[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
新八と神楽は仲が良い。
偶に喧嘩もするけれど、気が付けば仲直りしている。
ぶっちゃけ、本物の兄弟よりも仲が良いかもしれない。
・・・ま、これは神楽限定だけどな。
新八のシスコンぶりは筋金入りだからね。
まぁ既に家族のようなものであるから、それは別に
いいんだけどよ・・・
その日、朝珍しく自主的に起きると、既に押入れは蛻の殻だった。
思わず時計を見れば、奇跡の時間、六時半。
俺以上にありえない神楽の起床に、大きく頭を傾げる。
あ、でも腹が減ったら起きそうだ、あいつは。
そんな事を思って台所へ行こうとした時、玄関の開く音と
二人分の聞き慣れた声が耳に入ってきた。
「あれ?銀さんが起きてる。
これなんて白昼夢?」
「本当ネ。もしや腹が減って起きてきたアルカ?」
「テメーじゃねぇんだからんな事で起きるか。
単なる奇跡だ」
どうもまだ頭が働いていないらしい。
なんか自分さえも敵に回した気分だ。
ってかオマエらもそれで納得すんなよ。
頼むから否定する優しさを持ってくれ。
「まぁいいや。朝食の用意するんで、少し待って下さいね」
軽く流し、新八が台所へと向う。
それを見送り、俺は顔を洗う為行き先を台所から洗面所へと
移した。
そして居間へと帰ってくれば、ソファに座り、ニコニコと嬉しげに
手元を見ている神楽。
「なんだ、そりゃ」
覗いてみれば、綺麗に並んで押された判子の数々。
・・・あぁ、そう言えば何が楽しいんだか
ラジオ体操に行ってるって言ってたっけ、コイツ。
という事はその帰りにでも新八と会ったって感じか・・・
神楽が居なかった理由と、新八と共に帰って来た理由が
判り一人納得していると、神楽の手元のカードが二枚ある事に
気付いた。
不思議に思い聞いてみると、なんと新八の分だという。
「え?新八も一緒に行ってんの?」
そう言うと丁度朝食を運んできた新八が、何当たり前の事
聞いてんだ。という表情を向けてきた。
「幾ら明るいって言っても、まだ人通りも少ないですからね。
神楽ちゃん一人で行かせられる訳ないでしょ?」
何かあったらどうすんですか。と少し怒って言う新八に
ちょっと首を傾げる。
や、コイツにある何かって何ですか?
聞いてみたいが怒られそうなので止めておく。
うん、少しは頭が動いてきたな、俺。
「大体一人じゃ起きれないでしょ、神楽ちゃん」
あ、それは納得。
俺は大きく頷いた。
・・・ってかそれなら新八は何時に起きてここに
来てるんだろう。
今日、それを理由に泊まっていけと言ってみようと心に誓い、
俺は出来立ての朝食に手を合わせた。
昼頃、買い物に行くと言う新八に、今朝心に誓った事を
言ってみた。
すると難なく了解を貰えて、ほんの少しラジオ体操に感謝する。
ウキウキ序に買い物に付き合おうかと聞けば、
それはいいです。と答えられた。
なんでも神楽が荷物持ちとして一緒に行くらしい。
・・・成る程、これ程の適任者はいないな。
大半が神楽の胃袋に入るもんだし。
・・・で、さぁ。ちょっと聞きたいんだけど・・・
「なんでオマエ等手ぇ繋いでんの?」
そう、一体どういった訳か、目の前の二人は仲良く手を繋いでいたりする。
や、前から偶に繋いでるけどね?
だからこそ、前々かせ聞いてみたかったんだけどね?
すると、神楽と新八は一瞬顔を見合わせ、次にコトリと
首を傾げた。
まさに『何か変?』『ん~?別に~?』状態だ。
「や、だから手・・・」
それでも負けずに再度問い掛けてみると、新八が だって・・・と
口を開いた。
「神楽ちゃん、すぐにどっか行っちゃうんですもん。
危ないでしょ?」
・・・いや、だからオマエは一体神楽を何歳だと・・・
「財布の中身、並びに通帳の残高が」
そう言った新八の視線は、何処か遠くを見ていた。
・・・うん、そうだね、ごめん。
神楽が何歳とか、そう言うのが問題じゃなかったな。
神楽が神楽である事が問題だったな。
俺は心を篭めて、『気をつけていってらっしゃい』と
二人を送り出すことにした。
夜、今日は新八がお泊りと言うことで少しだけ下のババァの
トコで呑んで帰ってくると、何故か新八が風呂場の前に座っていた。
しかもどうやら神楽が風呂に入っているらしい。
おいおい、何やってんの?それ、神楽よ?
銀さんじゃないだよ?
間違ってんじゃねぇよ。
「間違ってるのはアンタの思考回路ですよ」
「げっ!銀ちゃんそこに居るアルカ?
新八、さっさと追い払うヨロシ!」
風呂場から聞こえてきた声に、新八は はいはい。と腰を上げると、
呆然と立っている俺の背を押して居間へと移動させた。
「え?何?なんでこうなんの?
