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その日、定春を洗おうと言う無謀なチャレンジの末
万事屋のお風呂が壊れ、早めに帰宅する新八と共に、
銀時と神楽も志村家へと向う事となった。
ちなみに一々来るのも面倒と言うこともあって、
数日間のお泊りセットもばっちり持参だ。
「定春だけで大丈夫ですかね?」
心配気に言う新八に、隣を歩いていた神楽が自信有り気に
胸を叩く。
「大丈夫ネ。定春は何処かのマダオみたいに
一人寝が寂しくて自棄酒&不貞寝なんかしない良い子ネ」
「・・・何処のマダオだよ。
別に知りたくも無いけど。
じゃなくて、泥棒とか・・・」
まぁまた朝には行くから、エサとかは大丈夫だろうけど。
と、眉を下げる新八に、今度は神楽の隣を歩いていた銀時が
ダルそうに答える。
「それこそ大丈夫じゃね?
アイツの存在はセ○ム以上だ。
あ、それとも泥棒の心配か?なら安心しろって。
ちゃんと掘って埋めとくだろ。
ヤツの犬の習性を信じろ。」
「安心できねぇよ。
ってかそれのどの部分で安心できるんですかっ!
これから疑心暗鬼な毎日じゃんっ!!」
いっその事一緒に連れてくれば良かった・・・と思い、大きく息を吐いた。
だが、昼間ならまだしも、要塞モード状態となった夜の庭に
あの巨体で入られたらシャレにならないし、常時在住とも言える
自称愛のハンターを本物の野生の本能で狩られても困る。
それに万が一何かがあって、定春の
犬の習性に頼る羽目になっても、
なんだか普通に蘇ってきそうだし。
・・・多分それは安心していい所なんだろうけど、
やっぱり普通に怖いしキモイ。
結果、定春だけはお留守番と言う事になったのだが・・・
「・・・今更な心配だったかな・・・」
ははっと乾いた笑みで呟く新八の視線の先。
辿り着いた志村家からは、現在進行形で
本物のハンターによる雄叫びと、
狩られているだろうゴリラの悲鳴
が聞こえてきた。
「あら、皆お帰りなさい」
そう言ってやんわりと微笑みながら銀時達を迎えてくれたお妙だが、
どうした事だろう。
すぐさま『いってらっしゃい』と言って見送って欲しいと
切に願ってしまうのは。
そうは思うものの、躾はきっちりと、それこそ文字通り
体に刻み込まれた新八は、なるべく下を見ないようにして
帰宅の言葉をお妙に告げた。
それに続き、神楽や銀時までもがきちんと帰宅の言葉を告げる。
やはり視線はひたすら真っ直ぐ、おまけに背筋も真っ直ぐだ。
「え!?何ソレ。
なんで万事屋までここに帰って来てんのぉぉ!!!?」
だが、不意に銀時達の足元から驚きの声が上がり、
銀時と新八は溜息を、そして神楽は冷ややかな視線を落とした。
「って言うかそれはこっちの台詞なんですけど。
なんでここに居るんですか、近藤さん」
「新八、それは愚問ネ。
寧ろ居ない方が不思議ヨ」
「てかなんで足蹴にされてんだよ。
プレイか?そう言うプレイなのか?
止めてくんない?こっちは年頃の子達が居るんだからさぁ。」
「馬鹿を言うな、万事屋っ!
これはそんな如何わしいモンじゃなくて
愛の重みと暖かさを伝えてもらっている
最も尊い行為なんだぞっ!!
ね、お妙さん」
「やだわ~近藤さん。馬鹿な事しか言わないのは貴方もでしょ。
って言うか誰が重いって?ああん??」
「ぐぅほっ!
い、いやお妙さんが重い訳ないじゃないですかっ!
寧ろ天使の如く軽く、今にもこの地から飛び立ってしまいそうな・・・」
「あら、なら近藤さんは相当重いのかしら。
地面に減り込んでますよ、顔。
そのまま地獄の果てにでも落ちて行きそうなぐらい・・・
ってか落ちろよ、もう」
「・・・や、姉上。もう本当に落ちる寸前ですから、それ」
笑ってはいるが、明らかに背負っているオーラがその表情を
裏切っている。
ギリギリと近藤の頭に乗せている足に体重を掛けていくお妙に、
流石に不憫に思ったのか、新八からストップが掛けられた。
その声に、渋々足を下ろすお妙だったが、直ぐに表情を変え、
今度こそ本当の笑顔を浮かべた。
「ま、いいわね。時間・・・と言うか人生の無駄だし。
それより今日は神楽ちゃん達も泊まっていくんでしょ?
折角だから私も仕事、お休みしたのよ?」
一緒にお風呂、入りましょうね。そう言うとお妙は神楽を
連れて家の中へと入っていった。
「・・・で、コレどうすんの?」
二人を見送った銀時達の足元には、止めた甲斐なく、
既に落ちてしまった近藤の姿が・・・
新八はカクリと頭を垂れると、中に連れて行きましょう。と告げた。
「そんな事して怒んねぇの?お前のネェちゃん」
「既に何時もの事ですからね。
すみませんが縁側にでも運んでおいて下さい」
僕、救急箱持ってくるんで。新八にそう言われ、銀時は
軽く返事をしながら、未だ沈黙している近藤の足を掴んだ。
「・・・・・あ?」
「あ、戻ってきやがった」
掛けられた声に視線を向ければ、座敷に座ってお茶を飲んでいる
銀時の姿が見え、近藤は微かに目を瞬かせた。
何時もなら気付いた自分に声を掛けてくれるのは新八君なんだが・・・
なんで万事屋?・・・と、ソコまで思い、そして落ちる寸前の会話を
思い出して、小さく納得の声を上げ・・・
「・・・ってちっげぇよっ!
