた沖田が
薬の入った小瓶を掲げ、ニヤリと口元を上げた。
「勿論・・・旦那にでさァ」
その言葉に、ポカリと口を開ける二人。
そして銀時は少しずつ顔を青褪めさせ、土方は銀時の胸元を掴んでいた
手をポトリと落とした。
「え?あれ?なんか幻聴聞こえちゃったよ?
おっかしぃなぁ、呑みすぎたかな、これ」
あははと乾いた笑い声を上げる銀時に、土方が落とした手を上げ、
ポンと銀時の肩に置いた。
その顔は、何故か清々しい笑顔だ。
「安心しろ。ドS同士、完全無敵にお似合いだ」
「何に安心!?完全無敵に最悪じゃねぇか!
反発しまくりで寧ろ離れる一方だよっ!
その方がいいんだけどね!?
てか幻聴に答えてんじゃねぇぞコノヤロー!!」
先程とは違い、今度は銀時が土方の胸倉を掴み上げる。
だが、すぐさまその手を土方に掴み返されてしまった。
気が付けば時既に遅し。
がっちりと捕まれた腕に、逃げ場のない事を知った銀時の顔から
どんどん血の気が失せていく。
「現実逃避もそこまでだな」
「ちょっ、テメーッ!!!
って言うか逃避なら今すぐさせろ、マジで」
暴れだす銀時をしっかりと捕まえたまま、土方がニヤリと笑う。
「よぅし、総悟。俺からの祝いだ。
捕まえててやるから今すぐサクッと飲ませちまえ」
「や、マジでタンマッ!
ほら、アレだから。そんな事になったら新ちゃんが泣いちゃうから。
銀さんも本気で泣くから。」
「大丈夫だ、新八の涙は俺が拭いてやる。
テメーのは総悟に拭いてもらえ」
「させねぇし、しねぇよっ!
何ソレ、聞いてるだけで怒りと恐怖で涙が出てくらぁ!!」
なんとか脱出しようとする銀時に、全力で捕まえていようとする土方。
そんな二人に、沖田が肩を竦ませながら近寄っていく。
そして・・・
「全く・・・夜も遅いんですから静かにして下せェ。
とりあえず土方さんも賛成のようですから・・・」
はい。と、持っていた小瓶を土方へと差し出した。
その瞬間、ピタリと動きを止める二人。
「・・・いや、はいってあの・・・飲ませる・・・んだよなぁ?」
小瓶に視線を向けながらも、恐る恐る土方が沖田に問い掛けると、
至って普通に そうですぜィ。 と頷かれた。
「旦那に、土方さんが」
と、楽しげに微笑まれながら。
「って、なんで俺ぇぇぇぇ!!!?」
オマエが飲ますんじゃねぇのかよっ!と叫ぶ土方に、沖田は
緩く首を振って返す。
「なんで俺が旦那に飲ませなきゃいけねぇんですかィ。
そんな人生を棒に振る程世間を儚んでいやせんぜィ?」
「あれ?なんか酷い事言われてる?
でも今はよしっ!
って、あんま良くねぇよっ!状況変わってねぇじゃん、ソレっ!!」
「いいからさっさと飲ませて惚れさせて下せェ。
そうすりゃ面白い上に新八ゲットで最高でさァ」
「最高じゃねぇよっ!
