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日も変わろうかと言う時間、銀時と新八はそっと細心の注意を払いながら
神楽の寝床でもある押入れの扉を開けた。
「あ、ありましたよ、銀さん」
「ってかよぉ、これ本当にいいのか?
だって酢昆布だぜ?しかも入れるのは靴下の中って・・・
これって何重の拷問?
どっちに対しても匂い半端ねぇと思うんだけど!?」
「しょうがないでしょ?神楽ちゃん、プレゼントは
靴下の中に・・・って友達から聞いてきちゃったんですから」
それにこの靴下はまだ未使用です。ボソボソと言われ、
銀時は渋々神楽の枕元にある靴下の中へと酢昆布の塊を入れた。
そして再びそ~っと押入れの扉を閉め、静かにその場を後にする。
「あ~、もうマジ緊張した。」
居間まで戻り、銀時と新八の二人はホッと胸を撫で下ろす。
一度寝たらある程度の騒音など無視して朝までぐっすりな神楽だが、
今夜だけは別だ。
「神楽ちゃん、サンタ捕獲するって意気込んでましたもんね」
新八は苦笑し、眠りに付くまで気合十分に張り切っていた
神楽の姿を思い浮かべた。
寧ろ来るまで起きていると言う神楽に、サンタの姿を見たら
次の年からはプレゼントは貰えないだの何だのと
冷や汗を掻きながら胡散臭い説明をしたのだけれど、
どうやらそれを信じてくれたようだ。
「ったく、誰だよサンタなんて考えたヤツは。
言っとくけどあれだよ?普通に不法侵入だからね?あのおっさん。
しかも子供しかプレゼント贈らないって物凄い差別主義者だから。
よし、今度会ったら殴っとこう」
「知り合いかよ。
ってか変な事言って夢を壊さないで下さいよ、もう」
ほら、もう寝ましょう。新八はそう言うと銀時の背を押し、
そのまま布団が敷いてある和室へと足を進めた。
ちなみに 寒いだろうから。 と銀時が新八の布団へと
入ってこようとしたが、やんわりと言葉で、
けれども態度はきっぱりと、力の限り叩き出したので
無事眠りの国へと旅立つことが出来たのであった。
「・・・え、何、これ」
次の日、何時もの様に目覚めると、新八の枕元に小さな紙袋が
置いてあった。
確か寝る前には何もなかったと思うんだけど・・・と新八は
不思議に思い、首を傾げる。
だが、その紙袋はちゃんと新八の枕の横に置いてあって。
・・・もしかしてクリスマスプレゼントだろうか。
ちらりとまだ眠っている銀時を見てそんな事が頭を過ぎるが、
それはもう昨日の夜のウチに貰っている。
なら何だろう?
とりあえず布団の上に座り袋を開けてみると、中から出てきたのは
新品の足袋が一足。
そしてこの家で足袋を穿いているのは自分しかいない訳で。
新八はクスリと口元を緩ませると、隣で寝ている銀時へと
視線をおろした。
「有難うございます、銀さん。」
新八はそう一人呟くと、寝ている銀時の頬に小さく唇を落とし、
早速その足袋を穿いて・・・
「ぅわっ!」
突然横から出てきた腕に、腰を抱きこまれた。
「ちょ、銀さん!?」
見れば新八の腰には銀時の腕が回っており、埋められた顔からは
銀時の嬉しそうな笑い声が聞こえてきていた。
「・・・何なんですか、もう」
ってか起きてたんですか、アンタ。と先程してしまった自分の行動に
頬を染めながら、新八は腹にある銀時の頭をポカリと叩いた。
けれど銀時からは笑い声しか返ってこず・・・
「・・・銀さん、アンタ何時からMに趣旨変更したんですか?」
「いや、してないからね?
