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「もうさ・・・これくらいでいいんじゃね?
良くやったよ、俺達は。ってか偉いね、感心するね、マジで」
「って、この惨状を前にそんな事を言ってのける精神に
感心するわぁぁぁ!!!」
うんうんと自分の言葉に頷く銀時の頭に、新八の言葉と紙紐の束が投げられる。
モノ自体は凶器と掛け離れているが、何分勢いと量が半端ない。
思わず前のめりに頭を吹っ飛ばす銀時に、机に座っていた神楽が
フンッと鼻を鳴らした。
「自業自得ネ。鋏じゃなかっただけ有難いと思うヨ」
「・・・や、神楽ちゃんも働こうよ。ってかそんなトコに座っちゃ
ダメでしょ!!」
そう言って仁王立ちする新八は、三角巾に襷掛けという
やる気十分な格好だ。
万事屋銀ちゃん。そんな訳で現在大掃除真っ最中です。
「大体毎日掃除してんだからよ、今日ぐらい別にいいじゃねぇか」
「それは僕の台詞です。
何勝手に人の仕事を自分の手柄みたいにしてんですか」
ホラ、さっさと手を動かす!新八にそう言われ、銀時はブチブチと文句を
言いながらもジャ○プを纏める手を動かした。
「大体そんなに溜めるから後で苦労するんでしょ。」
「仕方ねぇだろ?ジャ○プぐらいしか溜めるモンがねぇんだからよ。
あ、違うな。家賃も溜まるな、自然に。」
「それ買わなかったら金が溜まるんだよ!
家賃も普通に払えるんだよ!
ってか何自然発生みたいな感じにしてるんですか!
そんなんで溜まるのは銀さんの血糖値ぐらいですよ」
「新八~、これ捨ててもいいアルカ?なんか腐臭がするネ」
「ちょ、神楽!?
それ銀さんの着物ぉぉぉぉ!!!!」
「・・・加齢臭の間違いだったアルカ」
「神楽ちゃん、それは捨てないで洗濯籠ね。
そんなんでも買うとお金が掛かるから」
「・・・あれ?なんか銀さん、泣いてもいい状況じゃね?
ってか寧ろ泣くべき所じゃね?」
「泣いてもいいですから手は動かしてくださいね」
そうにっこりと笑って告げてくる新八は、背後に修羅を飼っている。
銀時と神楽は黙々と手を動かし始めた。
・・・が、やはりやり慣れていないものは楽しくないもので。
銀時はある程度ジャ○プを纏め終えると、鼻歌交じりで窓を拭いている
新八へと視線を向けた。
・・・何がそんなに楽しいんだか。
ニコニコと笑っている新八に不審げな視線を向けていると、
それに気付いたのか不意に新八が拭いていた窓から視線を上げた。
そしてバチリと合う視線。
またあの薄ら寒い笑顔を向けられては困る・・・と、銀時は慌てて
手元のジャ○プへと視線を落とした。
その姿に新八のクスリと笑う声が落ち、銀時はムッと唇を尖らす。
「新八君はいいね~。何しても楽しいお年頃みたいで」
銀さん、そう言う時期過ぎてるから判んないわぁ。
そう嫌みったらしく言う銀時に、新八は笑いを深める。
「年齢は関係ないでしょ。ってか、楽しくありません?なんか」
「悪ぃ。銀さんSだから、寒空の下一銭にもならない労働を
強いられてる事について何一つ楽しみは見出せねぇよ。
ってか何?新ちゃん楽しいの?
奉仕するのが楽しいの?んだよ、ならさっさと言えってぇの。
それなら今夜と言わず今からでも別の奉仕作業を・・・」
「引き千切って介護と言う名の奉仕を
受けさせてあげましょうか?」
「本当にすんませんでしたぁぁぁ!!
ちょっと変な方向に楽しみ見出してました、銀さんんんん!!!」
ギリギリと手にしていた雑巾を笑顔で捻り始める新八に、
銀時が慌てて頭を下げる。
微妙に腰が引けているように見えるのは、無理もない事だろう。
必死な銀時を見て新八は小さく苦笑する。
「全く・・・僕だってただ掃除が楽しいってのじゃないですよ?