ちょ、なんでお前がここに帰ってきてんのぉぉぉ!!!?」
しかも泊りってっ!!勢い良く体を起こし、にじり寄って来る近藤に、
銀時はペシリと湯呑みを置いた手を振り下ろす。
「うるせぇよ。仕方ねぇだろ?風呂が壊れたんだから」
「だからって何で泊まりぃぃ!!?帰ればいいじゃん。
普通に帰ればいいじゃん、そんなの!」
「湯冷めすっだろうが。
大体なんで態々自分から新八と離れなきゃいけねぇんだよ。
そんな選択肢なんか存在するわきゃねぇだろ。
俺の足は常に新八に向って突き進んでいるんですぅ」
「俺の足だって常にお妙さんへと突き進んでいるわぁぁ!!
よし、そう言う事で俺も泊まろう」
「いや、その前にお前の時間が止まるから。
確実に人生の終着駅へと
迷い無く突き進んでるからな、ソレ。
ってか何お前、本当なんなの?
何時もあんな事されてるんですかコノヤロー」
突然眉を顰めて睨みつけてくる銀時に、近藤は何の事か判らなく
首を傾げる。
すると突く・・・と言うには勢いがあり過ぎる感じで額に
人差指を突き立てられた。
その瞬間に走った痛みに、近藤は小さく悲鳴を上げると慌てて身を引き、
突き立てられた部分に手を翳した。
そして感じる、サラリとした布の感触。
見れば腕にも手当てされた跡があり、あぁ。と近藤は
恥ずかしそうに笑みを浮かべた。
「また新八君に面倒を掛けてしまったか・・・」
「掛けてしまったかじゃねぇよ。そう言うのは俺の特権なんですぅ。
何?そんなに人生儚んでんの?
自殺願望故の行動だと受け取るよ?俺」
言い方はアレだがキラリと光る目が銀時の本気を物語っている。
・・・ってかなんで延命処置的なモノが
真逆のモノに受け取られてんのぉぉぉぉ!!?
慌てて首を振って違うと示すが、どうも相手は納得していないようだ。
嫌な汗を流す近藤と、無駄に目が煌いている銀時。
そんな二人の間に、一つの声が落ちてきた。
「あ、近藤さん気付きましたか」
「し、新八君~!!!」
「え?なんで涙目?
そんなに今日のはきつかったんですか?」
心配げに聞いてくる新八に、近藤は緩く首を振った。
その顔は涙目ながらも何処かホッとしているようで、新八は軽く首を
傾げるものの、直ぐに近藤へとお茶を入れて差し出す。
「とりあえず真選組には連絡しておきましたから、
もう少ししたら迎えに来て貰えると思いますよ?」
近藤はその言葉とお茶に礼を言いながら湯呑みを受け取ると、
不意に横から空になった湯飲みが新八へと差し出された。
「本当、少し加減てものを覚えて下さいね。
連絡するのもタダじゃないんですから」
無言のまま差し出されたソレを、新八は近藤にお小言を言いながら
受け取り、お茶を注いで差し出した銀時の元へと返した。
それを受け取り、黙ったままお茶を飲む銀時と、自分の分を
注ぎだす新八。
その光景を見て、近藤はふとある違和感を感じた。
見れば二人の湯呑みは大きさに違いはあるものの、何処か似ている
造りのもので。
新八が持って来たお盆の上に伏せられている他の二つも、
やはり似ている造りのもので。
だが・・・と視線を落とせば、ソコには明らかに客用と見られる
モノが自分の手の中にあって。
・・・あれ?
ふと湧き上がった疑問に、近藤が首を傾げる間もなく、
新しい声が座敷の中へと入ってきた。
「新八~、銀ちゃ~ん。私、今日は姉御と一緒に寝るネ」
どうやら風呂に入っていたらしい。
タオルを首に掛け、髪を濡らしたまま入ってきた神楽に、
慌てて新八が腰を浮かす。
「あぁもうっ!ちゃんと髪の毛拭いてきてって何時も言ってるでしょ!」
そう言うものの、新八の手は既にタオルへと伸びていて、
神楽をその場に座らせると、優しい手付きで髪を拭いていく。
「それはいい・・・ってか大歓迎だけどな。
あんま迷惑掛けんなよ?怒らすと怖ぇからな、マジで」
銀時は髪を拭いている新八へと手を伸ばすと、そのままタオルを
受け取り、変わりに些か強めにその手を動かした。
それを見て、新八がドライヤーを持ってくると言ってその場を後にした。
残された神楽と銀時は、乱暴だの我慢しろだのと騒ぎながら
髪を乾かしていたが、ふと視線を感じ、二人して
その視線の元へと顔を向けた。
「・・・何ネ。ニヤニヤして気持ち悪いヨ。」
神楽が吐き出すように視線の主である近藤に告げるが、
近藤は気にもしていないようにヘラリと頬を緩めるのを
止めなかった。
それに訝しげな視線を送る二人。
それを受け、近藤が笑顔のまま いや、何て言うかさ。と答え、
「さっきは泊りがどうとか言ったが・・・見てるとアレだな。
嫁さんの実家に泊まりに来た家族みたいだな、お前ら」
と、益々笑みを深めた。
それを聞き、銀時と神楽は一瞬キョトンとしたものの、
直ぐにニヤリと口元を緩める。
「当然ネ。私達は家族も同然ヨ。
だから私達の家は私達の。
新八の家も当然私達の家ネ」
「ってかゴリもアレだね。中々良いトコ見てんじゃないの。
流石野生は違うね、いいよ~、その観察眼。
後で取って置きの覗き場所教えてやる」
「いや、野性でもないし、誰でも判るからね、その雰囲気。
ってそんな場所があるのかぁ!?よし、防犯上の事もあるので、
詳しく明細に教えてくださぁぁぁぁぁいっ!!!!」
銀時の言葉に、近藤が勢い良く頭を下げ・・・序に畳みに
額を減り込ませた。
見ればソコには、近藤の頭に足を乗せ、菩薩の笑みを
浮かべている修羅が・・・
「あぁら、こんな所にゴリラの敷物があるわぁ。
これって燃えるゴミに出せるのかしら?」
そう言うとお妙は白目を向いた近藤の襟に手を掛け、
勢い良く庭へと放り捨てた。
それを見送り、思わず拍手を送る銀時と神楽。
「どうかしました・・・って、あぁまた・・・」
ドライヤーを片手に戻ってきた新八は、目の前の惨状に
大きく息を吐いた。
そして、また手当てしなきゃなぁ。と思わず遠くを眺めたくなり、
飛ばした途中で、ふとお妙の所でその視線を止めた。
「あれ?姉上、お風呂入ってきたんですよね?」
「えぇ、そうよ?」
それがどうかした?と問い掛けるお妙に、新八は不思議そうに
首を傾げた。
「ならどうしてまだお化粧してるんです?」
「・・・・・・・・女の嗜みです」
そう答えたお妙の顔は、何時もと同じ表情ではあったが、
微かに頬が赤くなっている様な気がして・・・
今度は銀時と神楽が、今現在庭で意識を絶っている人物へと
やんわりとした笑みを送る事となったのだが、
送られた本人がそれに気づくのは、まだ先のお話になりそうである。
************************
三万打お礼企画・第七弾。
団子様からのリクで「坂田家とノーマルCPが絡む話」
と言う事でしたが・・・如何でしたでしょうか。
最後にほんの少しだけ近妙風味になれた気がするんですがι
・・・気のせいですかね?(おいぃぃ!!)
