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銀魂(新八中心)の同人要素満載のサイトです。 苦手な方はご注意を。
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その日、開店前のお登勢の店に、一人のお客が来ていた。
古くからの友人で、時折訪ねてきてはお登勢に家族の愚痴を零すのだ。

生憎そんな経験をした事がないお登勢ではあったが、
飲み屋を営んでいる為、似たような話はよく耳にする。
が、耳にするだけだ。

嫁がどうした。孫がどうした。息子がどうした。

それは自分とは縁のない世界での話で、
大変だねぇ。とは言うものの、それでもどこか一歩下がった
視点でしか言うことが出来ず、お登勢は今尚続く愚痴に、
少しばかりの羨望を混じらせて煙を吐き出すのが常であった。

今日もまた同じような会話が続くものだと思っていたのだが、
聞きなれた声と共に店の扉が開けられた事によって少しばかり
それが変化した。

「こんにちは~・・って、あ。すみません、ご来客中でしたか」

見ればそこには新八が立っており、お登勢以外の人が居るのに
気付いて また後で来ます。 と扉を閉める所だった。

「別に構いやしないよ、ねぇ?」

今まで眉間に皺を寄せて愚痴を零していた友人に問い掛ければ、
にっこり笑って同意してくれる。
新八はそれでもすまなそうに頭を下げると、中へと入ってきた。

「で、どうしたんだい?」

家賃でも持ってきてくれたのかい?と聞けば、乾いた笑い声で返された。
・・・ま、期待しちゃいないけどね。
じゃあ何の用だい。と再度聞けば、新八はおずおずと持っていた小鉢を
お登勢の居るカウンターの前へと置いた。

「この間お登勢さんに聞いた方法で漬けてみたんです。
で、結構良く出来たんで、お礼と報告がてらに持ってきたんですけど・・」

お邪魔しちゃってすみません。そう言って新八はお登勢の向かい側に
座っていた友人に軽く頭を下げた。

「へ~、坊やが漬けたのかい?」

友人の言葉に、新八は えぇ、まぁ。と少しだけ苦笑を浮かべた。
それを横目で見ながら、どれどれ。と小鉢の中の漬物に手を伸ばす。

「・・・うん、中々良く漬かってるじゃないか。」

同じように手を伸ばした友人も、酷く感心したようにお登勢の言葉に
頷いた。
新八は二人の言葉に恥ずかしそうに、けれども嬉しそうに笑みを零すと、

「本当ですか?良かった~」

と、胸を撫で下ろした。

「銀さんも気に入ってくれたみたいで。『ババァんトコと同じしみったれた
味がしやがる』なんて言いながらも、バクバク食べちゃうんですよ」

ニコニコと笑う新八に、お登勢は呆れたように息を零した。

「あいつは口に入りゃ何でもいいんじゃないかい?」

って言うかしみったれたってなんなんだい。そう言うお登勢に新八は
両手を振ってその言葉を否定した。

「違いますよ。だって買ってきたのだと文句を言うだけで
そんなに食べませんもん」

お登勢さんの味付け、大好きなんですよ、銀さん。笑う新八に、お登勢は
どうだか と肩を竦めた。

「そんな文句言うくらいなら、自分でやりなって言っておやり」

「あはは、無理ですよそんなの。あ、じゃあお邪魔してすみませんでした」

新八はペコリと頭を下げると、その場を後にしようとした。
その後姿に、お登勢が声を掛ける。
キョトンとした顔で振り返る新八に、先程友人が手土産代わりに持ってきた
茄子を少し分けて持たせてやった。

