[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「たで~ま~」
外から帰り、玄関を開けると奥から軽い足音がする。
・・・うん、これは新八だな。だって破壊音が聞こえない。
神楽だと、歩くだけで音が響いてくる時がある。
きっとアレだ。あれだけ食ってんだから、見かけによらず
かなりの重量なんだと予想する。
じゃないと説明がつかない。
前に抱えた時はアレだ。
多分食ってなかったから、凄い勢いで体内に蓄積されていた
モノが消化されたんだろう。
もしくは、自分で気付かないうちに、俺が滅茶苦茶力持ちに
なっていたか・・・だ。
・・・て、オイオイ、ヤバクね?
俺、今滅茶苦茶冴えてね?
・・・なのになんで負けるんだろうな~。
と、溜息を吐いた所で、新八がヒョッコリ顔を出した。
「お帰りなさい、銀さん・・・て、その顔はまた負けて来たんですか」
呆れ顔でそう言う新八。
うん、そう。また負けてきました。
本当にな~、なんで負けるんだろうな~。
今日なんか新装開店よ?普通出すじゃん?
お客の事を考えるなら、空気を綺麗にするより、玉出せよって感じじゃん?
「知りませんよ、そんな事。って言うかそう言う人達が来るから、
パチンコ屋ってのは成り立ってるんじゃないんですか?」
寧ろ僕としては、生活の事を考えるなら、パチンコに金出すより、
僕らに出せよって感じですけど。
そう言う新八の声も視線も冷たい。
・・・冷たいよ、冷たすぎるよぱっつぁん!
もう勘弁してくれよ!!
ただでさえ銀さん、今懐が寒いんだから!!!
「自業自得です」
・・・はい、そうでした。
きっぱりと一刀両断された俺の言葉。
可哀想じゃね?
可哀想だよ、うん。俺、可哀想。
誰も同情してくれなさそうなので、自分で自分に同情してみる。
すると、ますます視線が冷たいものになってきたのを感じた。
ナニ、その痛い子を見るような目は!!
痛くないから、銀さん全然痛い子じゃないから!!
「・・・ま、『子』って年じゃないですしね」
うん、そう。銀さんもういい大人だから・・・って違うよ!
否定するトコ、完全に間違ってるよね、ソレ!!?
「はいはい。も~いいから早く上がって下さいよ」
そう言って奥に引っ込もうとする新八を、チョイチョイと手招きする。
すると、僅かに眉を顰めつつも、こちらへと歩いてくる。
そして目の前までくると、何ですか?と聞いてくる。
・・・オマエ、本当に素直だね~。
そんな素直だと、悪い大人に捕まっちゃうよ?
そう思いつつ、俺は俯いたまま自分の両手を軽く挙げ、
「はい、バンザ~イ」
と言った。
新八は不可思議そうにコトリと首を傾げながらも、バンザ~イ?と、
同じように両手を挙げた。
・・・本当ね、素直にも程があるよ、オマエ。
だからこんな大人に捕まっちゃうんだって。
俺はニヤッと笑って、新八の両脇に手を廻し、子供を抱き上げるように
その体を抱え上げた。
うん、やっぱいいね、この重さ。
もうちょっと肥えてもいいけどさ。・・・うん、いいよ。
新八が何か騒ぎ出して暴れてるけど、別に構いやしねぇ。
って言うか、そんぐらいの抵抗、屁でもねぇのよ?銀さんてば。
そのまま暫し抱え上げたままで、暴れる新八を見上げていた。
本当、顔真っ赤にしちゃって、可愛いったらないね、オマエ。
そんだけ赤かったら、さぞ暖かい事だろう。
そう思い、そのまま抱っこする感じに抱き締める。
うん、やっぱオマエ、暖かいわ。
丁度銀さん、寒かったトコだし、少しと言わず堪能させといてよ。
顔のあたりにきていた新八の胸に顔を埋め、ブーツを脱いで
居間へと足を進める。
下ろせって?
馬鹿言うなよ、折角捕まえたって言うのに。
ま、アレだけどね。
逃げたって全力で捕まえに行くけどね。
勝負の女神は捕まえられなかったけど。
オマエだけは本当、逃がさないから。
オマエが居なくなったら、寒いだけじゃすまないから。
とりあえず、もう少しだけこうしていさせて。
そんな事考えてたら、不意に頭の上から笑い声が落ちてきた。
「変な銀さん」
そう言って、頭に回っていた手が優しく数度撫でていくのを感じた。
・・・オマエ、本当最高。
とりあえず行き先変更して、和室に行ってもいいですか?