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ガヤガヤと煩い音を耳にしながら、近藤はゆっくりと
閉じていた目蓋を開けた。
・・・が、相変わらず目の前は真っ暗だ。
「あれ?停電?」
「じゃねぇよ。目蓋・・・ってか
顔全体が腫れ上がってるだけだ」
知っている声に、顔全体を向け頑張って目を全開にすると、
うっすらと白いモジャモジャが目に入った。
「お前・・・万事屋?」
なんでこんな所に。と問い掛ける間もなく、再び近藤の視界は
真っ暗い闇に覆われる。
それと同時に感じる濡れた感触。
慌てて手にしてみればそれはお絞りで、熱を持った顔には
非常に気持ちが良かった。
だが・・・と近藤は考える。
確か自分はお妙さんの所に居た筈だ。
そして何時もの愛の塊とも言える拳を全身に貰い、
最終的に愛の試練の道へと飛ばされた筈・・・
首を傾げ、お絞りを当てたまま周囲の気配を探れば、
どうやら今自分が居るのは、何処かの居酒屋のようで・・・
未だ状況が判っていない近藤に気付いたのか、隣に座っている銀時が
呆れた声で答えをくれた。
「あのさぁ、幾ら野生に目覚めたって言っても、
あんな所で寝てるなんてアレよ?
良くないよ?景観的に」
「なんで景観的!?ってか目覚めてないから。
愛には完全に目覚めてるけど、野生には目覚めてないから」
そう怒鳴るものの、どうやら倒れている自分をここまで
運んできてくれたらしい。
珍しい事もあるもんだと思いつつ、近藤は素直に銀時に礼を述べた。
「いや、拾いたくて拾った訳じゃねぇから。
財布拾ったら序にお前が着いてきただけだから。
邪魔なストラップみてぇに。
あ、親父。もう一本つけて。金ならばっちりあるから」
そう言って銀時は財布らしきモノをヒラヒラと振りながら
店の親父に追加注文をした。
だが銀時の持っている財布は、明らかに彼とは縁の遠い
厚みを持っていて・・・
「お前ソレ拾った財布なんじゃ・・・って、あれ?」
と、少し真面目な声で近藤が告げた所で、ハタとある事に気付き、
慌てて上着やズボンのポケットを叩いた。
だが、ある筈のものがなく。
そしてない筈のモノが銀時の手の中にあった。
「ちょ、それ俺の財布ぅぅぅ!!?」
「あ、そうなの?いや~、知らなかったわ。
マジ気付かなかったわ~。
ほい、良かったな、拾ったのが
善良の塊である俺で」
「・・・いや、財布だけ返さないでね?
中身諸共返却して下さいぃぃぃ!!!」
お札を抜き取り、言葉通り財布を返してきた銀時に叫ぶが、
相手は何処吹く風。
「何人聞き悪い事言ってんだよ。
ちゃんと入ってるだろうが、中身」
「や、小銭ばかりなんですけど。
あった筈のお札が丸々ないんですけどぉぉ!!?」
「馬鹿野郎。小銭舐めんなよ?
買い物に行って一円が足りなかっただけでも、
何も買えないんだぜ?あるだけ良いと思え」
「既に札が全くない時点で塵ほども
良いと思えないんだが?」
「安心しろ、今日は俺が奢ってやる」
「だからそれ、俺の金ぇぇぇ!!!」
「あぁ、今夜もお妙さんの所に行こうと思ってたのに・・・」
返してくれそうにもない銀時に諦め、近藤は涙ながらに
酒の入ったコップを煽った。
「懲りねぇなぁ、テメーも」
そんな近藤に、銀時は呆れた顔を返す。
「その顔だって何時もの如くやられたんだろうに・・・」
「お妙さん、照れ屋だからなぁ」
銀時の言葉に、近藤は顔を冷やしていたお絞りを取り、
幸せそうに頬を緩める。
「や、それは照れ隠しと言う名の殺意だからね。」
「お妙さんの気持ちなら、
俺はなんでも受け止めるさっ!」
「逃げろよ、それは。
ってかさ~、本当勘弁してくんない?
そのストーカー行為のせいで、こっちまで被害被ってんですけど?」
「ストーカーではないっ!