「いいんですか?有難うございます。」

二人に礼を言う新八に、お登勢は少しだけ口元を緩めると、

「今日はウチもこれを使って一品作ろうと思うんだけどね、
後で手伝ってくれるかい?」

そう新八に問い掛けた。すると、一瞬目を丸くした新八だったが
直ぐに嬉しそうに笑みを広げ、

「もしかしてこの間お裾分けしてくれたやつですか?
あれ、すっごく美味しかったです!あ、序に作り方も教えてくださいね」

神楽ちゃんも僕も大好きなんで。そう言って後で必ず来る事を約束すると
今度こそ新八は扉の向こうへと消えていった。

それを笑顔で見送っていた友人が、はぁ と大きな溜息を吐いた。
どうかしたかい。と尋ねれば、再び嫁の愚痴だ。

なんでも料理の味付けが自分とかなり違うらしく、
教えようとすると露骨に嫌な顔をするのだと言う。

息子も息子で、どちらでも構わない と我関せず。

孫は自分の作る料理は田舎臭いと言って口にもしないと言う。

「あんな風に慕ってくれるなんて・・・羨ましいねぇ」

そう呟く友人に、お登勢は 何言ってんだい。 と言い、俄かに騒がしくなった
頭上を見上げた。


未だ友人は家族の愚痴を零している。

それはもう自分には出来ない事だ。

けれど・・・


「ウチのトコの馬鹿共に比べりゃ可愛いもんさね」


そう呟き、自分の味と良く似た漬物をまた一つ齧りながら
緩やかにその口元を上げたのだった。

*********************
あそこは私の中では二世帯住宅です(←本気)

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昼過ぎ、神楽は定春を連れ何時も通り遊びへと出掛けた。
それを見送り、新八は洗い物を済ますとお茶を入れ、ソファへと
腰を下ろす。
何時もなら銀時も居るのだが、今日はちょっとした仕事が入ったので
銀時一人で向かっているのだ。

なので現在、万事屋には新八一人きり。

何時もなら騒がしい家の中が、静まりきっているのが妙に居心地が
悪い。
新八は音を求め、テレビをつけるが生憎この時間帯は興味のない番組
ばかりだ。
幾度かチャンネルを変えるものの、直ぐに新八は電源を落とした。
そしてソファに深く座りなおし、湯飲みを手にする。

「・・・銀さん、まだ終わらないのかな・・・」

簡単な仕事だから・・・と言って出掛けていった銀時を思い出す。
仕事が来た時、一人で十分な内容だと、文句を言いながらも大抵
銀時が一人で向かう。

多分それは自分達がまだ子供だからだ。

それはお客に対する配慮とも取れるが、ドコか甘やかされてる気がして
新八はクスリと笑みが零れた。

今日は少しだけ豪勢にしようかな。

新八は冷蔵庫にある食材を思い浮かべながら、湯飲みを置き、
他の家事を済ませてしまおうと、腰を上げた。

 

天気のお陰で早めに乾いた洗濯物をよせ、干していた布団も中へと入れる。

「少し冷やしとこうかな」

よせた布団の熱に新八はそれを仕舞わずに、洗濯物を畳み始める。
それも終わり、そろそろ布団を仕舞おうかと立ち上がった所で、未だに
静かな家の中に気がつく。

「まだ・・・か」

神楽はまだ帰らないとしても、銀時は帰って来てもいい頃なんじゃないのかな・・
と新八は窓の向こうへと視線を向けた。
太陽が真上から移動したものの、まだまだ明るくて、人々の行き交う音が
聞こえてくる。

それはこの静まりきった家の中とは違う世界の事のようで。

「って、何考えてんだよ、もう」

新八は頭を振って軽く頬を叩くと、さっさとすべき事をしてしまおう。と
押入れへと足を向けた。
そして勢い良く襖を開け、布団を仕舞おうとした所で不意にいつもこの中で
眠っている少女の事を思い出した。
ここは和室の押入れなので、同じ場所とは言えないが、押入れなんてドコも
同じだ。
ただ、中に何かが入っているかいないかの違いで・・・

新八は、今は布団が入っていない為空いているその空間に目をやった。

そう言えば昔、まだ幼かった頃。
借金取りが来た時に姉上に隠れさせられた事があったっけ。

新八はボーッとその時の事を思い出した。

確かあの時は、その前にやって来た時に、物凄く殴られてしまったのだ。
そのせいで熱を出してしまい、心配した姉上に無理矢理入れられて・・・

結局、殴られる痛みよりも姉上の事が心配だった自分は、
言いつけを守らずに出て行ってしまったのだけれど。

結局また殴られて、姉上に心配かけちゃったっけ、その時の事を思い出し、
新八は苦笑を浮かべた。
それからと言うもの、新八が隠れる時は妙も共に隠れるのが常であった。

大抵見つけられてしまったので、ほんのひと時の安らぎでしかなかったけれど、
酷く安心したのを覚えている。

そこまで思い出し、新八は空の押入れを見詰めた。

あの時とは違い、男達の怒声も何かを壊す音も聞こえない、静かな室内。
けれど感じる寒気は似ている気がする。

「・・・入ってみようかな?・・・」

いい年をして・・・とも思ったが、今この場所には自分以外誰もいない。
ならば・・・と、新八は押入れの中へとその身を乗り上げた。
そして中へと体を全部入れると、中で膝を曲げ、そのまま襖を閉める。
すると、真っ暗な世界が新八を包み込んだ。

