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「すみませ~ん」
「はいはいっと。おや、今日は神楽ちゃんも一緒かい?」
店先から声を掛けられ、八百屋の親父は少しだけ驚いた顔をした。
何時もなら新八一人で買い物に来るのだが、今日は珍しく
神楽も一緒だったからだ。
「さては何か強請ろうって魂胆か」
笑って言えば、神楽はムッと口を尖らした。
「何言ってるアルカ。私がそんなセコイ真似する筈ないヨ。
単なる気紛れネ」
酢昆布は買って貰うけどナ。フフンと何故か偉そうに言う神楽に、
同じじゃねぇか。と笑いが零れる。
「で?今日は何にするんだい?」
親父の言葉に、新八は少しだけコテリと首を傾げて
顎に手を置く。
「そうですね~、ジャガイモはまだあったから・・・
とりあえずタマネギと人参を・・・」
「今日は野菜ゴロゴロカレーネ!」
欲しいものを告げる新八の隣で、神楽が嬉しそうに声を上げた。
それに親父の頬も緩む。
「おぉ、いいね~。おじさんもご相伴に預かりてぇや」
「坂田家限定カレーだからそれは無理ネ。
でも匂いだけならわけてやるヨ」
ひょいひょいと言われた品を袋に入れていく親父に、
神楽が仕方ないとばかりに首を振りながら答えた。
それに新八が慌てたように声を掛ける。
「神楽ちゃんっ!も~なんて言い方すんのさ。
本当、すみません」
申し訳なさそうに頭を下げる新八に、親父は軽く手を振って
答える。
「いいっていいって。
あぁ、でも新ちゃんのカレーなら匂いだけでもいいから
分けて貰おうかね~」
「・・・やっぱ匂いもダメネ」
「神楽ちゃんっ!!」
ムスッとした顔で呟く神楽に、新八の顔は赤く染まり、
親父は声を上げて笑った。
「あははは、それもダメかい。
いや~、よっぽど新ちゃんのご飯は美味しいんだね~」
「そ、そんな事ないですよっ!
きっとおじさんのトコの野菜が美味しいからですって」
「お、嬉しいこと言ってくれるね~。
よし、これはオマケだ。持ってってくんな」
「え?いいんですか!?」
「おうよ。どうせ傷物だからな。
あ、でも味は保証するぜ?」
そう言ってキュウリや白菜をオマケにつけて渡すと、
新八は少し慌てたが、直ぐに嬉しそうに頬を緩ませて
有難く頂戴する事にした。
「お~い、回覧板だよ・・・っと、新ちゃんじゃないか。」
お使いかい?と、ヒョコリと一人の男が店先に顔を出してきた。
「あ、お肉屋の・・・」
こんにちは。と挨拶をする新八に、肉屋の店主は笑って手を上げる。
「今日はウチに用はないのかい?」
「あはは、当分なさそうです」
店主の言葉に新八が乾いた笑いを上げ、店主二人は
小さな溜息を吐いた。
「なんだ、またダラダラしてるのかい、銀さんは」
仕方ねぇなぁ。と苦笑しながら店主は八百屋の親父に回覧板を渡した。
「序にゴロゴロもしてるネ」
「ダメだね~、それじゃあ。
偶にはガツンと言ってやんな」
それとも俺らが言ってやろうか。等と言う親父達に、
新八はにっこりと笑みを浮かべて答える。
「それは大丈夫です。
偶にはじゃなくて常に言ってますから」
「ちゃんと拳にモノも言わせてるネ
その後ちょっと使い物にならないけどナ」
でも私の気は晴れるヨ。と笑って
拳を握り締める神楽に、店主達は少しだけ銀時に同情を寄せる。
が、自業自得だと思いねサラッと流す事にした。
「あ、そうだ。ちょっと待ってな」
何かを思い出したのか、店主はさっと身を翻して店から出て行く。
そして直ぐに戻ってくると、手に持っていた小さな紙袋を
新八と神楽に渡した。
「確り者の二人にご褒美だ。
揚げたてだから旨いぞ?」
そう言われてみれば、中身はホクホクと湯気を出している
美味しそうなコロッケで。
「うわ~、有難うございます」
「さすが肉屋ネ。伊達に売るほど肉を身につけてないヨ」
「・・・いや、おじさんの肉は売れないからね?
