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銀魂(新八中心)の同人要素満載のサイトです。 苦手な方はご注意を。
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「なんでキスする時って目を閉じるんですかね?」

・・・や、その前になんでそんな事聞くんですかね?

目の鼻の先で、新八の目が不思議そうにキョロリと動くのが見ながら、
俺は心底そう問い返したかった。

 

 

 

 

 

神楽が居ない昼間、新八もある程度家事を終えて、俺と二人、
まったりと肩を並べて座ってテレビを眺めていた。

だが、流れているテレビの内容は、俺にとっては興味のない
話題ばかりのニュースで。

しかも、隣に新八が居たりするものだから、自然と手が新八の
肩へと回るわけだ、うん。

それでついついその細っこい首筋を撫でてみたり?

やわっこい耳たぶを指先で遊んでみたり?

片手に掴めるほどの小さな顎をじっくりと堪能したりした訳よ。


そしたら新八のヤツ、止めてくださいって言いつつも、クスクス笑って。

お返しですって言って、俺の横腹なんて擽ってきたりして。


まぁ、ぶっちゃけイチャコラしてた訳だ、うん。


で、そんな事してたらチューの一つもしたくなるって訳で。
寧ろお付き合いしてるんだから、そうなるのが当たり前な訳で。

クスクスと肩を竦めて笑う新八の顎を取り、
そっと顔を近づけた所で・・・さっきの言葉だ。

本当さ~、なんでこの雰囲気でその台詞ぅぅ!!?
違うよね?ここはもっとチューかまして、甘々なイチャコラ続行。
出来ればその後のニャンニャン的な
ものまでお願いしますっ!!
って状況だったよねぇ!?
銀さん、読み間違えてないよねぇ!?

だが、先程まで漂っていた甘い空気が粉砕した中、
新八は俺と向き合ったまま不思議そうに首を傾げている。

・・・や、その仕草も可愛いけどね?
銀さんとしては、もっと他の
可愛い新八君が見たかったですっ!

カクリと肩を落とすが、いや、まだ今なら戻れるかもしれないっ!
と、再度新八の頬へと手を添えてみた。

「・・・なら、開けたままでもいいぜ?」

そう囁くように告げ、俺は新八へと顔を寄せる。

うん、そうだよ。まだあの甘い空気は残ってるって!
ほら、見えるだろう、銀時。
微かに漂う甘い空気の残滓がっ!!
アレを手に入れられなくて、何が糖分王だコノヤロー!!


「やですよ、そんなの。
あ、もしかして目の前の現実から逃避する為ですかね?」

「って、どう言う意味だコノヤロー!!!」


何この子、本当は銀さんの事が嫌いなんですか!?
それとも手の上で転がして遊ぶ、小悪魔ちゃん気取りですかぁぁ!!?


そんな勢いのまま、つい添えていた手でミョーンと
頬を引っ張ってしまった訳で。





あ、完全に消えたわ、甘い空間。





最終的に消したのは俺かもしれないが、
何事も過程と言うものが大事だ。
なので俺は悪くない。

痛い痛いと新八が喚くが知るもんか。
絶対今の俺の胸のほうが痛いからね、コレ。
結構繊細な作りしてんだから、取り扱いには注意して下さいっ!

そうは思っても、もう先程の空気は取り戻せないわけで。
で、俺はと言うと、実は結構雰囲気を大切にする方だったりする訳で。

こりゃ~仕切りなおしは無理だな。と、大人気なくも臍を曲げて
俺はソファにダラリと体を預けた。

「で、何?新八は銀さんとチューすんの、現実逃避したく
なるぐらい嫌
ってぇ事?」

あ~、そりゃ悪い事しましたね。ケッと言葉を吐き出すと、
突然新八の顔が間近へと寄せられた。

「違いますよっ!そうじゃなくて・・・」

そう言ってますます近付く新八の顔と、微かに触れる柔らかい感触。

驚いて目を見開く俺の目の前には、やっぱり目を閉じた
頬の赤い新八が居て・・・


「・・・恥ずかしすぎて、逃避したくなるってだけです」


そう言った新八に、俺は幸せすぎて逃避しそうになった。


ま、絶対しないけどな、そんな勿体無い事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、何であんな事言ったのよ?」

あの後、甘い空気も元に戻り、思う存分唇を交わした後・・・と言うか
今も現在進行形で
新八の頬や目蓋に唇を落としながら
先程の疑問を投げかけてみた。

「・・・だって銀さん、時々目、開けてるでしょ」

僕は絶対閉じちゃうから、不思議で。と頬を赤く染め、
恥ずかしそうに言う新八に、あ、バレてたか。と、誤魔化しも兼ねて
一つ、唇を落とす。

「ね、なんで閉じちゃうんですかね?」

「さっき新八が言ったような理由じゃね?」

ちなみに俺が時々目を開けたままなのは、先程の理由だ。

目の前にある幸せを、ちゃんと確認しておきたいのよ、銀さんは。


・・・ま、恥ずかしそうにしている新ちゃんの顔を見てたい
ってのもあるけど。

「じゃあ恥ずかしいのがなくなるくらい慣れれば、
僕も閉じずに居られますかね?」

そう言って擽ったそうに竦める首筋にも、一つ唇を落とす。
で、おまけにペロリ。

「何、そんなに銀さんの顔を見てたいの?」

からかい混じりにそう言えば、はいそうですよ。と直ぐに答えが
返ってきて、序に鼻先にも唇が返って来た。

「だって銀さんの事は全部知っておきたいですもん」

ニコリと笑い、俺の額へと可愛らしい音を立てて唇を
落としてくる新八に、今度は迂闊にも俺が目を閉じてしまった。

 


あぁ、チキショー、勿体ねぇっ!