飲ませる訳ねぇだろうが、そんなのっ!!」
「だよなっ!信じてたよ、多串君。
やっぱやる時はやってくれる子だよ、お前はっ!!」
土方が慌てて銀時を離すと、二人は急いで沖田から距離を取った。
それに大きく溜息を吐く沖田。
「全く・・・いいじゃねぇですかィ。
そんだけ長く生きたんだ。残りの僅かな人生ぐらい
景気良く捨てて下せぇよ」
「良くねぇよっ!どんだけ短い天寿設定だ、コラ。」
「仕方ねぇ・・・おい、親父。
この薬、他にやり方はねぇのかィ?」
ジリジリと後ずさっていく二人に、沖田はじっと視線を向けながら、
背後に居る露店の主へと問い掛けた。
「へい、直接飲ますのがダメなら、髪の毛を薬の中に
入れて飲ませばばっちり効きますよ」
主の言葉に、ゆるりと笑う沖田。
「ってっ!なんで行き成り喋ってんだよ、このクソ親父っ!!」
さっきまで自分が問い掛けても笑うばかりだったのにっ!と憤る銀時に、
露店の主がニタリと笑う。
「お客様へのアフターサービスです」
「そんなサービス精神は遠くに投げ捨てとけぇぇっ!!!」
そう叫ぶなり、銀時と土方は脱兎の如くその場から逃げ出したのであった。
その後、病的な程几帳面に自分の周りを掃除する土方が見られ、
万事屋では何も口にせず、一歩も外に出ようとしない銀時の
姿が見られたと言う。
ちなみに、その後の万事屋・・・
「って!ちょ、神楽。何人の髪引っ張ってんだよ。
弱ってる銀さんに追い討ちですか!?」
「引っ張ってないネ、引っこ抜いただけヨ」
「あぁ?白髪でも見っけたのか?」
「見分けつかないでしょ、ソレ。
って言うかどうしたの?神楽ちゃん、苛め?」
「ならもっと徹底的にやるネ。
これはドSから頼まれたヨ」
そう言って銀時の髪を一本掴み、プラプラと揺らす神楽。
新八は不思議そうに首を傾げ、銀時の顔から血の気が抜ける。
「銀ちゃんの髪の毛一本が酢昆布三箱に変身ネ。
マダオも偶には役に立つアル」
にししと神楽は笑うと、じゃあ行ってくるアル。と言って
万事屋を飛び出していった。
「・・・なんなんですかね?
もしかして呪いの標的にでもなりました?」
銀さんの髪の毛が欲しいなんて。と、微かに苦笑しながら
新八は銀時の方へと視線を向け・・・ようとしたが、
既にその姿はなく・・・
「ちょ、待て神楽っ!
酢昆布四箱あげるからっ!おまけに300円あげるからっ!!
本当、もう・・お待ちになって下さいやがれコノヤロー!!!」
と言う声だけが、万事屋の外から聞こえてきたのだった。
*********************************
三万打お礼企画・第三弾
もんちょ様からのリクで「惚れ薬ネタで新ちゃん総受け」
と言う事でしたが・・・如何でしたでしょうか。
なんか総受けなのに、ほぼ新ちゃんが
出て来なかったんですけどぉぉぉぉ!!!(泣)
本当、すみませんι
こんな感じになりましたが、少しでも楽しんで頂けたら
嬉しい限りです。
企画参加、本当に有難うございましたvv
その日、近藤と土方は二人で街の中を巡察していた。
・・・と言っても、目立った攘夷志士達の動きもないし・・・と言う
少しばかり息抜きのような巡察だ。
天気も良いし、総悟も仕事なのに朝からどっか行ってるし・・・
まぁアレだ。今日はまだ命狙われてないだけいいとしよう。
そう言う事にしておこう。
じゃなきゃ俺の血管がもたねぇ。
と、序に部屋に積まれているだろう書類の山も頭から追い出し、
土方は胸元のポケットからタバコを取り出した。
その時、立ち並ぶ店を見ていた近藤が、突然小さな声を上げた。
「なぁトシ。アソコに居るの、総悟達じゃないか?」
「はぁ?」
近藤が指す先、そこに視線を向ければ、見慣れた頭が一つ、二つ、三つ・・・
その瞬間、息抜きのような巡察が終わりを告げたのだと言う事を
土方は哀しくも理解したのであった。
「お~い、三人共集まって何してるんだい?」
呼びかける近藤の声に、こちらを振り返る三人。
こう言う時だけは素直に反応しやがって・・・と、思わず舌打ちしたくなるが、