自然とついただけだから、この肉」
神楽の言葉に若干肩を落としながら、自分のお腹に手を
当てて摩っていると、不意に後ろからその肉を掴む手が伸びてきた。
「いんや、この肉は自然とついたもんじゃねぇ。
肉食って付いてる肉だ。金の掛かってる肉だ。
通風になっちまえコンチキショー」
「いででででっ!!ちょ、え?銀さん!!?」
ギリギリと捻られて身を捩りながらもその手の先を
見てみれば、ソコには銀時の姿が。
「なんだい、銀さんも来てたのかい」
「おぉ、ガキ共に強制連行されてよ」
ケッと舌打ちを打ちながら手を離し、銀時は緩々と首を回す。
「ったく、折角の休みだってのによぉ」
「や、銀さんの場合『折角』じゃないだろ。
新ちゃん言ってたぞ、当分ウチに用はなさそうだって」
捻られた腹を摩りながら店主が言うと、銀時は うっせぇ。 と
その腹を叩いた。
「いいんだよ、そんな腹になろうと思ってねぇんだからよ。」
「でもゴロゴロしてばっかりはダメだよ。
新ちゃん達が居るんだから、もっと確りしないと」
いい大人なんだから。眉を顰め、説教交じりな事を言い出す親父に、
銀時は あ~っ!と声を上げながら頭を盛大に掻いた。
「判ってるってっ!ちょ、もう止めてくなんい?
さっきも魚屋で散々言われて来たんだからよぉ」
ったく、漸く逃げてきたってぇのに。ブツブツと文句を言う銀時に、
新八が あっ と視線を上げた。
「銀さん、ちゃんと買ってきてくれました?」
「おうよ。序にオマケもして貰ったぜ」
「・・・先につまみ食いしてないアルカ?」
「幾ら銀さんでも生魚は食べねぇよ」
じっとりと視線を向けてくる神楽にチョップを送り、
銀時は もう行くぞ。 とくるりと背を向けた。
それに神楽も続き、新八も 有難うございました。と親父達に
頭を下げて店から出て行く。
「お、何だよオマエ等。銀さんにはつまみ食い云々言っといて
自分らはいいモン持ってんじゃねぇか」
「ふふん、日頃の行いがモノを言うネ」
「ならそれは丸々銀さんのもんだろ。
オラ、寄越せ」
「夢見るのもいい加減にしろヨ。
新八~、銀ちゃんが私の取ろうとするネ~」
「何大人気ない事してんですか、アンタはっ!
ほら、僕の半分あげますから神楽ちゃんのからは
手を離して下さい」
「え、何、新ちゃん。
もしかして銀さんと間接ちゅーしたいの?」
「・・・・・・・」
「あぁっ!ちょっ、少し調子に乗りましたっ!
どっちかって言うと銀さんの希望と妄想でしたぁ!
だからサクサク食べないで少し分けて下さぁぁいっ!!」
「相変わらずだね~、あの三人は」
「本当、仲が良いって言うか何て言うか・・・」
遠くなっていく喧騒を見送っていた親父達の顔に、苦笑が浮かぶ。
新八が一人で買い物に来て。
神楽が遊びに行くのに店先を走って行き。
時折、まだ日が昇り始めた頃に銀時が千鳥足で歩いていく。
それぞれが見慣れた光景だが、一番最初に頭に浮かぶのは、
やはり三人一緒に並んでいる光景だ。
「あ~・・・ウチも今日はカレーにしてもらうかなぁ」
「なんでぃ、急に」
「新ちゃんトコ、今日は野菜ゴロゴロカレーだってよ。
しかも匂いすらお裾分けしたくないぐらい美味しいらしいぞ」
「そりゃあ凄いや」
まぁ、あの三人なら何だって美味しく、楽しく食べそうだが。
多分、先程自分が渡したコロッケも、分け合って物凄く美味しそうに
食べていてくれる事だろう。
店主はユルリと口元を緩ますと、ウチもカレーにして貰うか。と
呟きながら、八百屋を後にした。
*************
六万打企画第五弾。箸様からのリクで
『ご近所さんから見た坂田一家』と言う事でしたが
如何だったでしょうか?
絶対可愛がられてますよね~、特に母娘は(笑)
多分商店街のアイドルですよvv
なので坂田は商店街に顔を出す度に
説教を食らってると思いますvv
こんな感じになりましたが、少しでも
楽しんで頂けたら嬉しい限りです。
企画参加、有難うございましたvv
捕まえて、縛り付けて、握り締めて。
そして・・・
「機嫌良いね~、新八君」
「そうですか~?」
なんて言いながらも、隣を歩いている新八は
ニコニコと満面の笑顔だ。
どうやら、タイミング良く始まったタイムサービスが、
相当我が家の財布に貢献してくれたらしい。
大きく膨らんだビニール袋を、嬉しそうに揺らしながら
歩いている姿を横目でチラリと見て、俺はやんわりと口元を緩める。
すると、それを見たのか、新八がクスリと笑った。
「そう言う銀さんだって機嫌良いじゃないですか。
あ、でもダメですよ?お団子は一日二本までです」
どうやら新八は先程買った団子のせいで俺の機嫌が良いと
思ったようだ。
それに対し、思わず苦笑が浮かぶ。
や、それも否定はしないけどよ?