**********************
四万打お礼企画・第一弾。
姫りんご様からのリクで
「今までで最大にあま~い銀新」と言う事でしたが・・・
どんな感じでしょう?甘くなりましたかね?(ドキドキ)
最近、うっかりしなければ甘いものを書けなくなってた
ものですから・・・(おいι)

こんな感じになりましたが、少しでも
気に入って頂けたら嬉しい限りですv

企画参加、本当に有難うございましたv

 

拍手[3回]

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「「あっ」」

買い物の帰り道、神楽ちゃんと歩いていると、道端に光り輝く
モノを見付けた。
近寄って見てみると、それは一枚の5百円玉で。

「おぉっ!ラッキーネ、新八。
これで久しぶりにおやつが買えるヨ」

「え~、おやつよりもまず
食費に回したいんだけど・・・
ってダメだよっ!落し物なんだからちゃんと届けないとっ!」

神楽ちゃんの言葉に、一瞬素で答えてしまった。
危ない危ない。幾らお財布が寂しい事になってても、
こう言う事はちゃんとしないとね。
侍たるもの、清く正しく美しくっ!

だが神楽ちゃんは、そんな僕の言葉をヘッと鼻で笑い飛ばした。

「何言ってるネ。これはどっかの誰かの財布と言う名の
天からの贈り物
ネ。素直に貰っとくのがヨロシ」

「いや、それが落し物って事だからね?
ちゃんと届けなきゃダメだって」

言い聞かせるようにそう言うと、僕は神楽ちゃんの手から
5百円玉を奪い取った。

第一ちゃんと届けて、半年後に気分良く
名実共に自分のモノにする方が断然良いし。

「んだよ~、良い子ちゃんぶりやがって。
銀ちゃんなら知らない顔で踏みつけて、さり気なく移動した後
きっちり自分の懐に入れてるアル」

「・・・ダメだからね、それ。
完全無欠でダメな見本だから、それ」

第一カッコ悪いでしょ?と言うと、神楽ちゃんは何かを思い出すように
天を仰いだ後、確かに・・・と頷いた。

どうやら既に神楽ちゃんの前でご披露されていたらしい。
ある意味いい人生の見本だ。反面的な。

「とりあえず届けにいこ?」

そう言うが、神楽ちゃんはまだ5百円玉に未練があるようで、
大変恨めがましい視線を送ってくる。

・・・神楽ちゃんの前で、お金の事言い過ぎたかな。
とりあえず今度からは自重して、居ない所で
攻め立てる事にしよう。

そう心の中で決意していると、

「お、何してんでィ、そんな道端で。
アリの行列でも蹴散らしてんのかィ?」

と、見慣れた顔の黒服が前方からやって来た。

「って何でそんな可哀想な事しなきゃいけないんですか、沖田さん」

ってかこの年でそんな事してたら、アリも可哀想だが、
それ以上に頭が可哀想だ。

「え?だって楽しいってか気分良いじゃねぇか」

そんな事を思っていたら、とても不思議そうにそう返された。

・・・アンタ、その年でまだそんな事してんですか。

あ、でも丁度良いかもしれない。
真選組と言えば一応お巡りさんだ。

例え目の前の人が、駄菓子の詰まった紙袋を
抱えていたとしても
・・・だ。

そう思い、僕はここに居た経緯を話し、持っていた5百円玉を
沖田さんへと差し出した。
すると返って来たのは、眉を顰められた嫌そうな顔。

「んなのさっさと使っちまえばいいのに。
きっとアレですぜィ?それはどっかのヤツの財布から
零れ落ちたと言う名の神様からの施しでさァ」

「だからそれが落し物だって言ってんですよっ!
大体一応警察であるアンタがそんな事言ってどうすんですかっ!」

「そうネ。どうせなら金じゃなくて現物支給
施しにして欲しいアル!!
特に酢昆布的な」

「・・・いや、そんな施しもいらないからね?
神楽ちゃんだけだから、それで喜ぶのは。
ってかもし落ちてても絶対食べちゃダメだからねっ!!」

兎に角っ!と、更に5百円玉を差し出すが、沖田さんは
知らん振りだ。
なんでそんなに頑なに拒むんだろうか。

流石に不思議に思い、問い掛けようとしち時に再び僕等へと
聞き慣れた声が掛けられた。

「あ、近藤さん」

振り返ってみれば、少し顔の変形している近藤さんが立っていた。
・・・って、何で顔が変形・・・あぁ、止めておこう。
だって答えは判りきっているもの。

とりあえず近藤さんの顔は見なかった事にしていると、
不思議そうに首を傾げながら僕達の元へとやって来た。

「何やってるんだ?三人固まって。
ってか総悟は確か今日、内勤だった筈じゃ・・・」

「休憩時間でさァ。それよりも近藤さん、
新八達がはした金を拾ったそうなんで、受理しといて下せェ。
俺は忙しいんで」

「いや、アンタ今休憩時間だって言いましたよね?
しかもプラプラ歩いてましたよね?さっき」

「そんな事ありやせんぜィ?俺ほど多忙な男は居ねぇよ。
だから受理する時間も、その書類書く時間もねぇ・・・
ってか誰がやるかそんな面倒臭ぇ事」

「おいぃ!!本音駄々漏れぇぇ!!
隠すなら全面的に隠し通せよ、そこはっ!」

「それすらも面倒臭いんでィ」

オラ、さっさと渡しちまいな。と言って、5百円玉毎
僕の手を近藤さんへと向けた。
それを受け取り、ニッコリと笑う近藤さん。

「あぁ、確かに受け取ったよ。ご苦労だったね?」

そう言って近藤さんは、ニコニコと笑いながら僕と神楽ちゃんの
頭を大きな手で撫でてくれた。

・・・や、ちょっと嬉しいけど、流石に恥ずかしいですから、それ。

「総悟も休憩時間だって言うのに、ご苦労だったな」

って、さっきの会話聞いてました!?