「真っ暗・・・て、当たり前か・・・」

それでも、微かな隙間から零れてくる光の筋が何本か見え、
ホッと身体の力を抜いた。

押入れの中は少し黴臭かったが、それでもヒンヤリとしてて気持ち良かった。
新八はゆっくりと体を横に倒した。
神楽の寝ているトコとは違い、こちらにはまだ少し荷物が置かれているので、
狭いのだが、体を横向きにして足を曲げれば寝られない事もない。

「静か~・・」

押入れの外に居た時よりも音が遮断され、静けさが増しているのだが、
狭い空間がそれを気にさせない。
それどころか、ちょっとだけ居心地がいい様な気がする。
神楽が寝床にしている気持ちも少しだけ判る様な気がして、
新八はそっと体の力を抜いた。

「早く帰ってこないかな~」

新八は一人そう呟き、常に自分の周りにある音を思い浮かべた。

騒がしくて、時に下のお登勢から怒鳴られる事もある
そんな音を。

 

 


そのまま自分は眠ってしまったようだ。
突然の大きな音に目を開けば、先程よりも明るい室内。

・・・って、あれ?ここって部屋??

なんか狭いような・・・と思っていると、何時の間に帰っていたのか
酷く疲れた表情の銀時がこちらを見ていた。

予想よりも時間が掛かったのだから、やはり疲れたのだろうか。
と、まだ半分閉じている目を擦りつつ、お帰りなさい。と言えば、
大きな溜息を吐かれた。

なんで??と、寝起きの為まわらない頭を傾げていると、ギュッと抱き寄せられる。
その力強さと温もり、そして感じる心音に、焦りながらも
酷く安心している自分が居た。

 

でも銀さんの声は少し不機嫌そうだ。


どうしてだろう。と考え、辺りを見回して納得。
そりゃぁこんな所で寝ているのを見付けたら、驚きもするだろう。

って言うか、恥ずかしすぎる。
この年で押入れの中に入って眠りこけちゃうなんて。

からかわれるだろうなぁ。なんて覚悟していたが、銀さんはポツリポツリと
文句を言って、抱き締めてくるだけだった。

その内に神楽ちゃんも帰って来て、今度こそからかいの的になる!と、
急いで出ようとしたのだが、銀さんは許してくれず、
そのまま抱き上げられて、気が付けば神楽ちゃん共々抱え上げられて
グルグル回されてた。


お陰で静かだった家の中は、色んな音で溢れかえって。

待ち望んでた音が身の回りに合って。


振り落とされないように銀さんの頭にしがみ付きながら、僕はそっと


「お帰りなさい」


もう一度、心からの言葉を口にした。

*********************
押入れ話、新ちゃんVer。
ちなみに昔、友人宅に泊まる時は大抵押入れで
寝てました、私。
・・・結構安心するんですよ、あの狭さ。

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「たでぇまぁ~」

銀時はそう口にしながら、ダルそうにブーツを脱ぎ捨てた。

簡単な仕事だから・・・と一人で行ったのはいいが、思っていたよりも
時間が掛かってしまった。銀時は疲労を感じながら帰途に着いたのだが、
答えの返って来ない室内に、訝しげに眉を寄せる。

「あ?おいおい、誰もいねぇのかよ」

何時もなら、新八が直ぐに顔を出し出迎えてくれるというのに・・・
銀さんのお帰りですよ~。と、再度声を出すが、やはり何も返って来ない。

「神楽は・・・どうせ遊びに行ってんだよな、うん。じゃあ新八は・・・」

買い物か?とも思うが、先程自分は鍵を使わずに扉を開けた。
年の割りにしっかりしているあの少年の事だ、鍵を締めずに
外出する事はないだろう。

見れば、玄関には見慣れた草履がきちんと置いてある。

ならば、この中に居る事は確実だ。

「んだよ、シカトかコノヤロー」

銀さん泣いちゃうぞ~。そう言いながら頭を掻き、家の中へと足を進めた。

 


「・・・あれ?」

てっきり大好きなお通のCDでも聞いてて、自分の帰って来た事に
気付かないでいるのだと思っていた銀時は、誰もいない居間を見て
首を傾げた。
ならば・・・と、台所に顔を出してもその姿は見えず、微かに首を傾げる。

「お~い、新八ぃ~」

次に風呂場を見るが、ここにも求めている姿はなく、家の中を
捜し歩く銀時の足は、止まろうとしない。

しかし厠も、神楽の寝起きしている部屋も見たが誰も居ない。

「んだよぉ、物騒だなぁ、おい」

泥棒に入られるだろうが・・ってまぁ盗られるもんなんてねぇけど。
そう軽口を叩きながらも、銀時の表情が強張っていく。

別に誰も居ない家に帰って来たことなんて、今日が初めてではない。
そうだ、やっぱり買い物にでも行ったのだ。
それか近所か、下のお登勢の所にでも。
もしかしたら、神楽も一緒に。
いや、神楽はやっぱり定春と遊びにでも行ったか?

