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銀魂(新八中心)の同人要素満載のサイトです。 苦手な方はご注意を。
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暑い暑いと思ってたら、突然寒くなった今日この頃。
万事屋では、普段なら別々に座っている筈の神楽と銀時が、
一つのソファで固まっていた。

「とりあえず何枚か冬物出しときますから、
もう少し我慢して下さいね」

そう告げる新八は、朝から衣替えに大忙しだ。
今も慌しく二人に告げながら、洗濯物を抱えて干し場へと
消えていった。

「・・・銀ちゃん、新八はなんであんなに元気ネ」

オカンの血が煮えたぎってんだろ」

「なら銀ちゃんよりも暖かいカ?」

「・・・暖かいだろうが、その代償が凄すぎるぞ」

銀時はそう言って顔を顰めた。
その瞬間、腫れた頬が引き攣り、余計に顔を顰める羽目になる。

どうやら既に新八に抱きつき、その凄すぎる代償
払い終えた後らしい。

「それは銀ちゃんだからヨ
私だったらやんわり窘められて終わりネ」

「・・・どっちにしろ暖取れてねぇじゃねぇか」

「・・・そう言えばそうネ。」

ならば仕方ない・・・と、神楽はますます銀時へと体を寄せた。
ちなみに二人の足元には定春が寝そべっており、
それなりに重いけれど、きっちり暖は取れている。

「って言うかなんで急に寒くなるネ。
お陰で加齢臭に包まれまくりヨ、私」

「なら離れろコノヤロー、嘘だけど。
俺だってなぁ、酢昆布臭ぇのを我慢してやってんだよ!」

「何言うアルカ!
酢昆布の匂いなんて、芳しいことこの上ないネ!」

「酸っぱい事この上ないわぁぁ!!
・・・て、離れるな離れるな。
冷気が押し寄せてくる」

その言葉に、思わず身を起こして銀時の胸倉を掴んでいた
神楽が我に返り、慌てて手を離して身を寄せた。

「ぅおお!寒かったアル!!」

「ったくよぉ、少しは大人しくしてろってぇの」

「それはこっちの台詞ヨ。
折角酢昆布臭に染め上げた洋服が台無しネ」

「え?自ら酢昆布の匂いにしてんの、オマエ」

「ちゃんと箪笥の中に酢昆布入れてるネ」

乙女の嗜みネ。
お陰で食べてなくても食べてる気がしてくるヨ。

私、凄くネ?と滅茶苦茶自慢げに笑う神楽に、
銀時はカクリと力なく肩を落としたのだった。

 

 

 

 

 


「・・・ってか年頃の娘が自ら酢昆布・・・」

その後、少しだけ静かになった二人だったが、銀時は
小さな声でブツブツと呟き続けていた。

どうにも納得いかないらしい。

それに対し、ハッと鼻で笑う神楽。

「銀ちゃんが自ら加齢臭出してるのと同じネ」

「出してねぇよ。
寧ろ引っ込めるよ、そうなったら。
本当止めてくんない?心までもが凍えそうになってくるから!
・・・ってかマジで出してるの?俺」

「そう言えばじっとしてるより体動かしてた方が
暖かいって言ってたネ」

「ちょ、スルーとかマジでやめて!?
なんか肯定されるより現実味があるからぁ!?」

「ね、銀ちゃん。
動いてれば暖かくなるカ?
マダオは冷たくなってたけど」

「だからスルーは・・・って、はぁ?
なんで長谷川さんが出てくんだよ」

必死の訴えを無視して告げてきた神楽の言葉に、
銀時は首を傾げる。

しかも何やら不吉な言葉もあったような気がする。

思わず嫌な汗が流れた銀時に、
神楽はサラリとその時の状況を告げてきた。

「この間マダオが公園で寒い寒い言ってたネ。
で、体を動かせば少しは暖かくなる・・・って言ってたから、
教えてもらったおしくらまんじゅうしたヨ」

「・・・・・・・で?」

「開始直後に飛んでって、
公園の反対側に無様に着地したネ」

「・・・坂田家ではおしくらまんじゅう禁止な」

それに洗濯物が乾くまでの我慢だ。

そう強く言う銀時に、神楽も渋々了解したのだった。

 