それを押さえ、土方も近藤に続いて三人の元へと近付いた。
「どうせロクでもねぇ事してんだろうが、テメーラは」
「ロクでもない男に言われたくないネ」
「そうでさァ、大体こんなトコで何してんでィ。
もっと血反吐吐くまで働いて来いよ、この税金泥棒」
「テメーだけには言われたくねぇんだよ、その言葉!」
言い争う土方達を余所に、新八は近藤へと声を掛けた。
「お二人は巡察ですか?」
「あぁ、天気もいいしね、こう言う日は外に出なきゃ」
で?新八くん達は何してたの?そう聞いてくる近藤に、漸く
言い争うことを止めた沖田が これでさぁ。 と軽く
片手をあげた。
その手の中には・・・
「携帯?」
「えぇ、ちぃっとばかし壊れちまったんでね、
機種変してきたんでさァ」
ホラ、ピッカピカの新品でさァ。そう言って手にしていた携帯を
ブラブラと振る沖田に、新八と神楽が言葉を続ける。
「僕達は途中で沖田さんに会って、それに付き合ってたんです」
「凄いネ、電話なのにカメラでゲーム機ヨ」
興奮気味に言う神楽に、近藤がやんわりと笑う。
「そうだなぁ。言われて見れば凄いものだな、携帯は」
「ですよね。色々機能があり過ぎて、僕だったら使いこなせませんよ」
「なんだ、お前らは持ってねぇのかよ」
近頃では子供でも携帯を持っている世の中だ。
新八の言葉に、土方が不思議そうに問い掛けると、キラリと眼鏡が
光るのが見えた。
「土方さん・・・何事にもお金という物がかかるんですよ?」
「・・・ですよね~」
とりあえず今の新八に逆らってはダメだ・・・と
判断した土方は、素直にそれを肯定する。
だってアレは絶対に逆らってはいけない№1の
オカンオーラだっ!!!
「でも持ってると中々便利なもんだぜィ?
好きな時に好きな所で問答無用で
呼び出せやすから」
「それはそうでしょうけど・・・って、何?そのパシリ要員!
嫌ですよ、なんか何処に居ても縛られてるみたいで」
「それが目的でさァ。
実際旦那も持たせたいと思ってるんじゃねぇですかィ?」
「目的は判りませんけど、前に言ってはいましたね。」
ね?神楽ちゃん。と、新八は隣に居た神楽へと同意を求めた。
それに頷く神楽。
「でも家族割り出来ないって言われて泣く泣く諦めたネ」
「家族割り・・・って」
あのヤロー、家族なんていたか?と土方が不思議に思い呟けば、
新八、神楽は自分を、そして沖田はその二人を指差していた。
思いっきり普通の顔をして。
「・・・・あぁ、そう」
カクリと疲れたように肩を落とす土方の横で、神楽達が
使えないだの嘘つきだのとグダグダと騒ぎ始める。
いや、使えないのはお前らの常識だ。
とりあえず、顔も名前も知らないが、その時対応したであろう担当
に同情を寄せる土方であった。
「な、なら新八君っ!俺と家族割りにしようっ!
勿論お妙さん込みでっ!!!」
「悪いネ、ゴリ。ペットも家族じゃないって言われたヨ、
定春の時」
「あれぇぇ!?何か酷い事言われてない?俺ぇぇ!!!
違うから、そうじゃなくてちゃんとした家族として・・・」
「その前に頭割られますからね、その発言。
控えてください」
にっこりと姉譲りの微笑で言う新八に、今度は近藤がカクリと肩を落とす。
「まぁいいんじゃねぇか?別にそんなの持たなくても」
近藤の肩をポンと叩き、土方がタバコの煙を吐き出す。
「んなの持ってても、電話するぐらいしか使わねぇよ」
なら家ので十分だろうが。と続き、新八達は軽く頷いた。
確かに、大抵出かける時は三人一緒なのだし、それぞれが出掛ける時
にしても、行き先はほぼ判っている。
ならば、余分な金を使ってまで携帯を持つ必要も・・・
そう思った時、それまで黙ったまま携帯を弄っていた沖田が
首を振りながら割って入ってきた。
「全く・・・今時そんな使い方してんのは、硬派気取ってるものの
実は携帯機能に脳みそが付いて行かない、寧ろ
みその代わりにマヨが詰まってそうなヤツしかいやせんぜィ?」
「おい、ちょっと待て。それは俺か?