でも、それ以上にさ。今、オマエが隣に居て
二人仲良く買い物ってのが機嫌良いんですけど?
・・・あぁ、これで手なんか繋げたらもっと幸せなんだけどなぁ。
丁度お互い片手ずつ空いてるし?
少しだけ手を伸ばせば届く距離だし?
新八の機嫌も良いし?
・・・まぁ人目はそれなりにあるけど。
新八、恥ずかしがりやだからなぁ。
もしかすっと怒るかもしんねぇけど、
でも、その顔も可愛くて好きなんだよなぁ。
何だかんだできっと許してくれるし。
って事でちょっとだけ・・・と手を伸ばそうとした所で、
不意に新八の視線が外れ、小さな声が上がった。
どうしたのか見てみれば、その視線の先には見慣れた黒い服の
連中が・・・
「あれ、土方さん達ですよね?
お仕事中なのかな?」
そう言う新八は今にも挨拶をしに行きそうで、
俺は慌てて手を伸ばした。
「え、銀さん?」
急に手を捕まれてキョトンとする新八をグイッと引っ張り、
ヤツラが居る方向とは反対の方へと足を踏み出した。
「ちょ、どうしたんですか?」
「お仕事中ってんなら邪魔しちゃダメでしょ~。
ってかあんなのに自ら近付くな、瞳孔開くぞ」
「や、開かねぇし。
ってか本当、銀さんと土方さんって仲悪いですね~」
俺の行動に最初は戸惑っていたものの、直ぐに新八は呆れたように
呟いてそのまま大人しく俺の後を付いてきた。
・・・ま、手を繋いでるから仕方ねぇんだろうけどよ。
だが、念願である手を繋いだと言っても、俺の機嫌は
さっきよりも悪い。
あぁ、本当。礼儀正しいにも程がある。
あんなヤツラに挨拶なんてどうでもいいだろ。
オマエは俺の傍に居ればいいんだよ。
俺の隣にずっと居ればいい。
なのに、なんだってそう気軽に離れて行こうとするんだ。
俺はこんなにも、片時だって離れたくないのに。
「あぁもう!恥ずかしかった~っ!!」
結局少し遠回りして帰って来る間中、俺は新八の手を
握ったまんまだった。
案の定、新八は恥ずかしいと怒っていたけど、知るもんか。
俺はそれ以上不機嫌だったし、不安なんだ。
玄関に入り、漸く手を離した俺に、新八はプラプラと
少し赤くなった手を振った。
それを見て、ほんの少しだけ心が騒ぐ。
「手・・・」
「え?」
「痕、ついちまったな」
買ってきたモノを持って台所へと進む新八の後を追って
俺も台所へと進む。
そして荷物を冷蔵庫に入れようとしている新八の手を取って、
そっと赤みのさしている小さな手を撫でた。
小さな、俺のよりも小さな新八の手。
そこについている、俺の手があったと言う証。
「どっかの馬鹿力さんのせいですね」
苦笑する新八の肩に、俺はコツンと頭を預けた。
うん、だって必死なんだよ、銀さんも。
こんな小さいのに、どんなに必死に掴んでも
スルッとどっかに行っちまいそうなんだもん。
その必死さ加減に自分で呆れ。
小さな手に付いた痕に罪悪感が沸き。
そして・・・少しだけ満たされる、俺の心。
「えっと・・・どうかしました?銀さん」
黙っている俺を不思議に思ったのか、新八がどうにかして
俺の顔を見ようとしてくるので、ますます肩口へと顔を埋める。
あぁ、どうしよう。
呆れも罪悪感も吹き飛んでしまった。
可愛い、かわいい、俺の新八。
ね?俺の事心配してくれてんの?
酷い独占欲でお前に痛い思いさせて、恥ずかしい思いまでさせて、
痕までつけちゃったのに、心配してくれてんの?
緩む口元を隠したまま、俺は新八の手を離して
そのままギュッと閉じ込めるように目の前の体を抱き締めた。
「ん~・・・ちょっと甘えてるだけぇ」
軽口でそう言い、抱き締める腕に力を篭める。
それに新八は 何ですか、それ。 なんて呆れた声を返すが、
やんわりと俺の背中に手を回してくれて。
馬鹿だね、オマエ。
でも可愛いね、本当。
いつか手だけでなく、オマエの体全部に俺の痕が付くかもしれねぇよ?