「二人とも、今からそんなんで冬を越せるんですか?」

その後、再び静かになったものの、何も喋らないのも
またなんとなく寒い・・・と二人でしりとりをしていた所、
洗濯物を終えたらしい新八が呆れた顔で近付いてきた。

「そんな遠い未来の事を心配しても仕方ないネ」

「俺等は今、この時を必死に生きてんだよ」

「だからその必死さ加減が心配になるんですよ」

全く。と言いつつ、新八は片手に抱えていた毛布を二人の
肩へと掛けた。

「お登勢さんから借りてきました。
これでなんとか生き抜いてくださいね?」

ポンポンと二人の間で重ねた毛布を叩き、新八はニコリと笑う。
そして今度は布団を干す為に、和室へと身を返していった。

残った二人は掛けられた毛布へと顔を埋める。

「・・・ババァ臭ぇな、コレ」

「なんか線香の臭いがするネ」

「でも・・・なぁ?」

「うん・・・そうネ」

二人はチラリと視線を交わすと、勢い良くソファから立ち上がった。
そして二人して毛布に包まったまま、和室へと向った新八を追い掛ける。

 

とりあえず暖かいこの毛布は手放せないけど。

 

「新八~、私も手伝うヨ」

「銀さんも~」

「・・・や、その格好で
何手伝う気ですか、アンタ等」


振り返り、そう言う新八はやっぱり呆れ顔だけど、
何処となく優しい感じもして。

 

よし、心はポカポカだ。

***********
母ちゃん大好き家族。

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「お、今日もお仕事ご苦労さんね~」

「・・・やべ、見たくもねぇ幻覚が見えてんだけど。
何コレ、総悟の呪いか?とうとう呪いが結果を出したのか?
結果出しすぎにも程があんだろ、コレェェ!!」

昼過ぎの道端で、その日も真面目に仕事をしていた
土方が盛大に吠えた。





「おいおい多串君、どったの?突然叫びだして。
何、ストレス?胃とか大丈夫?」

「誰が多串だコノヤロー。
ってか今大絶賛でストレス掛けられてんだよ。
胃所か心臓がやべぇよ、もう」

何なんだ、テメーは。そう言いつつ、土方は声を掛けてきた人物、
銀時からじりじりと身を引いた。

広い広いとは言っても、結構狭いこの世の中。
その上土方は巡察で街中を歩いているし、銀時も結構
ブラブラと出歩いている。
しかも思考回路が認めたくはないが似ている二人だ。
こうして街中で顔を合わす事がない訳ではない。
・・・が、大抵は罵詈雑言を投げ合うだけで、決して
先程のように労う言葉を掛け合う仲ではない筈だ。

しかもご機嫌な笑顔つきで。

ある意味最強の精神攻撃だ。



「んだよ、折角心配してやってんのに
酷ぇ言い草だなぁ、おい」

そう言ってはいても、銀時の顔は笑っていて。

「・・・その心配がトドメ差しに来てんだよ。
ってかご機嫌だな、テメーは」

銀時の機嫌の良さに、土方は目一杯引きながらそう告げた。
見れば銀時は手に何やら商品が詰め込まれているビニール袋を
持っている。
ならばパチンコか何かで勝って機嫌が良いのだろうか。

いい御身分だな、おい。

ある程度目星を付け、嫌味交じりでそう告げれば、
銀時の顔は一層幸せそうに緩んでいった。

「いい御身分なのは否定しねぇけどな?
原因はパチンコじゃねぇよ。
え?何、何で機嫌が良いか知りたいの?」

「いや、全く知りたくもねぇ」

「仕方ねぇなぁ、そこまで言うなら教えてあげようかな~。
あ、でも多串君に教えるの勿体無いかな?
ってか可哀想かな?何か幸薄そうだし。
や、だからこそ教えてあげて幸せを分け与えたほうがいいかな、うん。
あ~、もう銀さんてば心広いなぁ」