ってかオマエ何やってたんだよ」
「僕は神楽ちゃんの話し相手ですよ。
一人で入ってるのって暇なんですって。
ってか当然でしょ。神楽ちゃんもお年頃なんだから、
少しは気をつけて下さいね?」
新八はそう言うと俺をソファへと座らせ、神楽に呼ばれるまま
風呂場へと戻っていった。
・・・多分、思考回路が間違ってるのは
俺だけじゃねぇ。
そう思い、文句を言いに行ったら、ものっそいスピードで
濡れタオルが顔に飛んできやがった。
・・・タオルって人、殺せるよな、これ。
その後も、夜寝ているとお腹が空いたと神楽が起こしに来て、
新八が夜食を作りに行ったりだとか。
(ちなみに俺がお誘いしたら、顔面に拳が飛んできた)
ご飯が足りなくなれば新八が自分の分をあげたりとか。
(しかもあーんって!!)
俺はお菓子一つしか許してくれないのに、神楽は
二つまでかってやったりしたとか。
(おまけに帰りにまた手を繋いでいて、俺には代わりにと
荷物を渡された)
友達の家まで迎えに行ったりだとか・・・
(酔い潰れた俺の場合は、その辺に捨てられた)
「・・・オマエ、神楽の事甘やかし過ぎじゃね?」
「だって可愛いんですもん」
「銀さんも十分可愛いと思うんだけど・・・」
「だって可愛いんですもん」
「いや、だから」
「だって可愛いんですもん」
「・・・・」
その日、俺が枕を濡らしたのは言うまでもねぇよ、コンチキショー。
************
五万打企画第八弾。友人かがみからのリクで
「私の愉快な日常を銀/魂キャラで」
と言う事で、愉快かコノヤロー。
最初はスルーする気満々だったんですが、
「絶対スルーするよね」と言われたので
あえて書きましたよ、えぇ!
ちなみに姪と私のささやかな日常話です。
・・・可愛いんだから仕方が無い。
以上で五万打企画は終了となります。
参加して下さった皆様、読んで下さった皆様、
本当に有難うございましたvvv
これからもどうぞよろしくお願いしますv
ある日、街中を歩いていると『お兄さん、お兄さん』と
声を掛けられた。
・・・あぁ、またか。
僕は声を背に、大きく息を吐く。
とりあえず聞こえる声からすると、相手は男性だ。
そうなると大抵声を掛けてきた用件が読めてくる。
多分強制ATMか街角アンケートだ。
どうも僕は気弱に見えるらしく、こういう輩が後を絶たない。
ちなみにちらしやらティッシュやらもガンガン
目の前に差し出される性質だ。
・・・や、それは嬉しいんだけどね?
今日もがっつり山ほど貰ったけどね?
ちらしだって、家に帰ってメモ用紙にする予定だけどね?
でも、それ以外は歓迎できない。・・・と、僕はその声を
無視して進もうとしたが、相手もしぶとく、
声だけでなく僕の肩を掴んできた。
あ~、もう面倒臭いなぁ!
ここはガツンと言ってさっさと帰ろう・・・と、僕は
目一杯顔に迷惑ですと書いて振り返り・・・
「あぁ、やっとこっち見た。
ね?ちょっと俺に殺されてみない?」
視線の先で物凄い笑顔を浮かべている神威さんの言葉に、
本気で泣きたくなった。
「あ、間違った。君相手だったら
ちょっと俺に犯されてみな・・・」
「すみません、ちょっと浮かれてました。
ガツンなんて言えるレベルじゃありませんでした。
え?何コレ。普通に歩いてただけなのに、
なんで突然死亡フラグ?
しかも回避不可能的な!!」
「やだな~、死亡フラグだなんて。
どちらかって言うと痴情フラ・・・」
「言わせねぇよ!?
無理ですから、どちらも拒否しますから。
全力でフラグ折にまわりますからね、僕っ!!」
ニコニコと笑顔のままでとんでもない事を言い出す神威さんに
そう言い渡すと、 なんだ残念。 と全く残念そうでない顔を
向けられた。
・・・なんだろう。ほんの数分の間で
物凄く疲れたんだけど。
もう今すぐにでも家に帰って倒れ込みたい気分なのだが、
目の前の神威さんから逃げ切れる可能性がまったく
見えないので、小さく息を吐き出すだけにしておく。
・・・ってかこの溜息で僕の今の気持ちを判ってくれないかな~?
なんて希望を持ちながらちらりと見てみれば、
満面の笑みでコトリと首を傾げ、差していた傘の持ち手を変えて
空いた方の手でガシリと僕の腕を掴んできた。
・・・ですよね~。
判る気、サラサラなさそうですし、
判っても気にしなさそうですもんね~。
寧ろ判っててやってそうですもんね~。
「で?今日はどうしたんですか?」
溜息を吐くぐらいは許されるだろう・・・と、僕は再び盛大に
息を吐き出しながら問い掛ければ、暇だったから。と
なんとも簡潔で判りやすいお答えが返って来た。
あぁ、そうなんですか、お暇だったんですか。
ちなみに僕は暇じゃないんですけどね?
この後買い物に行って万事屋に帰って洗濯物とか取り込んで
お風呂の掃除なんかもしなくちゃいけないんですけどね?
・・・ま、貴方には全く関係ない事なんで、
絶対無視されそうですけど、そこら辺。
とりあえず僕は暇潰し相手に選ばれてしまったらしい。
お茶でも飲む?と手を引かれ、近くの公園へと連れ込まれてしまった。
・・・うん、とりあえず公園で本当に良かったと思う事に
しておこう。
「しかし不思議なトコだね、ここは」
言葉通りお茶を買って貰い、公園のベンチに二人で腰掛けていると
不意にそんな事を言われた。
「何がですか?」
問い返せば、これこれ。と言って大量のポケットティッシュを
ポケットから取り出してきた。
「タダでこんなにくれるなんて、変だよね?」
「あ~、そうかもしれませんね?