だって俺、オマエがもし俺から離れようとしたら。
それこそ手だけじゃねぇ。
全身を使って、全力でもって、必ず引き止めるから。
泣こうが喚こうが、何しようがしがみ付いて離れてやらねぇ。
それこそ、その細い首を握り締めてでも。
例えオマエの命を、握り潰してでも。
絶対に、離してなんかやらねぇ。
あぁ、でも今は・・・
俺はそっと親指で新八の首筋をなぞり、
その反対側に小さく唇を落とした。
手の痕の代わりに、別の痕をつけようか。
それこそ、暫くの間人前に出るのが恥ずかしいぐらいの。
俺の雰囲気に良くないものを感じたのか、漸く慌てだした
新八を、俺はますます強い力で抱き込んだ。
捕まえて、縛り付けて、そして握り締めて。
あぁだからお願い。
どうか『潰す』前に離れるのを諦めて。
*************
六万打企画第四弾。姫りんご様からのリクで、
『ちょい病み銀新』との事でしたが・・・如何でしょうか?
とりあえず、「坂田、お前・・・(ホロリ)」と
哀れみの涙を流す事は出来るかと・・・(ちょ、意味違っ!)
こんな感じになってしまいましたが、少しでも
気に入って頂けたら嬉しい限りですv
企画参加、有難うございましたvv
「ハンターとしての血が騒ぐネ!!」
「や、騒がなくていいから。
違うからね?『狩り』って言っても全然違うからね!?」
だから落ち着いて、神楽ちゃん!!必死に言い募る新八の背を見て、
お登勢はゆったりと苦笑を浮かべた。
事の始まりは新八がお登勢の所に回覧板を持っていった事からだった。
「わぁ、綺麗ですね」
新八はカウンターに置いてあった写真を目にして、そう言葉を上げた。
「だろ?お客の一人が紅葉狩りに行って来たらしくってね。
景色のお裾分けってヤツだよ」
もうこんな時期なんだねぇ。そう言ってお登勢は写真を手に取ると、
真っ赤に色を変えた木々の姿に、しみじみと呟いた。
「昔はよく私も行ったもんだけどねぇ、最近は中々・・・」
やっぱり一人だと行ってもねぇ。苦笑するお登勢に、
新八は ならっ!と目を輝かせたのだった。
「こう言うのはもっと静かに見るもんだと思うんだけどねぇ」
あの後、一緒に見に行こうと行ってくれた新八に、
ちょっと心が暖かくなって頷いたお登勢だったが、
少しだけ早まった気がしないでもない。
「んな世間的な常識が通じるとでも思ってたのかよ、ババァ」
坂田家の家訓は楽しむ時は全力で、だ。そう言って
大事そうに酒を抱えている銀時に、とりあえず軽い鉄拳を贈る。
銀時の言葉に少しは同意する面もあるが、
流石に他人様に迷惑をかけるのはダメだ。
そこら辺をちゃんと教育しておけ。と言いたい所だが、
隣にいるこの男にそれを望むのは・・・無理があるだろう。
その分・・・お登勢は 暴力ババァっ! と叫ぶ銀時の
頭をもう一度叩き、賑やかな前方へと視線を向けた。
見ればテンションの高い神楽をなんとか宥めつつ、
新八が近くの木々を指差して一生懸命説明をしている。
「全く、どっちが大人だか判らないねぇ」
「自分の都合を最優先させるのが
本来の大人ってもんよ」
「アンタは単なる面倒臭がりだろうが」
全く・・・と憤るお登勢の先で、
それでも理解出来ないのか、しきりに首を傾げる神楽に
新八も困ったように首を傾げている。
その姿がやけに可愛くて、お登勢はゆるりと口元を緩ませた。
先程はあぁ言ったが、別にお登勢も静かに見るよりも
ワイワイ言いながら見るほうが好きだ。
そうでなかったら、普通に一人で紅葉を見に来ているだろう。
偶にならいいかもしれないが、それは『偶に』が前提だ。
常に一人であったなら、それは『偶に』ではない。
そう考えると・・・本当に久し振りなのだ、
今日の紅葉狩りは。
「・・・ま、仕方ねぇんじゃね?
神楽は初めてだし、新八も久し振りだって言うからよ」
言っとくけどあれで結構浮かれてるからな、新八。
叩かれた頭を摩りつつ、銀時がボソリと呟いた。
「朝早くから弁当作るって昨日泊まってったんだけどよ。
神楽と二人でてるてる坊主作るわ、持ってくモノ
何度もチェックするわでよぉ。
オマエは遠足前の小学生かって感じだったからね?」
殆ど寝てねぇんじゃねぇの?呆れたようにそう続けた銀時だったが、
その口元はお登勢と同じようにゆるりと緩んでいて。
「・・・弁当、私が作るって言ったんだけどねぇ」
苦笑するお登勢に、銀時は軽く肩を竦めた。
「『こっちが誘ったんだから』だろ?