でもこれってあれでしょ?一年間お世話になったお礼と、
また一年よろしくお願いします。って事でしょ?」
そう言って新八は、そっと窓のサッシに手を添えた。
「いっぱい、いっぱい色んな事がありましたもん、ここで。
だからすっごく綺麗にして、また来年も色んな事をしたいんです」
これからも、ここで。そう少し照れ臭そうに言う新八に、銀時はポカリと
目を丸くした。
そんな銀時の反応が、ますます気恥ずかしかったのか、新八の頬が
赤く染まってきた時、風呂場の方から神楽の声が銀時達の元へと届いた。
風呂場担当になった神楽だったが、どうにも落ちない水垢を発見したらしい。
新八はこれ幸い・・・とばかりに返事をし、銀時の視線から
体を外した。
そうして風呂場へと去っていく新八を、自然と目で追ってしまう銀時。
本当は何か言いたいのだが、何を言っていいのかが判らない。
と言うか、なんで行き成りそんな可愛らしい事を言いやがるのだ、
この眼鏡っ子は!
そんな気持ちから、パクパクと口を開けているだけの銀時に、
廊下へと出て後姿だけを残した新八が不意にその足を止めた。
そして少しだけ後姿を見せたまま、
「ちなみに銀さんも同じですからね。今日のお風呂で
ピカピカに磨き上げてあげますから覚悟しといて下さい!」
と、口早に宣言すると、今度こそその後姿を完全に銀時の視界から
消したのであった。
その後、漸く銀時の口から出た言葉にならない叫びと共に、
急スピードで磨き上げられていく万事屋があったのは言うまでも無い。
**********************
多分今年最後のお話です。
皆様、よいお年を。
そして、来年もどうぞよろしくお願いします。<(_ _)>
街に出れば、イヤでも煌びやかな光景が目に入る。
それに俺はケッと舌を打つと、家路へと足を速めた。
ったく、どいつもこいつも浮かれやがって。
今日と言う日の本来の意味を忘れてんじゃねぇか?
言っとくけどな、今日は恋人達の為の日じゃねぇし、
ガキ共が気軽にプレゼント貰える日でもねぇんだよ。
ってか、なんでクリスマスにプレゼントォォ!?
お陰で世の親達は、サンタからのと自分達からの、
二つもプレゼント用意しなきゃいけねぇじゃねぇか。
「んなのやってらんねぇよなぁ!?」
そう通りすがりのおっさんに問い掛けてみる。
「へ!?な、何が?」
「うっせぇよ、判んねぇなら答えるんじゃねぇ!!」
が、返って来たのは怯えた顔と曖昧な答えだ。
全く使えねぇ。
俺はおっさんを睨みつけ、再び歩き出した。
・・・や、別に俺に、子供が居る訳じゃないけどね。
そんなに怒る所でもないけどね。
でもやはり理不尽だ。
大体クリスマスってのは、そう言うもんじゃねぇんだよ。
もっとこう厳かな?寧ろ厳粛な?
そんな感じな日なんだよ。
ケーキを食べる為に。
なのによぉ・・・・
「ワンホールを三人で別けるってどう言う事だ!?」
なぁおい!・・・と、今度はチラシを配っているおっさんに問い掛けてみる。
「は?・・・ってケーキの事?あ、もしかしてクリスマスの・・・」
「うっせぇよ!そこまで推理すんじゃねぇよ!
名探偵気取りかコノヤロー!!」
一瞬呆けたものの、直ぐにニヤリと笑われてしまい、途中で遮った。
ったく、クリスマス如きで浮かれてんじゃねぇよ。
仕事しろ、仕事。
とりあえず配っていたチラシは、新しく開店した呑み屋のもので、
割引券が付いていたので貰っておく。
ホラ、アレだ。人って割引とかに弱いじゃん?
それにおっさんも可哀想じゃん?