堂々とドS路線突き進んでるから、銀さん。
今はただサンタからのプレゼントに喜んでるだけだから、
そこら辺疑わないでくれる?」
「まず頭の正常さを疑いたくなるんですけど。
ってかプレゼント?」
訳が判らず首を傾げていると、銀時は少しだけ体を離し、新八の足元を
指差した。
ソコには真新しい足袋を穿いた新八の足が・・・
「銀さんが用意して寝床に置いといたからね、それ。
いや~、中々気の利いたことしてくれるじゃねぇか。
銀さんの一番欲しいもんだよ、コレ」
そう言って再び新八を抱き締めてくる銀時に、新八は
いや、これあったの僕の枕元ですから。・・・とか、
しかも穿いたかどうか確り確認してた感じじゃね?・・・とか、
ってかプレゼントって言うより、完全罠じゃん。・・・とか。
色々と思ったが、口には出さず、仕方ないな・・・と苦笑を浮かべて
そっと銀時の背中に腕を回した。
うん、仕方ないよね。
だって僕もコレが一番欲しかったのだ。
*********
この後まったりする間もなく、テンション高めの娘が乱入(笑)
ボーナスって何ですかね。
今の所噂でしか聞いた事のない僕にとっては、
完全なる未知的存在なんですけど。
ってか寧ろ都市伝説に近いと言ってもいいですね。
あ、違うか。それは給料の事でしたっけ。
「って事で銀さん。今日家の事のお手伝い、
お願いしてもいいですか?」
年末は忙しくなるから、今から色々やっときたいんで。
淡々と話していた新八は、にっこり笑うとそうお願いしてきた。
・・・うん、お願いだ、あくまで。
例えその手に呑み屋の請求書が握られていても、
額にピクピクと青筋が浮かんでいようとも、
お願いには変わりはない。
あ~、こんなに可愛くお願いされちゃ~、
聞かないわけにはいかねぇよな、オイ。
本当、銀さんてば愛妻家っ!
勿論気分良くお手伝いさせて貰いますっ!
だからそろそろ定春の解除をして下さい。
アルコールが抜ける前に、血と魂が抜けきるんで。
「・・・で、何コレ」
恐妻・・・基愛妻である新ちゃんのお願いを聞き届け、
家事の手伝いを大人しくしている訳だが・・・
「何ってお手伝いして貰ってるんですけど?」
俺の疑問に、後ろから新八の不思議そうな声が返ってくる。
うん、確かにお手伝いしてたよね。
ちゃんとお風呂掃除してたし、その後新八に呼ばれて
台所に行けば、棚の上の掃除をお願いされたし。
でもさ、でもよ?これって・・・
「・・・普通に負んぶじゃね?」
そう、台所の掃除が済んだ新八は、同じように棚の掃除を
終えた俺の背中に突然飛びついてきたのだ。
予想外の出来事に、え、これなんてフラグ?なんて驚いてた俺に、
新八が言った言葉が
「じゃあ次は居間の掃除に行きましょう」
・・・だった。
・・・いや、いいんだけどね?居間の掃除。
それに今日一日お手伝いするって言った銀さんが借り出されるのも
判るんだけどね?
でも・・・なんで負んぶ?
「だって銀さんが言ったんじゃないですか、
ちゃんとお手伝いしてくれるって」
俺の疑問を不満と受け取ったのか、少しだけ新八の声が
尖るのが判った。
あ~、チキショー。きっと今頃可愛らしい唇をほんの少しだけ
尖らせてんだろうなぁ。
本当、なんで負んぶなんだよ。
顔が見えねぇじゃねぇか、コレッ!!
せめて抱っこだったなら・・・って、いやいや
負んぶだからこそ、堂々と新八のケツに触れられてるんだしな。
そうだ、銀時。ちょっと冷静になろう。
二兎を追うものは結局何も得られねぇんだ。
ならばここは我慢してこの感触を・・・や、待てよ?
抱っこでも抱え方によっちゃケツ、触れねぇ?
「あ、手が滑った~」
「っ!!!ちょ、新ちゃん、それ絞まってるからっ!」
「だって落ちそうだったんですもん」
「その前に銀さんが落ちそうだったよ!?」
突然キュッと首を絞められ・・・(いや、掴んでたよね、アレ。
確実に確実に銀さんの命を掴みに掛かってたよね!?)
慌てて頭を振って新八の手を振りほどき、抗議の声を上げれば、
プイッと視線を逸らされた。
この野郎・・・幾ら銀さんが愛妻家でも、
許せるものと許せねぇもんがあんだぞ、コラ!
勿論これは許すけどね!