神楽ちゃんの頭から手を下ろしながら、そう言う近藤さんに
少しだけ力が抜ける。

僕が言うのもなんだけど、近藤さんは少しは人を疑った方が
いいと思う。

「全くでさァ」

・・・で、アンタは少しは罪悪感を持て。

白々しくもそう言い、肩を竦める沖田さんに呆れていると、
受け取った5百円玉を丁寧に紙に包み、ポケットに入れていた
近藤さんが、今度は内ポケットから財布を出してきた。

そして、はい。と千円札を一枚、僕の手へと乗せる。

「え?あのこれ・・・は?」

近藤さんの行動の意味が判らず、乗せられたお金と近藤さんの顔に
視線を行き交わせていると、再び頭を撫でられた。

「偉かったからね?これはそのご褒美だよ」

三人でおやつでも買って食べなさい。そう言って最後にポンポンと
軽く頭を叩くと、近藤さんはそのまま歩いていってしまった。

え?あの、でも・・・・えぇ!!?
これって、これでいいの!?

慌てて近藤さんを呼び止めようとすると、不意に手の上にあった
お札を取られ、その代わりに駄菓子が一杯詰まった紙袋を寄越された。

見ればヒラヒラとお札を振る沖田さんが。

「ま、近藤さんがあぁ言ってんだから、素直に
甘えときましょうや」

「いや、アンタは甘えなくてもいいと思うんですが」

「ちなみにその駄菓子は俺からのご褒美でィ。
有難く涙しながら一つ一つ噛み締めて食いなせィ」

「マジでか!?仕方ないから
銀ちゃんに見付からないように一気に流し込むヨ!」

「いや、それ全然味わってねぇだろ」

さっさと近藤さんの歩いていった方向とは反対の方へと
歩き出す沖田さんと、それを追いかける神楽ちゃん。

僕はと言うと、本当にいいのかな?と、戸惑うものの、
急いで二人の後を追った。

そして並んだ僕に、神楽ちゃんがにししと笑う。

「良い事すると、気分がいいネ」

いや、気分と言うか何と言うか・・・
うん、でもやっぱりなんか良いね。

にっこりと笑い、同意する僕に、神楽ちゃんはますます
笑みを深めた。

 

 


その後、三人で食べたお団子も、神楽ちゃんと二人で食べた
駄菓子も、普段よりももっと美味しく感じたのは、
多分気のせいじゃないと思う。

うん、やっぱり落し物は届けるのが一番気持ち良いや。

*********************
三万打、全体的なお礼(笑)
10代組をリクして下さった方が、有難い事に
何人かいらっしゃったので、最後に書かせて頂きましたv

こちらはフリーになりますので、お気に召したらどうぞ☆

もしリクしたけれどまだアップされていないと
言う方がいらっしゃったらご一報ください。


では、企画にご参加して下さった皆様。
読んで下さった皆様。
本当に有難うございましたvv
これからも末永くお付き合いして下さると
嬉しい限りですv

 

拍手[1回]



「でね、引ったくりにあって僕がそれを追いかけてたら、
偶々横の小道から銀さんが出てきて捕まえてくれたんだよ」

タイミングいいよね~、あの人。そう言いながら洗濯物を
畳んでいる新八の声が、幾分弾んでいるのが判る。
神楽は寄り掛った背中でそれを感じながら、適当な返事を返し、
酢昆布を齧った。

・・・って言うかタイミングがいいも何もないネ。

そもそも銀時は、新八が買い物に出掛けた後、まるで後を
追う様に万事屋を出て行ったのだ。
それを知っている自分からしてみれば、偶々なんかでは全く無く、
純然たる必然だ。

大体誘われた時に普通に答えればいいだけの話ネ。
なんで毎回渋るアルカ。

お陰で最近は荷物が多くなりそうな時や、お一人様~と言う
限定品がある時にしか誘われなくなっている。

・・・哀れなものネ。

毎度買い物に行こうとする新八の姿に、ソワソワしているものの
気付かれる事なく、一人で出掛けてしまう新八にカクリと肩を
落としている銀時の姿を、神楽はヘッと鼻で笑い飛ばした。
だが新八はそんな神楽に気付かず、一人で話を進めていく。

「やっぱりアレかな?
銀さんがアクシデントを引き寄せてるのかな?」

いや、違うネ。
銀ちゃんが新八に引き寄せられてるだけネ。勝手に。

・・・そう考えると、アクシデントを引き寄せてるのは新八アルカ?

ふと思いついた事を新八に言ってみると、え~。と嫌そうな声が
返って来た。

「やな事言わないでよ。言っとくけどそんな事ないからねっ!」

顔をクルリと神楽に向け、むっとした顔で言う新八に、
はいはい。と適当に返事を返す。

ま、アクシデントよりもっと最悪なのを
引き寄せてるけどナ。

「そりゃ~色々な事に巻き込まれるけどさ。
・・・あ、でもそんな時も大体銀さんが来てくれるっけ・・・」

僕、助けて貰ってばっかりだなぁ。少し落ち込んだ様な声で
ポツリと呟く新八に、神楽は器用に片方だけ眉を上げた。

・・・いや、その考えで行くと
新八は銀ちゃんにつけられてばかりネ。
アレあるか?志村家の遺伝子には
ストーカーホイホイの要素でも
組み込まれているアルカ?

大体何時も思うけどタイミング良すぎヨ。
なんであんなに丁度いい、見せ場ばっちりのタイミングで
出てこれるアルカ。
って言うかぶっちゃけ何で何時も新八の場所が判るネ。

新八レーダーでも付いてるアルカ?


