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お登勢さんがくれたのは、白い割烹着だった。
「禄でもないやつ等だけどね、これからもよろしく頼むよ」
そう言って笑うお登勢さんに、僕は曖昧な笑みを返した。
うん、確かに今使ってるの、古くなってたしね。
家事するのにあると便利だしね。
お登勢さんの心遣いも、とっても嬉しいしね。
でも、ちょっと違うと思うのは僕だけなのかな?
お登勢さんの中で、僕はどんなポジションなんだろう。と、真剣に
考えつつ、僕は改めて御礼を言うと、今度こそ万事屋へと
足を進めた。
「・・・なんか丸聞こえなんだけど・・・」
僕は玄関の前に立ったまま苦笑を浮かべる。
どうやら今は掃除の最中らしい。
『ちょ、マジ神楽やめろって!!それはもう掃除じゃねぇぇぇ!!!』
『何言ってるネ!部屋の中をこんなに綺麗にしたのに、
言い掛かりか、コノヤロー!!』
『綺麗にしたって・・・ゴミと一緒に
家具も放り出してんじゃねーか!!何コレ、
すっきりし過ぎて寂しさ爆発ぅぅぅ!!??』
『あ、もう一つ最大のゴミを忘れてたネ』
『ちょっ!!それ銀さんんんんんん!!!!!』
そんな会話と共に、凄い音も聞こえてくる。
・・・うん、掃除じゃなかったね。
破壊活動だよね、きっと。
『あ~、もうどうすんだよ。来るなよ~、新八まだ来るなよ~
大丈夫、お前は空気読める子だから。だからまだ来るな・・・』
『銀ちゃん、新八、何時もより遅いネ。
どっかでボーっと空気読んでるアルカ?』
『あぁ!?・・・ゲッ、本当じゃねぇか!!!何やってんだ、アイツ!!
まさかドッカのおっさんに捕まってたりしねぇだろうなぁ?
あ~、もうさっさと来いってんだよ!!!!!』
『・・・どっちアルカ』
・・・本当、どっちだよ。
でも、これ以上何かされるとこれからが大変なので、僕は息を一つ吸うと
玄関へと手を伸ばした。
「お早うございま~す」
その瞬間、居間の方から大きな音と、銀さんの潰れるような声が聞こえた。
慌てて向かうと、微妙に位置がずれている家具と、足を抱えて
蹲っている銀さん。そして・・・
「遅いネ!ダメガネ!!めでてぇなぁコンチキショー!!」
僕の胸元に抱きつき、そんな祝いの言葉らしきものを告げてくる
神楽ちゃん。
「めでたいから代わりに掃除しといたネ!これで一つ仕事が減ったアル」
嬉しいカ?と、顔を上げ、自慢げに聞いてくる神楽ちゃんに
思わず笑みが零れる。
僕はそっとその頭に手を乗せ、優しく撫でると感謝の言葉を
口にした。
「有難う、とっても嬉しいよ。でも女の子がそんな口きいちゃダメでしょ」
「誕生日に細かい事言うなや、ぱっつぁんよぉ。
そんなんだから一つ年取っても眼鏡が外せないアル」
「いや、年齢重ねても眼鏡は外れないからね?
寧ろ重ねれば重ねるほど、眼鏡率高くなるからね!?」
ってか眼鏡馬鹿にすんなー!!と突っ込むものの、どうしても普段のような
迫力は出ず、神楽ちゃんに抱きつかれたまま二人でニヘッと笑いあう。
「おいおい神楽ぁ。てっめぇ~一人でさき越しやがって!!!」
何時の間に復活したのか、足を引きずりながらも僕達の傍に
来ていた銀さんが、神楽ちゃんごと僕をぎゅっと抱き締めてきた。
「銀ちゃん、加齢臭で噎せ返るアル。離れるヨロシ」
「こっちこそ酢昆布の匂いで目がすっぱいんだよ!!テメーこそ離れろ!!」
ギューギューと抱き締めあいながら口喧嘩を始める二人に
僕は身動き一つ出来ない。
幾ら午前中であっても、流石にここまで引っ付かれてると暑い。
てか苦しい。
・・・・で、恥ずかしい。
「・・・いや、二人ともそろそろ離れようよ」
お腹減ったでしょ?ご飯作りますから・・・そう言うとそれまで
睨み合ってた二人が一斉に僕の方へと視線を向けた。
「「ダメだ・ネ!!!」」
「今日はず~っと三人一緒ネ!!」
そう言うと神楽ちゃんは僕の胸元に顔を埋めた。
え?いや、あのず~っとって・・・ご飯は?
てかもしかしてずっとこの体勢なのぉぉ!?
困惑気味に、いつの間にか僕の背後へと移動していた銀さんに
視線を向けると、
「そうそう。最初と、それと今までの時間を他のヤツラに譲ったんだ。
これから先は坂田家のもんですぅ」
って事で今日はお泊りな。そう言ってニヤリと笑い、僕の首筋へと
鼻先を埋め、
「・・・んで、最後は銀さんに頂戴」
耳元でボソリと囁かれた言葉に、僕は頬が熱くなるのを感じた。
いやいや、これはきっと暑いせいだ。
うん、そのせいだ、絶対!!
と言うか、今日は僕の誕生日なんだから、貰うのは僕なんですけど!!