だって『もん』とかっ!!!
その上プイッてオマ・・・
見えたからね、肩越しでもばっちり見えたからね、
そのツンデレ具合っ!!
よっしゃ、次はデレだ。どんと来い。
ウェルカムだ、デレ。
オマエの真なる力を見せ付けてくれぇぇ!!!
「・・・銀さん、顔怖いです。
いいからさっさと居間に行ってくださいよ」
ニヤニヤして待っていると、呆れたような顔で新八が
睨んできた。
どうやらデレてたのは俺の顔だったらしい。
お陰で新八のデレは無くなってしまった・・・
俺の馬鹿っ!!
・・・ま、それでも新八の顔がちょっと赤かった気がするから
良しとしよう。
ヘイヘイと軽く答えて新八の体を背負いなおし、
居間へと向う。
「ちなみにそれが終わったら、今度は洗濯物ですからね」
「はいはい、その時もちゃんとお運び致しますよ。」
「当然です。それ込みのお手伝いですもん」
そう言って、背中の新八はクスクスと笑った。
すみません、そんなお手伝いなら毎日させて下さい。
***********
なんかうっかりした(コラ)
お妙に呼び出された新八は早めに万事屋を出る事になった。
本当ならもっと遅く、寧ろここに住めってマジで。と言いたい所だが、
何分お妙の呼び出しだ。
何度も言うが、あのお妙の呼び出しだ。
邪魔したら、新八の可愛い顔所か明日の朝日も拝めないだろう。
と言う事で名残惜しく玄関まで新八を見送り、少しだけ肩を落とす。
・・・いや、時間にしてみれば明らかに俺の方が新八と一緒に
居るけどさ、でもどれだけ一緒に居たとしても足りないわけで。
「・・・暇だし、呑みにでも行っかな」
今日は泊まれないのだから・・・と、帰り際新八に呑みに行くなと
言われたけれど、寂しいのだから仕方がない。
ってか神楽だってもう一人でも平気だろ。
新八が居る時は甘えているみてぇだが・・・
「お~い、銀さん夕飯食べたらちょっと出てくるわ」
「寧ろ夕飯食べる前に行って来いヨ」
居間へと戻り、ソファに寝転んでいる神楽に言ってみれば、
案の定どうでもよさ気に答えられた。
・・・やべ、なんか寂しさが倍増されたっ!
ってか食べてくからね!ちゃんと夕飯は食べてくからね!
新ちゃんの手料理は誰にも渡さないからっ!!
そう言うと 使えねぇヤツ。と舌打ちされた。
・・・よし、今日はとことん呑もう。
長谷川さんの奢りで。
で、上手いこと長谷川さんを捕まえて快く奢ってもらい・・・
や、マジだって。本当快く奢ってもらったって。
だって長谷川さん、嬉し泣きしてたからね?
滝の如き涙を流してたから、本当っ!
でも、それで調子に乗ったのが悪かったな、うん。
だって気が付けば銀さん、超エコな所で寝てたからね?
ゴミ収集所という名の再利用布団で。
いや、あれは匂いと世間の目さえ気にしなきゃ超快適だって。
案外暖かいし、クッション効いてるし。
・・・うん、嘘だけどね。
あ~、もう酒は呑まねぇ!
少なくとも今日はっ!!
朝日を背に、痛む頭と体を引きずりながらどうにか家まで
辿り着く。
そして待っててくれているだろう布団を夢見ながら
扉を開けた所で・・・
「お帰りなさい、銀さん」
・・・降ってきた言葉に、とりあえず
土下座したのは言うまでもねぇな、うん。
どうも昨日早めに帰った新八は、今日の朝御飯の下準備を
していくのを忘れていたらしく、何時もより早めに
万事屋へと来ていたらしい。
早々に説教を始めた新八だったが、俺の有様に気が付いたのか、
すぐさま凄い勢いで風呂場へと叩き入れられた。
・・・やっぱいい寝床だわ、ゴミ収集所。
「全く、一体何処で寝転んで来たんですか、コレッ!」
思っていたより体は冷え切っていたらしい。
暖かい風呂に浸りつつ、扉の向こうから聞こえてくる新八の
声に耳を傾ける。
「ん~、何処ってエコ的布団?」
「はぁ?あ~、なんかシミ付いてるしっ!!」
落ちなくても知りませんからね!と言いながらも、
水の流れる音と、布を擦る音が聞こえる。
それに軽く謝罪しながらも、緩く口元が上がるのを感じる。
「反省してるんですかっ!大体昨日は行かないで下さいって
お願いしてたでしょ?」
神楽ちゃん一人にしてっ!そう怒られるが、俺の気分は
このお湯のようにポカポカと暖かい。
だってさ、怒っててもオマエ、風呂用意しててくれたんだよな?