外れてるなんてとんでもないv毎度素敵なリクを
有難うございますvvv
少しでも気に入って頂けたら、嬉しい限りですvvv
企画参加、有難うございましたv
「失礼しや~す」
沖田はそう言うと、返事を待たずに目の前の扉を開けた。
「先生ぇ、持って来やしたぜィ」
中へと足を踏み入れながら、目当ての人物にそう言うが、
ここでもやはり返事は返ってこない。
さすがに変だと思い、沖田はキョロリと室内を見渡した。
すると窓辺でボーッと立っている銀八の姿を見つけ、
沖田は手に持っていたプリントをヒラヒラと振りながら
銀八の元へと足を進めた。
が、未だに銀八は沖田に気付かない。
ただボーっと・・・と言うかジーッと窓の外を見詰めている。
何か面白いもんでもあるのかねィ。
つられる様に沖田も視線を窓の下へと移すが、別に気を引くものは
何もない、至って普通の光景だ。
だが、その光景の中に、見知った顔を沖田は見つけた。
そしてもう一つ、見知らぬ女生徒の姿も。
声までは聞こえないが、雰囲気だけはヒシヒシと伝わってくる。
どうやら青春における一ページ的な光景らしい。
恥ずかしそうに、けれども必死な感じで新八に何かを差し出している
女生徒。
それを見て、これまた恥ずかしそうに、けれども困ったような
居た堪れない感じの新八。
そして、それをじっと見詰めている銀八。
よくよく見れば、その表情は怖いぐらいに無表情で、
沖田は小さく溜息を吐いた。
クラス内で地味だなんだと言われてはいるが、他人への優しさや
生真面目さ、面倒見の良さなどもあって、新八は結構もてる。
しかも見掛けで騒ぐ連中の様なものではなく、真剣なヤツラに。
その代表が、ここに居る大人なのだけど・・・
「先生ぇ、大人気ねぇでさァ」
ポツリと呟けば漸く自分の存在に気付いたのか、銀八が
ちらりと視線を寄越してきた。
「あ?何がだよ。ってか何でここにいんだ?」
「提出物を持って来たんでさァ」
ヒラヒラとプリントを振って渡すと、銀八はクルリと窓に背を
向けて受け取ったプリントへと視線を落とした。
「ったく、今頃出すなよ。
寧ろ出すな、ここまできたら」
提出期間ギリギリじゃねぇか。ブチブチと文句を言う銀八を余所に、
沖田は窓枠に肘を置くと、そのまま先程の光景を見詰めた。
「先生ぇ、あっちはもういいんですかィ?」
「・・・何がよ」
「新八、手紙受け取りそうですぜィ?」
そう言うと隣の銀八が微かに反応するのが感じられた。
だが、背は向けられたままだ。
それにチラリと視線を向けながら、沖田は今現在の状況を再び報告した。
「てか受け取りやした」
「・・・あ、そう」
興味無さ気にそう言い、あくまで背を向けたままの銀八に、
沖田は小さく肩を竦める。
それを感じてか、銀八は落としていた視線をプリントから外すと、
白衣のポケットからタバコを取り出して口へと咥えた。
「別にいいんじゃね?青春上等じゃねぇか。
いや~羨ましいねぇ、おい」
それはどっちが?