あくまで純然たる愛の行為だ。
・・・ってか被害ってなんだ?」
まさか万事屋もお妙さんの事を!?と目を見開いていると、
その考えを読んだのか、銀時が近藤の頭をペシリと叩いた。
「被害は被害だよ。メッチャでっかい被害だよ。
テメーが毎晩のようにあいつの家に出るせいでなぁ、
新八がお妙を心配して毎日帰っちまうんだよ!」
眉を顰め、そう言う銀時に、近藤はカクリと首を傾げた。
「いや、毎日帰るのは当たり前の事じゃないのか?」
新八君の家はあそこだろう。と続く近藤に、銀時は大きな溜息を吐いた。
「全然当たり前じゃねぇよ。
寧ろ泊まってくのが当たり前なんだよ、
坂田家ではっ!
なのに毎晩毎晩・・・判るか!?おい。
毎日玄関で見送る寂しさをっ!一人で寝なきゃいけない侘しさをっ!
今日だってなぁ、泊まってけって朝からず~っと言い続けてたのに、
あっさり帰られたんだぞ!?
草履隠したらものっそい笑顔で怒られたんだぞ!?」
これが呑まずにいられるかってんだ!!と、酒を呷り、おかわりを
要求する銀時。
いや、何してんだ、いい大人が。
と言うか、その状況であったなら、何にも増して帰りたくなるのが
心情だろう。
そうは思うのが普通だが、生憎近藤も酔い始めていて・・・
「新八君はお姉さん想いだなぁ」
等とニコニコと笑って言う始末。
その言葉に、銀時はカクリと肩を落とし、新しく注がれた酒を
ちびりと口にした。
「・・・寧ろ銀さん想いになって欲しいんですけどぉ」
銀時のボソリと呟いた言葉に、近藤の笑い声が被った。
その後も全く改善が見られない近藤の行動に、
銀時がしばしば八つ当たりの如くたかりまくったのは言うまでもない。
*******************
よく考えると侘しい大人組みの会話(笑)
その日、何時にも増して目の前の銀髪はダラダラとしていた。
「・・・少しは働こうとか思わないんですか」
箒を片手にヒクリと頬を引き攣らせれば、目の前の
モジャ頭はダラリと一瞬こちらに視線向け、直ぐに
彼の聖書らしいジャ○プへと顔を戻してしまった。
それに再びヒクリと動く頬。
「ったく!いい大人がダラダラとっ!!
そんなにマダオである事を主張したいんですかっ!」
「いや、別に今更主張するも何もないんだけどね。
何?新ちゃんはこんな銀さん、嫌?」
ジャ○プから目を離さずに、そんな事を言ってくる銀さんに
またもヒクリと頬が引き攣る。
・・・なんかもう引き攣り過ぎて顔が筋肉痛になりそうなんですけど。
ってか開き直ったよ、この大人っ!
主張するまでもないってかっ!
まぁ実際そんな事しなくても
丸判りなんだけどねっ!?
でも今日は折角のいい天気で。
寒くも暑くもない、程よい気温で。
仕事するにも、家事をするのにも持って来いな一日だと言うのにっ!
生真面目だと言われればそれまでだが、やはりこんな日に
ダラダラとしてるなんて勿体無いと思う。
って言うか、実際目の前に居ると
普通にイラつく。
「えぇ!ダラダラダラダラしまくってる銀さんなんか嫌いですっ!」
あんまり言いたくない言葉だけど、
ここはウザイと言わなかっただけ褒めて欲しい所だ。
だってそっちが本心だし。
そんな気分でフンッと顔を逸らすと、ゴソリと銀さんの体が
動く気配がした。
ちらりと見てみれば、何故か肩肘を突いてそこに顎を乗せ、
ニヤニヤとした顔でこちらを見ている銀さんが・・・
「な、なんですか、その顔は」
「ん~?べっつにぃ~?
で?新八は銀さんの事がそんなに嫌いなんだ」
「そ、そうですよっ!一日中ダラ~っと家に居るトコとか、
糖分強請るトコとか、セクハラしてくるとことか
もんの凄く嫌いですっ!!」
ここぞとばかりに言ってみるが、銀さんは益々頬を
緩めるばかりだ。
・・・なんだろう、この人。
もしかしてMにでも目覚めちゃいましたかぁぁ!!?