けれど、大抵そう言う時は書置きがしてあって。
近所に行くのにも、きちんと鍵も閉まってて。
玄関に、普通なら履いていくだろう草履なんかも置いてなくて。

と言うか、草履も履かないでドコに行くというんだ?

押さえ込もうとしても浮かんできてしまう嫌な予感に、
銀時は歩き回る足を速めていく。


だって、確かに金目のもんは置いてない家だけど、
大切なヤツラが居る家なのだ。

 

「新八!」

最後の頼みとばかりに居間を横切り、和室へとやって来たが、あるのは
布団と畳まれた洗濯物のみで、銀時は軽く目を見開いた後、ツッと
顔を俯かせた。

「おいおい・・・マジかよ」

窓まで開いてんじゃん。銀時はヨロリと壁に体を凭れ掛からせ、
ギリッと唇を噛んだ。

耳を澄ませても何も聞こえない。
聞きなれた音の気配を感じられない。
その事に、銀時はスゥッと体が冷えていくのを感じた。

「っざけんなよ、おい!」

力任せに壁を叩けば、傍の押入れ中から ぅわっ!! と言う待ち望んだ声がした。
一瞬、思いもしなかった所からの声に驚き、固まった銀時だったが、
直ぐにその強張りを解き、勢い良く押入れの襖を開けた。

「新八!!?」

「ふぇ??」

そこに居たのは、如何にも起き抜けの顔をした新八で。
上半身を起こした状態で、目をゴシゴシと擦っていた。

「あれ?僕、寝てた・・・?」

「寝てたってオマ・・・」

銀時は安心するやらムカつくやらで、力が抜けそうになる体を
押入れの縁に掛かっている手でなんとか支え、大きく息を吐いた。
そんな銀時の心情も知らず、新八は押入れの入り口を塞いでいる銀時に
気付くと、

「あ、銀さん。帰ってたんですね、お帰りなさい」

ニコリと微笑んだ。
新八のその言葉に、銀時は暫し間を置くと再び大きな溜息を吐き、
押入れの上段にいる為、何時もと違って自分より高い位置にある新八の
頭を強く引き寄せて、自分の肩口へと押し付けた。

「わっ!なんなんですか、一体!!」

「何なんですかはコッチの台詞だ、コノヤロー。
こんな所で何やってんのよ、オマエ」

「こんな所・・・?」

銀時の言葉に新八は軽く目を瞬かせると、抱き寄せられている為動けない
頭の変わりに視線をやり、今居る場所を確認する。
そして自分が居る場所を思い出すと、小さく声を上げて居心地悪そうに
銀時の腕の中でもがいた。
しかしそれを許すはずもなく、銀時は無言で抱き締める腕に力を込める。

新八は無言の攻撃に根を上げ、額を銀時の肩口に押し付けながら
言い難そうに漸く口を開けた。

「いや・・・あの別に意味はないんですけどね?お布団干したから
入れようと思ったんですけど、空いた空間見てたら、子供の頃を
思い出しちゃって・・・つい入っちゃいました」

で、眠っちゃったみたいです。と、自分でも子供じみた事をしたと
恥じているのだろう、未だモゾモゾと動きながら告げる新八に、
銀時はこの日何度目になるか判らない溜息を吐いた。

「何してんのよ、オマエ」

「う・・・・すみません」

驚かしちゃいました?そう言って顔をこちらに向けてこようとするのを、
銀時は抱え込むようにして防いだ。

「当たり前だろ、馬鹿」

驚いたなんてもんじゃない。

本当、何してくれちゃってるのよ、オマエ。

帰ってきても一人なんて。
呼びかける名前すらなくて。
この万事屋に一人なのが当たり前で。

それが少し前まで普通だった筈なのに。

帰っても誰も居ない事に驚き。
呼んでも返事がない事に慌て。
嫌な想像ばかり浮かんでくる事に焦って。

「ざけんな、ボケ」

あぁ、もう一人なんて本当、無理。
こんなにした責任、取りやがれ。

「ボケって・・・ちょっとした懐古心じゃないですか」

て言うかこの体勢キツイんですけど。と、体の間で挟まっていた手を銀時の
後ろへと伸ばし、無造作に跳ねている髪を軽く引っ張った。

丁度その時、玄関が開く音と呑気な神楽の声が銀時達の耳に入ってきた。

「え、うそ!もうそんな時間!!?」

慌てる新八に銀時は漸く体を離し、新八の脇に手を差し入れると
押入れから引っ張り出した。
・・・が、降ろす事はせず、そのまま片手で担ぎ上げると、
ゆっくりとした足取りで玄関へと向かい出す。