タバコに火をつけながら、自分の机へと戻る銀八に問い掛けてみたかったが、
上手く交わされるのが目に見えていたので、とりあえず止めにする。
そう言う所は嫌なぐらい大人なのだ、この男は。
沖田は既に誰も居なくなった窓の下から目を外し、体を反転させて
窓枠へと寄り掛る。
全く、本当は誰よりも先程の少年に固執している癖に。
偶にはそれを前面に出してみればいいのだ。
どうせ今更な社会的地位なのだし、その方が面白みがあるってもんだ。
自分的に。
「そう言うなら先生も青春したらどうでさァ」
皆、そっと見ない振りしてくれまさァ。そう言うと銀八は椅子に座ったまま
軽く手を振った。
「あ~無理無理。俺、もうそう言うの遥か昔に卒業してるから。
ってか何、その半端で生暖かい優しさ。
大体そう言うのは若いモンの特権でしょ。
俺等大人はただ見守るだけよ」
って事でお前もさっさと青春しに行け。と、今度は追い払うように手を
振ってくる銀八に、沖田は軽く肩を竦めながら、体を起こした。
「へいへい、だからさっきも見てただけって事ですかィ。
全く大人の余裕ってのは凄いもんでさァ」
見習いたくはねぇですけど。そう言う沖田に、銀八は一瞬目を丸くすると、
次に苦笑へと表情を変えた。
と、その時、コンコンと扉を叩く音が室内に響いた。
そして聞こえてくる、聞き慣れた声。
銀八はそれに答えると、扉が開き、予想通りの姿が現れる。
「あれ?沖田さん、何してるんですか?」
キョトンとした顔で自分を見てくる新八に、沖田はここに来た理由を
簡潔に述べた。
それに呆れたような顔を返す新八。
「全く、だから早く出しといて下さいって言ったのに」
「いいじゃねぇか、ギリギリでも間に合ったんだから。
それより新八はどうしてここに?」
部活に入っていない新八は、放課後になれば学校に居る理由がない。
・・・まぁ今日は理由があったようだけれど。
そう聞くと、新八は何かを思い出したかのように小さく声を上げると、
銀八へと視線を向けた。
「先生、なんなんですか、このメモッ!!」
そう言って突き出したのは折り目の付いた小さなメモ用紙で。
「ん~?そのまんまだけど?」
「そのまんまじゃねぇよっ!毎回毎回・・・どうせ呼び出すなら
HRの後にでも言ってくださいよ」
二度手間じゃないですかっ!そう怒る新八から、銀八に止められる前に
突き出されていたメモを奪い、視線を落としてみる。
ソコには見慣れた文字で一言。
『放課後、資料室まで』
「・・・これ、何処にあったんでィ」
「下駄箱ですよ。僕帰る所だったのに」
「毎回?」
「ほぼ毎日ですね。
他にもお弁当のおかずのリクエストとか
色々チョクチョクと・・・」
紙の無駄遣いですよ。ムッとしたままそう答えられ、
沖田はへ~。と返しながら銀八へと視線を移した。
そこには素知らぬ顔で何処かを見ている銀八が。
「・・・見守るだけ・・・ねィ?」
にやりと口元を上げ呟く沖田に、新八が軽く首を傾げる。
そしてその意味を聞こうとするが、その前に銀八から今日の手伝いを
言い渡され、ブツブツ言いながらもそれをこなす為、
資料室の奥へと足を進めていった。
残されたのは苦い顔をした銀八と、ニヤニヤ顔の沖田。
「・・・大人って言うよりガキでさァ。
まんま中二的な」
「そっと見ない振りしてくれるんじゃなかったの?」
「それは皆であって、俺自身の事じゃありやせん」
なんとも言えない表情で聞いてくる銀八に、酷く楽しげな顔で
そう答えれば、自称大人は盛大な溜息を吐いて肩を落とした。
**********************
三万打お礼企画・第六弾
姫りんご様からのリクで
「3Zで大人の余裕ぶっててもギリギリな銀八」
と言う事でしたが・・・如何だったでしょうか?
なんか単なるヘタレになったような・・・ι
まぁ何時ものことなんですが(おいっ!)
こんな感じになりましたが、少しでも楽しんで頂ければ
嬉しい限りですv
企画参加、有難うございましたvv
その日は中々の月夜で、神威は一人、気分良く夜の散歩と洒落込んでいた。
賑わう街もいいが、偶には普通の家が立ち並ぶ静かな場所を
歩くのもいい。
この立ち並ぶ家の中に、もしかしたら自分を
楽しませてくれるヤツが居るかも。
あの男のような・・・ね。
そんな事を思いながら家と家に挟まれた小道を歩いていると、
突然傍にある塀の上から、小さい物体が神威の足元と飛び降りてきた。
「おっ・・・と。」
塀に身を寄せてそれを交わし、見て見れば悠々とした足取りで
猫が歩いていくのが見えて。
「ありゃ、散歩道だったか。」
それは邪魔したね。と言う神威の呟きに答えるように、
一振り尻尾を回して歩いていく猫にクスリと笑う。
それを見送り、自分も散歩を再開しようと、寄り掛っていた塀から
身を起こそうとした所でクイッと何かに引っ張られ、
神威は笑っていた顔をキョトリとさせた。
何だ?と振り返ってみれば、古くなっている板の塀に、自分の
結んだ長い髪が絡まっていて・・・
「あ~あ、ついてないなぁ」
困ったように笑い、その絡まりを解こうと手を伸ばすが、
どうやら結構複雑に絡まってしまっているらしい。
中々解けないソレに、神威は小さく息を吐く。
ま、いっか。塀を壊せばいいだけの話しだし。
そう思い、手を上げた神威に、一つの声が掛けられた。
「あの・・・どうかしましたか?」
その声に顔を向ければ、少し先に小道の向こうから
誰かがこちらを窺っている姿が見える。
何やら警戒しているその様子に、自然と神威の口元に笑みが浮かんだ。
当たり前だろう。夜も更けたこんな時間に、塀に向って何か
しているのだから。
ん~、騒がれて散歩の邪魔されるのもアレだし、殺っちゃおうかな?
あぁ、でもあの様子からすると、まだ子供だよね、アレ。
女子供を殺すのはあんまり気が進まないんだよね~。
後々強くなるかもとか思うと、物凄く惜しいし。
そんな事を考えていると、何も答えない自分をますます怪しんだのか、
再びその人物から声を掛けられた。
ま、とりあえずこの状況を言ってみるだけ言ってみるか。
それでもし騒がれたら殺せばいいだけの話しだし。
・・・ま、信じないと思うけど。
そう結論付けた神威は、髪が塀に絡まってしまった事を
とりあえずその子供の影に告げた。
「え?大丈夫ですか?」
だが、その子供は神威の言葉を信じたらしい。
心配げにそう言うと、足早に近寄ってくる姿に神威の目が開かれる。
そして近付いてきたその顔に、今度はゆっくりと弧を描いたのだった。
一方、近付いてきた人物はそこに佇んでいる人物に、
心配げな顔を驚きの表情へと変えていた。
「な・・・んでアンタが・・・」
「そう言う君は、あの時居た子だよね?」
そう、今目の前に居る子供は、格好は違っていても
確かにあの時、吉原で自分に攻撃をしてこようとする妹を止めていた
人物で。
「ど~も、妹がお世話になってるみたいで」
神威はそう言って軽く頭を下げた。
それに釣られるように頭を下げ返す新八。
「いえいえこちらこそ・・・ってちがっ!!