明らかに俺の事だよなぁ!?」
「やれやれ、自意識過剰もいい加減にして下せェ。
それ以外の誰が居るってんでィ」
「オマエ本当、一回日本語勉強しなおして来いや。
って言うか人格矯正してこい、マジで」
「あ~はいはい。面白みのねぇツッコミど~も。」
ギリギリと眉を吊り上げ、刀に手を掛ける土方を軽くいなし、
沖田は新八の肩へと腕を回し、引き寄せた。
そしてヒョイと自分の携帯の画面を新八の前へと差し出す。
「それより新八、やっぱ携帯はいいですぜィ?
ほら、エロサイトもSM系アングラも見放題でさァ」
「ちょっ!アンタなんてもん見せるんですかぁぁあ!!!!
ダメですよね、普通にダメですよね、それ見ちゃぁぁ!!!」
一応未成年でしょっ!!!と、慌ててそれを両手を差し出し
押しのけようとする新八だったが、
沖田はそれを許さず、ニヤニヤと逆に画面を近づけていく。
「安心しなせェ。名義もカードも土方さんで
登録してまさァ」
「おぉぉぉおおいっ!
何してくれやがってんだ、テメーはっ!!!」
沖田の言葉に顔を青褪め、非難する土方。
それに対し、沖田は新八の肩に腕をまわしたまま
緩く首を振る。
「なんでィ、どーせその手のサイトに足繁く通ってんだから
今更ソレが一つや二つ・・・二十ぐらい増えたって
どうって事ねぇでしょうに」
「え?・・・そうだったんですか、土方さん」
沖田の言葉に、新八の目から僅かに温度が下がる。
「いや、だから何で変なトコだけ素直ぉぉぉぉ!!?
行ってねぇよ、電話onlyだよ、俺は。しかも仕事関係の。
って言うか何!?その異常増殖ぅぅぅ!!!」
「そんな寂しい事堂々と宣言しないで下せェ。
ちなみに地○通信にも土方さんの名前を登録済みでさァ」
「ちょ、それもっとダメェェェっ!!!!」
暴れだした二人からなんとか脱出してきた新八は、
あちらの雰囲気とは全く違い、のほほんと沖田のものとは違う携帯を
弄っている神楽の下へとやって来た。
「神楽ちゃん、それ、誰の携帯?」
「ゴリのネ」
そう言うと神楽は携帯を新八の方へと向け、微かに指を動かした。
何をしているのか判らない新八を余所に、神楽は
間抜け顔が取れたネ。とにししと笑っている。
その事に、新八はコトリと首を傾げた。
だって、確か写真を撮る時は音が鳴るようになっている筈だ。
だが、見せられた画面には、確かに自分が映っていて・・・
「神楽ちゃん、ちょっとソレ、貸してくれる?」
新八は神楽から携帯を受け取ると、ニコリと微笑み、
「確かコレ、画面が反対にまわるんだよね?」
と言って、バキリと二つにへし折った。
「えぇぇ!!?ちょ、俺の携帯ぃぃぃ!!!?」
「うっせぇよっ!既に携帯じゃなくて
盗撮道具じゃねぇか、これぇぇ!!!」
その光景を、沖田達を止めようとしていた近藤が見て声を上げるが、
すぐさまへし折られた携帯を投げつけられ、言葉もなく沈黙した。
「おぉ!携帯は武器にもなるアルカ」
「偶にね。」
目を輝かせる神楽と、冷ややかな視線で肯定する新八。
その向こうで、楽しそうな沖田の声と、最早絶滅寸前となった
土方の血管が切れる音が響いた。
「・・・やっぱ電話ぐらいしか使わねぇよな」
寧ろその頻度が高すぎるのだけれど。
子鬼共が去った後、土方は道端で伸びている近藤を横目に、
懐から携帯を取り出すと、力ない仕草で屯所の番号を呼び出す事にした。
と言うか、寧ろそれ以外の機能を取り去って欲しい・・・と願いながら。
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三万打お礼企画・第二段
カノウ アキラ様からのリクで「10代組が20代組の誰かを弄る話」
と言う事でしたが・・・如何でしょうか?(ドキドキ)
なんかあまり弄れ切れてないような感じが・・・す、すみません~ι
折角10代トリオが好きと言ってくださったのにっ!(泣)
でも、少しでも楽しんで頂けたら嬉しい限りですv
これからも、隙を見ては10代組でバタバタしていく予定ですので、
どうぞよろしくお願いします。
企画参加、本当に有難うございましたv
・・・やっぱ、おかしくね?