新八がやりたいって言ってんだから、甘えとけって」
「アンタ達は新八に甘えすぎだけどね」
そうは言ってみるが、新八も神楽も、それなりに
銀時に甘えている部分もあるのだろう。
気付けば耳にしていた、騒がしいけれど何処か暖かい
二階の生活音を思い出し、お登勢はクスリと笑った。
だって、そうでなければあんな音は生まれてこないだろう。
怒鳴りあって喧嘩して、笑い合って話し声が絶えない、そんな音は。
そしてそれは二階にだけに留まらず、時折お登勢の元にも
乱入してきて。
・・・騒がしいと怒鳴っちゃいるけどねぇ。
考えてみればそんな事を言うのも久し振りの事だ。
何しろ一人だと、そんな事を言う機会もないのだから。
・・・なら、きっと私の怒鳴り声も、同じ音だね。
苦笑しつつ、いつの間にか道端に座り込んで おぉっ! と声を上げている
神楽達を眺めていると、
突然二人が立ち上がり、お登勢達の下へと走ってきた。
「どうしたんだい?」
「なんだ?なんかいい物でも見つけたか?
言っとくけどあれだぞ、道端に落ちているエロ本は
小中学生の為のお宝だからな?
拾って青少年の些細な楽しみを奪うんじゃねぇぞ?」
「そんな銀ちゃんのしみったれた
過去の産物じゃないネ」
「ホラ、見てください」
そう言って新八の差し出した手には、綺麗な色へと姿を変えた
紅葉が数枚乗っていて。
「綺麗なの一杯落ちてたネ。
心広い神楽様が分け与えてやるから、有難く貰うヨロシ」
「神楽ちゃん、言葉悪いからね?
でも、はい。僕からもお裾分けです」
二人からそれぞれ、銀時とお登勢の手に綺麗な形のままの
紅葉が乗せられる。
ニコニコと笑う新八達に、お登勢の頬も緩んでいく。
「へ~、綺麗なもんだねぇ、やっぱり」
有難うよ。そう言うと新八と神楽はチラリと顔を見合わせ、
照れ臭そうに身を捩らせた。
「きっと上の方はもっと綺麗ですよ」
「ほら、早く行くネ!」
そう言うと神楽はお登勢の手を。
新八は銀時の後ろへとまわり、背中を押し始めた。
「ちょっと、少しは周りを楽しみながらねぇ」
「上から一気に見た方が爽快ネ!
只でさえ残り少ない時間なんだから、
もっと有効に使うアルヨ」
「おいぃぃ!!
だったらその残り少ない時間をもっと丁寧に扱いなぁ!!」
「あ~、いいわ、コレ。超楽だわ。
なんかもう自分で進んでないような気がしてきた」
「実際進んでねぇよっ!
ちょ、本気で体重掛けないで下さいよっ!」
静かな山の中、普段と変わらない騒がしい声が
楽しげに弾んでいた。
その後、どうにか上の方にある広場へと辿り着き、
新八の弁当を食べ終わったお登勢達だったが、
食休みをする事なく、まず神楽がその場を飛び出していった。
それを見て、新八も慌てて追い掛ける。
・・・が、どうやら腹が満たされた神楽の暴走を
止めるには厳しいものがあるらしく。
木に張り付いて揺らそうとしている神楽の笑い声に、
新八の悲鳴が被る。
「あ~、もう何やってんだ、あいつ等」
銀時も流石に見てられなくなったようで、ちょっと行ってくら。と
酒を置くと、二人の下へと歩いていった。
そして木から神楽を剥がすと、ペシリと頭を叩くのが見える。
その後、銀時が何か言っていたが、直ぐに神楽が何か言い返し、
今度はその場にしゃがみ込んでしまう。
次に新八もそれに倣ってしゃがみ、銀時もダルそうではあったが
同じように腰を降ろしてしまった。
「・・・何やってんだぃ?あいつ等は」
もさもさと動く三人を暫しの間眺めていると、その内に
神楽が一人だけお登勢の下へと帰って来た。
そして・・・
「はい、さっきの進化系ネ」
そう言って今度は銀杏の葉を綺麗に何十にも重ね、
まるで花のようになったものをお登勢へと差し出してきた。
「へ~、器用なもんじゃないか」
「私が作ったんだから当たり前ヨ。
キャサリン達の分も作ってくるから、もう少し待ってるアル」
にしし。と笑うと、再び神楽は銀時達の下へと駆けていった。
それを視線で追っていくと、辿り着いた神楽が報告したのだろう。
やんわりと神楽の頭を撫でた新八が、お登勢の方を向いて
軽く手を振った。
それに対し、お登勢も軽く手を上げる。
どうやらまだ少しかかるようだ。
そう判断すると、再び腰を降ろしてワサワサと動き出した三人を眺めながら、
お登勢は懐から煙草を取り出した。
「ほぉ、可愛らしい花ですな」
突然後ろから声を掛けられ、ふと視線を向ければ
そこには散歩中らしい一人の老人が立っていた。
「えぇ、上手いこと考えたもんですよ」
騒がしくてすみませんねぇ。そう言ってお登勢が軽く頭を下げると、
いやいやとんでもない。と楽しげに手を振られる。
「賑やかなのが一番ですよ。」
ご家族ですか?そう聞かれ、お登勢は一瞬目を瞬かせたが、直ぐに
やんわりと笑みを浮かべたのであった。
****************
六万打企画第三弾。蒼さんからのリクで
「二世帯揃ってピクニック(第三者から家族認定)」
との事でしたが・・・如何なもんでしょう?