「うざっ!
ちょ、マジこいつウザいんだけど!?」

ってか俺は仕事中なんだよ!と、銀時から離れようとする
土方の肩に、銀時はガシリと腕を回して引き止めた。

「まぁまぁ、いいからちょっと聞けって。
この間さぁ、知り合いの子の娘が嫁に行ってさぁ」

勝手に肩に腕を回しつつ、語りだした銀時にウンザリする土方。
だがこうなるとそう易々と逃がしてはくれないだろう。
いい加減精神的に疲労していた土方は、少しの辛抱だと諦め、
適当に銀時の話を流す事に決めた。

・・・ってかそれが機嫌の良い原因だろうか。
まぁ嫁に行くのはめでたい事だしな・・・

そう告げると、バッカ、ちげぇよ。と返された。

・・・おいコラ。人の事言う前に
ちょっと鏡で今の自分の顔見て来い。
問答無用の馬鹿が居るから、本当。

「じゃあ何だよ。
さっさと話してどっか消えろ」

「全く多串君は短気だね~。話はこっからよ。」

そう言って銀時が話し出した内容は、それを見た神楽が
目を輝かせたと言う事だった。

「・・・まぁ憧れる年頃ではあるわな」

少し・・・と言うか大分意外だが。

「まぁアイツは貰った引き出物に目を輝かしてただけだけどな。
で、何か話がそう言う話に行ったわけよ」

結婚とかお嫁さんに。そう言われ、土方も同意する。

と言うか普通そっちにいくだろう、引き出物とかよりも。
やっぱりチャイナはチャイナか・・・と土方が思っていると、
でな?と銀時が話を続けた。

「ちょっと心配になったから聞いてみた訳よ。
オマエも嫁にいきたいのかって」

銀時の言葉に、土方は少し驚きながらも、そりゃそうか・・・と
納得した。

幾ら他人と言っても、傍から見れば銀時達は既に家族だ。
気持ち的には娘を持っているようなものだろう。
ならばその心配にも頷ける。

「・・・で、なんて返事が返って来たんだ?」

まぁコイツのこの機嫌の良さを見れば、
答えなんて判りきっているが。

そう思いつつも一応聞いてみると、銀時はダラリと頬を
緩ませて答えた。

「嫁にはいかねぇってよ、
新八のヤツ」

 

 

 

 

 

 

 

 


「・・・・・・・・・おい」

「いや~、もうさ何て言うの?安心したってぇか
当たり前ってぇか?
考えてみりゃもう嫁に来てるようなもんだからね、俺のトコに。
今日だって、『銀さん、一緒に買い物に行きましょ』とか
誘われちまってよ?何か常に一緒に居たいって感じバリバリでよぉ。
あ、でも途中でお通の番組やるの思い出して帰ったんだけどね?
途中っても玄関だったけどね?
結果俺一人で買い物に来たんだけどね?」

「や、それ思いっきり計画的犯行だろ。
忘れるわけねぇだろ、アイツが。
ってか何で新八!?普通ソコはチャイナに聞くだろ」

「それでも誘われたってのが大事なんだよ。
ってかなんで神楽に聞かなきゃいけねぇんだよ。
アイツは嫁に行かなきゃダメだろうが。
まぁ相手は一発ぶん殴るけど」

「完璧オヤジ感覚!?
ってか聞かなくても新八は嫁に行かねぇよ。
っつうか行けねぇよ!」

「うん、銀さんが居るからね」

「そうじゃねぇぇぇぇ!!!!」

 

 

その日、何度目かの悲痛な叫び声が上がり、
やっぱり総悟の呪いなんじゃねぇかな、コレ。と
真剣に思いつつ、胃を押さえた土方の姿が見られたと言う。

*************
やっぱり酷い扱いなマヨ(笑)

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ぼんやりとした視界の先に、これまたぼんやりとした
空があった。