それに私見てしまったネ。
前にやっぱり新八が危なかった時、これもやっぱりタイミング良く
出てきて助けた銀ちゃんが、新八の嬉しそうな顔を見た瞬間、
満足げにニンマリと口元を上げたのを。

・・・あの時の銀ちゃんは、無駄に煌いてたアルヨ。

「気にする事ないネ。
あれは既に銀ちゃんの趣味の域ヨ」

そう言うと、新八はクスリと苦笑し、人助けが?と答えた。

それにとりあえず頷いておく神楽。

ま、正しくは新八助け・・・って言うか
新八の前でカッコ付けるのが・・・ネ。

「でもそっか~・・・うん、そうだよね。
銀さん、あぁ見えて情が深いし」

情は情でも愛がつく情だけどな。
しかも新八限定。

「普段はあんなにやる気なさそうなのに、
いざという時はちゃんと決めてくれるし」

まさに不良が少し良い事をすると
ごっさ良いヤツに見える法則の応用ネ。

計算高いにも程があるヨ。
今度私も使ってみるアル。

「ちょっとだけ・・・ヒーローみたいだね?」

これからは偶に手伝いをして新八に褒めてもらおう。と
心に決めていると、ふふっと笑いながら新八がそんな事を口にした。

その顔は本当に、心の底からそう思っているようで、
私は本当に、心の底から同情した。

・・・騙されてるネ、新八。

だが、ここで新八曰くのヒーロー像を壊すほど、私は
子供ではない。

「あ、これ銀さんには内緒だからねっ!」

恥ずかしそうに顔を赤らめ、そう言う新八に私は素直に頷いておいた。

だって妙な計算ばかりして直球勝負に出ようとしない大人に
褒美をやる程、私は大人でもないのだ。

 

 

 

 

 

 




そんなある日、万事屋にきた仕事が、簡単な物探しから
物騒な事柄へと方向転換した。

・・・ま、何時もの事だけど。

その途中、やはり新八の危機にタイミングよく現れた銀ちゃんが
軽い怪我を負った。

・・・でも別行動してた筈・・・っていやいや、
もう突っ込まないネ。
突っ込まないけど、一つだけ言わせて欲しいアル。

銀ちゃん、なんで頭に
葉っぱが着いてるアルカ。
その葉っぱ、直ぐソコの垣根の葉とそっくりネ。
確か颯爽と出てきた場所は正反対のトコからだった筈ヨ。

まぁそんな疑惑が沸いたものの、とりあえず仕事は無事終了。
万事屋に帰って、銀ちゃんは新八に手当てして貰ってたアル。

新八は最初無茶をするなとか何とかお説教をしてたものの、
最終的に物凄くすまなそうな顔で銀ちゃんを労わってたネ。

そして今、軽い怪我ではあるものの、心配だから・・・と言って
万事屋に泊まる事にした新八は、着替えを持ちに家へと帰っている。

銀ちゃんに、ちゃんと休んでいるように言付けて。
なのに・・・・

 

「何やってるネ」

妙な気配に和室の襖を開けてみれば、大人しく寝ている筈の銀ちゃんが
うっすら汗を掻いて布団の上に座っていた。

「寝てろって言われた筈ネ。なんで起きてるアルカ。
汗まで掻いて」

どうやら新八に言われた事を無視して体を動かしていたらしい。
じっとりと見詰め、そう問い掛けると銀ちゃんは慌てた様に
パタパタと手を振った。

「あぁ!?これは・・・アレだ。
布団が暑くてよ~」

「昨日まで寒くて仕方ないから行火変わりに
一緒に寝てくれ
って
新八に頼んでたマダオは何処のどいつネ」

「ちょ、何で知ってるのぉぉぉ!!!?
ってかそれは昨日までの事だろうがっ!
天候は日々変化してんだよ」

「確かに変化してるけど、今日は寒の戻りだって
テレビでやってたヨ」

「ばっか。お前何でもかんでもテレビの情報を
鵜呑みにしてんじゃぇよ。
ヤツラの70%は嘘の情報なんだからよ」

限りなく嘘の塊で作られてる銀ちゃんに
言われたくないネ。
それよりも・・・と、微かに引き攣っている銀ちゃんの顔から
視線を、白い包帯が巻かれている部分へと移動させる。

「包帯・・・血が滲んでるネ」

そんなに深い傷ではなかった筈なのに。
言外にそう込めれば、銀ちゃんはそ~っと私から視線を逸らした。

「これは・・・アレだ。血じゃねぇから。
アレだ、アレ・・・あの・・・そう、苺シロップ!
や~、銀さんてアレじゃん?糖分がないと生きてけねぇじゃん?
そう、そうだよ。や~参ったなぁ、
見付かっちまったなぁ、おい。
あ、新八には内緒な?糖分摂取したって怒られっから」

参った参った。と困り顔で呟く銀ちゃんに、私はズイッと
手を差し出した。

「何?握手?」

「したら真っ白な包帯共々、その頭を真っ赤に
染め上げてやるネ。」

さっさと出すヨロシ。そう言うと銀ちゃんは渋々手の上に
300円乗せてくれた。

それを握り締め、にこりと笑うと少し出掛けてくると告げて
私は和室を後にする。

何か後ろで銀ちゃんがブツブツ言ってたけど、無視ネ、無視。
一々付き合ってたら時間が勿体無いヨ。

居間で寝ていた定春を呼び、そのまま玄関から外へと飛び出す。
目指すは愛しの酢昆布ネ。
あ、序に新八も迎えに行こう。
で、少しだけ遠回りして帰ってくるのだ。

そうすれば、安静にしていろと言われた銀ちゃんは
無駄に動き回って怪我を悪化させるだろうし、
その分新八が泊まる日数も増えるってものネ。

 

ちゃんとタイミングを計ってやるから、
怪しまれない程度に頑張るヨロシ。

計算高いのは大人よりも女の特権ネ。

 

今頃布団から起き上がり、精力的に動き回っているだろう
銀時を思い浮かべ、神楽はにししっと笑うと
進む足を軽く弾ませたのであった。

*******************
三万打お礼企画・第十弾。
蒼月様からのリクで「坂田の生息理由」と言う事でしたが
・・・こんな感じはどうでしょう?
ちょっとメールで盛り上がってた内容とは違った気がι
ってか寧ろ一番計算高いのは神楽ちゃんじゃね?(笑)

あ~、でも弄り具合が少なすぎた気がモリモリしますι
すみません、多分吉原炎上編を見過ぎてたせいです(おいι)

リベンジになったか怪しい限りですが、
少しでも楽しんで頂けたら嬉しいですvv

企画参加、有難うございました~v

拍手[1回]


 

その日、万事屋で何時もの様に家事に勤しんでいると、
妙に機嫌の良い銀さんが外から帰って来た。

なんだろう、珍しくパチンコで勝てたのかな?