いや、違わないけど!!でも、え?なんで!!?」
どうやら突然の出会いにパニックになっているらしい。
一人で慌てている新八に、神威の口元はやんわりと上がる。
「・・・なんでここに居るんですか」
暫しその慌てぶりを観察していると、漸く落ち着いたのか
新八は酷く警戒しながらそう神威に問い掛けた。
それにコトリと首を傾げる神威。
「さっき言わなかったっけ?散歩してたら髪が絡まったんだよ。
それにそんなに警戒しなくていいって。
俺、女子供はあんまり殺さない主義だから」
「いや、だからどうして散歩しててそうなるんですか?
なんでこんな時間にこんな所を散歩!!?
ってかあんまりって何!?
警戒解けないんですけどぉぉ!!?」
思わず新八がツッコムと、神威は困ったように笑みを崩して
肩を竦めた。
「こんな時間にそんな大声はよくないな。
近所迷惑も考えた方がいいよ?
安心しなって、俺はもう行くから。
この塀ぶち壊して」
「そっちの方が明らかに近所迷惑ぅぅぅ!!!」
「あ、また」
神威に指を指されて指摘され、新八は慌てて自分の口を
両手で塞いだ。
が、直ぐにそれを外して、今度は小さめの声で神威に問い掛けた。
「・・・なんで塀を壊すんですか」
「なんでって・・・髪が絡まってるから?」
解けないんだよね~。と笑う神威に、新八は大きく息を吐いた。
「判りました。僕が解きますから壊すのは待って下さい」
そう言うと、新八は未だ警戒しながらも、ゆっくりと神威の傍へと
近寄っていく。
そして背後へとまわると、塀に絡まっている髪へと手を伸ばした。
新八のその行動に、神威は不思議そうに向けた。
自分の事は妹である神楽から色々と聞いているだろう。
それに自分はそんなに手を出していないにしても、
敵対していたのは確かだし、現に阿伏兎とは戦ったと聞く。
なのにこの少年の態度はなんなんだろう。
一応警戒はしているものの、自分から見れば
そんなものは何の役にも立っていない。
無防備もいいトコだ。
神威の視線に気付いたのか、新八が解いている手元から顔を上げた。
「どうしました?」
「いや・・・君って本当は強かったりする?」
そう言えば夜兎の血が暴走した妹を止めたとも聞いた。
そんな思いから神威が問い掛ければ、新八は一瞬目を丸くし、
次に苦笑を浮かべた。
「そうだったら良かったんですけどね・・・全然ダメですよ」
「でもあの神楽を止めたんだろ?」
「あれは・・・ただ護りたくて必死なだけでしたから。」
本当に強かったら、皆にあんな怪我させません。そう告げる新八に、
神威はフーンと答えた。
確かに、この少年は強くはないのだろう。
では、何があの神楽を止められたのか。
この少年の言う通り、護りたいという思い故なのか。
「・・・それもまた別の強さってやつなのかな?」
「え?何かいいました?」
「ん~ん、別に?それよりもう解けた?」
声に出ていたのだろうか、不思議そうに問い掛けてくる新八に
逆に問い掛ける神威。
それに慌てた声で もう少しですっ! と返し、新八は
絡まった髪の毛へと視線を戻した。
「はい、もう大丈夫ですよ」
どれだけ時間が経ったのか、新八にそう言われ、
神威は寄り掛っていた塀から体を起こした。
丁寧に解かれたらしいソレは、さほど変わっておらず・・・
「すみません、不器用だから時間が掛かっちゃって」
苦笑して謝る新八に、神威は笑顔のままキョトリと見返す。
「あ~だからか・・・ならもっと適当で良かったよ?」
解かれた毛先を見ながらそう呟くと、何言ってんですか。と真剣な
表情で返された。
「髪は大切にしなきゃ。特に貴方は」
「・・・それ、何か意味が含まれてたりする?」
にっこり笑う神威に、慌てて両手を振る新八。
「い、いや別になんの意味も含まれてませんよ?
ただ綺麗な髪だから勿体無いなぁって思っただけですから。
あ、勿体無いって言っても、全然深い意味はっ!!」
「・・・君って結構墓穴掘るタイプだよね?」
「すいまっせ~んっ!
本当、すんまっせ~んっ!!!!」
土下座でもする勢いで謝る新八に、まぁいいけど。と手にしていた髪の毛を
離し、踵を返そうとした神威だったが、
続いた新八の言葉に、ピタリとその足を止めた。
「でも、本当綺麗だったし。
切らないですむならその方がいいじゃないですか」
「・・・そんなもんかな?」
自分ならばさっさと切るだろうし、それが嫌なら塀ごと壊すだろう。
現にさっきまでそのつもりだったのだ。
だが、目の前の少年はそれをせず、
警戒してる癖に酷く丁寧に自分の髪を扱ってくれた。
神威は そうですよ。とニコニコと頷く新八に、
再び髪の毛を手に取ると、絡まっていた部分に視線を落とした。
目の前の少年に丁寧に扱ってもらった、自分の髪。
今まで気にもしなかったけど、これからは少しは手を掛けてみようか。
そんな気持ちが不思議と浮かんできて、神威は一瞬そんな自分に戸惑いを
感じた。
「・・・にしてもアレですね」
そんな神威に気付かず、クスリと笑う新八に、神威は首を傾げる。
「やっぱり兄妹ですね。
神楽ちゃんと髪質がそっくり。」
だから尚更適当になんかできませんよ。そう言って嬉しそうに笑う
新八に、神威の頬がピクリと動く。
「・・・や、俺の方が綺麗だと思うけどね?」
「そうですか?二人とも同じぐらい綺麗ですよ?