配り終えないといけないんだし。
だから仕方なく・・・だ。
別に一緒に映ってる派手目なネェちゃんの写真に
釣られた訳じゃない。
でも一応丁寧に折り畳み、懐に入れてから再び俺は歩き出した。
・・・まぁケーキの事は仕方が無い。
諦めがつかないが、食べれるだけマシってもんだ。
だが、どうにもこう・・・雰囲気がムカつくってぇのか。
ムズムズするってぇのか。
街だけではなく、万事屋の中もこんな感じなのだ、実は。
新八がこっそり三人分のマフラーを編んでるのを俺は知ってる。
この間酔って帰った時、ソファで転寝していた新八の手元にあったのだ。
なんだか見てはいけないような気がして、すぐさま玄関へと戻り、
ワザと大きな音を立てて玄関を開け直した。
すると居間の方で慌てた声と音が聞こえ、俺は自分の行動が
正しかったのを知った。
・・・ま、その後新八のお小言と、玄関の音で起きたらしい神楽の
拳を貰ったのだけれど。
そして、密かに神楽がサンタを楽しみにしているのを知っている。
子供騙しだの何だのと言っていたので、
「アレって前もって自己申告しとかねぇと貰えねぇらしいぜ?」
と教えてみたのだ。
・・・後日、汚い字の手紙が、宛先不明で万事屋へと戻ってきていた。
しかも宛先は『サタン』になってた。
とりあえず、神楽の名誉の為にも、それは速やかに俺の机の中へと
仕舞われたのだけれど。
そんな感じなので、どうにも身の置きようが無い。
本当、こんなんでこの国の未来はどうなんのかね?
他人の誕生日がそんなに嬉しいのかって話だよ、マジで。
ってかそれなら他のヤツラの誕生日も祝えよ。
んで毎日ケーキ食わせろよ、本気で。
そん事を思っていたら、いつの間にか万事屋の前まで来ていた。
見上げれば、なんだか何時もよりはしゃいでる気がする灯りが映る。
俺は一つ息を吐くと、そのまま階段には上がらず、下のババァの
店へと足を踏み入れた。
「ババァ、ワリィ。これ、ちょっと預かっててくんねぇ?」
夜には取りに来るからよ。そう言って掲げた袋には、やっぱり何処か浮かれた
感じのする包装用紙に包まれた二つの箱。
ニヤニヤと笑うババァに、やっぱりムズムズする。
あ~、もう本当どいつもこいつも浮かれすぎだコノヤロー。
**************************
多分一番浮かれてるのは坂田(笑)
と言う事で皆様、素敵なクリスマスをvv
冬はやっぱり炬燵にみかんでしょ。
俺はそれまでの定位置であるソファに別れを告げ、
最近新しい定位置となった炬燵の一角に座り込むと、
テーブルに置かれた籠の中からみかんを一つ手に取った。
「やっぱアレだな。炬燵には魔法が掛けられてるね、絶対」
自分の考えに酷く納得しつつみかんを剥いていると、炬燵の向こう、
つまり居間の方を掃除していた新八が呆れた視線を寄越してきた。
「炬燵って言うより銀さん事態に掛けられてるんじゃないんですか?