僕なんかはもう普通になっちゃいましたけど」
寧ろ買うのが勿体無くて、自ら貰いに行く勢いだ。
だが、神威さんにとっては不思議らしい。
他にもこんなのを貰ったと色々と出してくる。
そう言えば神楽ちゃんも最初は不思議がってたっけ。
ポケットティッシュを貰い、
『本当にいいのか、後悔しないアルカ!?』
と何度も念押ししていた記憶がある。
「ま、いいんじゃないですか?
配ってる方もお仕事ですし、貰えるものは貰っとけば」
「そっか。じゃあこの金も遠慮なく貰って・・・」
「ちょっと待ってください」
そう言った神威さんの手元には、何故だか数個の財布があって。
「ちょ、アンタ何やってんですかぁぁ!!!」
「ん?や。なんか歩いてたらくれたんだよ、自主的に」
・・・すみません、それどんな状況ですか。
寧ろどんな状況下を作り出してたんですか、アンタ。
「ちなみにこっちは気持ち悪いおっさんがくれたヤツ」
そう言って出したのは、帯にくるまれた分厚い札束で・・・
「・・・本気で何やってんですか」
ってかどんな意味で差し出したか判らないけど、
ものっそい勇者がいたもんだな、おい!
「ま、これだけあれば一食分ぐらいにはなるよね。
奢ってあげるから一緒に食って、んで食わせて」
「すみません、色々ツッコミたいんですが
あり過ぎて面倒くさいんでとりあえず・・・」
ニコニコな神威さんの言葉に手を翳して待ったを掛け、
「お先失礼しまっす!!!!」
と、僕が勢い良く逃げ出したのは言うまでもない。
逃げ切れたどうかは・・・また別の話・・・なんだけどね。
************
五万打企画第七弾。白様からのリクで、
「神新で新ちゃんをナンパ」というものでしたが・・・
如何だったでしょうか。
なんか所々不適切な兄ちゃんが出てきてしまった
ような・・・ι
こんな感じになってしまいましたが、
少しでも気に入って頂けたら嬉しい限りです!
企画参加、有難うございましたvv
その日、久し振りに纏まったお金が入った万事屋は、
外食へと出かける事にした。
「・・・って言ってもラーメン屋だけどなぁ」
「うるせぇなぁ、自分の腹の具合を考えてから
文句言いやがれ。何も言えなくなるから」
「まぁまぁいいじゃないですか、幾松さんのラーメン
美味しいし。
大体自分で作らなくて済む上、片付けしなくてもいいなんて
それだけで最高だよ、うん」
なんだか涙が出てきそうになる様な事を言いながら、
ウキウキと店の扉へと手を掛ける新八。
「お、銀時達ではないか」
そんな万事屋を迎えたのは、何故だかウェイターの
格好をした桂であった。
「・・・間違えました」
思わず開けた扉を閉める銀時。
だが、すぐに中から扉は開けられてしまう。
「なんだ、飯を食いに来たのではないのか?
旨いぞ、幾松殿のラーメンは。
ちなみに俺のお勧めは蕎麦だ」
「うるせぇよ。間違えたって言ってんだから
そのままにしとけよ。開けんなよ、見逃せよ、
寧ろ消えろよ、お前」
「なんだ、俺の出迎え方が間違ってたのか?
『お帰りなさいませ、ご主人様v』とでも
言えば良かったのかぁぁ!?」
「キショッ!!マジでキショイんだけど、コイツ!!
何なんだよ、お前。一体どんな店に通ってんだよっ!!」
「あぁ、でも新八君とリーダーは違うな。
リーダーは『お嬢様』で、新八君は『若奥様』か?」
「それは良しっ!!
寧ろ『坂田さん家の』ってつけて下さい」
扉を挟んでギリギリと力を睨み合う銀時と桂。
その銀時の背後に、神楽の蹴りが勢い良くとんだ。
「うるせぇヨ。私は腹が減ってるアル。
さっさと入るネ。ちなみに私は『お嬢様』じゃなくて
『工場長様』ヨ」
店の中へと跳んで行った二人に、思いっきり温度の低い視線を
飛ばしながら神楽はカウンターへと腰を降ろし、
とりあえずラーメン大盛りネ!と幾松に声を掛けた。
「・・・別にいいけどね。扉だけは直しといておくれよ?」
「ははは、本当すみません。
後できっちり直させますんで、アソコの馬鹿共に」
呆れた顔を向ける幾松に、新八も軽く頭を下げつつ
神楽の隣へと腰を降ろす。
「でも・・・なんで桂さんが?」
僕もラーメンお願いします。と言いつつ、新八はちらりと
未だ床に倒れ込んでいる二人へと視線を向ける。
「あぁ、なんか金も持たずに食べに来たから
半殺しにしてやろうと思ったら、勝手にアレ、やりだしてね」
止めるのも面倒臭いから。そう言って調理を始める幾松に、
漸く起き上がった銀時がカウンターへと近寄ってきた。
「おいおい、商売する気あんのかよ。
言っとくけどあれ、完璧な営業妨害だからね?
しかも飲食店に長髪ってどうよ?