って言っても神楽ちゃん、直ぐに適当にしちゃうから、僕がきっちり
ケアしてるんですけど」
その言葉に、再び神威の頬がピクリと動く。
へ~、アイツの髪までもきっちり護ってる訳ね。
・・・・うん、アレだ。
なんか判んないけど、これからはきっちり手入れしよう。
誰よりも綺麗な髪で居てやろう。
サラサラのフサフサで居続けてやろう。
そう心に決めて、神威はニコニコと笑っている新八へと
視線を戻した。
「そう言えばまだ名前聞いてなかったね。
俺は知ってると思うけど神威ね」
そう言うと、新八は慌てて自分の名前を神威へと告げた。
志村新八・・・ねぇ。
神威はやんわりと笑うと、そっと新八の頬へと手を添えた。
その頬は柔らかく、驚いていて目を丸くしているものの
反応は遅い。
体も小さいし、子供と言ってもギリギリのラインだろう。
そうなるとこれから爆発的に強くなりそうにもない。
でも、なんだか酷く楽しみだ。
神威はそのまま手を新八の頭へと乗せると、軽く撫でるように
数回叩いた。
そしてゆっくりとその手を降ろし、今度こそ踵を返す。
「まぁ色々とあると思うけどさ、死んじゃダメだよ。
俺に食われるまで」
「は?・・・え、あの・・・・
はぁぁぁぁぁ!!!?
ちょ、何不吉な事言ってんですか!
ってか色々と怖すぎるんですけど、
その言葉ぁぁぁ!!!」
「あはは、また大声。
近所迷惑だよ~」
「アンタの方が精神的に迷惑だぁぁぁ!!!!」
叫ぶ新八を背に、神威はヒラヒラと手を振って別れを告げると
そのまま飛び上がり、夜の空へと消えていった。
「・・・団長、何やってんだ、アンタ」
「ん~、見て判らない?枝毛切ってんだけど」
「見て判っても、思考が判断拒否したんだよ。
ってか今までそんなの気にしてなかっただろ?
やっぱりアレか。遺伝が気になり始めた・・・」
「阿伏兎、ウサギって鳴かない生き物らしいよ?
凄いよね、見習ってみる?」
「・・・や、遠慮しとくぜぇ」
「なんだ、つまんないな。・・・っと、これでよし」
枝毛を切り落とした髪を見詰め、神威は満足そうに頷く。
うん。やっぱり護りたいとも、そんなモノが欲しいとも思わないが・・・
「偶には護られるってのもいいもんだよねぇ」
そう言って神威は酷く楽しげに笑みを零した。
*********************
三万打お礼企画第五弾。
香山さまからのリクで「神威×(+)新」
との事でしたが・・・如何だったでしょうか?
この二人、年も近いはずですし、気になりますよね~vv
ニヤニヤしながら書かせて貰ったんですが、どうも
それに文章力が追いついていかないようで(泣)
こんな感じになりましたが、少しでも気に入って頂けたら
嬉しいですv
企画参加、有難うございましたvv
「にしても・・・違和感ありやせんねィ、新八は」
「・・・沖田さん、その言葉全力で打ち返させて貰います」
お茶を飲みつつ、しみじみとそんな事を言う沖田さんに、
僕はヒクリと頬を引き攣らせた。
あれか?まだアレの大きさの事を言ってんのか!!?
「寧ろアレだよな。女になって清純派が前面に押し出されてるよな、
新ちゃんは。」
「旦那は何時にも増して、隠しとかなきゃ
いけねぇもんが前面に押し出されてますけどねィ」
「元々隠す気ねぇからな。
ちなみに今日のはお妙の見立てか?」
ならナイスチョイスッ!!と言う銀さんに、若干引いてしまうのも
無理がないと思う。
本当、隠す気ねぇなぁ、オイ。
「最初は何時もの格好だったんですけどね・・・姉上の希望で・・・」
そう言うと、銀さんは顎に手を当ててゆっくりと頷き始めた。
「あ~、何時もの袴ね。これもいいけどそれも・・・
うん、アリだな、全然アリ。
ってか寧ろ萌える」
「何が!!?」
寧ろ隠せよ、少しはぁぁぁ!!!!
とりあえず一回ぐらい殴っておこう、そうすれば少しは治るかもしれない。
思考回路が。
そんな事を考え、手を上げようとした所で、不意に沖田さんに
袖を引っ張られる。
見れば何やらニヤニヤと良くない笑顔が・・・
「・・・なんなんですか、その笑いは」
出来れば聞きたくない・・・と言う表情を丸出しにして
そう問い掛けると、沖田さんはより一層笑みを深めた。
「いやいや、それならばっちり見たと思いましてねィ。
着替えの時」
どうでしたかィ?そう聞かれ、僕は一瞬何の事だか判らず首を傾げる。
そんな僕に、沖田さんはヤレヤレと首を振って小さく息を吐いた。
「オイオイ、そこまで清純派をアピールしないで下せェ。
こんな機会滅多にねぇんだぜィ?しかもタダで見放題。
なんなら見せっこでもしやすかィ?」
そう言って沖田さんは上着を脱ごうとし始め、
漸くなんの事か理解した僕は、瞬時に頬が熱くなるのを感じた。
って、それかよっ!!
だがあまりの恥ずかしさに声に出せず、パクパクと口を開けていると、
横からスッと長い腕が出てきて僕の視界を遮ってくれた。
「止めとけ、沖田君」
見ればやる気のなさそうな銀さんが、沖田さんを見据えていて。
さすが銀さんっ!
マダオでも大人だったんですね!