だが、勝った時に大量に交換して来るお菓子の類が見えない。

・・・ってか何時も思うんだけど、お菓子に交換してくるぐらいなら
換金して来て欲しいんだよね、ウチの家計事情としては。
まぁ偶に洗剤とかお通ちゃんのCDとかも持ってきてくれるけどさ。
あれって計算してみると、普通に買うより安いんだよね。
・・・いっその事玉だけ買って、そのまま交換して来てくれないかな?
洗剤は安売りがあるからいいけど、CDは別だ。
今度お願いしてみようか・・・ってダメか。
絶対遊んでくるよ、この男は。

ちなみに以前、お菓子じゃなくて換金してきて下さいとお願いしたら、
ソコまで勝ててる訳じゃない。と返された。
それが酷くしょんぼりとした声だったので、それ以降は
何も言わないようにしている。

どうやらパチンコと言うのは、中々シビアな世界らしい。


「機嫌良いですね。何か良い事合ったんですか?」

ならなんだろう。と、とりあえず率直にそう聞いてみると、
銀さんはニヤリと笑い、

「別に~。」

とだけ答え、和室へと引っ込んでしまった。
そしてピシャリと閉められる襖。

僕は掃除機片手にそれを見送り、コトリと首を傾げたが、
機嫌が悪いよりは良いか・・・と思い直し、再び掃除へと
思考を戻した。

だってまだまだやる事いっぱいだしね。
銀さん、暇だと直ぐ絡んできて本気で邪魔だもん。
聞くのは全部終わってからでいいや。

そうやって家事に没頭していった僕は、すっかり銀さんの事を
頭の隅へと追いやったのであった。

 

 




そうしてどれくらい時間が経ったのか。
家事が一段落し、お茶でも飲もうかと思った所で、ふと
和室に引っ込んだままの銀さんを思い出した。

そう言えばアレから和室はずっと静かなままだ。

もしかして寝てるのかな?と思いつつ、とりあえず
銀さんもお茶を飲むか聞いてみようと、僕は和室へと向った。

「銀さ~ん、開けますよ~・・・・・って、何してんですか、アンタ」

声を掛けつつ襖を開けてみると、ソコにはこちらに背を向けて
項垂れている銀さんの姿が。
・・・ってか何か部屋自体が暗い感じなんですけど。

「・・・新八ぃ~」

少し引き気味の僕に、背を向けていた銀さんがゆっくりと振り返った。
その顔は、ここに入るまでの表情とは打って変わり、
どんよりとしている。

「ちょ、どうしたんですか、一体!」

慌てて中に入り、銀さんの傍へと駆け寄って膝を着くと、力ない声が
何かを告げた。

「え?何ですか?」

上手く聞き取れず、僕は銀さんの力なく落ちた肩に手を置き、
再度問い掛けてみた。
その声は、少し強張っていたかもしれない。
だってあの銀さんがこんなになるなんて、滅多に無い事だ。
何時だって飄々として、ノラクラしているのに、
今は完全に落ち込んでいる。

僕はコクリと息を飲み、ゆっくりと開いていく銀さんの口元を
凝視していた。

「・・・甘くねぇんだよ」

・・・・・・・・・・は?

死んだような・・・いや、違うな。今は完全に死んだ目だ。
そんな目で呟かれた言葉は、『甘くねぇ』

「・・・銀さん、今はそれが判っただけでもいいとしましょう。
大丈夫ですって、今からでも十分間に合います・・・多分」

「え?間に合うの?マジで!?」

縋るような目を向けられ、僕はなるべく安心出来るように
やんわりと微笑み返す。

「えぇ。だからこれからはちゃんと仕事して、
規則正しい生活をしていきましょうね。
大丈夫です、きっといつか世間も判ってくれますよ」

励ます様にそう告げると、非常に微妙な顔を返された。

「・・・いや、なんで世間様が出てくんの?」

そう言われ、僕はコテリと首を傾げた。

「・・・あれ?漸くほぼプー自分の人生に対しての
世間の対応について悲観してたんじゃないんですか?」

「してねぇよっ!え?何ソレ、そんな目で銀さんを見てたの!?
違うから、銀さんちゃんと職に就いてるから。
全然悲観なんてしてないからっ!」

「いや少しぐらいは悲観して下さいよ。
シャレになってませんから、現実的に」

目の前に真っ赤な家計簿突きつけてやろうか、コノヤロー。
本当、世間も現実も甘くないんだぞ、おい。

思わず睨んでいると、銀さんは話を逸らすように
バンッと畳みに手を付いた。

「そうじゃなくてコレだ、コレッ!!」

そう言われ、渋々銀さんから目を離し、見てみると・・・

「・・・アンタ、またこんなものをっ!!」

ソコには銀さんが愛してやまない糖分様々な羊羹が鎮座されていた。
ちなみに既に食べていた様で、くっきりとした歯型付だ。

・・・どうりで機嫌よさそうな上、いそいそと和室に入ってった
筈だよっ!
全く、こちとら特売だのタイムサービスだの狙って、
必死にやりくりしてるって言うのにっ!!