せめて取れ、そのヅラ」
「ヅラではない、桂だ!!
で、銀時は何を注文するのだ?チャーハンか?」
「あぁ!?なんでチャーハンなんだよ。
さっきお前、蕎麦勧めてなかった?
ま、俺はラーメンだけど」
「よし、幾松殿。
チャーハンお願いしま~す」
「何聞いてたぁぁ!!?
ラーメン、絶対ラーメンなっ!」
ギャーギャーと騒ぎ出す銀時と桂に、新八と神楽は
呆れた視線を向け、
「はいはい、判ったから二人とも座んな。
・・・扉直してからな」
「「・・・はい」」
幾松はキラリと包丁を向けたのであった。
「あぁもう神楽ちゃんてば!
そんな急いで食べなくても誰も取らないってば」
大口を開けて麺を啜る神楽に、新八は甲斐甲斐しく口元を拭き、
世話をする。
「おい新八、そいつに構ってると麺のびるぞ?
さっさと食べさせろって、銀さんに」
「何でだよ。
自分で勝手に食べて下さい!」
「え~、ならせめてフーフーして」
「・・・ウザッ」
「銀時!何をやっておるか。
さっさと食べないと幾松殿の美味しい麺が本当に
のびるではないかっ!
ほら、貸せ。フーフーしてやるから!!」
「いらねぇよ。
毒霧じゃねぇか、それ。
ってかそっから入ってくんじゃねぇ!
こっから先は坂田さん家の食卓なんですぅ~。
不法侵入とみなして鼻割り箸すんぞコラ」
「ちょっとよしておくれよ。
割り箸だってタダじゃないんだから」
「え?ツッコムとこそこなんですか、幾松さん」
「さすが幾松殿、店主の鏡だな」
「・・・それでいいんですか、桂さん」
少しばかり哀れみの色を浮かべながら桂を見る新八だったが、
直ぐにクスリとした柔らかい笑みへと変えた。
「でも、仲が良いんですね、お二人って」
そう言って幾松と桂を見る新八に、隣の神楽も
うんうんと頷いた。
「全くネ。入ってきた時、まるでいい年してフリーターな
バイト君とその店主に見えたヨ」
「や、それそのまんまだからね?」
「それを言うなら、リーダー達は健気に働く従業員と、
給料はやらずに世話ばかりかけてるダメな大人の集団に
見えたぞ?」
「それもその通りですけど、そんなほんわりした笑顔で
言う事ではないですからね?桂さん」
「ちょ、新ちゃんんん!!?
それもそんな笑顔で言う事じゃなくね?
ってか坂田家だから!俺達見たまんまの
新婚夫婦とじゃじゃ馬娘の理想的家族だからっ!!
っつうか本当、こいつ邪魔なんだけど!!?」
無銭飲食なんだからさっさと警察に突き出せよ、こいつ!と
幾松に食って掛かる銀時だったが、幾松は微かに肩を
竦めてゆるりと口元を上げた。
「・・・ま、今日一日きっちり働いて返して貰うわよ。」
「・・・どんだけ高い蕎麦だよ、それ」
はぁ。と肩を落とす銀時に、桂はふふんと自慢げな笑みを浮かべた。
「俺のは幾松殿のお手製だからな。
それぐらい仕方なかろう」
「俺らのもそうだってぇの。
ってかアレだから、俺なんて毎日新八のお手製だからね?
でもなんか悔しい気がすっから、
やっぱフーフーお願いします、新八君!!」
「すいませ~ん、
お冷のお代わり貰いますね~」
「え?スルー!!?っつうかお前はいいんだよ、ヅラ!
坂田家に入ってくんじゃねぇぇぇ!!!!」
***************
五万打企画第六弾。団子様からのリクで、
『万事屋家族と桂×幾松のお話』との事でしたが
如何だったでしょうか?
深く深く妄想を働かせて貰えば、
なんとなく桂幾な雰囲気が見えてくる・・・ような?(お前ι)
夫婦茶碗は出ませんでしたが、少しでも
楽しんで頂ければ嬉しい限りですv
企画参加、有難うございましたvv
「・・・何なんですか、アンタ等」
神楽も既に眠りに付き、明日の朝食の準備も済んだ
新八は、突然叩かれた玄関の音に首を傾げた。
銀時が長谷川と呑みに行くと言って出てから、まだそんなに
時間は経っていない。
なので銀時ではないだろう・・・と思いつつも、
こんな時間にやって来る人に心当たりはない。
しいて言えば下のお登勢だが、今日は店を休んで
小旅行に行くと言っていた。
なら誰なんだろう。新八は一応警戒しながら
玄関へと向かい、先程の言葉を吐き出したのであった。
「いやなんて言うの?偶には家で呑むのもいいかな~?
なんて思ったりして?」
「嘘つけっ!ツケが溜まり過ぎて呑ませて
貰えなかっただけじゃん、銀さんは」
「うっせぇよっ!元はと言えば
金持ってこなかったテメーが悪いんじゃねぇかぁぁ!!」
「ちょ、言っとくけど自分の分は辛うじて持ってたからね?
一杯分ぐらいはあったからね、ちゃんとぉぉ!!」
「え?二人とも金ないの?
あれ?もしかしてこれって全部俺払い?
後払いとかじゃなくて?」
「テメーの金は元を辿れば俺らの税金だ。
ある意味俺らの奢りだぜ?感謝しろ、感謝」
「いや全然出来ないよね!?