とりあえずお登勢さんの最後の笑みは、
「いい嫁だろ?孫も元気で可愛いだろう?」
との自慢の笑みなんだと思われます(あれ?一人忘れて・・・)
こんな感じになりましたが、少しでも楽しんで頂けたら
嬉しい限りですっ!
企画参加、毎度有難うございました~vv
その日の天気は日中曇り、夕方からは雨という予報だった。
「あ~、本当に降って来ましたよ~」
新八は窓を少し空け、既に暗くなった空を見上げた。
しとしとと降る雨は、このまま明日の朝まで残るのだと言う。
「酷くならなきゃいいけど・・・」
「・・・別に酷かったら泊まってけばいいんじゃね?」
その言葉に、それまでジャ○プを読んでいた銀時がポツリと
口を開いた。
「・・・で、明日の朝御飯を作らせる気ですか」
明日はアンタの当番でしょ。じとりと視線を寄越す新八に、
銀時は や、それもあるけどよ・・・とジャ○プを上げて視線から逃げた。
全く・・・と文句を言おうとしたその時、玄関から来訪を告げる
音が響き、新八の意識がそちらへと向いた。
「お、客だ客」
それに ナイスタイミング とばかりに銀時が腰を上げ
玄関へと急ぐ姿に、新八は深々と溜息を零した。
でも、本当に酷くなるようだったら泊まっていってしまおうか。
ただでさえ寒くなってきてるのに、雨にまで濡れたら
それこそ風邪をひいてしまう。
雨の降る窓を見上げながらそう考えていると、
玄関の方で銀時の声が響いてきた。
もしかして何かの勧誘だったのだろうか。
不思議に思った新八が、玄関へとひょっこり顔を出す。
生憎銀時の体で誰かは判らないが、聞こえてくる声は
見知った人物を現していて。
「あ、やっぱり沖田さんだ。」
銀時の体から顔だけ出してみると、そこには隊服に身を包んだ
沖田が軽く手を上げて新八へと挨拶をしてきた。
それに対し新八も軽く頭を下げる。
・・・だが、何故こんな時間に沖田がここに居るのだろう。
コトリと首を傾げる新八に、銀時は頭を掻きながら
嫌そうな声を出した。
「雨が降ってきたから雨宿りさせろってよ。
全く、ウチは『警察立寄り所』なんて看板出してねぇっての」
「沖田さん、傘持ってないんですか?」
「おぅ、まさに水も滴るいい男でさァ」
言われて見れば肩等がうっすらと水気を帯びている。
あ、タオル!と気付いた新八が慌てて踵を返す。
呆れたような声が銀時から聞こえたが、流石にそのままでは
可哀想だろう。
新八は風呂に入っている神楽に一言声を掛けながら、
洗面所からタオルを一枚、手に取った。
そして足早に玄関へと戻ると、沖田へと手渡す・・・が、
何故か沖田はそのまま新八へとタオルを差し出してきて。
「・・・なんですか、その手は」
「序だから拭いて下せェ」
ニンマリと笑顔で言われ、今度は新八の口から呆れたような
溜息が零れた。
だが、それなりに長い付き合いだ。
こうなったらどんなに拒んでも、やるまで言い続けるだろう。
新八はもう一度大きく息を吐くと、渡したタオルを手にとって
ガシガシと力任せに頭を拭き始めた。
「いててて。ちょ、もう少し優しくして下せぇ。
現在進行形で硝子の十代なんで」
「防弾硝子の癖に何言ってんですか。
いいからじっとしてて下さい!」
「や、その前になんで拭いてやってんの!?
あれ?前銀さんがお願いした時、全くの無視だったよね?
全力でスルーだったよね!?」
「そう言やぁ新八は帰りどうするんでィ?」
「え、今もスルー状態!!?」
煩い銀時の言葉はそのまま無視して、新八は沖田の髪を拭きながら
微かに首を傾げた。
「どうするって・・・普通に帰りますよ?」
傘持ってますし。そう言う新八に、段差のせいか何時もより
下にある沖田の口元がユルリと上がった。
「なら早いトコ帰った方がいいですぜィ?
なんでもこれから酷くなるらしいからねィ」
「え、そうなんですか?」
「ご心配ど~も!