そんな事を思っていると、銀さんは いや~参ったね。 等と
言いながら、のそりと体を起こした。
「ってぇ事は、新八は一日中家に居る銀さんも、
お強請りしてる銀さんも大好きで、
セクハラ大歓迎な訳だな」
「・・・・・は?」
先程自分が言った事とは正反対の事を、嬉しそうに言われ、
僕はポカリと口を開けた。
あれ?僕、ちゃんと日本語喋ってたよね?
で、銀さんにもちゃんと聞こえてたよね?
ちょ、誰だ!?勝手に妙な翻訳してる人ぉぉぉ!!!
って、目の前の天パかっ!!
そんな僕に、銀さんはニヤリと笑うと、壁に掛けられていた
カレンダーを指差した。
それに釣られ、視線を移すと、ソコには今日の日付である
四月一日が・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・あぁっ!!!!
「いや~、熱烈な愛の告白だったなぁ、おい」
ニヤニヤしまくっている銀さんに、僕は慌てて弁解を試みる。
ってか別に嘘をついてもいい日なだけで、
嘘だけを言う日じゃないですからねっ!
なんでそんな風に取るかな。
取らないよね、普通っ!!
・・・あぁ、でも銀さんなら取るか。
だって自分が99%悪くても、残りの一%に全力を注ぐ人だもの。
上げ足取りが得意技な御方だものぉぉぉ!!!!
「違いますっ!あれは限りなく僕の本心でっ!!」
「判ってるって。アレだよな?
素直に言えないお年頃なんだよな?」
「ちっげぇよっ!!ってかそれならアレですっ!
僕はそんな銀さんが大好きですっ!」
勢いつけてそう叫ぶと、銀さんは一瞬目を丸くし、
次にそれまで以上に頬をにやけさせた。そして、
「いや~、本当愛されてるわ、銀さん。もう嬉しくなっちゃう」
そう言ってソファから立ち上がり、両手を広げて僕をギュッと
抱き締めてきた。
「ぎゃぁぁぁぁっ!!
ちょ、さっきまでの会話は何処に行ったんですかっ!
ってか今日はエイプリル・フールでしょっ!」
僕の首筋に頬を摺り寄せてくる銀さんに、なんとか距離を
取ろうと手を突っぱねるが、力の差は歴然で。
「今日は単なる四月一日で、
それ以外の何物でもありません。
それに銀さんの知ってる新ちゃんは、嘘なんてつかない良い子ですぅ」
僕の抵抗を軽く流し、銀さんはそのまま軽く僕を持ち上げると、
そのままの格好でまたソファへと腰を降ろしてしまった。
そうなると、抱き締められたままの僕は、必然的に
銀さんの膝に向かい合った状態で座る事となる訳で・・・
「いや、今日から銀さんの知ってる僕は生まれ変わりましたから。
嘘もガンガンつく悪い子になりましたからぁぁぁ!!!
だから、ちょっ!尻を触るなぁぁぁ!!!!」
「成る程。って事はもっと尻を触ってもいい・・・
寧ろ撫で回してくれ・・・と」
「なんでそこだけ素直!?
いいからとっとと離せぇぇぇぇ!!!!!」
・・・その後、万事屋でエイプリル・フールが全面禁止になったのは
言うまでもない。
*******************
何事にも良い方向に取り続ける坂田。
迷惑な程ポジティブです。
何時も行く甘味屋に行ったら、見慣れない顔の店員が居た。
お陰で注文の時、
「何時もの」
「・・・は?」
と言う非常に恥ずかしい会話をしてしまった。
やべ、何コレ。
久しぶりにパチンコで勝って、調子に乗ってただけに
非常に恥ずかしい。
やっぱアレだ。
幾ら懐に余裕が出来ても、
態度に余裕を出してはいけなかった。
人生、常に緊張感に包まれていなければダメだ。
だってその後、買い物に出てたらしい
新八にも見付かって、ものっそいお説教を受けたもの。
すみません、何時ものなんて嘘です。
そんなんで通じる程、甘味屋なんて通ってません。
本当です、信じてください。
って、何で今頃出してくんのかなぁ?店長ぉぉ!!!
や、すみませんね~、新人なんで判らなくって。とかいらないから。
全然判らないからね、銀さんもっ!
は?何時もの子、辞めたの?
あ~、そうなんだ~。良い子だったのにねぇ。
時々おまけとかしてくれたし・・・っていやいや違うから!
そんなのしてくれた覚え、全然ないからっ!