既に下の店も静まり返った夜更け。
銀時は一人部屋の中、ソファに座り込んで闇の先を見詰め・・・
・・・いや、正しくは新八達が寝ている和室を睨んでいた。
「今日は泊まってくアルカ?」
何時もの帰る時間になっても、その素振りを見せない新八に
神楽は不思議そうに首を傾げた。
「あぁ、そう言えば神楽ちゃん遊びに行ってていなかったっけ」
夕飯の少し前に姉である妙から、今日は友人を泊めるから・・・
と言う電話があったのだ。
だから今日は泊まってくね。と言う新八に、神楽はフーンと答えたものの、
僅かに嬉しそうに口元が緩んだのを、銀時は見た。
「ま、アレだ。そう言う訳だからオマエはさっさと寝て
何があっても起きてくるな。
起きたとしても布団から出てくんな、
オマエにはまだ早い。」
「何がだよ」
「判ったネ。」
銀時の言葉にツッコミを入れようとした新八だったが、
それとほぼ同時に素直に頷く神楽に、ポカリと口を開いた。
「え?ちょ、神楽ちゃん?」
「おいおい何だよ、漸く子供としての立場を理解しましたか?
よし、判った。お前の協力は無駄にはしねぇ。
弟と妹、どっちが欲しいんだ?」
「いや、意味が判らないですからね?
と言うか銀さんの思考回路が判りませんからね?
アンタは弟云々の前に常識を欲しがって下さい」
「両方欲しいけど、天パ成分はいらないから遠慮しとくネ」
「大丈夫だ、子供にこんな重荷は
背負わせねぇって心に決めてるから。
だからそんな遠慮はすんな。俺達・・・家族だろ?」
「いや、そんないいお話的な事言われても違いますからね?
根本的に色々と大々的に間違ってますからね?」
って言うか神楽ちゃんも何言ってんのっ!怒りからか照れからか・・・
多分照れだな、うん。まぁそんな感じで顔を赤く染めながら
新八が言えば、神楽は不思議そうに首を傾げた。
「だから早く寝るって話ネ。ほら、新八もさっさと寝る支度するヨロシ」
「え?だってまだそんな時間じゃない・・・ってそうじゃなくてっ!」
神楽に急かされ、慌てている新八を見て、俺はニンマリと口元を上げた。
だってこれ、アレじゃね?
神楽公認ってこたぁ、今夜は色々やっても邪魔が入らねぇって事だろ?
弟も妹も作り放題って事だろ?
うわ~、ヤバクね?それってヤバクね?
普通に幸せ満喫じゃん。
色んな意味で天国気分じゃん!?