でも全然大丈夫だからっ!」
沖田の言葉に驚く新八を、横に立っていた銀時がグイッと自分の下へと
引き寄せた。
「酷くなったら新八は泊まってく予定だしな。
あ、なら別に傘いらなくね?沖田君に貸してやればぁ?」
「や、別にそう決まったわけじゃ・・・」
「いやですねィ、旦那。
俺は貸しを作るのは嫌いなんでぇ。
返すのも面倒臭ぇし」
って事で。と、沖田は銀時の腕の中の新八の腕をギュッと掴む。
「新八ぃ、送ってってやるから家まで入れてって下せぇ。」
「はぁ!?ちょ、沖田君、君の住処は新八とは反対方向ですけどぉ?」
「や、どうせ明け方にはゴリ・・・近藤さんを迎えに行かなきゃ
いけねぇですし、序に泊まらせて貰おうかなぁ・・・と」
「やな序だなぁ、おい。
ってかそう言う理由だったら、毎日新八の家に泊まれる事に
なんだろうがぁぁ!そんなの銀さんは認めませんよ!?」
「なら住み着いてからの
事後承諾コースを狙いまさァ。」
「余計ダメだろうがぁぁぁ!!!!
オラ、傘なら貸してやるからとっとと帰ぇれ帰ぇれ」
「判りやした。
じゃあ新八、帰りやしょう」
「銀さんの傘を だ。
新八の傘も、新八も貸しませんっ!!」
結局・・・
「・・・なんでコイツが居るネ」
神楽が風呂から出てくれば、何故だか力なく項垂れている銀時と、
先程まで居なかった・・・と言うか基本この家に居ない存在が
楽しげにソファに座っていた。
「・・・雨が酷くなったんだよ」
「はぁ?」
「あ、旦那ぁ。布団足りねぇようなんで、
俺は新八と一緒の布団でいいでさァ」
「テメーはソファに決まってんだろうがぁぁ!!」
「おいおい、お客に向ってソファで寝ろってんですかィ?
流石俺を上回るドS性質でさァ」
「そうですよ、銀さん。
一応、歓迎もしてないですけどお客様なんですよ?
そんな事出来るわけないでしょ」
「な、なら銀さんと新八で!
ほら、沖田君お客様だから。
お客様にそんな狭い思いさせられないからね?」
「や、そこまで気を使って貰うほどの客じゃねぇんで。
そこは構わねぇで下せぇ」
「そうですね~。銀さんと僕じゃどっちかはみ出しちゃうし。
いいですか?沖田さん」
「我が侭言える立場じゃねぇしねェ・・・
願ったりでさァ」
「や、十分我が侭言ってるよね?
寧ろ我が侭しか言ってないよね?
って言うか本音丸出しなんですけどぉ!!」
「・・・と言うか電話して引き取りに来させればいいネ」
神楽の当たり前の発言に、騒ぐ三人は気づく事はなく、
定春だけが呆れたように一声だけ鳴いたのであった。
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六万打企画第二段。とむ様からのリクで、
「本気を出した沖田の沖新話」と言う事でしたが、
如何だったでしょうか?
多分まだまだ本気を出してはいないと思われます、この沖田(笑)
ウチの10代組みを気に入って頂けてるようで嬉しい限りです~v
これからもチョクチョク書いては坂田に嘆いてもらう
つもりですので、これからもどうぞよろしくお願いしますv
企画参加、有難うございましたv
「・・・え、何コレ」
玄関から聞こえてくる死のカウントダウンに慌てて
出てみれば、ソコには武器を構えたたまと、
二度と見たくもなかった野郎・・・あ、と言っても
顔の造りはいいんだけどね?本当、パーツは文句ないんだけど、
ほらあるじゃん?何て言うの?
こう、性格が滲み出す雰囲気とかさ。
本当、パーツは全然問題ないのに、そこら辺で残念な事に
なってるって感じ?
そう言うのが真剣にムカつくのが一人、立っていた。
「こんにちは、銀時さま。
今月の家賃の回収にやって参りました。」
「や、それはいいけど・・・って良くはねぇが・・・
え?何ソレ」
どう言う事?と続ける前に、たまの持っていた武器が火を吹いた。
・・・オマエ、家賃回収とか言いながら、
実は俺の命回収しにきてんじゃね?
「あ、起きた」
その声に、ぼんやりとしていた視界を動かせば、
呆れた顔の新八が映った。
「ってて・・・あれ?なんか銀さん、頭痛いんだけど。
なんか0距離攻撃受けたみたいに痛いんだけど。
昨日酒呑んだっけ?それとも風邪?
ってかなんで俺、こんな玄関先で寝てんの?」
痛む頭を押さえつつ起き上がってみれば、そこは何処かの戦場かと
問いたくなるぐらい崩壊した玄関で。
「銀さん、寝相悪いですね~」
・・・や、そんな問題でもなくね?