・・・って、あれ?もしかして新ちゃん、ヤキモチ?
糖分摂取に対してじゃなくて、ヤキモチ?それ。
馬っ鹿だな~。幾ら糖分好きでも、それ以上に新ちゃんの方が
好きなんだって、銀さん。
だから安心して・・・って本当すんませぇぇんっ!!
ちょっと本気で調子に乗ってましたぁぁぁ!!!
だからそれっ!幾らお団子の串でも、刺さると痛いからっ!
団子好きでも、流石に団子自体には
なりたくないから、銀さんっ!!
「全く!本当調子に乗ってると締めますよ!?
首とか首とか首とか」
怒り心頭といった感じで前をズンズン進んでいく新八に、
本当すんません。とカクリと肩を落として着いて行く。
ちなみに辛うじて首ではないが、軽くシメられた後だ。
色々痛いし、先程まで暖かかった懐も、軽く痛い。
ってか首ってなんだ。
そこを締められると調子に乗る所か、舟に乗る勢いなんですけど。
特に三途の川辺りにある。
「でも・・・そっか~。もう春ですもんね」
そう言う新八は、怒りを沈め少し寂しそうだ。
先程の店の子もそうだが、新八の良く行くスーパーでも、
顔馴染みのバイトの子が辞めてしまうらしい。
理由はそれぞれだが、大元は一緒。
違う所で新しい生活を始めるとか・・・
それはそれで喜ばしい事だが、やはり置いていかれる側としては
寂しいもんだよな。
例えそれが顔馴染みの店員だったとしても。
俺は少しだけ寂しそうな笑みを浮かべている新八を見て、
思わずその小さな頭に手を伸ばし・・・
「タイムセール前に半額シール貼ってくれたり、
集めてたスタンプを多めに押してくれたりしてくれたのに・・・」
「ってそこかよっ!
何ソレ、何処まで主婦根性育っちゃってるんですかぁぁ!!?」
撫でる代わりに軽く叩いた。
何すんですかっ!って睨まれたけど、銀さん悪くないから。
主婦根性が逞しく育つのは良い事だけど、
それはあくまで坂田家の主婦としてだから。
そんなちょっと好意入ってんじゃね?的な事は、
断固として跳ね返してください。
もし出来ないなら、銀さんに言って下さい。
容赦なく切り刻むから。
ほんの微かな兆しでも、芽は全て叩き潰すっ!
今度からは絶対買い物に着いて行こう。そう心に決めていると、
新八は叩かれた頭を撫でながら、口を尖らした。
銀さんだっておまけしてもらってたのに・・・とか何とか
言っているが、それは全然違う。
だって銀さん、新ちゃんしか見てないもん。
そう言うと、新八は 馬鹿な事ばっかり・・・と
口を尖らしたまま視線を逸らした。
でもその頬は赤く染まっていて・・・
俺の脳内はピンク色に染まりまくった。
やっべ、何コレ。
とんでもない破壊力なんですけどぉぉぉ!!?
お陰で銀さんの理性は木っ端微塵よ?
ま、元々そんなにないけどな。
でも恐怖心はちゃんとあるので、じっと拳を握り締める。
だってここ、大通りだからね?
こんな所で何かしたら、俺の頭が赤く染まるから。
一応学習能力あるからね、銀さん。
だからさっさと家に帰ってイチャコラしよう。
そう思い、でもせめてこれくらいは・・・と新八の手を取り、
そっと握り締めた。
少しドキドキしながら、ちらりと新八の方を見ると、ちょっと
恥ずかしそうだが、振り払いもせず着いてくるので
ホッと息を吐いた。
そしてふと思う。
もし・・・もしもだけれども、いつかこの手が自分から
離れていくかもしれない。
俺の知らない、新しい生活へと向っていくかもしれない。
それはちょっとした恐怖だ。
いや、とんでもない恐怖か。
「銀さん?どうかしましたか?」
そんな思いが出てしまったのか、つい力が入ってしまった手に、
新八が不思議そうな顔を向けてくる。
「ん?・・・いや、何でもねぇよ。」
そう告げるが、新八は納得していないようで、訝しげな視線を
向けてきた。
だが、こうなった俺が何も言わない事は知っているので、
ま、いいですけどね。と直ぐに小さな息を吐いた。
「でも新しい生活か~。寂しいけど、ちょっと憧れちゃいますね」
「え?何、新八。もしかして新しい生活してみたいの!?」
「や、その前に普通の生活が送りたいです。
ってか憧れてるだけで、そんな気はないですよ」
そう言って笑った新八だったが、俺は全く笑えねぇ。
ってか心臓バクバクだってぇのっ!