初めて実感しましたよ。
だが沖田さんは詰まらなそうだ。
ムッと唇を尖らして銀さんを睨みつける。
「なんでィ、旦那。止めねぇで下せェよ。
こんな機会でもなきゃ、新八は一生女の裸なんて見れないんですぜィ?」
どっかの誰かさんのせいで。とぼやく沖田さん。
・・・いや、勝手に人の未来を決め付けないで下さいよ。
ってか誰かさんって誰だ。
そんな暗黒人生押し付ける人物は。
銀さんは沖田さんの言葉に、短く息を吐くと伸ばしていた手を
自分の膝へと戻した。
そしてジトリと沖田さんに視線を向ける。
「当たり前ぇだ。そんな機会あったら悉く潰してやらぁ。
ってか男も女も関係なく、
コイツにそんな機会はあたえねぇ」
「ってアンタかよっ!」
真剣な顔で不穏な事を言う銀さんに、思わず僕がツッコムと、
銀さんの視線が僕へと向けられた。
「だから新八・・・どうしてもって言うなら今のうちに
自分の見とけ。・・・てダメだな。今のオマエのじゃ
刺激が強すぎるか・・・
仕方ねぇ、特別に銀さんのを見せてや・・・」
「見ねぇよ!!
ってか見たくもねぇよ、そんなのっ!!」
そう叫んで銀さんの顔面に拳を突き入れた。
基本女性には優しく・・・と思っているが、今は特別だ。
状況が状況だし、相手パー子さんだし。
うん、遠慮なくいこう、僕。
そんな決心をしていると、横で見ていた沖田さんがポンと手を叩いた。
「あぁ、確かに今の新八じゃ刺激が強すぎまさァ」
「だから何の!?」
「ばっか、オマエ今の自分見てみ?
清純派じゃん?超清純派なお淑やか美少女じゃん?
ハードル高すぎるって、ソレ。初心者が挑むもんじゃねぇ。
それは銀さんレベルになってからだ。
だから新ちゃんは銀さんのを見て、銀さんは新ちゃんを堪能する。
あれ?これって完璧じゃね?」
いや、そんな鼻血を盛大に出しながら言われても
怖いだけですからね!?
って言うかそれ、殴ったから出ただけですよね?
それ以外のモノは混じってませんよねぇぇ!!?
血が溢れ出ている鼻を押さえながら、ジリジリと寄って来る
銀さんに、僕もジワジワと後ずさる・・・と、その背中が
何かに当たった。
驚いて顔を上げれば、ソコには何時の間に帰ってきていたのか、
物凄い笑顔の姉上が。
「・・・刺激が強すぎる光景だねィ」
鈍い音と断末魔の声を聞きながら、ボソリと呟いた沖田さんの言葉に、
僕は静かに頷いた。
うん、多分成人指定入りますね、アレ。
「やっぱりこの色の方が新ちゃんには似合うわね」
あれから暫くして、新しい赤に身を染めた姉上は、嬉々として
僕の目の前に買ってきた戦利品を並べ立てた。
・・・やってたんですね、お店。
物凄い商売根性ですね、僕も見習わなきゃ、ははは。
とりあえず、あんな惨劇を目にした後で逆らう気力などあるはずもなく、
僕は姉上の言い成りになっている訳なんだけど・・・
「こう言うのも似合いやせんかねィ?」
「それはオマエの方が似合うネ。新八はこっちヨ。
ね、姉御」
「お、チャイナにしちゃいい趣味してんじゃねぇかィ。
じゃあ俺はこっちを・・・」
「あら、やっぱり美人さんね。
どうせだから着物も変えて下さいな」
「へ~い。あ、新八。やっぱ序だから見とくかィ?」
「見ないって言ってるでしょ!!!
ってかなんでアンタまで参戦してんだぁぁぁ!!!!」
叫ぶ僕の後ろで、元に戻るまでは一週間かかる・・・と言う
死刑宣告にも等しいテレビの音が聞こえてきた。
―――志村新八、本日自慢の喉の限界が
見えてきた感じです。
その後、ニュースで言っていた通り、無事元に戻れた訳ですが・・・
「さ、今日はこれを着てね、新ちゃん」
「や、僕もう性別戻ってるんですけどぉぉぉぉ!!!?」
「お、新八ィ。今日も違和感ねぇなぁ」
「いや違和感ありまくりですからね!?
その目は節穴かぁぁぁ!!!」
「えぇ、実はこのアイマスクの目が俺の真実の目でして・・・」
「そんな薄気味悪い真実の目なんか捨てちまえっ!!」
・・・案外、喉って丈夫に出来てました。
*************************
三万打お礼企画第四弾。
もち様からのリク(すみません、こちらでやらせて貰いましたι)
「男女逆転・妙神が新を甘やかす」との事でしたが・・・
すみません、無駄に長くなってしまいましたぁぁ!!!(土下座)
しかもあまり甘やかしていないような・・・ι
こんな感じになりましたが、少しでも楽しんで頂ければ
嬉しい限りです。
企画参加、本当に有難うございましたvv
その後、買い物に行くと出て行った姉上達を見送り、
僕は一人、座敷で大きな溜息を吐いた。
あ、違った。一人じゃなかったや。
辛うじてまだ銀さんがいたっけ。
未だ畳みと仲良くなっている銀さんを抱き起こし、
そっと自分の膝の上へと頭を移動させる。
う~ん、トラウマとか言ってたけど、こうしてみると
銀さんって結構な美人なんだよね。
無駄に迫力ある上に、今は流血と言うアクセントがついてるけど。
姉上は勿論カッコいい・・・と言うか精悍って感じだったし、
神楽ちゃんはまんま元気な美少年だ。
・・・元がいいと性別がどうなろうと得だよね、これ。
そんな事を思いつつ、銀さんの頭を撫でていると
漸く意識が戻ってきたのか、僅かに目蓋が動くのが見えた。
そして見えてくる、これだけは性別がどうなろうと
変わらないやる気のない眼。
「な~に笑ってんですかコノヤロー」
どうやら僕は無意識の内に笑ってしまっていたようだ。
銀さんは拗ねたように呟くと、手を伸ばして僕の頬を
ぎゅっと引っ張った。
「ったく、銀さんが甚振られてる姿がそんなに楽しいんですかぁ?」
「自業自得でしょ、まぁ楽しいですけど」
「言ったなコンチキショー。頬の代わりに乳引っ張ってやる」
「どんな代案!!?全力で遠慮しますよ、そんなの。
ってか起きたならどいて下さい」
そう言って銀さんの手を叩き落とし、膝の上から頭をどかそうと
体を動かすと、すかさず銀さんの腕が腰へと回された。
そしてスリスリと頭を摺り寄せてくる銀さんに、
小さく息をつく。
「アンタ、期間限定女性の膝がそんなにいいんですか」
呆れた声で告げると、銀さんはちらりと顔を上げてやんわりと
口元を緩ませた。
「いんや、新八の膝だからいいの」
男も女も関係ありませ~ん。とほざく銀さんの顔に向って、僕は黙って
パチリと手を落とした。
なんか痛いだの酷いだの言ってるが、無視だ無視。
序に僕の頬が熱くなっている気がするが、それも無視だ。
ってか今更ながらこの格好に恥ずかしさ爆発なんですけどぉぉ!?