明らかに俺の給料から
出てるよね、これぇぇ!!!」
ワイワイ言いながら居間へと上がり込み、何処かで買ってきた
らしい酒類をテーブルの上に並べ始めるマダオ三人。
「や、銀さんは後で本気で家の裏に
来てもらうとして、
・・・なんで近藤さんまで?」
もしかしてカモられてます?ってか明らかにカモられてますよね。
と、何故か銀時、長谷川と共に万事屋にやって来た
近藤に問い掛ければ、あ~。と銀時が変わりに
答え始めた。
「既にお妙のトコに行ってボラれて
ボコられてきたらしい」
・・・成る程。
そう言われてみれば、近藤の頬は微かに腫れている。
と言う事は、既に近藤の財布も空同然なんだろう。
・・・ってかこの二人に捕まった時点で空決定だ。
「ったく、財布だけ拾おうと思ったのに余分なのが
付いてくるしよぉ」
「いやいや銀さん、こうして酒買って貰えたんだし
いいじゃないの」
「え?やっぱり俺の奢りぃぃ!!?」
「ちっげぇよ。俺らの奢りだ」
とりあえずそれなりに酒が入っているらしい三人の馬鹿話に、
新八は大きく息を吐く。
そして、あんまり騒がないで下さいよ。
と告げると、はーい。と言うとても良いお返事が返って来た。
・・・が、返事が良ければ良い程、
不信感だけが溢れてくるから不思議だ。
新八はもう一つ、深々と溜息を落とした。
「ってかそんなに美味しいんですか?」
お金もないのに呑みたがるほど。と、新八はササッと作ってきた
おつまみを出しながら、銀時達に問い掛ける。
「あれ?新八君って呑んだ事ないの?」
銀さんのトコに居るのに。と不思議そうに首を傾げる長谷川の
頭を、銀時がパシリと叩く。
「人聞き悪い事言ってんじゃねぇよ。
言っとくけどアレだよ?銀さん、教育にはちょっと煩いからね?」
「そう言うならまず生活態度を改めて下さい」
「ちなみに俺は自分で呑んでるよりお妙さんが
呑んでる方が多いぞ?」
「・・・それは楽しい・・・んですね、すみません」
「ならさ、ちょっと呑んでみるかい?」
ニコニコと嬉しそうに不憫な事を告げてくる近藤に、
少しだけ哀れみの視線を送っている新八に、長谷川が
ヒョイッと酒の入ったコップを差し出してきた。
「え・・・でも・・・」
「おいおい、何言ってんの?ダメだって言ったでしょうが。」
戸惑う新八に、銀時が割り込んできてコップを遠ざける。
「大体アレだよ?新ちゃんが酔っ払っちゃったら誰が
俺の事介抱してくれるってんだよ。
言っとくけどそん時だけだよ?
ベッタベタに甘えさせてくれるの。
それにもし酒癖悪かったらどうすんだよ。
これでもあのメスゴリラの弟だよ?
んな事になったらシャレになんねぇよ」
「何を言うっ!言っとくが酔っ払ったお妙さんは
滅茶苦茶可愛いぞ!?
こう、まるでハンターの如き鋭さとなる瞳!
勝利に高揚してるかの如き赤き頬!
そして理性が崩壊したかの如き、
とんでもない拳!!
思わず心臓が破裂しそうな勢いだ、うん!」
「それは単なる命の危機だ。」
ってか滅茶苦茶酒癖悪いじゃねぇか。力説する近藤に、
些か引き気味の銀時。
「や、でもこう言うのは人それぞれだからね?」
「そうなんですか?」
「まぁな。でも止めとけって。
お妙までとはいかないまでも、突然泣き出したり
笑い出したり脱ぎだしたりなんかしたらオマエ・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・とりあえず一杯な?」
「いや、なんで?」
突然主張を変えて、長谷川から奪い取ったコップを
新八へと手渡す銀時。
それを不審げに見詰めると、銀時は軽く手を振って
話し出した。
「いやいや、やっぱアレじゃん?
思春期の好奇心を押さえ込んで爆発されても困るじゃん?
知らない内に台所で呑んだくられても困るじゃん?
ならいっそ俺の目の届く所で・・・と思ってよぉ」
「・・・別にそこまで興味がある訳じゃないんですけど。
ってか台所でって明らかに思春期の行動じゃないですよね?