堕落と言う名の呪いが」
「いやいや炬燵にも絶対掛けられてるって。
ちなみに銀さんはその呪いを広い心で持って受け入れ、
共に生きて行く覚悟であります」
「そこは強い意志で持って解いていく
覚悟を決めてくださいよ。
ただでさえ天パの呪いが掛かってるんですから、一つぐらい
荷物を軽くして下さい」
「え?なに?これ呪いだったの?だったらセオリー通り
新ちゃんが銀さんにチューして下さい。
さすれば色々なモノが解き放たれます」
「なんだよ、色々なモノって。
とりあえずそのままの銀さんがやっぱり好きなんで、
今後一切チューはしない方向としま~す」
折角真剣にお願いしてみたのに、新八は軽くそう返すと
ゴミを掃き取り、そのまま箒を持って視界から消えてしまった。
・・・チキショー。こうなったら意地でも呪いが解けるまで
チューしまくってやる。
あ、でもそう考えたらナイス呪いじゃね?これ。
かなり強固な呪いだからね、銀さんのは。
多分毛根が死滅するかどうかまで行かないと、解けそうにないから。
よし、それまでずっとチューする勢いで行こう。
それ以降もずっとしていく心積もりで行こう。
人間、やっぱ中途半端は良くねぇ。
最後の最後まで、ずっとして行こう、チューを。
そう固く心に誓っていると、今度は縛ったジャ○プを持った新八が
炬燵の向こうを横切っていった。
あぁ、俺の聖書が・・・
そうは思ったが、何も言わずにおく。
以前文句を言ったら、知らないうちにそれ以外の俺の聖書(エ○本)を
もれなく捨てられた事があるのだ。
結構上手いこと隠していたと思っていただけに、
色々びっくりだ。
最初は誰かに貸したか?とも思っていたのだが、どの隠し場所を見ても、
見事に一冊もなくそこで漸く捨てられた事に気付いたのだが・・・
まさか新八に「俺のエ○本どこやった!!」・・・なんて
聞ける筈もなく、泣き寝入りとなってしまった。
が、何処となく俺の態度で気付いたんだろう、ある日新八が
酷く優しげな笑顔で、
「銀さん、聖書は一つでいいですよね?」
と言ってきた。
当ったり前だろうがコノヤロー!!
銀さんの少年的心をなんだと思ってんだ!?
何個も聖域を持つほど広かねぇんだからな?コンチキショー。
って事で昼と夜、それぞれに一つずつ必要です。
本当、ごめんなさい。
で、とりあえずそこら辺は量だけきちんと制限していれば
黙認してくれるらしい。
いやはや、俺の聖母は中々心が広い。
という事でサラバだ、俺の聖書。
夜の聖書の為にも、その身を犠牲にしてくれ。
少し涙ぐみながら、剥いたみかんを食べていると、雑誌を玄関に
置いてきたらしい新八が再び横切っていった。
今度は何をする気なのだろう。
モグモグと口を動かしながら、先程からチョコマカと動きまくっている
新八を目で追う。
すると、少ししてから今度は急須と湯呑みを載せたお盆を持って
新八が姿を現した。
「はい、お茶です」
そう言ってお茶を淹れた湯呑みを俺の前に置いた。
「あんまりみかん、食べ過ぎちゃダメですよ?」
そう言って笑う新八の視線の先には、既に二つ目を剥きだしている
俺の手が。
「これもある意味呪いだな」
ついつい手が出ちまう。しみじみ言うと、新八が小さく噴出した。
見上げればまだ立ったままで、直ぐにでも立ち去りそうだ。
案の定、馬鹿ばっかり言って。 と笑いながら、その場を離れようと
しているので、俺は慌てて新八の袴を引っ張った。
それに新八はクルリと振り返ると、小さく首を傾げる。
「なんですか?」
「よく働く新ちゃんにご褒美」
問い掛けてくる新八に、俺は剥いたみかんを一房手に取り、
新八へと差し出す。
新八は苦笑し、お手軽なご褒美だな~。等と言いつつも
みかんを貰う為、俺に手を差し出してきた・・・が、
俺はその手を避けるように、みかんを引き寄せる。
その行動に不審げな表情を浮かべる新八に、俺はニッと笑うと、
「はい、あ~ん」
そう言い、再び新八へとみかんを差し出した。
新八は一瞬目を見開くも、こうなった俺が言う事を聞かないと言うのを
理解しているのだろう。
顔を赤らめ、少し怒っているぞ、と言う風に眉を寄せると、