銀さん的に不適切な言葉はやめてくなんい!?
一瞬真顔になってしまった俺に気付いたのか、新八が
何かに気付いたように小さく口を開けた。
「もしかして銀さん・・・ちょっと不安になっちゃいました?」
「別に?」
新八の問い掛けにそう答えたのだが、あまりにも即答し過ぎたのが
悪かったのか、クスクスと新八が笑い出した。
あ~もう、うっせぇなぁ!
仕方ねぇじゃん、オマエがそんな事言うんだからよ。
仮定の話だとしても、俺にとっちゃ心底心臓に悪ぃんだよ。
ま、いいけどね。どっちにしろ離さないし。
大人なら笑って見送ってやれと言われるかもしれないが、
生憎俺は大人ではなく、万事屋銀ちゃんだ。
寧ろ笑って捕まえててやる。
ムスッとしていると、今度は新八の手からギュッと力が
込められるのが判った。
「安心して下さい。僕の居る場所はここですから。」
そう言った新八は、何よりも暖かい笑みを浮かべていて。
俺は黙って、その手を強く握り返した。
ならオマエは観念しろ。
俺の居る場所も、ずっとここだから。
*********************
個人的ではありますが、団子様へvv
以下お返事。
態々のご挨拶、有難うございますv
こちらの方こそ、色々とご感想を頂き、
尚且つウチの銀新を気に入って頂けて
本当、幸せでした~vv
上の二人共々、寂しくはありますが
これからもこんな感じで居続けると思いますので、
またお気軽に遊びに来て下さいませvv
本当に有難うございましたv
「あ、やっぱりこっちにあった。」
夜遅く、再び万事屋に来た・・・と言うか強制連行された
新八は、ここに来る羽目になった原因を見つけ、満足げに頷いた。
その背後に、のっそりと銀時が近付いてきて、箪笥の前に
座り込んでいる新八の後ろへとしゃがみ込む。
「あ、あったの?良かったな~。これでちゃんと寝れるじゃねぇか、
銀さんと」
「えぇ、安心し過ぎて横になったら三秒ほどで夢の中に
行けそうです。一人で」
「いやいや、あれよ?一人でそんな所に行ったら寂しいから。
絶対寂しくて泣けてくるからね、銀さんが」
「アンタがかよっ!
あ~、もういいですから、もう一回お風呂に入ってきて下さいよ。
冷たくなってますよ?体」
そう言うと、新八は後ろから伸びてきた銀時の手を叩き落とし、
着替えを手渡した。
そんな新八に、銀時は一瞬口を尖らすも、直ぐにニヤリと口元を上げる。
「別に風呂じゃなくても温まる事は出来ると思うんですけど?」
新ちゃんも冷たくなってるみてぇだし、どうよ?と、ニヤニヤと笑う
銀時の顔面に着替えを叩き付ける。
「・・・どうです?少しは暖かくなりました?
叩くと暖かくなるって言いますもんね。
なんなら全身隈なく暖めてやりましょうか?」
それなら僕も体を動かせて丁度暖かくなりますし。にっこりと笑って
言う新八だったが、目が怖いし、発言も怖い。
銀時はフルフルと頭を振ると、せめてこれだけは・・・と、
新八に先に寝ないように告げ、風呂場へと向っていった。
それを溜息混じりに見送った新八は、先程取り出した箪笥の中身を
再び入れていく。
本来は万事屋の箪笥なのだし、ここに住んでいる銀時や神楽の
モノしか詰まっていなかった箪笥。
だが、今入れている一段には新八のものばかりが詰まっている。
最初はなかったんだけどね。
自分の為に空けてもらった箪笥の一段を閉め、新八はくすりと笑みを零した。
最初の頃、まだ新八の私物はこの万事屋には無かった。
一応職場でもあるのだから、何かで持って来たにせよ、きちんと
持って帰っていたのだ。
「オマエさ、それ一々持ってくんの面倒じゃね?」
銀時にそう指摘されたのは、家から持ってきていた割烹着だった。
「毎日ここで使ってんだからさ、もう置いときゃいいじゃん」
そう言われ、確かにその割烹着は万事屋でしか使ってないし・・・
と置いていったのが最初だったと思う。
けれど・・・
「なんで毎回持ち帰ってるネ」
ある日、昼食後に神楽と並んで歯を磨いていると、
不意にそんな事を言われた。
「あれカ?普段もきっちり持ち歩いて、
清潔感でもアピールしてるアルカ?」
みみっちい男ネ。そう言われた先には、磨き終えてケースに仕舞った
自分の歯ブラシが。
「いや、そんなのアピールしてないからね?