「ちょ、銀さん!!?下ろしてくださいよ!!」

「ダメです~。銀さんを驚かした罰ですぅ」

もう銀さん完璧寿命縮んだから。そう言って新八の言葉を無視すると、
居間に入った所で帰って来た神楽と顔を合わせた。

「何やってるアルカ?」

「あ、神楽ちゃん!」

「おぅ、神楽。お帰り~」

不思議そうに、暴れる新八とそれを抱える銀時を見た神楽だったが、
その銀時がコイコイと手招きしたので、素直に二人の元へと近付いていった。

「何ヨ?」

カクリと首を傾げると、銀時は少しだけ身を屈ませると、新八を抱き上げている
方の手と反対の手を神楽の腰へと廻すと、そのまま肩に担ぎ上げた。

「おせぇんだよ、この放蕩娘がぁぁ!!」

ぅおっ!!何アルカ、銀ちゃん!何かの遊びアルカ?」

どこか嬉しげな声の神楽に、銀時は ば~か。と小さく息を吐くと、

「お仕置きだよお仕置き。お前らね、銀さん今日何してきたと
思ってんのよ。仕事よ仕事。」

も~、疲れまくって泣きそうよ?そう言う銀時に、新八が呆れたように
声を出した。

「なら尚更下ろして下さいよ」

僕、夕飯の支度しなきゃ。新八の言葉に、逆さになっていた神楽が頭を
上げた。

「え、私はや~よ。銀ちゃん、序にグルグル回るヨロシ」

「んだよ、お仕置きの最中に命令ですか、コノヤロー」

そう言いながらも、勢い良く回り始める銀時。

「わっ!!あぶ、危ないって!銀さん!!!」

「キャッホゥゥゥ!!」

慌てて銀時の頭にしがみ付く新八に、楽しげな声を上げる神楽。
傍らに佇んでいる定春も、合わせる様に尻尾を振っていて。

「うっせー!もっと泣き叫びつつ笑って吠えろやコノヤロー」

「え?何その無茶な要求!!」

 

戻ってきた賑やかな音に、銀時はこの音が何時も自分の傍に
ありますように・・・と回る速度を上げ続けた。

****************
ヘタレ坂田万歳☆(笑)
て事で、多分春雨後ぐらいの時期で。
奥さんと娘の存在を有難がれ、坂田(え?)

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ある日、何時ものように買い物に行くと、これまた何時ものように
マヨを買いに走らされている山崎さんと会った。

それぞれ上司の愚痴やらを零しながら帰る途中で、不意に
山崎さんの口から銀さんの名前が飛び出してきた。
どうやら銀さんには、僕が気が付かなかった散歩の規則性があるらしい。

「だからさ、今度の特売日にはさ、誘ってみたら?」

きっと大丈夫だから。なんて自信満々に言う山崎さんには悪いけど、
僕としては話半分に聞いておいた。
だって、近くにある物ですら、僕を呼んで取らせようとするぐらいだからね。
そう簡単にはいかないだろう・・・て思ってたんだけど・・・


「銀さん、今からどっか出掛けます?」

次の特売日に、声を掛けるだけなら・・・と、思い切って銀さんに
聞いてみた。
すると、何時ものようにダラリとソファに寝転びながらジャ○プを
読んでいた銀さんは、チラリとこちらに視線を向け、

「なんで?」

と聞き返してきた。

質問に質問で返すなよな、いい大人が。

そう思ったけど、声には出さず銀さんの問い掛けに答える。
だって時間ないし。

「僕、今から買い物に行くんですけど、もし良かったら散歩がてら
行きません?」

着ていた割烹着を脱ぎ、財布を手にしながらそう言うと、銀さんは
読んでたジャ○プを置き、頭を掻きながら起き上がった。

「んだよぉ、さては銀さんを荷物持ちに使うつもりだな、コノヤロー」

全く人使いが荒い子だねぇ。なんて文句を言いながらも立ち上がり、
玄関へと向かう。

その姿に、僕は自分で誘ったにも関わらず驚きに目を見開いてしまった。

なんだろう、このすっごい違和感!!