思いっきり主婦層ですよね、それ!?」
そう言うものの、やはり少しだけお酒と言うものに
興味がある年頃な新八としてはいい機会である訳で。
「まぁまぁ新八君。
一杯ぐらい呑んでみなよ。
保護者もいいって言ってるんだしさ~」
「・・・なら一杯だけ・・・」
長谷川にも勧められ、新八は戸惑いながらも嬉しそうに
コップへと口をつけた。
「・・・あ、意外と美味しい」
「お、意外といける口だね、新八君!」
半分ほど呑んだ所で、新八がそう感想を述べると、
ニコニコと長谷川が酒を注ぎ足してくる。
「あ、ちょ・・・もういいですって!」
新八は慌ててコップを置こうとするが、まぁまぁと
近藤に宥められてしまう。
「いや~、こうも早く義弟と酒が呑めるなんてなぁ」
「お前はまず金が絡まない酒を
お妙と呑める様になってからこい」
ってかこれなら今度、晩酌に付き合ってくれよ。と嬉しそうに
銀時も告げてきたので、新八は新たに注がれた酒に
笑って口を付けたのであった。
それからどれだけ時間が経ったのであろう。
銀時はコトンと肩に寄り掛ってくる存在に気が付いた。
「ん?どったの、新ちゃん?」
そう言って肩に頭を寄せている新八の顔を覗き込めば、
頬を真っ赤にさせて目をトロンとさせている。
「何?新八君眠くなっちゃった?」
「ん~、そうみたいだな。おら、もう止めとけって」
長谷川の言葉に肯定しつつ、新八の手からコップを
取ろうとするが、新八はイヤイヤと頭を振って手放そうとしない。
「さすがお妙さんの弟。酔い方も可愛いなぁ」
「や、本気で関係ないだろ。
寧ろ真逆だろ、この酔い方。
っつうかマジ可愛いな、おい!!」
なんとか銀時がコップを奪い取ると、変わりにとばかりに
長谷川が水の入ったコップを新八へと手渡す。
「でも結構呑んだよな。お酒気に入った?」
そう問うと、新八は両手でコップを抱えたまま
コクリと頷く。
そして・・・
「思ったより美味しかったです。
お金も仕事もないのにどうにかして呑もうと
言う気持ちは全く判らないですけど」
と、物凄くいい笑顔で口を開いた。
「え?・・・いやあの・・・新八君?」
「と言うか気分も良くなるから、
それ目当てで呑んでるんですか?
あ、もしかして現実逃避?
そうですよね~、したくもなりますよね~。
暖簾見たら入りたくもなりますよね~、
帰る家も待ってる人も居ませんし。
ぶっちゃけそのお金溜めてせめて部屋を
借りたらどうです?それがダメなら
せめてダンボールハウスを・・・って言いたいけど
止めときますね?所詮他人事だし。」
「や、ちょ・・・止めてぇぇ!!
無性に泣きたくなるから止めてぇぇ!!!」
ニコニコと笑いながらとんでもない事を話し始めた
新八に、長谷川が心からの声を上げた。
・・・が、新八は止まらない。
唖然としている銀時を振り返り、ニコリと笑う。
「銀さんもやっぱり同じですか?」
「や、お、俺は違うよ?
そんな現実逃避したくなるほどじゃねぇし」
「でもよく呑みに行きますよね?
この場合は人生から?それとも天パから?
あ、どっちもですね。
でもね?そんなに悪くないですよ、天パ。
そう言う事にしといてあげるんで、
毎朝鏡の前を陣取るの止めてください。
マジウザイです。
ってかぶっちゃけ寝癖なのか天パなのか判りませんから。
誰もそこまで銀さんに注目してませんからね?
僕も適当に相手してますし」
「だからしてねぇって言ってんじゃん!!
え、何この子。ものっそく可愛いのに
とんでもない毒吐いてるよ!?」
でも可愛いぃぃぃ!!!と、少し涙目になりながらも
新八を抱き締める銀時。
その腕から苦しそうに顔を出すと、新八は
コテリと首を傾げて苦笑する。
「もう銀さんったら・・・
マジウゼェ」
その瞬間、新八を抱き締めていた銀時から、
微かにすすり泣くような音が聞こえて来た。
「あ・・・あの新八君?
そろそろ本気で寝た方がいいんじゃないかな~」
この分だと次の餌食は自分だろう。
ならば・・・っ!
と、覚悟を決めた近藤が、それでも恐る恐る声を掛けると、
ニコニコと笑い続ける新八がクルリと視線を向けた。
そしてゴクリと息を飲み込み、来るだろう衝撃に
近藤が身構えていると・・・
何故だかとても柔らかい笑みを浮かべて、
何度か頷くだけで終わってしまった。
「・・・って何でだぁぁ!!?
言う事あるよね?俺にもなんかあるよね?
ほら、ゴリラとかケツ毛とかさぁ、もう突っ込み所も
毒吐く所も満載だよねぇぇ!!?
なのになんでそんな慈愛に満ちた微笑みぃぃ!!?
なんかすっごい辛いんだけど!
毒吐かれるよりきついんだけどぉぉぉ!!!?」
「うっせぇよ、ゴリ!!
っつうか毒じゃねぇから!
さっきのは毒と言う名の愛だから!
ウザイ程の愛だからぁぁ!!!」
「やっぱ作るならダンボールよりビニールシートかな?