そして微かに漂ってくる腐臭と血の匂い。
僅かに体を動かせば、背中越しに伝わってくる固い土の感触。


あぁ、そうか・・・


そこで漸く俺のぼんやりとした頭が少しだけ動いた。

ここは戦場だ。
それも、もう誰も生者のいない。

ならここにはもう用はない。

そう思っても、何故だか体が動かない。

どうしたもんだか、このままだと雨に降られてしまう。
別に今更そんな事を気にする性質でもないが、
今はとても寒いので、勘弁して欲しい。

そうこうしている内に、ポツリと一粒の雨が頬に落ちてきた。

あぁ、ヤバイな。

思わず手を翳した所で、俺は何故体が動かないかと言う理由を知った。

ポタリポタリと翳した手から、雨粒の変わりに血が頬へと
降り落ちてくるのに一つ、息を吐く。


まぁ仕方ないか。


いい加減上げているのに疲れた手を戻し、そう思う。

動けないなら仕方がない、ここで終わりだ。
それに誰も居ないと言うなら丁度いい。
誰にも迷惑を掛けずに逝けるだろうし、
何より見っとも無い姿を晒さなくて済む。

なら、それでいい。

安心して目を閉じようとしたその時、突然静かだったその場所に、
少し甲高い声が響いた。

驚いてついそちらに頭を向けると、なんともまぁ場違いな姿の
少年が立っていた。
そして袴の裾が汚れるのも構わず、こちらへと走ってくると、
勢い良く俺の傍へと膝を付き、序に俺を抱き上げた。

「何やってんですか、アンタ!」

再びぼんやりとしてきた俺の視界に、少年の顔はよく見えない。
だが、必死なのは良く判った。

判ったが、それはこちらの台詞だ。
何やってんだ、オマエ。そんなトコ座ったら着物汚れっぞ。
しかも血塗れの俺まで抱えて。
血は洗濯しても中々落ちねえんだから、後で怒られっぞ。

「そんな事どうでもいいんです!今はアンタの事でしょ!?」

や、それこそどうでもいいだろ。
俺、もう逝くし。
だから放っておいてくれ。

「ダメです、嫌です!」

嫌ってオマエ・・・
いいから放っといてくれって。
頼むから俺の事何て見なかった事にしてくれ。

「・・・なんでそんな事言うんですか」

だってオマエ、死んでく所なんて見たくねぇだろ?

「生きてはくれないんですか?」

そりゃ無理な相談だ。
だって俺、もうギリギリだし。

「ならせめてそれまで傍に居ます」

だから嫌なんだって、それ。
俺は一人で逝きたいの。
見っとも無ぇ醜態晒したくねぇんだよ。

「・・・でも、傍に居ます」

・・・強情だね、オマエ。
俺、結構カッコつけだから、そんな姿晒したくねぇんだけど。

「ごめんなさい」

謝るぐらいなら、俺のお願い聞いてくんねぇ?

「幾らでも謝るから、僕のお願いを聞いてください」


そう言うとソイツはそっと暖かい手を俺の頬へと這わせた。
そして先程落とした雨粒や血を、優しく拭っていく。


「もう無理なら、本当に無理なら、
せめて少しでも長く貴方の傍に居させて」


・・・ね?銀さん。

 

柔らかい声と共に、今度は雨でも血でもない、
暖かい雫がポタリポタリと降ってきて。

あぁ、オマエのお願いなら聞かなきゃダメだな、これ。

なんて思った俺が居た。

 

 

 

 

 

 





 

 

 