それでも素直に体を屈め、口を開けてくれた。
それに俺はポイッとみかんを放り込むと、そのまま新八の腕を引き、
序に俺の唇も新八へと差し出してみる。
驚く新八を無視し、暫しみかんと新八の味を堪能する。
あ~、やべ。
本当に色々なモノが解き放たれそう。
だが、昼真っからそんな事をすれば、後で新八の何かが
解き放たれてしまう。
俺はぐっと我慢し、最後に可愛らしい音を立てて新八の唇に
暫しのさよならを告げると、座り込んでしまった新八の頭を撫でて、
重い腰を上げた。
少し涙目になりながら、こちらを恨めしそうに睨む新八に
一つ苦笑を返すと、固まった体を伸ばす。
「さて・・・と。新ちゃんのお陰で炬燵の魔法は解けたみたいだから、
今日の夕ご飯は銀さんが作ってやらぁ」
新ちゃんはゆっくり炬燵の魔法にかかってなさい。そう告げて
新八の愛ある罵声を浴びながら、台所へと向った。
その後、こちらも何かの呪いにかかってんじゃね?と思いたくなるような
隙間だらけの冷蔵庫を前に、一頻り悩み、買い物にでも行くか・・・と
和室へと戻ってきた所、炬燵に潜り込んで眠っている新八を発見した。
どうやら見事に炬燵の魔法に掛かったらしい。
気持ち良さそうに眠る新八に、
「やっぱ眠り姫にはチューだよなぁ」
と、嬉しそうに俺が呟き、実行したのは、言うまでもない。
**********************************
日々、コタツの魔法にかかってます。
あの威力・・・半端ねぇ!!
「全く、お子様は元気だね~」
いつの間にか日課となってしまった、放課後のお手伝い。
静かな資料室の中で、ボソリと先生が呟いたのが聞こえた。
視線を上げれば、そこには手を止めたままボンヤリと窓の外を
眺めている先生が居て、つい僕も窓の外へと視線を移した。
そこには夕陽に染まったグランドで部活動をしている生徒達が。
「寒いのにさ~、本当よくやるよ。」
「先生、その発言おっさんぽいですよ」
ってか早く手を動かしてくださいよ。そう言うと、先生はへいへいと
返事を返しながら、手元の書類へと視線を落とした。
動き出した手を確認し、僕もそれまでの作業に戻る。
夏休み前の告白まがいな事から、はっきりとした告白を受けてしまった後、
僕達はどうなったかと言うと・・・実はそんなに進んでいない。
と言うか、実ははっきりと返事をしてなかったりする。
や、学校のある日はこうして放課後残って、一緒に居るんだけどね。
帰りも大体送ってもらってたりするんだけどね。
休みも、時々一緒に出掛けたりしてるんだけどね。
セクハラも偶にされてるんだけどね。
でも・・・返事はしてないんだよね、僕。
なので未だ正式にお付き合いしてるって感じでは・・・ない。
なんかね・・・もうこうなるとタイミング?
ってか勢い?そう言うものが大事だと思うんだよね。
なんか今更って感じもあるし・・・
それに・・・あれから先生、何にも言ってこないし。
や、セクハラはするんだけどね。
でも・・・本当の所、先生はどう思ってるんだろう、この状況。
もしかして、もう付き合ってる感じなのかな?
それとも、ちゃんとした返事を返さないから諦めちゃった?
・・・どっちにしろ、聞きにくい事に変わりない・・・か。
ちらりと視線を向ければ、何故かこっちを見ていた先生と
目が合って、僕は慌てて視線を戻した。
ってかなんであの人こっち向いてんのぉぉぉ!!!
仕事しろよコノヤロー!!!
一人焦っていると、のんびりとした先生の声が掛けられた。
「なぁ、新八ぃ」
「な、なんですか!」
焦ってるせいか、少しだけ大きな声を出してしまった気がする。
が、先生は気にしていないようで、そのまま言葉を続けた。
「外、寒いよなぁ?」
「・・・そりゃそうでしょ」
何を言い出すんだか・・・とドキドキしている心臓を押さえつつそう返せば、
机の向こうで大きな溜息が聞こえた。
なんだろう、そんなに寒いのが嫌いなのかな?
コトリと首を傾げていると、先生は小さくペンを持っていない手を振った。
「先生さ~、寒がりなのに手袋、忘れちゃったんだよねぇ」
「はぁ・・・」
ってかそんなの何時も持ってたっけ?