プルプルと怒りで震えていると、銀さんから焦ったような
声が掛けられた。

「ちがっ!ちょ、落ち着け新八っ!
これは買ったんでも拾ったんでもねぇし、
そもそも羊羹じゃねぇ!」

「どっから見ても羊羹でしょうがっ!」

見え見えの嘘に厳しく突っ込むと、銀さんは激しく否定し、そして

「だってこれ・・・甘くねぇ・・・」

と、弱弱しい声でポツリと呟いた。

 

 

 

話を聞いてみるとこうだ。
パチンコにでも行こうとフラフラしている時に、沖田さんと会ったらしい。
そこで、この羊羹(仮)を貰ったそうだ。
で、早速堪能しようと、予定を変更してここに帰ってきて
口にした所、甘味の姿が何処にも見当たらない、
非常に残念な思いをしたらしい。

「・・・アンタ、何素直に貰ってるんですか」

白けた目で見詰めていると、肩を落とした銀さんがチラリと
こちらを見上げてきた。

「だってよ?アイツ誰も食べねぇって言うんだぜ?
天下の羊羹様なのによぉ。だから折角親切心むき出し
貰ってきてやったのに、全然甘くねぇし」

「むき出しだったのは、糖分に対する欲求そのものでしょう。」

ってか甘くない羊羹なんて、全然予想がつかない。

僕はウジウジと視線を落とし、畳にのの字を書いている銀さんから
件の羊羹へと視線を移した。

見かけはまんま羊羹だ。
でもそれは売っているようなものではなく、手作り感に溢れている。
・・・って事は、もしかして沖田さんの手作りだろうか?

些か抵抗があるものの、好奇心には勝てず、僕はその羊羹へと
手を伸ばし、少しだけ千切って口の中へと放り込んだ。

その瞬間広がる、なんとも言えない残念感。

・・・これは、銀さんじゃなくても色々失望するかもしれない。
と言うか、糖分王である銀さんならば、それ以上だろう。
ってかなんでこんなモノ作ったんだ?あの人。
あんまりよく判らないけど、こういうのって作るのに結構
手間隙掛かるよね!?
時間の無駄だよねぇ!?

・・・あ、でもあの人は手間隙掛かっても、
人をおちょくるのには全力を出す人だった。

きっと今頃楽しそうに笑っているんだろうな~。と少しだけ
頬を引きつらせながらも、今だブツブツぼやいている銀さんの
肩にポンと手を置いた。

「まぁ仕方ないじゃないですか。
毒が入ってなかっただけマシだと思えば」

それにもう味が判ったのだから、食べなければいいだけの話だ。
そう言うと、銀さんは そう言う問題じゃねぇ。と
真面目な顔で目の前の羊羹を見詰めた。

「考えてもみろ。甘味はしねぇが、これは小豆様だ。
って事は餡子様でもある。ってぇ事は一応羊羹だ。
・・・食べなくてどうするよ、おい」

・・・いや、食べてどうするよ、おい。

「でも、食べると・・・いやいや、落ち着け銀時。
もしかしたらさっきのは夢だったかもしれねぇ。
今いったら、何時も通りの甘味が口一杯に広がるかも
しれねぇじゃん。うん、そうだ、銀時っ!
思い出せ、あの味をぉぉぉ!!!」

や、夢じゃねぇよ。
僕の口の中にも広がってるよ、あの絶望感。
無理ですからね?脳内で甘味保管しても、
口の中はがっかり感で一杯になりますからね!?

ブツブツと試行錯誤を繰り返している銀さんに、僕は
大きく溜息を吐いた。

色々言っている様だが、最初に食べた一口が相当ショックだったらしく、
未だにその手は羊羹へと伸ばされていない。

って、もしかして僕が家事をこなしていた間、ずっと
こんな事で悩んでた訳!?

・・・あ~、もういっその事これがトラウマになって
羊羹嫌いになってくれないかな~。

そう思った瞬間、僕の頭の中にある悪戯が浮かんだ。

うん、ずっとこうしててもウザイだけだしね。
この後、買い物にも付き合って欲しいし。

僕はやんわりと口元を上げると、膝立ちになって銀さんの前へと
場所を移動した。
そして徐に羊羹へと手を伸ばすと、それを手で掴み上げ、
そっと銀さんの目の前へと差し出す。

キョトリとする銀さんに、僕はにっこりと微笑を向け、
そして・・・


「銀さん。はい、あ~んして?」


そう言えば、銀さんは驚きに目を見開きながらも、パカリと口を開いた。
それを狙い定め、迷い無く羊羹を突き入れる僕。

美味しいですか?と聞けば、幸福と絶望を兼ね合わせた非常に
珍しい顔で僅かに頷かれた。

・・・って、本当凄い顔になってますよ、銀さん。

だが、これで銀さんの悩みは解消だ。
僕は満足げに頷くと、買い物の支度をするべく、その場から
立ち上がったが、銀さんはまだ口をモソモソと動かしている。

どうやら飲み込むのが辛いらしい。

・・・まぁあの味じゃね・・・

その姿が少しだけ可哀相に思えて、僕はつい腰を曲げて普段は見えない
銀さんの旋毛へと軽く唇を落としてしまった。

その瞬間、ゴクリと大きく飲み込む音が聞こえてきて、僕はホッと
笑みを零した。

「ちょ、新ちゃん!?今のもう一回っ!!」

「もう飲み込めたでしょ?だから終わりで~す」

「や、まだ全部は飲み込んでないからっ!
微かに残ってる気がするから、
歯の隙間とかぁぁぁ!!!」

「・・・それは普通に歯を磨いて来て下さいよ」

必死な顔で迫ってくる銀さんに、僕はほんの少しだけ
先程の行為を悔やんでしまったのは、無理もない事だと思う。

 

 

 

 

 

その後、偶然会った沖田さんにとても渋い顔をされた。
なんでもあの後、あの羊羹が気に入ったからと、
会う度に銀さんにせがまれているらしい。

それを聞いた僕が、心底後悔したのは・・・


・・・・・・多分言うまでもない。

******************
三万打お礼企画・第九弾。
Mag.様からのリクで、「悪戯で『甘くない羊羹』を食べさせられ
絶望的にヘコむ銀さんと、ソレを慰めようとする新八」
との事でしたが・・・如何だったでしょうかι
あんまり慰めていないような・・・(滝汗)
ちなみに、最終的に銀さんが幸せになる~・・・ってのは
ご想像通りでございました(笑)
さすが判ってらっしゃるvv(おいぃぃ!!)