あぁ・・・でも。
体に感じる柔らかい体温を感じながら、僕は視線を室内へと流した。
そこには綺麗とは言い難いけど、確かに掃除された部屋が見えて。
所々に色とりどりの紙で作られた飾りがあって。
ってあぁ、アレはチラシで作られてるのか。
どうりで色に統一感がない筈だ。
本当、ショボさ爆発だなぁ。
でも、どうしようもなく嬉しいなぁ。
つい頬を緩ませていると、定春がノシノシとやって来て僕達の足元に
座り込み、頭を擦り付けてきた。
「あ、忘れてたネ。定春もだから三人と一匹でず~っとネ!」
定春に気付いた神楽ちゃんが、その頭を撫でてニシシと笑う。
「だな。あ、でも風呂の時どうすんだよ。
壊れるぞ、ウチの風呂」
僕の肩に顎を乗せ、真剣な顔でそんな事を言う銀さん。
「いや、壊れてるのはアンタの頭ですから。
心配するとこ違うでしょ!」
ペシリと銀さんの額を叩きながらも、やっぱり何時もの様なツッコミは
出来ない僕。
あぁ、もうホントどうしよう。
暑いのに、苦しいのに、恥ずかしいのに。
嬉しくて幸せで仕方ないんですけど。
「もしかして買い物行くのも皆一緒?」
ならたくさん買えるなぁ・・・財布が許す限りだけど。なんだか照れ臭くて
そんな事を呟けば、目の前の神楽ちゃんがニシシと笑った。
「当たり前ネ!なんの為に銀ちゃんの手が
二つついてると思ってるカ。
全部持たせるヨロシ」
「おいぃぃい!!!銀さんの手は荷物を持つ為にあるんじゃねぇよ!!
こうやってだなぁ、新ちゃんを抱き締める為に・・・」
「じゃあ神楽ちゃん、その時は手、繋いでこっか?」
「って無視ぃぃぃぃぃ!!?こんなに耳元で叫んでるのに
無視ですかコノヤロー!!!」
「仕方ないネ。がっちり掴んで離さないでいてやるゼ☆」
「ちょ、ぐらさんんんんん!!?
いやいや、そこは離して行こうよ。
銀さんにも分け与えてあげようよ。」
僕の肩から顔を出して言い募る銀さん。
・・・や、煩いから。本当。
僕と神楽ちゃんは顔を合わせ、仕方ないね~。とばかりに息を吐く。
「仕方ないネ。新八、小指ぐらいは与えてやるネ」
「ん~・・・ま、仕方ないか」
「いやいやいや、小指っておまっ・・・」
「で、今日は皆で一緒に寝るアル!」
「あぁ、いいね。川の字になって寝ようか?」
「ぁあぁ!?ちょっと待てって!!さっき言ったじゃん?
新ちゃんは銀さんと二人で
布団は一つ、けれど枕は二つ~♪みたいな感じでだなぁ!?」
「神楽ちゃん、僕、定春で」
「おぉ、立派な川の字アル」
「おぉぉおおおおいぃぃい!!!銀さんんん!!!
ソコ、銀さん忘れてるから!!!」
「あ、じゃあ銀さんは送り仮名部分をお願いします」
「どうやって!!?」
ギャーギャーと騒ぐ銀さんに、僕と神楽ちゃんは笑いを隠せない。
クスクス笑っていると、後ろの銀さんが この悪ガキ共が!! と
僕の腰に回していた腕に力を込めてきた。
そして、
「おりゃぁああ!!こうなったら真の川の字を見せてやらぁ!!」
そう言って神楽チャン毎僕を抱き上げてしまった。
「ちょ?銀さん!!?」
「キャッホゥウ!昼寝カ?昼寝するアルカ?」
今日は早起きしたから眠気バッチリネ!!そう言って笑う神楽ちゃんが
落ちないよう、僕は回していた手に力を込めた。
それを見届け、銀さんはよしとばかりに口元を上げると、
傍らに座っていた定春を見た。
「おら、定春も来い。ってもお前は装飾部分だからな。
川の字は神楽と新八と銀さんだから。」
そう言ってドカドカと和室へと向かっていく。
どうやら本気で昼寝するらしい。
ってかまだ昼寝って時間じゃないんですけど!?
って銀さん、布団敷きっぱなし!!!
起きたらすぐ仕舞えって言ってあるのに!!
そうは思うが、どうも今日の僕はツッコミが甘い。
何も言えず、ただ頬が緩んでいく。
・・・ま、偶にはいいよね?
だって今日、僕の誕生日だもん。
ゴロリと寝かされ、川の字と言うには妙に幅の細いものになりながら、
僕はゆったりと目蓋を閉じた。
朝から色んな人と会って。
沢山の言葉を貰って。
そして今、こんな温かいものを貰って。
ま、少し暑いけどね。
ちょっと狭いけどね。
でも多分、僕はこの日一番の幸せモノだ。
「あ、ちなみに今日が終わってもずっと一緒だからな?」
「当然ネ!万事屋は三人と一匹で万事屋ヨ!!」
「寧ろ坂田家な?坂田さん一家な?」
「はいはい。ホラ、寝るなら寝てください。
で、起きたらまず買い物ですからね~」
「「あいよ~」」
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誕生日おめでと~、新ちゃん!!!
これで一応終了です。ここまでお付き合いして下さり、
有難うございましたv
・・・てか今気付いたけど坂田、お祝いの言葉言ってねぇぇぇえ!!!(爆)