少し前の自分に、よく考えてから行動しなさいっ!と説教したくて
しょうがない気分で居ると、不意に縁側から聞き慣れた声が
耳に入ってきた。
「お、なんでィ、随分と羨ましい事してるじゃないですかィ」
「沖田さん・・・」
見ればソコには隊服に身を包んだ美少女な沖田さんが居て・・・
・・・本当、見た目がいい人は得だな。
性別が変わっても、全く殺意が起きないや。
「俺もして欲しいもんでさァ」
そう言いながら座敷へと入ってくる沖田さんに、僕はそっと寝転がっている
銀さんを指差した。
「丁度そこにいい枕が転がってますよ?」
「あぁ、こりゃ~丁度良さそうでィ、枕投げに」
「ちょ、なんで枕投げ!!?
物は大切に扱って下さい、マジで!!」
沖田さんの言葉に、銀さんが勢い良く体を起こして反発する。
あぁ、漸く膝からどいたよ。
ほっと体の力を抜き、痺れかけた足を摩っていると、銀さんを見た
沖田さんが小さく感嘆の声を上げた。
「さすが旦那、無駄に糖分摂取してないでさァ。
見事なバインバイン具合じゃねぇですかィ」
「いや、糖分関係ないからね?
別にこれ、糖分の塊じゃないから。
そうだったら大歓迎だったけどね!?
や、そうでなくても大歓迎だけれどもっ!」
「それに引き換え・・・」
銀さんのツッコミを無視して、沖田さんの視線が僕へと移る。
「・・・なんですか」
その視線に僅かに身を引きながら尋ねてみると、沖田さんは
軽く頭を揺らした。
「いや、そこまで姐さんを立てなくても
いいと思いますぜィ?」
「どう言う意味ですか。
ってかアレですからね、ある意味死活問題でしたからね、ソレッ!
それに沖田さんだってそんなに変わんないでしょ!!僕と」
しみじみとした口調で言う沖田さんに、思わずそう返せば
「俺のは美乳でさァ。で、新八のは微乳」
と、得意げな顔で胸を反らせてきた。
その胸は確かに僕のよりは大きくて・・・
くっそぉ!今に見てろよ、僕だって成長期なんだから、
姉上から命狙われるぐらいの大きさに・・・
「ってちっげぇよっ!
何この会話っ!有り得ないですからね!?
大体僕達男なんですから、元に戻れば全然関係ないですからっ!」
「大丈夫だ、新八。
オマエの乳は銀さんがちゃんと育ててやるから」
「アンタはまず現実を見据える
目を育てて下さい」
ワシワシと手を動かしながら僕へと伸ばしてくる銀さんの手を
全力で叩き落とす。
その手を摩りながら、ブーブーと文句を言ってくるが知るもんか。
僕は銀さんを無視して沖田さんへと視線を向けた。
「で、沖田さんは何の用ですか?」
「何時もの回収でさァ」
来てるんだろィ?と言う沖田さんに、忘れかけていた近藤さんの
存在を思い出した。
あ、そう言えばまだ掘り返してないや。
その事を沖田さんに告げると、あ~。とやる気のない返事を返しながら
その場に腰を降ろした。
掘り出しに行かないんですか?と問い掛けると、力仕事は女の仕事じゃない。
と返される。
や、確かにそうですけどね。
でも明らかにアンタの仕事ですから、それ。
「そう言えばマヨはどうした」
とりあえず沖田さんにお茶を出していると、一人で文句を言い続けてるのに
飽きたのか、銀さんがそう問い掛けていた。
それに沖田さんは茶を一口飲んだ後、困ったように肩を竦める。
「あぁ、あの人は頭が固いんでねィ。この現状を受け入れられなかった上
近藤さんを間近で見て布団に直行でさァ。
全く使えないヤローでさァ、
俺より乳、小せぇくせに」
あ、新八も辛うじて勝ってますぜィ?とニヤリと笑う沖田さん。
・・・いや、それ多分普通の人の正しい反応ですから。
って言うか最後のは全くいらない情報
なんですけどぉぉ!!?
何その優越に溢れた笑いっ!ってか銀さんまでっ!!!
・・・お前ら、姉上に色々
引き千切られてしまえ。
うん・・・でもとりあえず今度土方さんに会ったら、優しくしよう。
「そっちこそ、チャイナ達は居ないんですかィ?」
そう聞いてくる沖田さんに、銀さんも今気付いたのか小さく声をあげ、
僕へと視線を向けてくる。
「さっきまでは居たんですけどね?今は買い物に行ってます」
「呑気なもんだなぁオイ。」
ってかこの状況下で店なんてやってんのか?と、呆れた口調で
言う銀さんに、僕は さぁ? と首を傾げた。
でも、普通はやってないですよね?
やってませんよねぇぇ!!?
とりあえず、僕は姉上達が出掛ける前に呟いた
「新ちゃんには何色が合うかしらね~」
と言う非常に楽しげな言葉は幻聴だと思う事にし、
全ての店が臨時休業である事を祈った。
・・・あ、でも今日は特売日だったから、スーパーだけは別と言うことで。
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もう少しだけ、もう少しだけお付き合いをぉぉ!!!切腹)