思い返したが、そんなのしてなかったように思う。
それを言おうとする前に、再び先生が口を開いた。
「ちなみに上着のポケットは片方破けててスースーです」
「あ、縫いましょうか?」
そう言ってみたが、それはまた今度頼む。と言われた。
どうやら先生の要求しているものは違ったらしい。
・・・が、依然何を言いたいのか判らない。
「これが終わる頃には真っ暗だろうしさ、そうすっとますます
寒くなんじゃん?俺、耐えられないかも~」
首を傾げている間も、先生の言葉は止まらない。
や、それだと僕も同じ状況になるんですけど?
僕だって手袋、持ってないし。
・・・まぁポケットは破れてないけど。
「と、言うことで・・・だ。新八君」
訳が判らないままの僕の前で、先生はやっと話を止めると
口元を緩く上げた。
「そろそろ正式に、身も心も暖めてくれる恋人にならねぇ?」
ちなみに入れてくれるポケットも募集中です。そう言って掌を
差し出してくる先生に、それまで冷静になっていた頭が
再び沸騰する。
突然の事に、ただパクパクと口を開いていると、
「お~、新八は暖かそうだなぁ」
ほっぺ真っ赤っか。と、先生は嬉しそうに笑みを広げた。
それに僕は、先程までの考えなど遠くの彼方に放り投げた。
さ、最悪だこの人!なんでこのタイミング!!?
や、ってかタイミング良すぎぃぃ!?
そりゃあ今更聞き辛いなぁとか思ってたけど・・・
思っていたけれどぉぉぉぉ!!!
「こ、これは夕陽のせいです!」
僕は慌てて顔を背けると、目の前の資料を睨みつけた。
「ん~?でももう陽も沈んで・・・」
「ません!!まだありますっ!」
ほら、さっさと終わらせますよ!!そう言って顔を背け、
乱雑に手にしていた資料を棚に戻す。
なんだかポカポカしてきて、余計に頬が赤くなっていくのが
判り、ますます感じる熱は高くなる。
あ~、もう絶対先生、僕の返事判ってるじゃん!
判ってて聞いてるよね、それっ!
ククッと笑みを零す先生の声を聞きながら、僕は今日の帰りにでも
新しく住人になるであろう、自分よりも幾分大きな手を思った。
・・・どうやら今年はそんなに寒さを感じなくてすみそうだ。
**************************
漸くお付き合いスタート(笑)
ピチョン・・・と天井から落ちてくる水滴をぼんやりと眺めながら、
俺は最近あった事を考えていた。
思春期だ、難しいお年頃だ・・・と考えていたウチの
お子ちゃま達は、どうやらそのまんまお子ちゃまだったらしい。
下着ありな洗濯物も関係なく出し、洗う。
着替え中だろうがあまり関係ないし、気にしない。
・・・ってこっちが気になるわぁぁぁ!!!!
ちょ、本当さ、君達自分の年齢と性別を思い出してみようよ。
一応お年頃と言われる年代で、異性同士よ?
何平然とそんな事してんのさ。
見てる銀さんがドキドキすんじゃん!!!??
や、いい事だよ?そういうのもなんか本物の家族って感じで。
家族だったらさ、そんな事気にしないし?
意識もしないし?
傍から見れば、本当アイツラ兄妹か?って感じだし?
・・・いや、寧ろ母と娘か?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・いいなぁ、それ。
って、いやいや違う。
そんな事に幸せを噛み締めてる場合じゃないって。
や、そんな事じゃないけどね?とってもいい事だけどね?
・・・ぶっちゃけ思春期からは程遠いよな、アレ。
小さく頷きながら、ザブリとお湯を掬い、顔を洗う。
まぁ考えてみれば、変に意識持たれるのもイヤだしな。
そう考えると、今のままでいいのか?
あ~、でも一応あいつ等の保護者としては、
この先の二人の将来が大変気になったりもする。
だってこの間呑んで帰って来た時、あいつ等一つの布団に
並んで寝てたしな。
あれは・・・さすがにダメだろう。
幾ら仲良し家族でも、年齢的にアウトだろう。
・・・でも可愛かったよなぁ、あれ。
なんっつうの?天使?