ってかこれでどうやって周囲にアピールするの?」
「ならここに置いとけばヨロシ。
大体私と銀ちゃんのと二つだけなんて、
心底寒気がする光景ネ」
むすっとした表情で言われ、苦笑したものの確かにここでしか
使わないのだし・・・と、僕もそのまま置くようになった。
それからも、そんなやり取りが何度かあり、次第に万事屋に
僕自身の物を置くようになっていった。
定位置に置かれるようになった割烹着。
並んだ歯ブラシ。
いつの間にか客用から揃いの物に変わった茶碗や湯呑み。
そして・・・
「何やってんですか、あんた等」
ある朝何時もの様に万事屋に行ったら、珍しい事に二人の住人は
既に起き出していた。
それだけでも驚きなのに、何故だか箪笥の整理をしているではないか。
天変地異が起こったらこいつ等のせいですっ!!
・・・と、思わず全ての人々に謝りたくなったとしても、仕方ない事だろう。
それぐらい驚いたのだ、僕は。
だが、そんな僕の気持ちも知らずに、天災の原因となろう人物の
一人は、酷く満足げにこちらを見返してきた。
「新八っ!いいタイミングネ。ほらここ、新八のトコアル」
そう言って指差された所には、昨日まで銀さんの衣類が入っていた
箪笥の一段が。
なんの事か判らず首を傾げていると、他の段に衣類を仕舞いこんだ
銀さんが、ワシワシと頭を掻きながら答えを返してくれた。
「今朝早くに神楽に叩き起こされたんだよ。あ、文字通りな。
で、新八が毎日帰るのは着替えを置く場所がねぇからだ・・・って」
「私、寝ないで考えたヨ。着替えが無かったら次の日困るネ。
でもこれで大丈夫ヨ」
にししと笑い、そう告げると神楽ちゃんは ご飯ご飯~ と
和室から出て行ってしまった。
残されたのは、ポカンとそれを見送る僕と、銀さんの二人。
「・・・ま、アレだ。寂しかったんだろ、神楽も」
「え?」
そう言われ、僕は銀さんへと顔を戻そうとした所で、
ギュッと抱き締められてしまった。
突然の事に顔を上げようとするが、直ぐに銀さんの手が
僕の頭へと乗り、それ以上上げることが出来なかった。
「ちょっ、銀さん!?」
「って事でよ。姉ちゃんが心配なのも判るが・・・こっちの家にも
もっと居てくれや」
銀さんもちょっと寂しかったし。そう甘える様な声を耳元に落とされて
嫌と言えるわけもなく・・・
その日の内に、空いた一段には僕の着替えがすんなりと収まる事となり、
仕事に関係なく、泊まる回数も増えたのだけれど。
「でも、こんな時は面倒だよね。持ってくる手間は減ったけど」
「だったら、もう全部こっちに置いとけばいいじゃねぇか」
仕舞った箪笥を見詰めポツリと零せば、何時の間に風呂から出たのか、
背後から圧し掛かるように抱きついてきた銀さんにそう答えられた。
「何言ってんですか。そう言う訳にもいかないでしょ?」
後ろから腰に撒きつかれて来た銀さんの手をぺチリと叩けば、
拗ねた様な声が耳元で聞こえた。
それにクスリと笑い、今度は僕の方が寄り掛るように体を預ける。
銀さんはそれを確りと受け止めると、僕の肩口に顎を置き、
目の前の箪笥に視線をやった。
そしてゆるりと上がる口元。
「ま、いいけどな。少しずつでもこうして増えてってるし」
その声がなんだかとても嬉しそうで、僕は思わず、
銀さんの頬に唇を置いてしまったのだった。
******************
新八移住計画勃発中(笑)
洗濯物を畳み終え、それを箪笥に仕舞う序に明日着るモノも
用意しておこう・・・と、中の物を探ったが、何故か自分が
着ようと思っていたモノが見当たらない。
「あれ?確かに洗って仕舞った筈なんだけど・・・」
そう思い、再度探ってみたが、やはり見付からない。
こうなってしまうともうダメだ。
ないならないで、他のモノを用意すればいいだけの話なのだが、
どうにも気になってしまう。
という事で、僕は几帳面に畳み仕舞われた自分の着物を、
一つずつ取り出していく事にした。
「やっぱりない・・・」
周囲に箪笥の中身を並べ立てた中、僕は一人首を傾げた。
もしかして破れが酷かったとかで捨ててしまったのだろうか?