再び目を開けると、今度はぼんやりした空ではなく、見慣れた天井が
目に入った。

「あ、銀さん起きました~?」

もうすぐお昼ですよ。ぼんやりとした俺に、聞き慣れた声が
掛けられる。

頭をぐるりと向ければ、箒を片手に家事に勤しんでいる新八の
姿が。

「・・・新八~」

「何ですか~?」

「オマエって結構強情な」

「は?」

「後、意外とおねだり上手」

「・・・寝惚けてんですか?」

「俺、見っとも無くね?」

「寝癖がのっそいですけどね」

「でも居てくれんの?」

そう言うと、新八は動かしていた手を止め不思議そうに
俺を見詰めてきた。
そして近寄ってきて傍に膝を付くと、そっと俺の頬を
撫でてくる。

「変な夢でも見ました?」

「ん~ん、どっちかって言うと良い夢だな」

暖かい手に自分の手を添え、序に頬も擦り付ける。

「で、どうなの?」

 

 

問えばぼんやりと揺れる視界の先で、『当然でしょ』なんて
柔らかい声が落ちてきて。

 

 

 

 

 






 

あぁ、これでもう、一人でカッコつけて死ぬ事なんて出来やしねぇ。

**************
我侭だと判っていても、聞いて欲しい事がある。

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動物は過ごしやすい場所を見つけるのが上手いらしい。

「って事は、ここが家の中で一番涼しいトコなのかな?」

新八は洗い終わった洗濯物がいっぱい詰まった籠を抱え、
部屋の隅でスヤスヤと眠りこけている定春を見詰めた。

エアコンなんて物は存在しない万事屋にとって、
最近の暑さはシャレにならない。

窓全開、おまけに玄関も全開な状態だ。

それでも暑いので、神楽は廊下で寝転び、銀時は外に涼を求め
出かけてしまっている。

だが、家事をこなす新八はそんな事している暇はない訳で。

新八はグイッと頬の汗を肩口で拭うと、暫しその場に
佇んでみた。

「・・・気持ち涼しいかな?」

なんとなく風が通っているような気がする。

「どう?定春」

そう聞くと、まるで答えるように定春の耳がピクリと動いた。
新八はそれにクスリと笑うと、

「後で掃除はさせてね?」

そう告げて、洗濯物を干すべくその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・あれ?」

洗濯物を干し終わり、次は掃除だ。と居間へと戻ってきた新八の
目に入ったのは、先程と同じ場所で寝そべっている定春と、
それに体を預けるようにして寝ている神楽の姿だった。

「何時の間に来たんだろう・・・」

さっきまでどんなに怒っても廊下から剥がれなかったのに・・・
涼を求めてここまで来たのだろうか?
でも幾らここが他の所より涼しくても、定春の傍は
暑いと思うのだが・・・