寝顔は天使だって言葉、本当
あいつ等の為にある様な言葉だと思ったしね!
や、でもさすがにアレだよ?
そんな親馬鹿的な事、言葉に出してないよ?
ちょっと一時間ぐらい眺めて、序にカメラに収めたぐらいで
我慢したからね?銀さん。
その後、間に入り込もうとして
容赦なく定春に噛まれたけど、
ちょっと幸せだったから、あれ!!
・・・や、俺も入れてくれればもっと幸せだっんだけどね。
川の字のなれば、まんま幸せ家族だったから!
・・・よし、アレはギリギリセーフと言う事にしておこう。
で、次の時は絶対入り込もう。
うん、アレはありだ。
って事は・・・やっぱ他のもそれなりにありか?
首を捻って考えてみるが、明確な答えは出てこない。
う~ん・・・やっぱ俺が気にしすぎなだけか?
とりあえず髪でも洗うか・・・と、湯船から上がり、
洗い場に腰を降ろしてシャンプーに手を掛けるが、
中身が出てこない。
そう言やぁ昨日で使い終えてたっけな。
新八に言おうと思ってて忘れていたのに気付き、
俺は風呂の扉を開け、詰め替えを持ってきてくれるように頼む。
そして一応、軽くではあるが隠すものは隠しておく。
流石に神楽は来ないと思うものの、あのお子ちゃま度では判らない。
ってか、新八が来てもちょっと恥ずかしい気がする。
あれ?なんか一番思春期なのって俺じゃね?
思い至った考えに、なんだか気恥ずかしい気分で待っていると、
ドタドタと言う足音がやって来て、豪快に扉が開けられた。
っておまっ!幾らなんでもそんな堂々と!!
慌てて振り返ってみれば、そこには・・・
「ワフッ!」
予想していたお子ちゃま達ではなく、定春が詰め替え用を咥えて
立っていた。
そして呆然とする俺を尻目に、定春は咥えていたものを
扉近くに置くと、これまた器用に前足を使って
扉を閉めていった。
・・・なんだかちょっと嫌そうだったのは気のせいだ、うん。
ってかさ、えっと・・・なんだろう?
あぁ!アレだ!!
面倒だったからだ、うん!
あ~、もう仕方ねぇなぁ、あいつ等。
不精もいいトコじゃね?これはもう出たら説教ね、説教。
・・・・しないけどさ。
あ、違うよ?否定されたら・・・とか全然思ってねぇから!
ってか、単に恥ずかしかったからじゃね?
うん、きっとそうだ。ってかそれだね!
ほら、ウチの子達、お年頃じゃん?
思春期真っ最中じゃん?
だから・・・ってさっき程遠いって自分で
断言してたじゃんんんん!!
やっぱなしね、思春期なし!
テレビにしよ、テレビ。それ決定。
だってなんか、すっごく楽しそうな声がしてるもんね、居間の方から!
あ~、なら仕方ねぇよな。やっぱテレビとかって大事じゃん?
見てないとその後がついてけなくなったりすんじゃん?
ほら、銀さん大人だし?そこら辺は心広い訳よ。
こんなん誰が持ってきても同じだしね?
詰め替えれればいい訳だし、うん、結果オーライ。
や~、良かった良かった。やっぱシャンプーはこれでねぇとな。
泡立ちが違うね、うん。
って、良すぎて目に入るからね、これ。
あ~あ、ホラ、やっぱ入っちゃったよ。
ヤバイね、沁みて涙が出ちゃったよ。
や、これシャンプーのせいだからね?
別に哀しいとかじゃないから。痛いだけだから、目が。
決して心とかじゃないからぁぁあ!!!!
勢い良く洗いすぎた為か、その日の銀時の髪は気分とは
裏腹に、とてもフワフワとしたものに仕上がったという。
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とりあえず思春期話終了(笑)
ちなみにお子様達は普通にテレビに夢中です。