[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「銀さん、自分の洗濯物ぐらい自分で仕舞ってくださいよ」
洗濯物の山を横に、新八は居間のソファでゴロゴロしているだろう
銀時へと声を掛けた。
「ん~・・・銀さん今忙しいから、新八頼まぁ」
が、返ってきたのはそんなやる気の無い声。
新八は一つ息を吐くと、畳み終えたタオルを手に立ち上がった。
「・・・何が忙しいですか、何が」
そのまま居間へと向かえば、新八の想像通りの光景が広がっていて。
新八はタオルを抱えたまま、ソファに寝転びジャ○プを読み漁っている
銀時の横へと仁王立ちした。
「何って・・・アレだよ。
少年の心を忘れないように必死にだなぁ」
「いや、そろそろ忘れろよ。」
それよりも、はい。と、新八は銀時の顔目掛けて持っていたタオルの山を
落とした。
「ちょ、行き成り何すんだ、テメッ!」
「はいはい。いいからそれ、お風呂場に持ってって下さいね。
ぐしゃぐしゃにしたら畳みなおして貰いますよ?」
そう言って、起き上がろうとした銀時の顔をタオル毎押し戻し、
そのまま続きをするべく、新八は和室へと戻っていった。
「全く、銀さんてば何にもしないんだから」
だが、流石に今回は動いたらしく、何かブツブツ言っている声が
足音と共に居間から出て行ったのが聞こえた。
「自分の洗濯物ぐらい自分で仕舞えばいいのに」
そんなんだから、いざと言う時困るのだ。と新八は軽く唇を
尖らした。
一応新八にだって休みはある。
休みはあるのだが、新八の性分と言うか、この家の住人共の
洒落にならない物臭加減と言うか・・・
そんなモノのせいで、完全なる休みと言うのは殆どなかったりする。
・・・まぁいいんだけどね、別に。
ここだってもう『ウチ』みたいなもんだしさ。
でも・・・
「流石に朝っぱらから電話でパンツの場所を聞かれるとは
思って無かったよ」
しみじみ呟いて、新八は次に畳もうと手にした銀時のパンツを
掲げ、深く息を吐いた。
「だって仕方ねぇじゃん。
酒抜こうと風呂に入ろうとしたはいいけど、パンツどこにあるか
判んなかったんだからよ。
大体電話で聞かれたくなかったら、帰んなきゃいいだろ」
何時の間来たのか、和室の入り口に銀時が腕を組んで凭れ掛かっていた。
それを新八が呆れた視線で見返す。
「そう言う問題じゃないですよね、それ。
第一なんで僕が銀さんのパンツまで
管理しなきゃいけないんですか」
「安心しろ、代わりに新八のパンツは銀さんが
ちゃんと管理してやる」
「全く安心できねぇよ」
新八は持っていた銀時のパンツを丸めると、力任せに
銀時へと投げつけた。
「おわっ!ちょ、やめてくなんい?
おっさんのパンツはある意味凶器だっつうの」
「自分のパンツでしょうがっ!
大体そのある意味凶器な物体を、僕は毎日畳んでるんですけど!?」
放り返されたパンツを勢いのままガシッと掴む新八。
その口調は、このまま手にしたパンツを引き裂いてやりたい・・・
と言うか寧ろ中身ごと引き裂いてやりたい。
等と言う感情が滅茶苦茶込められていたが、そんな事をしたら
困るのは自分だ。
・・・いや、別に中身はどうでもいいが、パンツはマズイ。
そんな事しても繕うのは自分だし、何よりそんな光景は
畳んでいるよりももっと寒いし辛い。
大体穿けるのにそんな勿体無い事は出来ないしね。
新八は気分を落ち着かせる為一つ息を吐くと、
手にしていたパンツを丁寧に畳んだ。
・・・がそんな事しても落ち着く所か
落ち込むだけで。
・・・本当、なんて精神的攻撃に長けてるんだろう、
おっさんのパンツって。
「いや~、愛を感じるね~新八君」
新八がそんな事を考えているのを知らず、銀時が
洗濯物畳んでいる新八の姿を見て口元を緩ます。
「僕は疲れしか感じませんよ、銀時サン」
「ぅわやっべ、その呼び方滅茶苦茶クルわ。
もう替えのパンツが欲しいぐらい」
「これ以上洗濯物増やすんじゃねぇよっ!!