そんな思いから神楽の顔を覗きこむが、新八の心配を
余所に、神楽はとても気持ち良さそうに寝ていて。

「・・・これじゃ掃除は無理かな?」

苦笑を浮かべ、新八は屈み込んでいた体を起こした。
その気配に、定春の目が少しだけ開く。

「定春は大丈夫?」

そう聞くと、問題ないとでも言うように軽く耳を動かし、
再び目を閉じてしまった。

どうやら大丈夫なようだ。
ならば・・・と新八は一撫で、定春の頭を撫でる。

「僕、先に買い物行って来るからお留守番お願いね」

少しだけ心配な気持ちもあるが、定春が居るなら大丈夫だろう。
と、新八は玄関を開けたまま買い物へと出かける事にした。

あ、でも一応お登勢さんには一言言っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 


「・・・増えてるし」

太陽の照りつける中、暑い思いをして買い物から帰ってくると
定春の傍に銀色の頭が一つ、増えていた。

こんなに早く帰って来たと言う事は、外で涼しい場所が
見付からなかったのだろう。
または、涼しい場所に居られなくなったか・・・だ。

「全く・・・幾ら負けてきたんだか」

多分後者だろうと中りをつけて、新八は深く息を吐いた。
その溜息に、定春の目がゆっくりと開く。

「定春も大変だね?」

横たえた体には神楽が、そして首元には銀時が体を預けて
眠っているのだ。

幾らなんでも暑いだろう。

そう思って問い掛けると、定春は仕方ないとでも言うように
ワフッと小さく息を吐いた。


・・・多分この中で一番の大人は定春だ。


「ごめんね?」

尊敬と謝罪を篭めて定春の頭を撫でると、新八は買ってきた物を
手にとり、その場を後にしようとした。

・・・が。

「え?」

何かが袴に引っかかって前に進めない。
不思議に思い顔を向けると、何故だか定春が新八の袴の裾を
噛んでいた。
そしてクイクイとひっばって来る。

「え、ちょ定春?
僕、買ってきたものを置きに行かなきゃ・・・」

それに他にもやる事あるし・・・と言ってみるが、定春は知らん顔。
新八の言葉を無視して尚もクイクイと袴を引っ張った。

「えっと・・・もしかして僕も寝ろ・・・って事?」

そう問い掛けてみると、肯定するかのように
漸く定春が袴から口を離した。

・・・とりあえず今日買ってきたものの中に
腐るものは入ってない筈だけど・・・

でも・・・と新八は視線を下へと降ろす。

幾ら涼しい風が通ると言っても、こんなに密集してたら
暑いだろう。
現に神楽も銀時も、額にうっすらと汗をかいている。
おまけにお昼の用意とか、掃除とか・・・ってこれは今は無理か。
でも他にもやる事あるし・・・

あぁ、でも。

と新八はやんわりと口元を緩めた。

確かに気持ちは良いかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「お~い、誰か居ないのかい?」

ったく、玄関開けっ放しで物騒だね。そう言いながら、
お登勢は静まり返った万事屋へと足を踏み入れた。

そして居間へと来た所で、動かしていた足を止める。

「・・・暑苦しい光景だねぇ」

何やってんだか。そう言って苦笑するお登勢の視線の先では、
汗をかきながらも気持ち良さそうに眠りこけている
三人と一匹の塊が。

「暑気払いにカキ氷でも・・・と思ったんだけどねぇ」

ま、明日にするかね。そう言って来た時とは違い、そっと静かに
その場を後にしたのであった。

*************
過ごしやすい場所=気持ちの良い場所な坂田家。

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「だから傘持って行こうって言ったじゃないですかっ!」

「うるせぇなぁ。予定では降り出す前に帰ってくる筈だったんだよ。
なのにオマエがタイムサービス狙って待ってるから」

「お菓子をどれにするかで真剣に悩み込んでた人に
言われたくないです。」

ってか誰のせいでタイムサービス狙わなければいけない生活を
送っていると思ってるんだ。

雨の降る中、原付から荷物を降ろし足早に家の中へと駆け込む。
その間も言い合う口は止まらない。

バタバタと階段を駆け上がり、そのまま玄関へと飛び込んだ。

「あ~、もう濡れちゃったよ」

買ってきた戦利品を置き、ハタハタと着物の水気を払う。
・・・が、結構な勢いだった為か、しっとりと滲みこんでいて
それだけではダメなようだ。

とりあえずタオルを持ってこよう・・・と、新八は草履と足袋を
脱いで玄関へと上がり、置いておいた買い物袋を持ち上げた。

「今タオル持ってきますから、銀さんは先に着替えてて
下さ・・・い・・・って、何ですか、一体」

振り返って銀時に告げる新八だったが、その先にある銀時の顔に
思わず半目で見詰めてしまった。

や、だって何かしまりなく緩んでるし。
寧ろみっともなくニヤケてるし。

「いや、何てぇの?台詞と言うか行動と言うか
今の姿と言うか?
もう一体どれに萌えたらいいのか銀さん迷っちゃう」

いやん。と体をくねらせて告げる銀時に、新八の目は益々
温度を下げていく。

「寧ろそのまま迷子になって帰ってこないで下さい」

いいからさっさと着替えて来いっ!と銀時の背中を蹴り、
居間へと押し出した。

 

 

 