その着物のシミだって、きっと真っ白に落としてくれるんだろ?
朝御飯も用意してあって、布団も敷いてあって。
そう思うと、ニマニマが止まらない。
「銀さん?聞いてます?ってか起きてます?」
返事を返さない俺を不審に思ったのか、風呂場の扉が開き、
新八の顔がヒョコリと出てきた。
「銀さん?」
いい気分のまま風呂の縁に腕を置き、そこに頭を伸している俺の髪に、
優しげな声と暖かい手が落ちてくる。
「もう、こんなトコで寝ちゃダメでしょ?」
起きて下さいよ。なんて揺らされるが、気持ちが良いので
そのままにしておく。
すると、今度は脱衣所の方からもう一人の声が聞こえてきた。
「どうしたネ?」
「ん~、銀さんお風呂入ったまま寝ちゃったみたいなんだよね」
いや、寝てない。寝てないよ?
ただ気持ちいいから眼、瞑ってるだけだから。
困ったような新八の言葉にそう反論したいが、どうも言葉には
なっていなかったらしい。
仕方ないアルネ~。なんて呆れた声が聞こえてきた。
「本当、こんなトコで寝ちゃって、ダメだよね~」
「全くヨ。ダメな大人の見本ネ」
「あ、神楽ちゃんそこのタオルとってくれる?
とりあえず出させて、服着させちゃうから」
「おぅ。そしたら私が布団まで投げ飛ばしてやるネ」
「・・・や、せめて引きずってってあげて?」
そんな会話が、段々と遠くなっていく。
やべ、俺本当に寝ちゃってね?コレ。
そうは思うが、閉じた目蓋は開いてくれそうにない。
・・・ま、いいか。なんか新八達がやってくれるみてぇだし。
「本当、ダメな大人だよね~」
「まるでダメな大人ヨ、本当」
クスクスと笑う声を聞きながら、俺の意識はどんどん落ちていく。
馬ぁ鹿、そんなダメな大人を作り出しているのは、
確実にオマエラだよコンチキショー。
だから責任とって、ずっと傍に居てくださいっ!
***********
メロメロです(笑)
その日、新八が街を歩いているとあるモノが目に入ってきた。
「あ・・・」
その瞬間、新八の足はピタリと止まる。
実は前々から興味があったりしたのだ。
でも、態々そう言う所まで足を運ぶと言うほどでもなく、
機会を逃していて・・・
「・・・ちょっと行ってみようかな?」
そう呟いた新八の視線の先、ソコには移動式の献血所があった。
チラチラと耳にする話では、献血するとジュースを
貰えたりするらしい。
しかも最近は、そう言った所ではジュースやDVDを見放題、
中には占い等もしてくれる所があるらしい。
別にそんなのが目当てじゃないのだけれど。
や、そりゃ~貰えたら嬉しいけどね、でもそれ以上に
献血自体に憧れてたりするわけで。
だってさ、なんとなく献血って
大人って感じがするんだよね~。
それこそ、世の為、人の為・・・みたいな。
や、そこまで大それた事は考えてないけどね!