ってかその前に僕の精神的苦痛を感じ取れぇぇ!!!」
新八の叫びと共に、再び銀時のパンツが舞った。
が、幾ら凶器であってもたかがパンツ。
物理的には全く威力は無く、銀時は口元を緩ませたまま
投げられたパンツを軽く手に取った。
「いやいや、愛しか感じられねえって、本当」
銀さんってば愛されてる~。そう言って銀時は軽くパンツを
振ると、そのまま和室の向こうへと姿を消した。
「・・・何言ってんだか・・・」
それを呆れた視線で見送りながらも、新八の手は
次の洗濯物へと移っている。
手にしたのは銀時の甚平。
これも新八が出さなければ、銀時は探し出すのに
苦労する事だろう。
「まぁその前に探さないか・・・」
探す前に新八に聞くだろうし、何より
言われる前に用意してしまうだろう。
そこまで思い、新八は簡単に予測できた自分の行動に
小さく笑った。
何だかんだ文句を言いつつも、自分でもそれが
当たり前となっているのだ、既に。
「ま、手伝って欲しいのは本当だけどね」
でも、まぁいいか。そう結論付けて、新八は
丁寧に銀時の甚平を畳みだした。
「・・・アレ?パンツは?」
とりあえずドン引きですね☆(当たり前です)
我が家には『コタツムリ』が居る。
・・・あ、正式には万事屋に・・・だ。
僕の家に居るのは『不滅のゴリラ』だった。
で、このコタツムリ。所謂コタツから頭だけを出し、
そこから微動だにしないとてもウザイ生物だ。
喉が渇けばお茶を、お腹が空いたらお菓子を、
仕舞いにはトイレまで代わりに行けと言ってくる。
・・・や、別に行ってもいいんですけどね。
でもそうしたら本当、
人としての何かを失う結果になりますよ?
そう言ったら渋々ではあるが、コタツムリは動き出した。
そのままコタツごと。
勿論、僕が唯一出ている白い毛玉目掛けて
華麗なる蹴りを繰り出したのは言うまでもない。
お腹踏まれなかっただけ有難く思えコノヤロー。
で、そんなウザイ生物を視界の隅に入れながらも
家事をこなして数日・・・コタツムリは突然増殖した。
しかも二体。
「神楽ちゃん、今日は遊びに行かないの?」
「はっ、こんな寒い中外で遊ぶなんてガキのする事ネ。
大人は黙ってコタツの住人ヨ。
寧ろ出たら負けネ」
新たにコタツムリとなった神楽ちゃんに言ってみるが、
鼻で笑い飛ばされてしまった。
「や、それ普通にダメな世界の住人になってるからね?
ってか昨日まで寒いからこそ外で遊ぶのが粋だって
言ってなかったっけ?」
「・・・それは寒い中、暖かい場所で冷たいものを食べるの
間違いだったネ。
って事で新八、アイス~」
「あ、銀さんも~」
「・・・それはちゃんとした大人だけに許された、
リッチなイベントです」
だから却下だコノヤロー。
そう言うと、途端にコタツムリ達からブーイングが起こった。
全く、そんな余分なものを買うぐらいなら、
ちゃんと身になるものを買うってぇの!
中々ブーイングが止まなかったので、僕は黙って窓を全開にした。
途端、ヒョイッとコタツムリ達の頭が消える。
残っているのはコタツとほぼ同化している、大きな定春の頭のみ。
・・・ってかあの巨体が入っているのに、
どうやって銀さん達はコタツの中に
収納されているのだろう。
コタツムリの構造は、ちょっと不思議だ。
そして本日、またもやコタツムリは増殖した。
「・・・何やってんですか、桂さん」
呆れた視線の下で、長い髪の毛がモゾッと動く。
「いや、気にしないでくれ、新八君」
・・・や、気にするよ、普通。
ってかちょっとしたホラーだよ、これ。
長い髪に前面を覆われているので、まるで呪いのビデオだ。
出てくるのはテレビからじゃなくて
コタツからだけど。
しかも本人、煩いのだろうけど手を出すのがイヤらしく、
そのままの状態でこちらを見上げている。
・・・って見てるんだよね、コレ。
僕は恐る恐るしゃがみ込んで、そっとその髪をかき上げてみた。
「あぁ、すまない。有難う、新八君」
「・・・いえ」
どうやら予想は当たったらしく、見慣れた顔が出てきた。
・・・が、今度はとてもシュールな感じになってしまった。
だって黙っていれば整っているその顔が。
口さえ閉じていれば真面目そうに見えるその顔が。
コタツからニョキッと・・・
とりあえず見続けていると夢に出てきそうだったのでそっと視線を逸らす。
「おいおい新八、そんなヤツに優しくする事ねぇぞ。
懐かれたらどうする、ウチじゃ飼えませんよ?