「銀さ~ん、着替え判りました?」

買ってきたものを台所へと置き、新八はタオルを片手に
居間へと戻ってきた。

「オマエね、銀さんを何歳だと思ってんの?」

その奥の和室で、銀時が上半身だけ裸になった状態で
呆れた顔を見せ、渡されたタオルを受け取った。
それに新八は苦笑する。

「だって銀さん、朝も僕に任せっきりじゃないですか」

「あれはただ単に甘えてるだけですぅ。」

「いや、それこそ本当に何歳気取りだよ」

全く・・・と、新八はタオルで体を拭く銀時の足元に
脱ぎ散らかされた着物を拾っていく。
そしてそれらを抱え、銀時に確り拭く様に告げると
再び新八は和室を後にしようとした。

「ってちょっと待て」

だが、そんな新八の襟首を銀時が掴んで止める。

「何ですか?」

後ろ襟を捕まれた新八は、キョトンとした顔で振り向き、
銀時の行動に首を傾げた。

そんな新八の行動に、銀時は僅かに眉を顰める。

「何ですか?じゃねぇよ。
オマエだって濡れてんじゃん」

そう言ってそれまで体を拭いていたタオルを新八の頭に被せる。
頭はそれ程濡れていないものの、着物はやっぱり濡れていて冷たい。
その感触に、ますます銀時は眉を顰めた。

「さっさと着替えねぇと風邪ひくだろうが」

「僕は大丈夫ですよ。それよりも買って来た物を
冷蔵庫に入れないと・・・」

体を銀時の方向へと向けられ、ワシャワシャとタオルで
拭かれていく新八が告げるが、銀時はお構い無しだ。

「少しぐらい置いといたって腐りゃしねぇよ。
いいから着替えた着替えた。
なんなら銀さんが着替えさせてやろうか?」

ニヤリと良くない笑みを浮かべられ、新八はフルフルと
頭を振った。

「んだよ、遠慮すんなって」

「いえ、全力で遠慮します」

「・・・ケチ」

「や、なんで!?」

「仕方ねぇ。ならせめて着替え出してやらぁ」

その間ちゃんと体拭いとけ。銀時はそう言うと新八の頭を
一撫でし、箪笥へと体を向けた。

ゴソゴソと箪笥の中を漁る銀時に、少しだけ新八の
心がほっこりする。

何だかんだ言って優しいんだよね、銀さん。
・・・ちょっとセクハラ気味だけど。

渡されたタオルの温もりと、銀時の優しさに
頬を緩ませていると、銀時からホイと着替えが手渡された。


・・・のだが。


「・・・なんですか、コレ」

手渡されたのはどう見てもナース服で。

「何って・・・着替え?」

「じゃねぇよ!
何でこんなの持ってんですか!?」

思わず銀時に向って放り投げると、軽々とキャッチされ
再び差し出された。

「馬鹿ヤロー、万事屋舐めんなよ?
ナースだろうがセーラーだろうが
何でも揃ってんだってぇの。
ちなみに新八にジャストサイズだから安心しろ」

「安心所か不安だらけだよ!
なんで僕指定なんですかっ!
ってかそっちこそ仕事舐めんな!?」

大体僕、着替え置いてあるでしょ!そう言うと銀時は
え~。と唇を尖らせた。

「オマエちょっとは空気読めよ。
こんなシチュエーション、使わない手はなくね?」

「そっちこそ空気読めよ。
ちょっと絆されそうになった僕の純情を
どうしてくれるんですか!?」

「え、マジでか!?
ならなおの事美味しく戴きますっ!」

「粉砕したわ、そんなのぉぉ!!!」

「じゃあ、せめて俺の着流しで」

そう言って銀時は自分の着替え用に出していた着流しと
ナース服を新八へと差し出してきた。

「ちなみにそれも嫌だってんなら、
残るは裸割烹着しかねぇからな?」

再びよくない笑顔を向ける銀時に、これからは例えどれだけ降水確率が
低くても傘だけは持ち歩こう。
序に銀さんは叩き潰そう。それも今すぐ。
・・・と固く誓った新八であった。

**************
坂田が変態なのは基本装備で。

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