いや、何時もの制限アリな感じでってのもいいけどさ、
プレイみたいで。
でもやっぱりこう・・・普通にまったり朝までコースってのも
やってみたかったんだよね~。
何時もの無理矢理ぐったり朝までコースじゃなくて。
良い子に育ったな、神楽。等としみじみと思っていると、
新八の態度に焦れた神楽が ガーッ と唸りながら新八の手を
引き、そのまま和室へと放り込んだ。
サービス精神満載だなぁ、おい。
「ったく、グダグダ煩いネ!さっさと支度して川の字で寝るアル!」
「「・・・・は?」」
叫ばれた言葉に、俺と新八の声が重なった。
「折角のお泊りネ。皆で寝るのがヨロシ」
ニコニコと笑って言う神楽に、呆然とする俺の視線の先で
思いっきり胸を撫で下ろし、ホッとしている新八が見えた。
いやいや、違うから。
そこは残念そうな困ったような顔をして、突拍子も無い事言い出した
娘を嗜める所だからね?新ちゃん。
「そっか~、そうだよね、うん。
折角だし、川の字しようか?」
「おぅ!そうすれば寒さも吹き飛ぶネ」
「いやいやいやいや、ちょっと待て、お前ら」
既に三人で寝る事が決定の様にはしゃぐ二人に、俺は片手を挙げて
待ったを掛けた。
「なんですか、銀さん」
「や、だってアレだよ?
流石の銀さんも、神楽の前で公開プレイは・・・」
「銀さん、公開処刑が希望ならそう言って下さい。
誰の前だろうと決行させて頂きますから」
にっこりと笑ってそう告げてくる新八は、まさに天使でした。
お迎え的な。
すみません、ちょっと雰囲気につられてはしゃいじゃいました。
あ~ったく、仕方ねぇなぁ。
ま、神楽は一度寝れば滅多に起きる事の無い良い子だから、
その時を狙って・・・
と、大きく溜息を吐いて俺も二人に続こうと足を踏み出したが、
何故かポスンという感触が胸元へと寄越された。
見ればそれは、何時も使っている俺の枕で・・・
「あぁ?」
「定春、早く来るヨロシ。
三人で川の字ヨ」
神楽に呼ばれ、渡された枕を抱え首を傾げている俺の横を
のしのしと定春が歩いていく。
・・・って・・・あれ?
「じゃあ銀さん、お休みなさい」
「お休みヨ~」
「おう、お休み~・・・じゃねぇよっ!」
そう言って和室の襖を閉めようとする二人に、俺は慌てて近付いた。
「どうしたネ、もう川の字は完成ヨ?」
銀ちゃんの入る隙間はないネ。と至って普通の事の様に断言する
神楽に、いやいやいや。 と頭を振る。
「ここは普通俺、新ちゃん、オマエで川の字だろうが。
なんで銀さんを省いて定春投入!?」
「だって除け者にしたら定春が可哀想ヨ」
「俺の方が可哀想だろうがっ!!!
ちょ、マジもういいから。普通に行こうぜ?普通に」
「だから普通に新八と私と定春ネ。
邪魔してんじゃねぇぞ、天パ。
無理矢理入り込んで折角の川の字を
跳ね散らかすつもりアルカ!?」
「そんな気は更々ねぇよっ!
天パか?天パの事言ってんのか、コノヤロー。
大体無理矢理って・・・坂田家の坂田の意味、
判ってますぅぅ!!?」
和室の入り口で言い合う俺達に、まぁまぁ。と言う新八の声が掛かった。
見れば苦笑を浮かべている一人の天使。
あぁ、やっぱり頼りになるのはオマエだけだよ。
言ってやって、ガツンと言ってやって。
もう銀さんが居ないと眠れない体ですって!
期待を込めて言葉の続きを待っていると、新八はそっと神楽の横を通り、
俺の前までやって来た。
そしてにっこりと微笑み、渡される毛布。
・・・・毛布?
「大人なんですから、我慢して下さいね」
「いやいやいやいや。え?あのちょ・・・えぇ!?
違うよね?ここは違うよね、言うべき言葉も相手もぉ!?
ってか大人だからこそ我慢できないものがっ!」
そう言った瞬間、新八の手がガッと伸び喉仏を捕まれた。
「ちなみに僕はまだ子供だから、
我慢出来なくても仕方ないと思いません?」
何が!!?