あ、でも買う金すらねぇや、ははは・・・」
その夜、突如泣き上戸となった大人三人を
ニコニコと楽しげに眺めていた新八は、次の日
とんでもない頭痛に襲われ、もう二度と酒は呑まないと
言って、今度は喜びの涙を銀時達に流させたのであった。
*****************
五万打企画第五弾。蒼月様からのリクで、
『実は酒癖の悪い新ちゃんで。
キス魔とか抱き付き魔とかそう言う可愛らしいのじゃなく、
笑顔でマダオ共貶して凹ます』との事でしたが、
如何だったでしょうか?個人的に
あんまりのり移れませんでしたのが反省点です(おいι)
・・・もっといっちゃった方が良かったですかね?(笑)
こんな感じになりましたが、少しでも心すっきりと
なって頂ければ嬉しいですvv(笑)
企画参加、有難うございましたvv
「銀ちゃんってツンデレってヤツネ。
・・・気色悪っ」
「おいコラ。突然とんでもねぇ事と
厳しい感想言ってんじゃねぇぞ」
常々思っていた事を告げれば、ものっそく嫌そうな
顔で睨まれた。
その顔、私がするべき表情ネ。
軽くイラッときたので、とりあえず顔面に拳を
埋め込んでみた。
自分に素直に生きるのが私のモットーヨ。
でも、銀ちゃんはどうも違うらしい。
大体にして最初からそうだったのだ、この男は。
自分の手助けをしてくれると言う新八に対し、
勝手にしろと言っていた癖に、ちゃっかり後で助けに
来てくれたり。
・・・あれは絶対後を付けて、出てくるタイミングを
見計らっていたに違いないと心底思っている。
まぁ大抵何時もそんな感じなのだが。
そしてそれは日常生活でも同じなのだが。
「銀さん、今日買う物沢山あるんで付き合ってもらえません?」
新八がそう言えば、
「お前の手は何の為に二本あるんだ。頑張れ、新八。
ちなみに銀さんの両手はジャ○プを支える為にあります」
と断るくせに、新八が出かけた後、
「あ~、なんか体だるいな、何だコレ。
・・・あ、そう言えば今日は外出てねぇわ、銀さん。
人間、一日にせめて十五分は日光に当たらねぇと
いけねぇって言うしな、うん。
あ~、ならしゃあねぇわ。ダルイけど外出なきゃ。
本当、ダルイんだけどね、面倒臭いんだけどね。
ジャ○プの続きもごっさ気になるんだけどなぁ。
でも当たらなきゃいけねぇってんなら仕方ねぇよな、うん」
等と長い独り言を呟きながら、後を追うように
イソイソと出掛けていく。
・・・なら曇りの日や雨の日はどうするネ。
そう言ってやりたい神楽だが、また長々とした言い訳が
始まりそうなので、今の所黙ったままそれを見送っている。
大人な私に感謝するヨロシ。
ちなみにその後、両腕に買い物袋を携えた銀時が、
新八と共に帰ってくるのは言うまでもない。
他にも、高い所のものを取ろうとしている新八に対し、
「落とされても困るしな。あ、別にオマエが心配って
事じゃなくて、物な物。ほら、割れでもしたら困るし・・・
ってうん、これ割れ物じゃないね。
・・・で、でもどんな物でも大切にしなきゃな!」
と取ってやり。
夜、家に帰ろうとする新八を
「面倒臭ぇけど、子供をこんな時間に歩かせるなって
ババアがウルセェからな」
と態々送ってやり・・・たいらしいのだが、大抵断られる。
何分毎日の事なので酷く新八が遠慮するのだ。
新八曰く、一人残される私の方が心配らしい。
結果、
「あ、そう?ならいいわ。
別にどうしても送らなきゃいけない訳でもねぇし?
ババァが煩ぇだけだから一応言ってみただけだし?」
お疲れ~。と言って見送る羽目になるのだが。
・・・私は知ってるネ。
そう言いつつも、毎日きっちり新八の後をつけて
隠れ送り人となっている事を。
私曰く、新八の方がよっぽど心配ネ。
・・・ちなみに、偶に本当に遅くなってしまい、ちゃんとした
送りになっている時の銀ちゃんは、
「仕方ねぇなぁ、銀さんも早く寝たいってぇのによぉ。
あ?それなら別にいいって・・・いやあの・・・あぁ!
そういや銀さん、今週のジャ○プ買い忘れてたわっ!
あ~、あれの続き気になるしな~、なんか読まないと
気になって眠れないような気がしてきた。
ってか絶対寝れねぇな、コレ。
うん、しょうがねぇから
ちょっと買いに行くわ。序に送ってくから。
ん?イヤイヤ家まで送ってくって。
ほら、この近くのコンビニだと売ってねぇから。
あるの、オマエん家のコンビニだけだから、きっと。」
・・・等といって、ウザさが半端ない。
と、つい今までの事を思い出し、じっとりと目の前の銀時を
睨んでいると、鼻血を止めるべく、ティッシュを
詰め込んでいた銀時が あぁ? と睨み返してきた。
「んだよ、まだなんかあんのか?」
「あるも何も、少しは素直になるヨロシ」
見ててウザいし、何より痛い。
「あぁ?何言ってんの、オマエ。
銀さんは何時でも何処でも自分に素直に生きてますぅ」
「出来ましたよ~・・・て、え?何この雰囲気」
思わず二人で睨み合っていると、朝食を運んできた新八が
一瞬目を瞬いた。
「別に?神楽の頭が未だ起きてねぇだけだ」
「それを言うなら銀ちゃんの髪の毛は色々起き過ぎネ」
「ッテメ!そこまで言うなら寝かしつけてみやがれ
コノヤロー、心からお願いしますっ!」
「・・・悪かったヨ、銀ちゃん」
「え、何その本気の謝罪。」
「はいはい。いいから早くご飯食べちゃってください!」
全くもう。と言いつつ、テーブルに出来たての朝食が
並んでいく。
それらが全部並び終わった所で、三人手を合わせて
いただきますだ。
ホカホカのご飯に頬を緩ませていると、突然銀時が
小さな声を上げた。
見れば、何故だがプルプルと小刻みに震えている。
「どうかしましたか、銀さん」
何か詰まりました?と心配する新八を余所に、
銀時はクワッと顔を上げると、勢いよく箸をテーブルへと
たたき付けた。
「どうしたもこうしたも・・・んだぁ?こりゃ。
全然甘くねぇじゃねぇかぁぁ!!」
そう言って指差したのは、綺麗に焼かれた定番の卵焼き。
「甘くない卵焼きなんてオマ・・・アレだよ?