元に居た所に捨ててきなさい」
「ってかエリーはどうしたネ、エリーは」
それぞれの場所から出てきた言葉に、そう言えば・・・と桂さんに
目をやれば・・・
「元に居た所も何も・・・アソコには俺の場所などないのだ。
エリザベスがコタツに入っているからな」
と、とても哀愁の篭められた顔で呟かれた。
どうやら桂さんはエリザベスにコタツを乗っ取られたらしい。
うん、確かにエリザベス、体大きいですもんね。
でも同じくらいウチの定春も大きいと思うんですけど!?
本当、中は一体どんな事になってんのぉぉ!!?
で、桂さん。その無駄にシリアスな顔、止めてください。
本気で夢に出そうです。
と言う事で、現在万事屋にはコタツムリが四体生息している。
お陰でウザさも四倍だ。
「・・・僕が入る場所もないし」
それぞれの場所から出ている頭を眺めながらポツリと呟けば、
ピクリと白い毛玉が動いた。
そしてとても珍しい事に、モゾモゾとコタツから脱皮をしてくる。
なんだろ、トイレかな?
だがコタツムリから脱皮した銀さんは、完全に出る事はなく、
そのまま足を突っ込んだ状態で僕の方へと半身を向けた。
そしてチョイチョイと手招きをしてくる。
お茶の催促か、それともお菓子か。
だったら全力で脱皮させてやる。
心に固く誓い近付くと、グイッと腕を引かれた。
そしてそのまま銀さんの膝に抱え込まれると、さっさと僕の足を
コタツの中へと入れてしまった。
「え?ちょ、銀さん?」
所謂膝抱っこに近い状態に、僕が慌てて後ろにいる銀さんに
顔を向けると、ギュッとお腹に回った腕に力を篭められた。
そして序にポテリと銀さんの頭が僕の肩へと落ちてきて、
首以外身動きが取れなくなる。
「・・・オマエの場所」
「は?」
ボソリと呟かれた言葉に首を傾げると、グリグリと肩口に
埋められた頭を動かされた。
「だ~か~ら!ここが、オマエの場所」
ちなみに銀さんの入る場所はここ。と言って腰を密着させてきたので、
それには素早く頭突きでお答えすることにした。
全く、ちょっとうっかりキュンってなったのに
すぐにぶち壊すんだから。
や、ぶち壊されていいんだけどね、別に。
まぁ・・・と、聞こえてきた呻き声を背に、僕はゆったりと体の
力を抜いた。
それに気付いたのか、復活した銀さんが嬉しそうに
擦り寄ってくる。
いつの間にか寝てしまったのだろう、神楽ちゃんの方から
気持ち良さ気な寝息が聞こえてくる。
テーブルから見える定春の耳は、時折ピクリと動いていて。
桂さんは、髪は気にしなかった癖にミカンは気になるのか、
時々手が出てきてはミカンを奪っていく。
そして僕はと言えば、足も背中もポカポカだ。
と言う事で、今日のコタツムリは全部で五体。
・・・ま、偶にはね。
*********
寒いのでうっかりポカポカ話に(笑)
眼鏡をかけていないと、僕の視界はぼやけたままだ。
まるで現実味のない、夢の中に居るみたい。
でもね、銀さん。
貴方だけは、眼鏡をしてても、していなくても。
はっきりと見つける事が出来るんですよ?
どんな雑多の中でも、どんなにぼやけた世界の中でも。
ただ一人、貴方だけが僕の視界の中に飛び込んでくる。
ね、銀さん。これってやっぱり・・・
ぶん殴りたいからですかね?
(いい加減僕の着物返して下さいっ!)
(や、もうちょっと!もうちょっとだけ!)
(・・・判りました。じゃあ歯ぁ食いしばってください)
(え、なんで?ドコをどう判っちゃいましたかぁ!?
あ、でもそのも顔ナイス!)
(・・・やっぱ食いしばんなくていいです、折るんで)
**********
正月なので無理矢理晴れ着着せられました。
で、とりあえず殴っときました。
新八は正義!(え?)