でもやっぱ子供は入れない場所だし、大人だけに許されている
掛け替えのない行動だとは思う。
そんな少しだけキラキラとした目で見詰めていると、
中から見慣れた人物が出てきた。
が、新八としては見慣れた人物なだけに、ソコから出てきたのが
信じられずちょっと目を丸くする。
「え?長谷川さん?」
「お、新八君。何?買い物?」
思わず声を出すと、中から出てきた長谷川は軽く腕を
押さえながら新八の元へと歩いてきた。
「いえ、暇なんでちょっと散歩してるだけなんですけど・・・
え?もしかして長谷川さん、献血してきたんですか?」
そう問い掛けると、長谷川は まぁね。 と言いながら
照れ臭そうに頭を掻いた。
その言葉に、新八の目はますます輝く。
マダオ、マダオと言われてはいるが、やっぱり元エリート。
本当はちゃんとした大人なんだな~。
密かに新八が尊敬していると、もう一人中から
見慣れた人物が降りてきた。
「お~い、長谷川さん、忘れ物~」
「って、銀さん!?」
「ン?あ、新八。どったの、買い物?」
「いや、暇だから散歩中だって。
ダメだよ~、銀さん。フラフラしてないでちゃんと仕事しないと。」
「長谷川さんだけには言われたくねぇな、それ」
そう言いながら、銀時は二人に近付くと、手にしていた袋を
長谷川へと手渡した。
「え?銀さんも献血してきたんですか?」
まさかっ!と目を丸くして新八が問い掛ける。
今日は朝からフラフラと出掛けて行ったので、またパチンコにでも
行っていると思っていたのだ。
なのに、出てきた所は大人の遊技場ではなく、献血で。
長谷川さんといい、銀さんといい、本当はちゃんとした
大人なんだな~。
それ以外が大部分を占めてて、
全然気が付かなかったよ!
輝きがました視線で銀時を見ていると、いや、それがな~。と
曖昧に言葉を濁らされた。
そんな銀時に新八が首を傾げていると、長谷川が手を軽く
振りながら新八の問いかけに答えてきた。
「いや、献血したのは俺だけで、銀さんはダメだったんだよ」
ちょっと引っかかっちゃったんだよね~。と言われ、
銀時は うっせぇよ。と長谷川の背中を膝でどついた。
「?銀さん、出来なかったんですか?
もしかして糖尿のせい?」
「いや、違うからね?
まだギリ寸前だから、それっ!」
そう言われ、他に原因が思いつかない新八は首を傾げる。
だが、一応献血しようと思ったのは間違いないらしい。
再び尊敬の気持ちが沸きあがってきた新八だった。
・・・・が。
「いや~、それにしても良かったよ。
もうパチンコで金吸い取られちゃってさ、
ジュースも買えない状態だったからね」
「俺だってそうだってぇの!なのに出来なかったしよぉ。
って事でちょっとそれ寄越せって」
「ちょ、止めてくなんい!?俺の血液の代価だから、それ!
今日唯一の栄養補給だから!」
「俺にとっても唯一の糖分補給なんだよっ!」
一つの袋に手を入れて争っている大人二人・・・いや、
マダオ二人に、一気にそんな気持ちは粉散した。
「ちょ、何してんですか!見っとも無い!!」
ってか僕の夢を壊すなっ!
え、何この人たち。もしかしてジュース狙いなの?
ジュースの為に献血してきたの!?
「んだよ、別に見っとも無くはねぇだろ。
血とジュース、ある意味等価交換だ。」
「や、銀さん献血してないよね?
俺の血との等価交換だからね、これ!」
「誰の血だろうと一緒だろうが、赤いんだからよ」
「いんや違うね、今の銀さんの血はきっと青だよ。
冷酷無比な冷たい色をしてるって絶対!」
「・・・その前に、一本のジュースを奪い合ってる姿は
十分に見っとも無いですよ」
あぁもういいですっ!未だ醜い争いを繰り広げている二人に
新八は叫ぶと、フンと鼻息荒く拳を握り締め、
「僕が献血に行って貰って来ますから!」
そう高らかに宣言した。
うん、そうだよ。別に僕はジュースに釣られてる訳じゃないし。
ただ純粋に献血したいだけだし。
・・・あ、ちょっと大人っぽいなコレ。
ってか絶対この二人よりいい大人っぽいよね、コレ!
だって献血するし、ジュースなんかにも釣られてないしっ!