そんな考えも浮かぶが、新八は直ぐにそれを打ち消した。
仕事柄、そう言う事も偶にはあるのだが、
大抵きっちりと直して着ているし、何よりその仕事自体が
最近なかったのだ。
それにやっぱり洗って箪笥に仕舞いこんだ記憶もある。
なのになんで??
暫しの間悩んだ末、新八はある可能性に辿り着いた。
「もしかして・・・」
そう呟くと、新八は立ち上がって自室を後にした。
『はいはい、本日の業務はとっくの昔に終了致しましたってんだよ
コノヤロー。』
長い間呼び続け、漸く出たと思ったら、いかにもダルそうな
声が耳に入ってきた。
「なら昼間ならちゃんと業務してるんですね、コノヤロー」
思わず出た突っ込みに、受話器の向こうで小さく驚き、
名を呼ぶ銀時の声が聞こえた。
それに対し、新八は深く息を吐く。
「全く、仕事がないんですから年中無休の24時間体勢で
受付ぐらいはして下さいよ」
『安心しろ、新八からのは万事その体勢だ。
で、何?やっぱりこっちに泊まりたくなった?
いいよいいよ、全然OK。なんなら迎えに行くか?』
「その体勢は今後休止状態にして下さい、無駄なんで。
ってかなんでそう無駄にアクティブ!?
仕事に見せろよ、その精神!!
大体そう思うなら、電話する前に行ってますし、そもそも
帰ったりしません」
『お!新ちゃんてば男前だな~、おい。
でもやっぱ危ないから、銀さんが迎えに行くって。
だから玄関で大人しく三つ指ついて待ってろ』
途端に耳に流れ込んでくるニヤけた声に、新八の目が据わる。
「や、だから泊まる気は全く無いって事なんですけどね。
って、人の話聞いてます!?泊まる話なんて全然出てないんですけどっ!
何コレ、何処か別のと混線でもしてるんですか!?」
そうじゃなくてっ!・・・と、新八は漸く銀時の元へ電話をした
理由を話し出した。
『はぁ!?着物ってオマッ・・・そんなの明日にでも
自分で確認すればいいじゃねぇか』
呆れた声でそう言う銀時に、新八も少しだけ口篭る。
確かにそうだ。
でも気になってしまったら最後、それを確認するまで
落ち着かないのだから仕方が無い。
「お願いします、銀さん。ちょっと見て貰うだけで
いいですから。このままだと気になって眠れそうにないんですよ」
渋る銀時に、なんとか確認して貰おうと必死になって頼み込む新八。
その声にとうとう根負けしたのか、受話器の向こうから、大きな溜息と
判ったよ。 という力ない銀時の声が聞こえた。
その声に新八は感謝を述べると、銀時の気が変わらないうちに・・・と
急いで探してもらいたい着物の特徴を伝え始めた。
「・・・判りましたか?銀さん」
『ん~?・・・まぁ、多分?』
そう聞くものの、銀時の返事は曖昧で、何処か頼りない。
「もう、本当に判ってんですか?」
『いや、だってよぉ、オマエの着物って大抵似たような感じじゃん?
だからそう言われてもよぉ・・・』
段々と面倒臭くなってきた・・・という感アリアリの銀時の声に、
新八はこれだけは言うまい・・・と思っていた着物の
特徴を渋々口に出した。
「・・・銀さんが赤い中ぐらいの太さの縄が似合いそうだ
って言ってたあの着物ですよ」
『あ、アレね。了解了解』
じゃあまた後で連絡するわ。そう言うとガチャリと通話を切られ、
耳に入ってくるのは虚しいツー ツーという音のみ。
「・・・や、それで判るなよ」
と言う新八の切ない突っ込みは、誰に伝わる事もなく、
受話器の中へと吸い込まれていった。
それからどれ位たったのだろう。
新八はその間に・・・と、先程広げてしまった着物を箪笥に
仕舞いこみながら、銀時からの電話を待っていた。
が、全て仕舞い終えても電話は鳴る素振りを見せない。
・・・や、そんな素振り見せられても怖いけどね。
でも本当、どうしたんだろう。まさか面倒臭くなって放置してるとか!?