年末は稼ぎ時だ。
って事でクリスマスから大晦日まで仕事ぎっしり。
寒いだなんて言う暇もないくらい働き捲くったお陰で、
無事年を越す事が出来た。
「・・・けど疲れたよな~」
ぼんやりと炬燵に入り込んだまま、無駄に煩いテレビを眺める。
何だかんだでギリギリまで働いて、家に着いたのは
紅白の始まる寸前だ。
家の大掃除は、その状況を見越していた新八のお陰で
既に終わっていたのだが、何故だか神楽のテンションが
急上昇してしまい、まずそれを抑えるのに苦労した。
ってか何故あのテンションを仕事時に発揮しないんだろうか、アイツは。
・・・や、発揮されても困るか。
だって仕事が終わらないばかりか、倍増しそうだ。
しかも押さえるのが俺一人だったから、尚疲れた。
お妙が年末年始も仕事だって言うから、泊り込んでいた新八も
その場に居たのだが、生憎御節の準備だの年越し蕎麦だのと
台所の住人になっていて加勢は頼めなかったし。
一つ、深々と息を吐いて元凶である神楽に視線をやる。
昨日遅くまで起きていたせいか、今はぐっすりと夢の住人だ。
なんだかムカつくので、こっそり顔まで炬燵の布団を被せてやる。
「ちょっと、何やってんですか」
咎めるような声と共に、目の前に暖かい湯気を出した湯飲みが置かれた。
「ん~、なんつうか・・・嫌がらせ?
あ、違う。風邪引くかと思ってよ」
「全然フォローになってねぇよ」
ってかこの方が風邪ひくでしょ!・・・と言いつつ、
新八はそっと被せた布団を神楽の顔から引き下げる。
そして後ろを回り、俺の隣へと腰を降ろした。
「だってよ、コイツのせいでどんだけババァに怒鳴られたと
思ってんだよ。
ったく、メカ如きでテンション上げやがって」
「いや、アンタも結構上がってましたよね、あの時。
滅茶苦茶大笑いしてましたよね、アレ」
「や、アレは笑うだろ、普通。
思わず拝みそうになったからね?
何?サ○コは一体何処を目指してんの?
何かのラスボスにでもなりたいの?」
それならヤベェよ。
だってどんな勇者だろうが倒せそうにねぇもん、アレ。
うんうんと一人で納得しつつお茶を一口飲む・・・と、
新八から あっ! と言う声が聞こえてきた。
つられて見れば、新八の視線はテレビへと向っており、
そこには今日も意味不明な語尾をつけている放送禁止アイドルの姿が。
「おいおい、正月早々いいの?コレ。
言っとくけど正月だからって世の中はそんなに甘くねぇぞ?」
ってか生放送だろ、コレ。
すげぇな、勇者だな、番組責任者。
うん、その勇気に免じてサ○コ討伐を命じてやろう。
・・・まぁまだ何にもしてないけどな、サ○コ。
歌ぁ、歌ってるだけだけどな、サ○コ。
「お通ちゃん、頑張ってますよね~。
年越しライブやって、テレビにも出て・・・」
僕も応援頑張んなきゃ。なんてニコニコと笑ってテレビの画面を
見詰めている新八に、 あ~そう。 なんて適当に返事をしておく。
するとムッとしたような新八の視線が突き刺さってきた。
だが、それを流すように俺はテーブルへと顔を突っ伏した。
だって仕方ねぇじゃん。実際面白くねぇし。
アイツ出てきたらオマエ、そればっかだし。
言っとくけどな、銀さんだって頑張ったじゃん?
年末がっつり仕事したし、神楽の暴走だって止めようとしたし。
あ~、面白くねぇな、正月早々よぉ。
年越しライブがなんだってんだよ、ピーピー音が入る中
年越したって気分良くねぇだろ。
寧ろ何言ってるか気になって、
年なんて越せねぇだろうが。
言っとくけどなぁ、日本人なら炬燵に入って紅白見て、
んで蕎麦食って初詣に・・・・・・あれ?
そこまで思って、俺は思考を止めた。
大晦日・・・新八は俺達と共に仕事をしていた。
で、帰って来て台所の住人になって、テンション高くなった
俺と神楽を怒って、下のババァに謝って。
まるでワンコ蕎麦の様に年越し蕎麦を啜る神楽にさり気なく
注意して、それで寒いからと中々炬燵から出ない俺を
神楽と二人して無理矢理引っ張り出して初詣に行って・・・
・・・あれ?
思わず顔を上げ新八を凝視していると、お通の出番が終わったのか、
新八が俺へと視線を返してきた。
「どうかしました?銀さん」
そう言って首を傾げたんだけどよ、それ銀さんの台詞じゃね?
だってオマエ・・・
「お通の年越しライブ・・・行かなかったのか?」
親衛隊隊長として、どんなゲリラライブだろうが馳せ参じている新八だ。
なのに何で?と呆然としていると、あぁ。と目の前の顔が
ゆるりと笑った。
「まぁ行きたかったですけどね、
やっぱり年越しは家族で過ごさなきゃ」
だから止めました。なんて当然の様に言ってくれちゃって。
「・・・あ、そうなんだ」
うん、そうだな。うん・・・そうだ。
「あれ?銀さん本当大丈夫ですか?