呆然としている僕に、銀さんは訝しげな視線を向けてきた。

「・・・あ?んだよ、行かねぇのか?」

「え?あ、行きます、行きます!」

気が変わられては困る!と、僕は急いでその後を追った。
それからと言うもの、買い物には大抵二人で行くのが当たり前になった。

 


が、今日は少しだけ違う。
昨日まで振っていた雨のせいで、神楽ちゃんと定春が泥だらけで
帰って来たのだ。
お陰で万事屋内は泥だらけ。

別に泥だらけで遊んで来るのが悪いって言ってるんじゃないよ?
この頃雨ばかりで、思いっきり外で遊べなかったしね。
だけどね?

そのまま入ってくるのはどうかと思うんだ。

かと言ってそのままにしておける筈もなく、とりあえず神楽ちゃんをお風呂に入れて
服を着替えさせ、その後定春を連れて公園に行ってもらった。
アソコなら広いし、水道があるからね。
そこで泥を落として、序に日向ぼっこして乾かしてきてくれるよう頼んだ。
これで元凶の二人はいいとして・・・残るは無残なこの部屋だ

・・・とりあえず、洗濯物が被害に合わなかっただけでもよしとしよう。

出て来そうになる溜息を飲み込み、自分にそう言い聞かせると
和室からのっそりと出てきた銀時を見た。

「あ~あ、こりゃまた派手にやったなぁ、おい」

「ま、所詮泥ですから、掃除すればいいんですけどね」

銀時の言葉に力なく笑い、新八は今後の予定を組み立てなおす。
とりあえず、今から行こうと思ってた買い物は・・・

「ね、銀さん。今からどこか出掛けます?」

僕の何時もの言葉に、銀さんの口元が少しだけ上がる。

「ん?買い物か?」

「えぇ、そうなんですけど・・・今日は銀さん一人で行って来てくれません?」

「はぁ?」

僕のお願いに、銀さんは物凄く不満げな表情になった。
それに対し、僕も少しだけ口を尖らす。

「だって仕方ないじゃないですか、この部屋どうにかしないといけないし」

かと言って、それを待ってたらタイムサービスが終わってしまう。
それでは意味がないのだ。

「ね、お願いします、銀さん」

両手を合わせお願いすると、銀さんは頭を掻きつつ少し考えた後、
仕方ねぇなぁ と請け負ってくれた。

「で、何買ってくればいいんだ?」

「有難うございます!えっと確か今日は油とみりんが安くって・・・」

朝チェックしたちらしの中身を思い出しながら、買ってきて欲しい物を
上げていくと、銀時が ちょい待ち! と片手を上げてそれを止めた。

「そんなに言われても覚えきれねぇよ。なんか書くもん貸せ」

「あ、そうですね」

そう言われ、電話の横にあるペンとメモ帳を銀時に渡す。
すると銀時はペンを取り、次に新八の手を取ってその手の甲に
先程上げた商品名をメモリだした。

「って銀さん!!アンタドコに書いてんですか!!」

「あ?あぁ・・・間違えた

ま、いいじゃん。そう言ってヘラリと笑う銀時に、よくねぇよ!と叫びつつ、
新八は自分の手を奪い返した。

「あ~、もう何やってんだか・・・」

しっかりと書かれたメモに肩を落としつつ、新八は銀時に向かって
手を差し出した。

「僕が書きますからペン貸して下さい」

「え~、いいじゃん、もうそれで」

そう言うと銀時は差し出された新八の手を取ると、そのまま玄関へと
足を向けた。

「ちょっ、待ってくださいよ、銀さん!」

まだ掃除してない!・・・って言うかなんで僕まで!!?
一人で行ってくれるんじゃないんですか!?

確りと僕の手を握ったままブーツを履き始める銀さんにそう文句を言うと、

「だってメモねぇと何買ってきていいか判んねぇもん」

何当たり前の事聞いてんだ?みたいな表情でそう返された。
いや、こっちがするべき表情ですからね、それ

「だから今僕が書くって言ってるじゃないですか。
大体僕が一緒に行ったら、メモの意味ないでしょ?」

それに掃除しなきゃ・・・そう言う僕に、銀さんは握った手に少しだけ
力を込めてきた。

「掃除はさ、後で銀さんも手伝ってやるから」

だから一緒に行こ。銀さんの言葉に、僕は小さく溜息を吐いた。

知ってます?アンタ、今自分がどんな顔してるか。
今ね、玄関の段差のせいで、何時もと違い少しだけ視線が近いんですよ?
お陰で僕には丸見えなんですけどね。

三十路前のオッサンが、そんな構って欲しい
子犬みたいな顔すんなや!
あ、違う、子犬じゃないや
この駄犬、三十路だし。
ってそうじゃなくて! 
断れないでしょうが!、そんな顔されたら!!