自分の発言に満足げに口元を緩ませる新八の前で、
ポカンとしていた二人だったが、
次の瞬間、言葉を濁しつつ視線を逸らしていった。
「あ~・・・新八君?」
「はい?何ですか?」
「いや~その・・・さぁ。気合入ってるトコ悪ぃんだけど・・・
多分オマエ、無理だわ」
言い難そうに告げてくる銀時に、新八の首はコテンと傾げられる。
「え、何でですか?普通の献血なら僕の年でも
出来ますよね?」
「ん~、まぁ出来るんだけどよぉ・・・」
ちょ、長谷川さんさっきの紙見せて。そう言うと銀時は
長谷川の持っていた袋から一枚の紙を取り出した。
そしてそれを不思議そうな顔をしている新八へと渡す。
「これがどうしたんですか?」
「・・・まぁ見てみ」
そう言われ、何ともいえない表情をしている二人を前に、
新八は渡された紙へと視線を落とす。
そこには献血における注意事項と、条件が書かれていて。
「・・・別に年齢も大丈夫ですし、該当する項目もないですけど・・・」
「いや、あんだろ」
よく見てみろって。一度顔を上げた新八だったが、
銀時に言われてもう一度視線を戻す。
別に今現在服薬もしてないし、持病もない。
外国にも行ってないし、ピアスだって開けてない・・・が。
「・・・・あ」
一項目だけ、確かに該当するものがあったりした訳で。
瞬間的に頬を赤く染める新八に、まぁあれだ。 と
銀時は肩を抱き寄せた。
「銀さんの該当したのもそれって事でよ。
献血はこの先ずっと出来そうにもねぇけど、
こればっかりは仕方ねぇしなぁ」
頷きながらポンポンと新八の肩を叩く銀時に、新八は何も言えず
ただ只管に紙を見詰めていた。
や、だってさ。これって・・・いや判る、判るよ?
理論上でも衛生上でも理解できるしその通りだと思うよ?
でもさ、でもさ・・・
大人な世界に憧れてたのにぃぃぃ!!!!
「いやいや、これに該当した時点で十分大人だって。
思いっきり大人の世界に
足を踏み入れ捲くってるって!」
「うっせぇよ、この腐れ天パッ!
っつうかずっとって何ですか、ずっとって!!」
「ずっとはずっとだよ。何言ってんの?
銀さんがオマエ手放す訳ねぇじゃん。
って事でこの先献血によるジュースにありつけない
可哀想な銀さんに、速やかにそれを譲ってください」
「何で!?ってかいいじゃん!ジュースより
全然いい目見てんじゃん、ソレッ!
掛け替えのないモノ手に入れてんじゃん!!」
「いや、ここはジュースの為に我慢しましょう。
これに該当しないよう、清く正しい生活に戻しましょう、銀さん!」
「や、どっちも無理」
「「堂々と言ってんじゃねぇぇぇ!!!」」
・・・とりあえず、僕の献血デビューはまだまだ先になりそうです。
・・・・・・・・・ってかいつか来るのかな、そんな日。
**********
多分無理です(おいι)
ちなみに該当した項目は・・・アレです(笑)
・・・・私の時は喘息でしたが(泣)
溜まっていた洗濯物を干し終えてちょっと一息。
パタパタと揺れる洗濯物を目の前に、淹れたてのお茶を飲む。
なんだか達成感みたいなものがあってちょっと気分が良い。
・・・でもまたこれを取り込まないといけないんだよなぁ。
久し振りに休みを取ったからって、ちょっと調子に
乗りすぎたのかもしれない。
そうも思うが、まぁこんな時にしか出来ないんだし。と
自分を慰めた。
考えてみればお通ちゃん関連で休みは貰っても、
何もない日に休みを貰った事は殆どなかったっけ。
ボーッと青空の下の洗濯物を見つめながら、ふとそんな事を思った。
何時だって朝起きて万事屋に行くのが当たり前で・・・
あぁ、そう言えば銀さん達ちゃんと起きたかな?
朝御飯は昨日の内に用意してきたけど、ちゃんと食べたかな?
もうすぐお昼になるという時間なのに、そんな事を心配してしまう。
だってあの人達、寝汚いんだもん。
神楽ちゃんはお腹が減れば自分から起きてくるけど、
銀さんは・・・無理だな、うん。
あ、でもその神楽ちゃんに叩き起こされてるかな?さすがに。
お腹が空いて暴れまくる神楽に、言葉通り叩き起こされているだろう
銀時を思い浮かべて新八はクスリと笑った。
さすがにそこまでされれば銀さんも起きるよね?