顔、真っ赤ですよ?」
炬燵、暑いですか?そう言って新八は俺の頬にペタリと掌を
押し付けてきて。
うん、そうだな、きっとそうだ。
だから、あの・・・
俺は新八の掌ごと、テーブルへと自分の頬を押し付けた。
ヤバイ、銀さん今なら軽くサ○コに立ち向かえるかも。
************
明けましておめでとうございます。
今年もこんな感じでグダグダやっていくつもりですので、
どうぞよろしくお願いします。
そろそろ日も傾いて来た頃、神楽は定春と共に外から
帰宅した所で、何故だかソファの上で毛づくろいをするサル達を
発見した。
「・・・何してるアルカ」
半目で視線を飛ばしていると、新八は手を止めずに声だけで、
その前に座っている銀時はものっそい笑顔で お帰り。と
返してくる。
それに神楽は少し間を置いたものの、ちゃんと ただいま。と返し、
未だサルとなっている二人の向かい側に座った。
別にイチャツクのは何時もの事だから気にならないが、
どうも今回のは違う気がする。
だって新八が嫌がっても照れてもないネ。
・・・ま、照れてるってのは銀ちゃんの妄想だけどナ。
神楽はじっとりと二人を見詰めると、もう一度同じ言葉を吐き出した。
「で、何してるアルカ」
「神楽ちゃん、帰ってきたら手洗いウガイ」
だが、今度も答えは返ってこず、代わりに銀時の頭を
ワサワサと探っている新八から注意を促される。
「うっせぇなぁ、母ちゃんはよぉ。
今はこっちが気になってそれ所じゃないアル」
「おいおい、そんな言い方すんじゃねぇよ」
ケッと舌打ちしながら言えば、銀時から生温い笑顔で
気色悪い声を掛けられた。
思わず視線の温度が下がるが、今の銀時にそれは
感じ取れないらしい。
ニヨニヨとしたまま、漸く神楽の問い掛けに答えてくれた。
「新八はな~、今銀さんの白髪抜いてくれてんだよ」
そう言うなり、実際に新八がブチッと抜いたらしい。
銀時は一瞬声を上げたものの、直ぐにニヨニヨ顔へと
戻っていく。
「銀ちゃんので白髪の見分けがつくアルカ!?」
「馬っ鹿、オマエ新八の愛を舐めんなよ?
愛があればんなもんがっつり見分けられんだよ。
寧ろそれが判るぐらい銀さんの事見ててくれてんだよ」
銀時がそう言う間にも、新八は景気良く髪を
ブチブチ抜いていく。
その顔は、真剣を通り越してちょっと怖い。
「・・・新八、それちゃんと白髪を抜いてるアルカ?」
「おいおい神楽ちゃん、何言ってんの?
新ちゃんの真剣な姿が見えてないの?」
いや、見えてる。
真剣と言うよりも、何か鬼気迫る姿が。
機嫌の良い銀時を無視し、恐る恐る新八を見ていると、
再びブチッと抜きながら、小さく頷くのが見えた。
「うん、見分けはついてるから」
そう神楽の問い掛けに答えてくれたが、
答えになっているようでなっていない気がする。
だって聞いたのは、抜いてるかどうか・・・だ。
まぁ銀時の表情を見ている限り、本当に抜いているようなのだけど・・・
神楽はソファから腰を上げると、ソロソロと新八の後ろへと移動した。
そしてそっと新八の手元を見てみる。
・・・うん、確かに見分けは出来ているようだ。
銀髪と白髪を見分けられるなんて地味に凄い。
流石ジミー代表、新八ネ。
「・・・私、手ぇ洗ってくるネ」
「ウガイもね」
そう言われ、素直に頷いておく。
そして洗面所に来た所で、そう言えば・・・と今朝の事を思い出した。
昨日の夜、どうやら銀ちゃんは隠れてお菓子を食べたらしい。
新八がゴミ箱を見て静かに怒っていたっけ・・・
「なら自業自得ネ」
神楽は今も呑気に鼻歌なんぞを歌いながら新八に
白髪以外を抜かれている
銀時の幸せで間抜けな姿を思い浮かべた。
・・・よし、後で私も参加しよう。
***********
罰だろうが何だろうが、坂田家は常に三人行動(ある意味ひでぇ)