こんな感じになりましたが、少しでも
楽しんで頂けたら嬉しい限りですv

企画参加、並びに何時もご感想、有難うございましたv

拍手[1回]


 

日も高くなってきた頃、晴れ晴れとした空とは対照的にどんよりとした
空気を背中に負いながら、銀時は道を歩いていた。

その足取りは重く、フラフラとしているが、それでも少しずつ
前に進んでいた・・・が、突然その足が止まる。
そして垂れていた頭をのそりと上げ、目の前の建物を気まずそうに
見上げた。

銀時の視線の先、そこは自分の家である万事屋があって。

「・・・もう来てんだろうなぁ」

銀時はそう呟くと、大きな溜息を吐いて再びその頭を垂れた。

昨夜、長谷川に誘われて呑みに行こうとした所、新八に釘を刺されたのだ。
自分は今日は帰らないといけないから、早めに帰って来い・・・と。

どうやら新八は神楽を夜一人にする事に抵抗があるらしい。

その気持ちは十分判る。
俺だって子供を一人にするのには、あまり賛成出来ない。
だが相手は子供ではなく神楽だ。
しかも定春まで居るのだ。

これの何処に不安要素があると言うのだ。

大体子供だって一人の人間だ。
そいつの自主性を尊重していこうぜ。
そんで銀さんの呑みに行く行動も尊重して下さい。

前にそう言ったら本気で殴られて、少しの間口を聞いてくれなかった。

や、別にいいけどね。
新八に殴られても全然痛くねぇし、無視されても返って小言を
言われなくて済んで、万々歳なぐらいだったし。
まぁでも子供の言う事を聞いてやるのも大人の勤めだし?
少しだけ新八の言い分を聞いてやろうと思ったけどね?
それだけだから。
大人の余裕って言うか貫禄って言うか、そう言う事だから。
別に殴られて滅茶苦茶心が痛かったり、小言どころか
存在すら無視されて泣きそうになって心底堪えた
とかじゃ全然ないからっ!
強い子だからね、銀さん。
最終的に布団の中で
丸まってなんかいないから、本当っ!!



・・・でもとりあえず謝ろう、うん。



銀時はもう一度息を吐いて覚悟を決めると、渋々足を動かし始めた。

 







 

「いや~もう参ったよ、長谷川さん全然離してくんねぇんだもん。
もうアレよ?銀さん帰りたかったのに、許してくんねぇんだもん。
最悪だね、本当。いっそそこら辺に沈めてこようかと思ったけどさ、
ホラ、銀さん優しいじゃん?可哀想な人、見捨てて置けないじゃん?
そのせいでこんな時間まで連れ回されちゃってさ~。
あ、呑み代はちゃんと迷惑料として全額出させてきたから
安心して?あ~、でもそれぐらいじゃ怒りは収まらないよね。
って事で怒るなら是非長谷川さんに・・・って、アレ?」

先程の決心は何処に行ったのか。
玄関を開けた瞬間からダラダラと言い訳を吐き出し、なんとか
新八の怒りを回避しようとした銀時だったが、何の反応も
返って来ない事に我に返り、足元に落としていた視線を
ちらりと上げ、数回瞬いた。

「んだよ、まだ来てなかったのかよ」

緊張して損した~。と、銀時は体の力を抜き、そのままソファへと
倒れこんだ。

そして暫し、ゆっくりと忍び寄ってくる眠気に身を委ねる。

し~んと静まり返り、時計の音しかしない室内は、
眠るのに打って付けだ。

そのまま時計の音を子守唄に、眠りの国へと入国した所で
ふと、ある事に気が付く。

「・・・あれ?定春居なくね?」

閉じそうになる目をなんとかこじ開け、頭を上げれば
やはりその巨体は何処にも見えない。

「・・・ってか静か過ぎじゃね?」

幾ら寝ていたとしても、胃袋に忠実な神楽が起きて来て
騒ぎ出していい時間だ。
だが、そんな兆候・・・と言うか物音一つしない。

「・・・っつうか遅過ぎだろ」

時計を見れば、その針は十時を指していて。
遅刻にしても遅すぎる時間だし、何より生真面目な新八が
遅刻するなんて有り得ない。

「・・・もしかして呆れて実家に帰っちゃったとか?」

一瞬、怒り心頭の新八が身支度を整え、神楽達と共に
万事屋を出て行く光景
が脳裏を過ぎるが、直ぐに銀時は
頭を振ってそれを追い出した。

「いや、ない。ないな、うん。
神楽はアレだ。何時も通り定春を連れて遊びに行ってて、
新八は買い物かなんかだ、うん」

自分に言い聞かすようにそう呟くと、銀時はゴロリと体勢を変えて
再び目蓋を閉じた。


うん、だってアレだもん。こんなの何時もの事だし。
この間だって怒られたばっかりだし。
・・・あ、でもその時、今度やったら・・・判ってますね?って
言われたっけ。お妙譲りのあの笑顔で。
そん時は判ってます!!って答えたけど・・・
何を判ってたんだ?あん時の俺。
今現在全然判んないんですけどぉぉぉ!!!
え?もしかしてヤバイ?これってヤバイ感じ?