「・・・絶対手伝って下さいよ?」

そう念を押し、僕も草履へと足を伸ばすと、横から凄く嬉しそうな
気配がしてきた。

あぁ、もう!絶対今顔赤いよ、僕!!

そして僕達は、また何時ものように二人で買い物へと向かったのであった。

 

 

その後、店に着くまで銀さんは僕の手を離そうとしなかった。
銀さん曰く、買い物メモはきちんと持ってなきゃダメなんだそうだ。

後日、それが二人で買い物に行く時の『当たり前』の事になったのは
言うまでもない。

***************************
『情け』の続き。
開き直った坂田は強かで・・・ウザい(笑)

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「あぁ!?」

「げっ」

「ひぃっ!!」

巡察の途中、嫌なやつと会った。
その時、隣から小さな悲鳴のようなものが聞こえた気がしたが、
気のせいだろう。
って言うか、顔こわっ!!とか言ってんじゃねぇよ、山崎。
叩っ斬るぞ、コルァ。

「あ~あ、怖い世の中だねぇ。警察がスラッと殺人予告かよ。
って言うか平凡なる一般市民にメンチ切んのやめてくんない?」

投書するよ、投書。肩を竦ませ、ヤレヤレとばかりに大袈裟に
首を振る銀時に、土方の眉尻は上がる一方だ。

「誰が一般市民だ。
真なる市民に土下座して謝り倒せ、コノヤロー

「オマエさぁ、何時も思うんだけど血圧高くね?
アレだよ?ただでさえマヨなんてコレストロールの塊ばっか
食ってんだから、何れプチッといくよ?プチッと

ならばいっそ今ブチッと逝ってしまえ!とほざく銀時に、

「よ~し、なら首出せ。お望みどおりブチッと逝かせてやる」

と、刀に手を掛ける土方。
そんな二人を止める事も出来ず・・・と言うか間に入りたくないので
山崎はソロソロとその場から後退して行った。
これで屯所に戻る時間がまた遅くなるなぁ・・・と深い溜息を
吐きながら。

「あれ?何してるんですか?」

確実にジワジワと一触即発な二人から距離を取っていた山崎の背後から、
まだ男性としては少し高い声が掛かる。
その声に縋る様に振り向けば、其処には今の状況に於いては救いの女神とも
言える少年の姿が。

「し、新八くん!!」

「え?なんで涙目!!?」

何故自分にこんな目を向けられるのか判らない新八は、無意識にその場を
後ずさるが、ガシリと山崎に肩を掴まれ、身動きが出来なくなってしまった。

「滅茶苦茶会いたかったよ、新八くん!!」

山崎としては、これでまた巡察に戻れる。とか、この人外魔境から
脱出できる!とか、さぁ、得意のツッコミでこの馬鹿二人を止めてくれ!!
とか、そんな色々な想いから出た言葉だったのだが、そんな言葉にしていない
気持ちが周囲に判る筈もなく・・・

「え?え?いや、そう言って頂けると嬉しい・・かな?ですけど・・・え?」

訳の判らない新八は、大きな目をキョロリとさせ、小さく首を傾げた。

あ、可愛い。

思わず今の状況が頭から抜け落ち、目の前の幸せに浸りそうになる山崎に、
物凄い勢いで殺気が飛んでくる。

なんか・・・半端ないんですけどぉぉぉ!!?