まぁいいや。と腰を上げて新八の後を追い居間へと向い、
中の光景を見て一度目を擦り、もう一度じっくりよく見てみた。
・・・が、何度見ても・・・居る。なんか。
「・・・おい、新八君」
「なんですか?あ、粗茶ですがどうぞ。」
恐る恐る新八に声を掛けるが、掛けられた本人は普通に
お茶なんかを出していて。
って、あれ?なんかお茶請けに出してんの、
見覚えあるんだけど、銀さん。
なんか昨日こっそり買ってきて隠しておいたドラ焼きと
似てる気がすんですけど。
いや、ドラ焼きなんてどれも一緒だけどね?
でも、糖の事と新八の事だけは
半端ないから、銀さん!
「ってそうだけど、そうじゃねぇよ!!
や、ソコもツッコミたいけどね!?
間違いだと思いたいけどね!?
でもそれ以前にオマッ・・・」
なんでここに居んだよっ!!!!
そう俺が指差した先で、見慣れているが憎らしい顔の男、
コスプレ野郎だった。
「なんかたまさんの調子が悪くなって出てきたらしいですよ」
叫んだ瞬間、人様に向って指を指すな。という教育熱心な
新八に指を折られ、今度は違う意味で叫び泣いた俺に、
簡潔な説明を寄越してくれた。
ちなみにちゃんと家賃は払ってくれたらしい。
俺の小遣いの中から。
・・・ってか本当簡潔な、全てにおいて。
大体調子悪いってんなら、なんで出て来てんの?
前みたいに中で寸劇モドキやってればいいじゃん。
って言うか本当、なんで居んの?
普通こんな事なくね?ありえなくね?
納得いかない顔でそいつの反対側に座る俺に、
新八は同じようにお茶を出しながら口を開いた。
「なんか前とは違うみたいですよ?
詳しくは判らないんですけど、今源内さんが調べてくれてるらしいです。」
大体『普通』なんて今更・・・。ハッと何処か投げ遣りに笑う新八に、
確かに・・・と納得しかける俺。
「・・・っていやいやいや、それでもコイツがここに居る
意味が判らねぇから。
なら直るまでたまのトコに引っ付いてればいいじゃん?
なんで態々ここ!?
後、なんで銀さんには
ドラ焼きがないんですかぁぁ!!?」
「俺だって出来ればそうしていたかったのだが、
『そのツラでそんな事をされたら精神的にきつ過ぎる』
と追い払われたのだ。
貴様、一体何をしているんだ」
「それはこっちの台詞なんですけどぉぉ!!?
ちょ、オマエ一体何やりやがった!?」
名誉毀損で訴えんぞゴラ!シレッと告げてくるヤツに
怒鳴り返すと、隣に腰を降ろした新八がずずっとお茶を一口飲んでから、
「お登勢さんのお店の手伝いをされたらしいですよ?」
この場合、どちらが訴えられるんですかね?ジトリと見られ、
俺の勢いが少し落ちる。
「ちなみにうちのお掃除も手伝って貰っちゃいました。
視覚的には・・・アレですが本当、助かりましたよ~」
有難うございます、白血球王さん。そう言って笑う新八に、
ヤツは少しだけ口元を緩めると軽く手を振った。
「いや、少しとはいえ場所をお借りしてるのだ。
手伝うのは当たり前と言うもの、気にしないでくれ。
他にも何かあれば手を貸すが?」
「いえ、もう十分ですよ。
台所とかトイレとか、すっごくピカピカですもん。
本当凄いな~、白血球王さんの技!」
「え、何?毒滅守闘使ったの?
こんな所で毒滅守闘使っちゃったの!?
って言うかなんでそんなにキラキラしてる目で見てんですかぁぁ!!?
違うよね、新八君がそう言う目を向ける相手は
ソイツじゃなくて銀さんだよね?
銀さん限定だよねぇぇ!!?」
「いやいや、こちらの方が驚いた。
まさか阿厘詠流の使い手だったとは・・・」
「え?新八も使ったの!?
阿厘詠流の使い手だったのぉぉ!!?
ってかテメーも何頬染めてんだよ。
止めてくれよ。なんか居た堪れない上にムカムカすんですけどぉぉ!!」
その後、たまの調子が良くなるまで
万事屋から銀時の悲痛な叫び声が絶えることはなかったと言う。
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六万打企画第一弾。リミル様からのリクで、
「銀さんと白血球王が新八をめぐって大喧嘩。」
と言う事でしたが・・・すみません、大喧嘩になってませんね、これι
しかも必殺技出してるの、新ちゃんですしι
内容変更してしまってすみませんでしたぁぁ!!(土下座)
こんな感じになってしまいましたが、よろしかったでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら嬉しいのですが(滝汗)
企画参加、有難うございましたvv