「って、どうヤバイ感じなんだっつうのっ!!!!」

叫びながら体を起こすが、やはり何も返っては来ない。
銀時は横たえていた体を起こし、ソファに座って額に手を当てた。

その脳裏に浮かんでくるのは、先程思い描いた光景ばかり。

「いやいや、違うから。
本当そんなんじゃねぇから。
第一新八はここに住んでねぇし。
何時か住ますけど」

ははっと力なく笑ってそう呟くと、銀時はゆっくりとソファから
腰を上げた。

「大丈夫だって。だってこんなにいい天気だよ?
神楽が何時までも家の中に居る訳ねぇじゃん」

そう言いながらも、一応神楽の寝床である押入れを
開いてみたりする。
・・・が、やはりソコには誰も居なくて。

「もしかしたら新八と一緒にこっちで寝てんのかもしんねぇし」

そう言って今度は自分が普段寝ている和室の襖を少しだけ開けてみる。
・・・が、ソコには新八が敷いておいてくれたのだろう、
銀時の布団しか見えなくて。

「いやいや、もしかしたら銀さんを驚かそうと、どっかに
隠れてるのかもしんねぇなぁ」

あいつ等ガキだし。そう言いながら机の下や風呂場等も覗くが、
期待している姿は見えず、更に玄関まで行ってみたら
履物すらなかった。

「ってぇ事はやっぱアレだ。買い物だね、買い物。」

それか散歩。うんうんと自分に言い聞かすように呟きながら、
銀時は水でも飲もうと台所へ足を踏み入れた。

そしてコップを手に取り、蛇口に手を置いた所で、
ふとある違和感に気が付いた。

手に取ったコップは乾いていて、見れば食器は愚か、鍋も
乾いたままだ。
おまけにシンクには水滴一つついていなくて・・・

銀時は手にしたコップを放り投げると、勢い良くその体を
玄関へと走らせた。

幾らなんでも朝食を作ったのならば、あんな風に
乾いている筈が無いのだ。
それと同時に、あの神楽が朝食を食べていないなんて事が
ある訳が無いし、何より新八がそんな事をする訳が無い。

・・・って事は、少なくとも今朝、ここにあいつ等は
居なかったのだっ!

何処だ!?本当に実家に帰ったのか!?
いや、それならいいが・・・って、あんま良くねぇけど、
万が一何かに巻き込まれていたりしたら・・・っ!!

「新八っ!神楽、定春っ!!」

浮かんできそうになる嫌な考えを振り切るように、
銀時はブーツを履くのも面倒だと、そのまま玄関から降りると、
力強く扉を開けた。

・・・と、その瞬間、視界の中に入り込んできた見慣れた
色の頭たち。

「ぅわっ!ちょ、なんですか、行き成り」

「・・・・・・へ?」

驚いた声に、僅かに視線を下ろせば、ソコには真ん丸く目を
見開いている新八の姿が。

「どうしたネ、銀ちゃん。鳩が鉄砲食らったような
目をしてるネ」

「いや、それ普通に死んでるからね。
銀さんのは一応『死んだようなだから」

「どっちも同じネ」

「ワンッ!」

そしてその横にはフンと鼻で笑っている神楽と、大人しく
座っている定春の姿が。

「お・・・前ら、何処に・・・」

突然の事に、呆然としたままそう呟けば、新八が あぁ と
苦笑を浮かべた。

「昨日はあぁ言ったけど、きっと銀さん遅いんだろうなぁと
思って、昨夜は神楽ちゃん達連れて僕の家に行ったんです」

メモに書いてあったでしょ?と言われるが、銀時には全く
覚えが無く、緩々と頭を振った。
それに新八が アレ?と首を傾げる。

「ちゃんと机の上に置いといたのになぁ」

「アレなら私が隠しといたネ。」

「は?ちょ、それじゃ書置きの意味ないじゃん!?」

「チチチ、甘いぜぱっちぁん。まずは隠してあるメモを
見つける所から冒険は始まるものヨ」

「なんの冒険だよ。
あぁ、じゃあびっくりしましたよね、銀さん。」

すみません。と、すまなそうに新八が言うが、冗談じゃねぇ。
びっくりなんてする訳ねぇだろ。


そんな風に思う前に、どうにかなっちまいそうだったよ、俺は。


「え?ちょ、銀さん!?」

「銀ちゃん、離すヨロシ!
何時にも増して臭いアルヨ!!」

「うるせ~。
ってか何時にも増してってどう言う意味だ、コラ」

ギャーキャー騒ぎ出す子供達を無視して、俺は纏めて腕の中に
仕舞いこんでやった。

あぁ、もう本当。どっかに行ってなくて良かった。
何もなくて良かった。
戻って来てくれて、本当に良かった。

 


とりあえず、こんな事は二度とゴメンだ。と、銀時は
呑みに行くのも程ほどにしよう。と心に誓い、
序に今度会ったら長谷川さんを殴っとこう。と固く心に決めたのだった。




「所で銀さん、やっぱり帰ってきたの遅かったんですね」

「うん、でも大丈夫。元凶である長谷川さんは
今度きっちり殴っとくから」

「は!?いや、元凶も何も、誘いに乗った銀さんが・・・
って何が大丈夫!!?全然意味判んないんですけどぉぉ!
っつうかいい加減離せぇぇぇぇ!!!」

「離してたまるか、ゴラァァァ!!!」




寧ろ一生離しません。

**************************
三万打お礼企画・第八弾。
白様からのリクで
「万事屋に誰も居なくて焦って探す銀さん」との
事でしたが・・・如何でしょうか?

もう少し焦らせって貰おうと思ったんですが、
そうなると白夜叉様御降臨となりそうだったので、
ここまでにさせて頂きましたv

こんな感じになりましたが、少しでも気に入って頂けたら
嬉しい限りですvv

企画参加、有難うございました。

拍手[2回]


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