先程とは違った意味で涙ぐむ山崎を尻目に、新八がその肩口から
顔を出せば、そこには見慣れた黒服と自分の上司が。

「あれ?二人とも何してるんですか?」

「それはこっちの台詞でしょ?何不審人物に手を握られてんのよ。」

おい、あぁいうのを捕まえるのが仕事でしょ、さっさと裁けよ。
そう言って隣に居る土方を促せば、

「オメェに言われるまでもねぇよ。問答無用で逮捕の上切腹だな」

と答え、収めていた刀に手を掛ける。

「て、何言ってんですか!!こんな事ぐらいで」

全くもう冗談ばっかり言って、一々ツッコむのも疲れるよ。そう呟き、
山崎に苦笑を向ける新八だったが、山崎は知っていた。

・・・九割がた本気であろう事を。

しかし、(多分あるであろう)一割の冗談に祈りを寄せ、引き攣る頬を
なんとか苦笑へと変える山崎であった。

「で、土方さんと山崎さんは巡察ですよ・・・ね?」

じゃぁ銀さんは?と問い掛ける新八に、銀時はガシガシと頭を掻くと、

「・・・散歩?」

と、首を傾げた。

なんで疑問系?って言うかそんなフラフラしてんなら
買出しぐらい付き合ってくださいよ!」

今日たくさん買ったから重いんです!そう言って新八は持っていたビニール袋
の一つを銀時に押し付ける。

「んだよ、これ。買いすぎじゃね?」

「特売日の有り難味を心の底から味わってください」

って言うかこういう時に買い溜めしとかないとヤバイんですけど、ウチ。
そう言ってジットリと銀時を睨み付ける新八に、銀時はそ~っと視線を
逸らすと、押し付けられた荷物ともう一つ、余分に受け取り、
じゃ~なぁ。とだけ告げ、さっさと土方達に背を向け歩き出した。

「ちょっ、えっと、じゃあ失礼します」

お仕事頑張ってくださいね。新八慌てては土方達に軽く頭を下げると、
先に行く銀時の背中を小走りに追いかけて行く。

 

「買出しって言ったって、どうせ殆どヤツラのもんばっかだろうに」

アイツも苦労してんなぁ。遠くなっていく後姿にしみじみと呟き、
自分も職務に戻ろうと、その場を後にしようとした。
その時、隣で山崎が何かを思い出したように、短く声を上げたのが耳に入った。

「あ?なんだよ」

問い掛ければ、山崎は、確か前にも・・・あれ?だけど・・・
等と一人で首を傾げている。
それに無言で拳を振り下ろし答えを促せば、叩かれた頭を摩りながら、
たいした事じゃないんですけど・・・と、思い出したことを話し出した。

「この間、やっぱり両手に買い物袋携えた新八君に会ったんで、
半分持ってあげてたんですけど、途中で旦那に会いまして。」

で、丁度今みたいなやり取りがあったような・・・と言う山崎に、土方の
眉尻が上がる。

「別に帰るトコが同じなんだから、会えば荷物ぐらい持たせるだろう」

「いやいや、そうじゃなくてですね?」

山崎は慌てて両手を振ると、その指を折りながら話を続けた。

「なんかその前にも見たような・・・ん?確か一週間前もあんなのが・・・
アレ?待てよ、その三日前も・・・」

「・・・なんでオマエがそんな事知ってんだよ」

マヨ買いに走らせてんのは誰ですか。
俺はほぼ毎日ですけどね、新八君は主に特売日に来てるみたいで
そう言う時はよく沢山買い込んでて・・・て、そうだ!
特売日ですよ、特売日!
その日には大抵新八君と散歩中の旦那に会うんですよ」

なんか引っかかってたんですよね。と言って、
これですっきりしたとばかりに笑う山崎。
それに対し土方は、ほんの少し目を見開くと、ちらりと視線を後ろへと
向けた。

そこにはもうかなり小さくなった目立つ銀髪と黒髪が、仲良く並んでいて。

「それにしても旦那なりの規則性があるんすかね、散歩の。
それ以外の日ってあんま見た事ないですよ、俺。」

なら一緒に買出しぐらい行ってあげればいいのに。
そう言って苦笑する山崎に、土方はタバコを取り出して火を着けると、

「そこまで素直にはなれないんだろう、馬鹿だから」

「何がですか?」

土方の言葉に首を傾げる山崎を横目に、多分次の特売日にも
『散歩』をするのであろう銀髪の男の姿を想像した。

何だかんだ言って、気付かないあの少年も相当鈍いが、
一々理由を付けないと動けないあの男も相当なものだ。

まぁ、これで一つ、確実にあの男を言い負かせる弱みを握ったのだが・・・

土方は吸い込んだ煙をゆっくり吐いて、口元を緩ませた。

「ま、武士の情けだ」

今はまだ黙っててやろう。と、隣を歩いているのにも関わらず、
僅かに距離が離れている二人を見送った。

*****************
ちなみに新八は言うだけ無駄だと思ってるので、
さっさと一人で買出しに行きます。
そして自分からは一緒に行ってやると言い出せない坂田。
って言うかストーカー一歩手前な坂田(笑)

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