いっその事もう一度電話してみようか・・・そう思った時、
不意に玄関の方で物音がした。
日は変わっていないとしても、既に夜更けだ。
こんな時間に人の家を訪ねる人などいないだろう。
・・・まぁ例外は居るのだが。
だがその例外はこの時間、姉の仕事場でボコボコになっているか、
財布を空にさせられている所だろう。
ならば、可能性として残るは・・・
そこまで考え、新八は手に馴染んだ木刀を持ち、ソロソロと
玄関へと足を進めた。
だが、玄関が見えた所で、その気合も見事に粉砕させられた。
だってあの玄関に映った見事な髪の跳ね具合は・・・
新八は一つ息を吐くと、木刀を置いて玄関へと足を進めた。
そして鍵を開け、玄関を開け・・・
「・・・何やってんですか、アンタ」
目だけはしっかり胡散臭げな半目で、目の前に立っている
銀時を睨み上げた。
「おいおい、無用心過ぎるだろう、オマエ。
そんな簡単に開けちゃってどうすんのよ。
もし悪い人だったらヤバイ所じゃすまないよ?」
「そうでしたね。じゃあ閉めときます」
ヤレヤレ・・・と、まるで子供に言い聞かせるように
告げてくる銀時に、新八はそう返すとそのまま玄関を閉めようとする。
それを慌てて押し留める銀時。
「待て待て待て。今悪い人って言ったじゃん!?
目の前にいる人は違うでしょ?オマエの銀さんよ!?」
「限りなく悪い人ですね。
ってか無用心も何も、銀さんだって丸判りですからね!?」
「え?何ソレ。愛の力!?」
「天パの力だよ。
それよりもここで何してんですかっ!」
さっき電話で頼んだことは!?そう問い質すと、銀時は あ~それな~。
と言い、顎に手を当てた。
「やっぱさ、そこまで気になるってんなら
自分の目で確かめた方がすっきりすると思うのよ、銀さん。」
「・・・・・・・・・・は?」
うんうん、と自分の言葉に頷きながら話す銀時に、
新八はポカンと口を開いた。
「幾ら尊敬する銀さんの言葉でもよ?もしかして・・・とか
思っちまうだろ?
や、銀さんはアレよ?オマエの言葉だったらきっちり信用して、
どんな言葉でもいい方向に解釈して受け止めていくけどね?
で、明日だと気になって眠れねぇんだろ?
だからこうして迎えに来てやったんだよ」
完璧じゃね?と、自信有り気に言い終える銀時。
それを見詰めながら、新八は酷い疲れが一気に来たのを感じた。
確かに銀さんの言う通り、もしかして・・・と言うか
面倒臭くて適当に答えたかも・・・とは思ってしまうかもしれない。
だが、幾らなんでもこれは・・・
「ホラ、もう時間が遅ぇんだ。さっさと家の戸締りして来いよ。
あ、やっぱいいや。戸締りは俺がしとくから、
オマエは明日の用意してこい。銀さん疲れてるから
連れ帰ったら最後、送れそうにもないから」
そう言ってイソイソと家の中に入っていく銀時の背中を見て、
「やり過ぎな上に完璧でもないんですけど・・・」
と、ツッコムものの、それに力はなく。
その代わりにやんわりとした笑みが、新八の口元に浮かんだ。
「全く・・・銀さん、ちゃんと戸締りして下さいよっ!
じゃないと気になって僕、どんな時間帯であろうとも確認しに
帰ってきますからねっ!」
そう告げると、新八も明日の用意をする為に、家の中へと
足を進めた。
それに対し、悲鳴のような銀時の声が上がる。
だって仕方ない。
一度気になると、どうしようもないのだ。
それが嫌なら、戸締りぐらいは完璧にして下さいね、銀さん。
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多分普段見られないぐらいに真剣に戸締りします。