と聞きたかったが、それを言ったら最後だと、
目の前のお迎えの天使の目が物語っていたので止めておいた。
空気がギリギリ読める男で良かった、銀さん。
無言で頷く俺を見て、漸く新八の手が離れて行く。
普段新八とはずっと触れ合っていたいと思っている俺だが、
時と場合があると言う事を思い知った瞬間だ。
・・・だが、やはり何か納得出来ない。
俺は枕と毛布を抱き締めたまま、じっとりと二人を見詰めていると、
神楽がこれ見よがしに大きく息を吐いた。
「仕方ないアルネ・・・」
その言葉に、きらりと目を輝かせる。
よし、諦めなくて良かったよ、俺。
これはアレだよね、入れてくれる感じの前振りだよね?
「銀ちゃん・・・特別に入れてあげるネ、川の字」
その言葉に内心ガッツポーズを取るものの、全力でそれを隠し、
顎に手を当てて新八達に視線を向ける。
やっぱり、一応大人としてのポーズもつけとかないとね。
・・・遅すぎとかじゃないから、多分。
何事も遅すぎるなんて事、ないからね!?
「あ?あ~・・・でもなぁ、定春が可哀想なんだろ?
それをどけてってのはなぁ・・・あ、でもやっぱりお前等だけだと
バランス悪いし?やるなら完璧目指さないといけねぇしな、うん。」
渋々と言った感じで神楽の言葉を受け入れると、コクリと
笑顔で頷く神楽が見えた。
あぁ、やっぱりオマエは良い子だったよ、神楽。
オマエならきっと、朝になって川の字が少し変化してても
見逃してくれるよな、きっと。
「だから銀ちゃんは『の字』を担当するヨロシ」
「ってどんな担当ぉぉぉ!!!!?」
ホッと胸を撫で下ろし、和室へと足を踏み出そうとした俺に
そんな言葉がかけられ、抱えていた枕と毛布を床へと叩きつけた。
「完璧を目指さないといけないって言ったのは銀ちゃんネ。
川の部分はもう完成してるから、それ以外をやるヨロシ」
「その完成部分を変更しろよ。
ってか出来ないから、絶対出来ないから、一人『の字』」
「パーツ分解すれば全然平気ヨ」
「俺が平気じゃねぇよ、全然。
死亡フラグ完成じゃねぇかぁぁ!!!!」
「なら諦めるヨロシ」
そう言うと、神楽は新八共々和室の中へと入り、襖を閉めてしまった。
慌ててそれを追い襖に手を掛けた俺だったが、直後に
「分解・・・手伝うカ?」
と言う声が中から聞こえ、素直に手を引かせて貰った。
うん、空気読める男だからね?銀さん。
・・・ギリギリだけど。
で・・・だ。
一応神楽が寝静まってしまった後なら分解も何もないだろう・・・と
時間を置いて、こっそり川の字に参加しようとしたのだが・・・
普通に寝相で分解されそうになりました。
それはもう、実は起きてました~・・・と言われても
納得するような的確さだった。
や、違うからね?あれはあくまで寝相だから、寝相。
そうでなきゃ、分解寸前まで銀さんの事、ボコったりしないから。
仲良し家族だからね?坂田家は。
特に子供は寝相が悪いってのがお約束だから。
や~、参ったなぁ、寝てる時も元気があって。
え?違うよ?泣いてる訳じゃないよ?
これ欠伸だから。欠伸したら出てきただけだから。
だから全然平気・・・
「だけど納得できねぇってぇのっ!!!」
と、再びソファから立ち上がった銀時は、その後
再び分解寸前まで追いやられ、部屋の隅で伸びたまま
朝を向かえる事となるのであった。
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三万打お礼企画第一弾。
がっつり三万打を踏んで頂いた蒼月様からのリクで
『真の坂田家・川の字』です。
如何でしょうか、最終的には『川 、』となりましたが、
がっつり弄れましたかね?(笑)
弄り具合が足らないようでしたら、もう一つのアレで
がっつりリベンジさせて貰いますっ!
・・・ってかします(おいι)
お祝いのお言葉、並びに素敵な萌えの源、
本当に有難うございましたぁぁあ!!
少しでも楽しんで心がすっきり(え?)して頂けたら嬉しいですv