で、きっと文句を言いながらもご飯の支度をするのだ。
それで待ちきれない神楽ちゃんがまた文句を言って・・・
「・・・よし、僕もご飯の支度しよっと」
新八は笑みを浮かべたままそう呟くと、腰を降ろしていた
縁側から上がり、台所へと足を進めた。
軽く食べて一休みしたら今度は掃除だ。
とりあえず普段使っている部屋を掃除し終わり、序だから
あまり掃除していない部屋もしようか・・・とうっすらと
埃を被っている畳を箒で掃く。
古いが広さだけはあるこの家は、結構そんな部屋があって
ちょっとだけいただけない。
「あっちはそんな事ないんだけどな~」
ポツリと呟く新八だったが、や、でも汚れ方は向こうの方が酷いか・・・と
苦笑する。
元々銀時だけが住んでいただけに、万事屋の部屋数は少ない。
少ないのだが、汚す輩が24時間常に臨戦態勢なので
それなりに掃除は大変だ。
まず銀時がジャン○タワーを築いている。
そして神楽はどんなに言っても寝転びながらお菓子などを
食べるし・・・
あ、これは銀さんも同じか。
あの人、隠れて糖分食べてるから、変な所に食べかすが落ちてるんだよね。
そして定春は抜け毛も出るし、外でついてきた泥も落ちる。
まぁある程度は玄関先に置いてある雑巾で拭ってくれるけど・・・
ってアレ?なんか一番定春がお利口さんじゃね?
「・・・少しは自分達で掃除してくれればいいのに」
そう言えば今日はちゃんとしていてくれてるだろうか。
動かしている手を止め、ちょっと考えてみる・・・が
直ぐに答えが出てきて大きく息を吐いた。
・・・無理だよね、うん。
寧ろそんな事願う方が無謀だ。
「あ~あ、明日が大変だ」
絶対文句を言ってやろう。そう心に決めるが、
その割りに少しだけ口元が緩むのも感じる。
だって埃を被っている部屋を掃除するより、
そっちの方がやりがいがあるもの。
ま、程度ってもんがあるけどね。
「あ、もう乾いてる」
掃除も大体終わったところで、洗濯物の確認をする。
天気が良かったせいか、大量の洗濯物は完全に乾いていた。
少し早いがこれを取り込んで、後は今日の夕飯の支度をして・・・
新八は洗濯物を抱えながら、ふと銀時達の事を思い浮かべた。
そう言えば銀さん達、ちゃんとお昼食べたかな?
もしかして朝と一緒にしちゃったかな?
夕飯はお登勢さんの所で食べて下さいって言ってきたけど・・・
もしかしたら面倒臭がって、適当にお菓子でも食べてるのかもしれない。
って言うかちゃんと食器、水に浸けといてくれたかな?
洗うなんて奇跡はいらないから、それぐらいはして欲しい。
あ、それに洗濯物!
昨日の分は一応部屋干ししてきたけど、今日の分、そこら辺に
脱ぎっぱなしにしてないよね?
・・・って言うかちゃんと着替えたよね、今日。
煩く言うヤツがいないから・・・とダラダラしている
二人が目に浮かび、新八は大きく息を吐き出した。
・・・もう夕方だけど、ちょっとだけ顔出してこようかな?
どうせ家の事は、この大量の洗濯物を畳むだけだし。
買出しにも行きたいし。
そう決断すると、新八は洗濯物を取り込むスピードを速めた。
・・・と言うか。
クスリと新八の口元が緩む。
「折角の休みだって言うのに・・・ね」
考えることは家事の事ばかり・・・と言うか
銀さん達の事ばかりだ。
「さてっと・・・」
戸締りを終え、新八は買い物袋を片手に玄関へと向った。
途中で買い物をして、序に万事屋まで足を伸ばして。
・・・序の序に夕飯の準備もして・・・
そう予定を立てて草履を履こうとした新八の視線の先である
玄関の扉には、何故か見慣れたシルエットが三つ映し出されていた。
**************
我慢出来ません。