最早犯罪の域だよ?卵に対する冒涜だよ?」
あ~もう最悪だっ!!と項垂れる銀時を横目に、
神楽は自分の分の卵焼きに手をつける。
・・・うん、確かに何時もの様に甘くはない。
が、これはこれで美味しい。
そう思うが銀時は納得していないようだ。
体を起こしてソファへと身を預けると、やってらんねぇ。だの
裏切られただのグチグチいい始めた。
そんな銀時に、新八が申し訳なさそうに口を開く。
「すみません。・・・でも銀さん、この間お医者さんに
怒られたらしいじゃないですか。
それにこの間珍しくパチンコで勝ったって言って大量に
お菓子持って来たし・・・せめて食事くらいは気をつけて・・・」
「食事くらいって・・・あのなぁ、食事って大切だよ?
人としての基本だよ?コレ。
しかも朝食なんて言ったら、一日の始まりだろうが。
これで今日一日のやる気なんかが決まるってもんだよ。
それをオマエ・・・甘くない卵焼きだなんて・・・
あ~、無理。なんかもう食べる気しなくなっ・・・」
「なら寄越すヨロシ」
「・・った訳でもねぇんだけどよ」
銀時の発言に、さっと手を伸ばすがそれは空振りに終わった。
何故なら咄嗟に銀時が自分の卵焼きが乗った皿を
上へと持ち上げたせいだ。
それに対し、神楽が短く舌打ちをする。
「甘くないのが嫌なら寄越すヨロシ」
「いやいや、これなくなったら銀さんのおかずがなくなっちゃうからね?
こんなおかずでも、ないと困るから、銀さん」
ジリジリと卵焼きを狙う神楽に、その目から必死に
卵焼きを庇おうとする銀時。
そんな二人に、新八がおずおずと声を掛けた。
「あの・・・この浅漬け全部食べちゃっていいんで、
その卵焼きは神楽ちゃんに上げてください」
「・・・え?」
新八の言葉に、銀時の体がピシリと固まった。
「すみません、銀さんがそこまで卵焼きに
拘り持ってたなんて知らなかったから・・・」
そう告げる新八の顔は、笑っているものの眉が下がっている。
「ごめんね?神楽ちゃんはこの卵焼きでも大丈夫?」
「私は全然平気ネ。と言うか新八の作ったご飯に
文句なんかないネ」
私、大好きヨ。と言えば、新八は照れ臭そうな笑みを
神楽へと返した。
そして未だ卵焼きの皿を抱え込んでいる銀時に向って
手を差し出す・・・が。
「あぁぁっ!!!!」
神楽の絶叫虚しく、銀時はガツガツと卵焼きを
全部口に入れてしまった。
「ちょ、何するネ、銀ちゃん!!」
「そうですよ、そんな無理して食べなくても・・・」
そう言うが、とうの銀時は無言で口を動かしている。
そして漸く口の中の物を飲み込むと、勢いよく
喋りだした。
「煩ぇなぁ、食べてる時に話しかけてんじゃねぇよ。
それに、別に無理なんかしてねぇから。
銀さん、卵焼き大好きだし?そう言えば最近糖分取り過ぎてて
ヤバイと思ってた所だし?
別に新八の心配が嬉しかったとか、新八の作るモンなら
なんでもいいとか、寧ろ誰にもやりたくねぇとか
そんな事全然思ってねぇから!
ただ、今朝は甘くない卵焼きな気分だったって言うの
さっき思い出しただけだから。
本当、それだけなんだからね!!」
「・・・銀ちゃん・・・」
今の姿、半端なくウザイヨ。
ってかさっき食べている時何にも喋らなかったのは、
きっと行儀云々と言うより、
ただ単に新八の卵焼きを堪能していただけだろう。
全く、何処までウザさを爆発させれば気が済むのだ、この男は。
だが・・・
「銀さん・・・有難うございます。
明日はもう少し甘くしますからね?」
新八は気付いてないようで、銀ちゃんが自分を気遣って
無理をしていると思っているようだ。
見れば嬉しそうな笑みを浮かべている。
それを見て、銀時はさっと顔を背けた。
「べ、別に?
その方が嬉しいけど、やっぱ体第一だし?
新八の作ったモンならなんでもいい・・・じゃなくて、
作って貰っといて文句言うのもアレだしな、うん」
って事で明日もよろしく。なんて何時もの様に
気ダル気に言っているが・・・
・・・銀ちゃん、耳、真っ赤ヨ。
神楽は大きく息を吐き、自分の分の卵焼きを
パクリと口にした。
「・・・私はこの味で十分ネ」
これ以上甘ったるいのはゴメンヨ。
そう思い、神楽はもう一つ、心の底から
溜息を吐いたのだった。
****************
五万打企画第四弾。姫りんご様からのリクで、
「ツンデレ銀さんと銀さんラブな新八」と言う事でしたが
・・・如何だったでしょうか?
なんか私、ツンデレを誤解してますかね?(笑)
どうも単なる変態になってしまったような・・・(←何時もの事ですねι)
こんな感じになりましたが、少しでも
楽しんで頂けたら嬉しい限りですvv
企画参加、有難うございましたvv