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「そう言えばコレ、貰ってきたんです」
皆で使いましょうね。そう言って新八が持ってきた紙袋から取り出したのは、
新品のドライヤーだった。
「別に今使ってるのも壊れてねーだろ」
新八の作った朝食を食べながら、何で貰ってきたんだ?と聞くと、
「姉上の同僚の方が、懸賞で当たったらしいんです。
でもそのちょっと前に、新しいのを買ってしまったらしく、
いらないからって貰ってきたんですよ」
「ふーん・・・ま、当たるとは思わないからな」
ま、タダならいいけどさ、今のどうするよ。味噌汁を啜りながら
言うと、向かい合わせで飯を流し込んでいた神楽がバンッ!とテーブルに
箸を置いた。
「アレ、駄目ネ。熱いでやっても時々冷たくなるヨ」
「馬っ鹿、オマエあれだよ?ヤツは俺らの心配をしてくれる憎いヤツよ?
あんまり熱過ぎると髪が痛むよ~って、心配してくれてんのよ」
「寧ろ風邪を引く方を心配をして欲しいです。」
「で、今度のはきちんと熱い旋風を巻き起こしてくれるアルカ?」
「いや、そこまでいかないから。普通だから。」
「なんだよ~、オイ~。ツマンネーヤツだな、コノヤロー」
「おいいぃぃぃぃぃぃぃ!?ナニ求めてんの?
ドライヤーにナニ求めてんの!?」
ケッとばかりに鼻を鳴らし、ご飯の続きを始める神楽にキチンとツッコミを
入れ、新八は あ、でも・・・と呟き、
「マイナスイオンを噴出すらしいですよ」
ニコリと笑った。
その後、マイナスイオンの底力を見たいと、朝っぱらから風呂に入ろうとする
神楽を止め(そんな余裕は万事屋にはない)なんとか過ごした本日。
少し早い夕食を終え、まず神楽が入り、次いで銀時の番になった。
風呂に入る頃にははしゃいだ声と共に、ドライヤーの音が響いていたので、
今頃はマイナスイオンとやらの効果を実感している事だろう。
・・・けど、マイナスイオンの効果ってなんだ?
天パの性格矯正でもしてくれるってーのか?
オイオイ、あんま舐めてもらっちゃ困るぜ、コノヤロー。
是非お願いしますっ!!!
わしゃわしゃと、銀時は洗い終わった髪をタオルで適当に拭きつつ、
風呂場を出た。
途端、聞こえてくる楽しげな声。
「おいおい、あんま騒ぐとババァが殴りこんで来るぞ」
そう言って居間に戻れば、突然腹部目掛けて飛び込んでくる弾丸の如き
物体。
「ぐふぁうっ!!」
「見るヨロシ、銀ちゃん!髪、サラサラネ!!凄いヨ、マイナーネオン!!」
「神楽ちゃん、マイナスイオンね」
「ほら、見るヨロシ。白目剥いてんじゃねーヨ、マダオォォ!!!」
あまりの衝撃に返答も出来ない銀時の襟首を掴み、ガクガクと物凄い
勢いで揺さぶる神楽。
それに漸くの事意識が戻りつつあった銀時が、なんとか頭を叩いて
止めさせた。
「テメー、銀さんの『死んだような目』が『死んだ目』に
なるとこだったじゃねーか!!!」
「んだよ~、似たようなもんだろ~」
ムスッとしながらも、神楽は自分の頭を叩いた銀時の手を取り、
ほら、サラサラネ。と、自分の髪へと導いた。
「あ~、はいはい・・・ん?」
銀時はダルそうにしながらも、その髪を撫で、そして少し目を丸くした。
その表情に、神楽はニッと笑みを零すと、
「ね、凄いアル」
と嬉しそうに銀時に告げた。
「じゃ、僕も入ってきますね。」
そんな二人を見ていた新八は、手にしていたドライヤーをテーブルの上に
置くと、神楽の頭を拭き終えたタオルを片手に風呂場へと向かった。
残されたのは、自慢げな神楽と感心気に神楽の髪を撫でる銀時。
「きっと銀ちゃんもサラサラになるネ」
「あ?あ~・・・いやいや、銀さんそんな気にしてないから。
気にしてないけど・・・アレだ。オマエがそんなに言うなら
俺もこれで乾かしてやるかな、うん」
「・・・別に其処まで言ってねーヨ。」
「いやいや、言ってるって。銀さん判ってるって!」
本当、しょうがねーなー。そう言って白けた目を向ける神楽を余所に、
銀時は新しいドライヤーへと手を出した。
「・・・・・アレ?」
「・・・銀ちゃん、変わってないアル」
「いやいやいや、そんな事は・・・って、アレェェェ!!?」
乾かし終わった自分の頭をワサワサと触る銀時。
けれどそれは期待していたモノとは違い、寧ろ慣れ親しんだもので。
「やっぱ天パは天パ~ネ」
「語尾を伸ばすなぁぁ!!っつーかなんだよ、コレ!不良品か!?」
「不良品じゃないネ。私のはサラサラヨ。ま、良かったアル。
天パの勝利ネ!」
「そんな勝利はいらねーんだよ!!
おいコラ頑張れよ、マイナスイオン。
オメェはこんなトコで負けるヤツじゃねぇだろぉぉ!!」
「・・・アンタ、マイナスイオンとどんな関係なんですか・・」
ドライヤー片手に騒いでる二人に、新八が同じように頭を拭きながら
居間へと戻ってきた。
それに銀時は振り返ると、不良品だだの、根性なしだ、
だのとドライヤー片手に訴えた。
「んな訳ないでしょうが・・・」
「んじゃオマエも早くコイツで乾かせ!」
溜息を吐く新八を引き寄せ、自分の前に座らせると、銀時はドライヤーの
スイッチを入れてやや乱暴に乾かし始めた。
「ホラ見ろ。新八も変わんねぇじゃねーか、やっぱ不良品だ」
「本当アル・・・」
強制的に乾かされた髪を二人掛りでワシャワシャと掻き回される。
え、そんな事は・・・と新八は慌てて付いていた解説書を手に取る。
そしてある程度読み進めると、なんだ・・・とホッと笑みを零した。
「やっぱり不良品じゃないですよ。ここに元々髪が真っ直ぐで
まとまり易い人には効果が見えにくいってありますもん」
「へ?」
「なんだ、それじゃやっぱ天パの完全勝利ネ!」
「だからそんな勝利はいらねーんだよ、
クソがぁぁぁ!!!」
叫びと共にドライヤーを床に叩きつけようとした銀時を、神楽が
華麗な足蹴りで止め、そのまま二人で乱闘へと傾れ込む。
それを眺めていた新八が、
「って言うか、髪の短い人も効果が見えにくいってあるんだけど・・・」
と言う呟いたのも知らずに。
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・・・ヤツの力は半端ねぇ(真剣)