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仕事もない本日、神楽は早々に外に遊びに行き、銀時は転寝の
真っ最中だ。
そんな中、新八は一人だけ忙しそうに家の中の事を片付けていた。
そんな状況であるにも関わらず、今日は天気もいいので、
洗濯物が早く乾きそうだ・・・と
ゆるりと口元を緩めるその姿は、少し嬉しそうだったりする。
「これでっと・・・一先ずは終了~」
そう言って手にしたのは、見慣れている銀時の着流し。
少し背伸びして物干しに掛け、丁寧に皺を伸ばしていく。
と、ふとある事に気付き、新八は暫し着流しを見詰め、
次に周囲に目をやり誰も居ない事を確認すると、おずおずと
その両腕を広げてみた。
途端、眉間に小さな皺が寄る。
広げた両腕。なのにその指先は銀時の着流しの袖に、少しもかからない。
干しているのだから、着流しだって何時もより広がっている。
身長差があるのだって判ってる。
年だって全然違うし、体格だって悲しいほど違う。
・・・けれど、これ程とは・・・
きっとアレだ。
コレを着たら、ちっちゃい子が大人の服を着ている感じになるんだろう。
自分が着ている所を想像すると一つ息を吐き、両腕を静かに下ろした。
それとほぼ同時に、背後から名前を呼ばれる。
振り向けばそこにはまだ眠そうな銀時がダルそうに立って居た。
「お、洗濯終わったんか」
新ちゃんは仕事が早いね~。なんて言いながら近付き、くしゃりと
真っ直ぐな髪を撫でる。
そんな銀時を新八は下から見詰めると、ぎゅっとその背中に手を廻し、
しがみ付いた。
「え!?ど、どうした、新八!?」
何かあったんか!?と、少し慌てながら聞いてくる銀時を無視して、
新八はぎゅうぎゅうと廻した腕に力を込め、胸元に額を押し付けた。
自分よりも広い胸元、厚い身体。
腕の長さだって全然違うし、身長だって違う。
そんな身体に、護られてきたのだ、自分は。
悔しいな~、もう。
そんな思いに、新八は額をグリグリと押し付ける。
体格で全てが決まる訳ではないと言う事は理解している。
けれど、安心して寄りかかって貰えるほどにはなりたいのだ。
しがみ付くだけではなく、包み込んであげたいのだ。
「新八?」
ポンと新八の頭に、優しく銀時の手が置かれるのが判った。
あ、そう言えば手もおっきいや。
・・・て言うか、なんか子供扱い?
そう気付き、ムッと口が尖るのを感じたその時、
「もしかしてお誘い?いいね~、銀さん大歓迎・・・」
「っんな訳あるかボケェェェェェ!!!!」
とりあえず子供扱いではなかったものの、こんな昼真っから
無駄に大人扱いされるのもイヤなので、新八は渾身の力で持って
銀時の顎目掛けて頭を突き上げた。
「僕、買い物に行って来ます」
妙な叫びと共に、顎を押さえてのた打ち回る銀時を尻目に、
新八はそう告げると、財布を持って玄関へと向う。
背後からは銀時の、言葉になってない声が聞こえるが、
聞こえない振りをして外へと足を進めた。
考えてみれば僕はまだまだ成長期だ。
そして向こうはもう成長は止まっている。
縮む事はあっても、これ以上大きくなる事はない。
「・・・とりあえずカルシウム摂取かな」
新八は小さく頷くと、今夜のメニューを考え出した。
まだまだ自分は小さくて。
あの人を包み込む事も護る事も出来ないけれど、これから先は判らないのだ。
成長期を舐めんなよ、このヤロー。
まぁでも・・・
ちらりと振り返り、きっと今ブチブチと文句を言っているだろう大人の
居る家を見上げる。
帰ったら、さっきので赤くなった顎を撫でてあげよう。
それぐらいなら、今のこの小さな自分の手でも十分出来る。
そう考え、新八は緩く口元を綻ばせた。
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[銀新十題]様からお借りしました。